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第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会特集
降圧ターゲットはSBP単独に
「血圧管理はSBPにターゲットを絞るべき」とする見解を,王立医科大学国際循環器センター(ロンドン)臨床薬理・治療学のPeter Sever教授が示した。
同様のステートメントはレスター大学(英レスター)循環器科のBryan Williams教授やウメオ大学(スウェーデン・ウメオ)公衆衛生学,臨床医学のLars H. Lindhorlm教授との共著でLancet(2008; 371: 2219-2221)に掲載された。
特に50歳以降は重要
血圧が年齢によって変化することはよく知られている。
米国の国民健康調査であるNHANES(National Health and Nutrition Examination Survey)IIIでは,未治療高血圧患者における高血圧の型が年代別に解析されているが,それによると,50歳まではDBPとSBPが連動して変化するが,50歳以上ではほとんどが収縮期高血圧であることが示されている。
拡張期高血圧については,50歳以下では起こりうるが,50歳以上ではまれであることも示された(図)。

また,加齢による自然経過としてSBPは50歳以降も上昇するが,DBPは低下傾向であることを示す報告もある(Hypertension 1995; 25: 305-313)。
冠動脈疾患の予測因子としてSBPとDBPのどちらが重要なのかを年代別に比較した検討においても,50歳まではDBPのほうが強い予測因子となりうるが,50歳以降はSBPが重要であり,特に60歳以降についてはDBPが予測因子にならないという結果となっていた(Circulation 2001; 103: 1245-1249)。
臨床試験のエビデンスでは,Syst-EURやSHEPをはじめとして,収縮期高血圧のエビデンスが拡張期高血圧を凌駕している。
また,欧州各国による統計データでも,DBP 90mmHgとSBP 140mmHgの降圧目標値に対して,SBPの目標値に到達しない頻度がDBPの頻度よりも圧倒的に多いことが示されている。
このような状況について,Sever教授は「DBPにもSBPと同様の関心が寄せられていることが,SBPの降圧目標値が達成されない要因になっている」と指摘する。
効果的な降圧治療へ
SBPの目標値については,通常の場合140mmHgであるが,高リスク患者では130mmHgとされている。
Sever教授は今後の降圧治療を展望し,
(1)大半の患者の診断・治療においてSBPを単独指標にすべき
(2)SBPは50歳以上の高血圧を規定する因子
(3)DBPを目標値とし続けることは,不適切な治療につながる
(4)50歳未満ではDBP管理も重要であるが,SBPが主要なターゲットであることには変わりない
―の4点を挙げた。
公衆衛生学的にも,心血管疾患予防の観点からSBPにターゲットを絞ることが有用である,と同教授は強調し,「今後はSBP単独の目標値を置き,臨床医や患者に対してシンプルなメッセージを送ることで,より効果的な降圧治療を推進すべき」と述べた。
出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
こんなクリアカットな結論の発表は滅多にありません。
誰もが思っていたことを明快にしてくれました。
すっきり。
こんな研究、大好きです。
ついでに言えば血圧の測定値。
数字が一人歩きしているように思いませんか。
そもそもの測定値の定義づけがはっきりしないのです。
最近、血圧測定値について思い浮かべることがあります。
たとえはあまりよくないかも知れません。
それは各地の気温です。
全国で一番暑い市町村は熊谷だの多治見だのといった類の話です。
そんなのは百葉箱の置いている場所(最近は百葉箱は用いないようです。いずれにしても器械の設置場所)でなんとでもなるわけで、直接比較するほうがおかしいのです。
数字で示されたりスライドなどで統計処理されたきれいな図を見せられると妙に納得させられます。
しかし、そのもとになる血圧測定値は・・・。
百葉箱
http://ngy.sakura.ne.jp/hyakuyoso.htm
気温をはかるための器械
http://www.sendai-jma.go.jp/wadai/sokki/sokki2.html
もう・・・高血圧判定は収縮期だけでよいのでは? by Lancet
http://intmed.exblog.jp/7260067/
大学の一研究者のひとりごと
http://blog.goo.ne.jp/stat-hiro/e/82ec4b1ab450917b39f56bbe477d494a
収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、平均血圧
http://intmed.exblog.jp/2279280/
脈圧と拡張期血圧
http://blog.m3.com/reed/20080804/1
収縮期・拡張期血圧
http://blog.m3.com/reed/20071122/1
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
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ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
「第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会」で発表された「ONTARGETサブ解析」で勉強しました。
このONTARGETのサブ解析では非常に興味のある結果が得られました。
すなわちACE阻害薬+ARB併用療法によるいわゆる「RAS二重阻止」は腎障害を進行させる可能性があるということです。
たしかJIKEI HEART Studyでは多くの患者でこの「RAS二重阻止」がされていました。
ONTARGETサブ解析
ACE阻害薬+ARB併用療法 CKD患者で急性腎不全による透析が増加
心不全を伴わない心血管イベントの高リスク患者に対して,ACE阻害薬ramiprilとARBテルミサルタンの心血管イベント抑制効果に有意差はなかったものの,テルミサルタンのramiprilに対する非劣性を証明,一方,両者の併用療法がイベント抑制効果の増強をもたらすことなく有害事象の増加を招くことを明らかにした大規模臨床試験ONTARGETの発表は,記憶に新しい。
そのサブ解析では,ステージ3~4の慢性腎臓病(CKD)患者では,ramipril群に比べて併用群で急性腎不全による2か月以内の透析が増加したなどの新知見が判明した。
心血管イベント抑制は同等
主解析の対象は,心血管疾患の既往,臓器障害を伴う糖尿病のいずれかを有する55歳以上(平均年齢66.4歳)の高リスク患者2万5,620例。
エアランゲン大学病院(独エアランゲン)のRoland E. Schmieder氏によると,CKDのサブ解析では,このうち推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2未満(ステージ3~4)の6,249例をランダム化した。
1次評価項目の「心血管死+心筋梗塞+脳卒中+心不全による入院」の発生率は,1,000人・年当たりramipril群50.77,併用群51.58と両群に有意差はなく〔相対リスク(RR)1.01〕,Kaplan-Meier曲線でも主解析に比べて発生率は高かったものの,3群間に有意差はなかった。
次に,事前に設定された腎1次評価項目の「死亡+全透析+血清クレアチニン値の2倍化」は,ramipril群13.6%,テルミサルタン群13.5%,併用群14.6%で,ramipril群とテルミサルタン群に有意差はなかったが〔ハザード比(HR)1.00〕,併用群ではHR1.08と,リスクが有意(P=0.044)に増大した。
そこで,透析期間2か月超の慢性透析と,2か月以内の急性透析に分けて比較したところ,慢性透析は群間に有意差はなかったのに対し,急性透析のHRはテルミサルタン群1.47(P=0.2833),併用群2.10(P=0.024)となり,ramipril群に比べて前者で有意ではないが47%のリスク増大が,併用群で2.1倍の有意なリスク増大が確認された。
RAA系二重阻害は専門医監督下で
オックスフォード大学(英オックスフォード)のPeter Sleight名誉教授は,まず全例での主解析において,併用群ではramipril群に比べてSBPで約2mmHg降圧が優れたにもかかわらず,イベント抑制に反映されなかった理由を考察した。
同名誉教授は,心血管疾患の既往を伴う高齢の集団では,2mmHgの血圧低下が腎不全,低血圧などをより多く惹起し,腎血管の問題を生じた可能性を指摘。
「体液量の枯渇した高齢者では,併用療法によるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の過度のブロックは危険かもしれない。今後,RAA系の二重阻害は,例外的に専門医の監督下でのみ実施されるべきだ」との解釈を示した。
一方,同名誉教授らが実施したベースラインのSBP値による層別化解析(対象2万5,595例)によると,1次評価項目の発生率は,SBPの上昇に伴って有意(P<0.0001)な増加が認められた。
脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA;1次評価項目には含まれない)で,こうした傾向はより顕著であり,一方,心筋梗塞,心血管死の発生率には,SBP値による有意な相違はなかった。
同名誉教授は「正常高値またはステージ1の高血圧患者では,SBPの低下による利益は主として脳卒中またはTIAの減少によるものであり,その他の転帰についての利益はほとんどないようだ」と結論した。
出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社

「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)
<関連サイト>
注目の降圧薬臨床試験 ONTARGET
http://blog.m3.com/reed/20080404/__ONTARGET
ONTARGETの結果を考察する
http://blog.m3.com/reed/20080412/ONTARGET_
糖尿病からみたONTARGET
http://blog.m3.com/reed/20080413/_ONTARGET
RAS二重阻止
http://blog.m3.com/reed/20071014/RAS_
厳格な降圧がもたらす心保護効果http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/micardis/ontarget/001.html
(ARBの心保護効果とACE阻害薬との併用による相乗効果が期待されるという内容でしたが、今回のONTARGETのサブ解析の結果では・・・)
RAS抑制による厳格な降圧がもたらす臓器保護
ミカルディスの大規模臨床試験ONTARGET
http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special/micardis/ontarget/pdf/micardis_0220.pdf
(ここでも併用効果の期待が述べられていました)
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(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
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があります。
HYVET では80歳以上の超高齢者を対象とした降圧療法の意義が検証され,利尿薬とACE阻害薬を用いて積極的に降圧療法を行った群のほうが脳卒中の発症が少ないという結果が示されました。
この試験はこのブログでも以前とりあげました。
HYVET
http://blog.m3.com/reed/20080407/HYVET
HYVET試験アゲイン
http://blog.m3.com/reed/20080511/1
新着のメディカル・トリビューン誌で、このHYVET試験のサブ解析が紹介されていました。
第2部:第22回国際高血圧学会/第18回欧州高血圧学会特集
臨床試験 HYVETサブ解析
認知症発症リスクは有意差認められずも14%減少
80歳以上の超高齢者でも,積極的な降圧療法により予後が改善することを証明した大規模臨床試験HYVET―。
今回報告されたサブ解析からは,プラセボに比べて利尿薬インダパミド±ACE阻害薬ペリンドプリルによる積極的治療により,有意差は認められなかったものの,認知症の発症リスクが14%減少することなどがわかったという。
メタアナリシスでは有意差も
HYVETは,80歳以上でSBP160~199mmHg,DBP 110mmHg未満の高血圧患者3,845例を対象としたプラセボ対照二重盲検試験。
降圧目標150/80mmHgを目指し,インダパミド徐放剤(1.5mg/日)±ペリンドプリル(2~4mg/日)による実薬群の有用性を評価した。
試験は,実薬群で総死亡の有意な減少が判明し中央値1.8年の追跡で早期終了。
1次評価項目の全脳卒中は有意差に至らなかったものの30%リスクが減少,総死亡,心血管イベントは,それぞれ21%,34%の有意なリスク減少を示すことが明らかになった。
インペリアルカレッジ(ロンドン)のRuth Peters氏によると,認知機能に関するサブ解析の対象は3,336例。
ベースラインの平均年齢は83.5歳,平均坐位SBP173.0mmHg,脳卒中の既往が6.5%,Mini-Mental State Examination(MMSE)スコアの中央値は26であった。
2年間の追跡の結果,血圧は実薬群で15/5.9mmHg低下。認知症発症は1,000人・年当たりプラセボ群の38に対して,実薬群では33であった。
Cox比例ハザードモデルによる解析では,降圧治療により14%のリスク減少を示したが,有意差はなかった(図)。

高血圧治療に関するプラセボ対照二重盲検試験で,認知症について評価しているのはPROGRESS,Syst-Eur,SHEPの3試験のみ。
そこで,HYVETを加えた4試験でメタアナリシスを実施したところ,相対リスク(RR)は0.87となり,実薬群で13%の有意(P=0.045)なリスク減少が確認されたという。
実薬群で一貫してイベント抑制
一方,同カレッジのNigel S. Beckett氏らは,主解析と同じく3,845例を対象に,事前に設定された性,年齢,心血管疾患の既往の有無,初期SBP値などのサブグループ別に,総死亡,全心血管イベント発生を検討した。
その結果,総死亡,全心血管イベントともに,サブグループ間で交互作用は認められず,実薬群で一貫してリスク減少が確認された。
ことに総死亡については,女性,80~84.9歳,心血管疾患の既往なしの各群で,全心血管イベントについては,男女とも,80~84.9歳,心血管疾患既往なし,初期SBP160~199mmHgと180mmHg以上の各群で,有意なリスク減少が認められた。
同氏は「サブグループ解析の結果により,全超高齢者に対する降圧治療に,さらなる支持が加わった」と結論した。
出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社
<追加 208.9.19>
降圧で超高齢者の認知症リスクが減少
〔ロンドン〕インペリアルカレッジ(ロンドン)内科のRuth Peters博士らは,Hypertension in the Very Elderly Trial(HYVET)の新たな知見から,降圧により80歳以上の超高齢者の認知症発症リスクが低下することがわかったとLancet Neurology(2008; 7: 683-689)に発表した。
新たな効果の可能性示す
先行研究のエビデンスに基づいて行われたHYVET-COG(the dementia sub-study of HYVET)は,他のプラセボ対照試験の結果と組み合わせることで,降圧治療により認知症発症の相対リスクが有意(13%)に低下することを示した。
Peters博士は「超高齢者において心血管疾患に対する降圧治療の効果は実証ずみであるが,HYVET-COGの結果は新たな効果の可能性を示唆している」と述べている。
同試験は,80歳以上の高血圧症患者〔収縮期血圧(SBP)160?200mmHg,拡張期血圧(DBP)<110mmHg〕を対象とした二重盲検プラセボ対照試験で,これらの患者をインダパミド1.5mg徐放剤とペリンドプリル2?4mg錠を投与する群(降圧薬投与群)とプラセボ群にランダムに割り付けた。
降圧目標値はSBP 150mmHg,DBP 80mmHgとした。
ベースライン時に臨床的に認知症と診断された者はなく,認知機能はベースライン時,およびその後年1回Mini-Mental State Examination(MMSE)による検査を行った。
MMSEスコアが24点を下回るか,1年で3点を超える低下を示した認知症の可能性のある者は,標準的な診断基準を用いて評価し,専門家の判断に委ねられた。
2年目の年次分析の時点で,死亡と脳卒中の発生率が降圧薬投与群で半減し,救命の可能性のある治療を全患者に提供しない試験を続けるのは非倫理的であることから,この試験は当初予定されていた2007年を前に終了した。
プラセボ群との有意差認められず
フォローアップ評価を1回以上受けたHYVET参加者3,336例(平均フォローアップ期間は2.2年)のうち,1,687例は降圧薬投与群,1,649例はプラセボ群に割り付けられた。
血圧値は,プラセボ群に比べ降圧薬投与群のほうがSBPで15.0mmHg,DBPで5.9mmHg低下した。認知症発症率はプラセボ群で1,000人年当たり38人,降圧薬投与群で同33人であったが,この差は統計学的に有意ではなかった。
しかし,今回得られた結果を他の降圧薬のプラセボ対照試験のメタアナリシスと組み合わせて検討したところ,降圧薬投与により認知症発症の相対リスクが13%有意(P=0.045)に低下することが示された。
Peters博士らは,HYVET-COGで認知症の発症に有意差が認められなかった原因として,フォローアップ期間が短かったこと,試験が早期に中止されたこと,および治療効果が緩やかだったことが考えられ,「HYVETの結果は超高齢者における認知症発症を予防するための高血圧治療を多少は支持するものとなった。
HYVETとこれに類似した3件の試験のメタアナリシスによると,降圧に伴う認知症リスクの低下は臨床的に有意でありうる」と結論している。
イェーテボリ大学(スウェーデン・イェーテボリ)Sahlgrenskaアカデミー神経科学研究所のIngmar Skoog博士は,同誌の付随論評(2008; 7: 664-665)で「これらの知見の臨床的意味は何であろうか。HYVETでは,降圧治療は短期的にも超高齢者における脳卒中と総死亡率に関して有益であることが示された。
また,高齢者における高血圧の診断と治療自体,認知症を予防するか否かにかかわらず,心血管疾患を予防するうえで重要である」と述べている。
出典 Medical Tribune 2008.9.18
版権 メディカル・トリビューン社
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があります。
きょうは、日本発のプラバスタチンについての日本発の研究であるMEGA Studyの発展版であるAPPROACH-J Studyについて勉強しました。
「第40回日本動脈硬化学会総会・学術集会ポスターセッション」で発表された記事が教材です。
APPROACH-J Study
日本における脂質低下療法の新たなエビデンス創生に向けて
日本の軽度から中等度高脂血症患者を対象に,動脈硬化性疾患一次予防におけるプラバスタチン投与の有用性が示されたMEGA Studyの結果が記憶に新しいが,現在,日本の脂質低下療法に関するさらなるエビデンスの創生に向けた研究が進行中である。
第40回日本動脈硬化学会総会・学術集会ポスターセッションにおいて,「APPROACH-J Studyのデザインとその意義(The design and rationale for the Affirmation Primary prevention with Pravastatin in Reduction of Occlusive Atherosclerotic Complications in Hypercholesterolemia-Japan Study)」と題し,APPROACH-J Study医学アドバイザーで帝京大学内科学主任教授の寺本民生氏が発表を行った。
APPROACH-J Studyをめぐる背景
一次予防高リスク群に残されたエビデンスの必要性
生活習慣の欧米化に伴い,糖尿病有病率の増加,コレステロール値の上昇など,代謝異常に伴う動脈硬化性疾患の発症頻度の上昇が危惧されている。
そうした状況から,動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版では,脂質異常を是正すべくリスク別脂質管理目標値が設定された。
冠動脈疾患の既往のない一次予防例においては,LDLコレステロール(LDL-C)値以外の主要危険因子の保有数によって3群に分類し,それぞれLDL-C管理目標値を低リスク群160mg/dL未満,中リスク群140mg/dL未満,高リスク群120mg/dL未満と設定されている(表)。
そしてLDL-C値について20~30%の低下率も治療目標とできる可能性を提言している。
しかしながら,日本人において LDL-C値をどこまで下げるのが有効か,その真のゴールについて現時点では十分なエビデンスが得られていない。
一方,治療方針の原則にも記されているように,動脈硬化性疾患の予防は長期にわたる生活習慣の改善が必須である。
そのため,患者自身が治療に対し主体的な意欲を持って取り組むことが治療継続の鍵となる。
近年,こうした患者自身の主体的な服薬遵守意識や生活習慣改善意識といった治療行動"アドヒアランス"がますます重要視されているものの,アドヒアランスを指標に検討された研究報告はいまだ少ない。
APPROACH-J Studyの臨床的意義
脂質低下療法の真のゴールとアドヒアランスが
脂質コントロールに与える影響が明らかに
以上のような背景から企画されたのが,現在進行中のAPPROACH-J Studyである(概要参照)。

本研究に医学アドバイザーとして参画し,研究計画全体の指導に当たっている帝京大学内科学主任教授の寺本民生氏は,次のように解説した。
APPROACH-J Studyの対象は,日常診療において薬物療法が選択される頻度の高い,一次予防症例の高リスク群にプラバスタチンを投与した症例である。
その目的は,
(1)脂質コントロールと血管系疾患イベントの発症頻度の関連から,ガイドラインで設定されたLDL-C管理目標値の妥当性を確認し"一次予防高リスク群に対する脂質低下療法の真のゴール"を検討する,
(2)アドヒアランスが脂質コントロールに与える影響を検討する
ことである。
本研究は統計学的に有効な解析結果を得るべく5,000例,観察期間は2年間と設定されている。
また,長期観察研究を可能にするために,研究開始1年および2年時点で対象患者の健在確認を行って高いフォローアップ率の確保を目指している。
さらに本研究は,患者から文書同意を取得して行う観察研究であり,過去の観察研究では調整が不十分であったバイアスを極力排除するために,LDL-C管理目標値を事前に調査し,管理目標値を考慮した解析を行うこととしているのも特徴である。
本研究への登録期間は2008年2月1日~2009年1月31日,調査期間は2011年1月31日までである。
同氏は,「APPROACH-J Studyにより冠動脈疾患一次予防高リスク群の脂質低下療法に関する,より質の高い日本独自のエビデンスが得られることを期待している」と述べ,エビデンス創生のためにも広く本研究への協力を仰いだ。
治療実態に即した研究で残された課題に答えるAPPROACH-J Study
帝京大学内科学主任教授
寺本民生氏コメント
LDL-Cの低下が動脈硬化性疾患の予防に重要であることは,種々の大規模臨床試験により明らかにされている。
一方,一次予防におけるリスク群ごとの脂質管理目標値に対する実証は未だ乏しい。
一次予防高リスク群のLDL-Cは果たしてどの程度低下させるべきか,その答えを得る治療実態下での実践的な研究がAPPROACH-J Studyである。
脂質低下療法を受けた患者をLDL-Cの到達値により分類し,LDL-C到達値と血管系疾患イベント発症との関連を検討することで,ガイドラインで提唱しているLDL-C管理目標値を検証できる。
また,今後アドヒアランスがますます重要視されていくが,研究報告がいまだ少ない。
これについて,アドヒアランスとLDL-Cの到達値との関係などを検討する。
本研究により,真のLDL-C管理目標値やアドヒアランスについて,日常で診療に当たる医師にとって示唆に富んだ結果を得ることができるであろう。
そうした臨床上有用な知見にどこまでアプローチできるかがこの研究の最大の目標である。有用な結果を得るには登録症例のフォローアップが決め手になるため,本研究への積極的なご協力を願っている。
出典 Medical Tribune 2008.8.14
版権 メディカル・トリビューン社
読んでいただいてありがとうございます。
新着のメディカル・トリビューンの記事からです。
製薬メーカー主催の座談会では、かなりバイアスのかかった話になっていることがあります。
しかし、多いに役に立つ内容やきらりと光る一言も述べられており、このバイアスに注意さえすれば無料で勉強ができます。
今回のタイトルは、かなり大上段にかまえたものです。
それは、この記事の前書きに
「日本や欧米のガイドラインで,冠動脈疾患(CHD)患者さんの降圧療法にはACE阻害薬を第一選択薬とし,ARBはACE阻害薬の不耐応例と位置付けられている。
一方,日本人を対象にしたHIJ-CREATE試験では,ARBはACE阻害薬に優るとも劣らないことが示された。そこで,ARBがCHD既往高血圧症患者さんの第一選択薬に位置付けられるのかについて討論していただいた。 」
と書かれているように、あたかもガイドラインに挑戦するようなタイトルだからです。
どのような座談会の展開になるのか、出席した教授の中に、はたして御用学者はいないかという観点からの読み方も一興かと思ってとり上げました。
話は変わりますが、ある学術講演会の後の懇親会で、昔在局中に一緒だったある先生からこんな話を聞きました。
「ある教授が、講演や座談会で、年間給料より多い謝礼を貰っていて、教授会で自粛するように言われたらしい」。
その話を聞いたとき、何が問題なのかよくわかりませんでした。
先生方はどのように思われますか?
思い起こせば、「週刊朝日」でもそのようなことが一時期とりあげられていました。
Round Table Discussion 座談会
ARBをCHD既往高血圧症例の第一選択薬に位置付けられるのか?
The Heart Institute of Japan-Candesartan
Randomised trial for the Evaluation in Coronary Artery Disease
熊本大学大学院医学薬学研究部 生体機能薬理学 教授
光山 勝慶 氏(司会)
旭川医科大学第一内科 教授
長谷部 直幸 氏
名古屋大学大学院医学系研究科 循環器内科学 教授
室原 豊明 氏
大阪大学大学院医学系 研究科臨床遺伝子治療学 教授
森下 竜一 氏
群馬大学大学院医学系研究科 臓器病態内科学 教授
倉林 正彦 氏(発言順)
ARBの動脈硬化への影響とそのメカニズム
光山(司会)
わが国では,生活習慣の欧米化に伴い冠動脈疾患(CHD)が著しく増加しています。
近年,薬剤溶出ステント(DES)の登場によりステント内の再狭窄は減少しましたが,生命予後は改善できないことが報告されており,CHDの二次予防として薬物療法の重要性があらためて注目されています。
このようななか,昨年開催された第80回米国心臓協会学術集会(AHA2007)で,アムロジピンと同等の降圧が認められているカンデサルタンを用いて(図1),日本人CHD既往高血圧症患者さんを対象にしたHIJ-CREATEが発表になりました。

本日は,HIJ-CREATEの結果を踏まえて,CHD患者さんにおけるARBの位置付けについて議論したいと思います。
長谷部
現在,CHD既往高血圧症患者さんの降圧療法にRA系抑制薬を用いることが一般的になっていますが,その背景には,数々の大規模臨床試験があります。
その歴史はACE阻害薬のSAVEから始まり,HOPE,EUROPA,PEACE,そしてARBのOPTIMAAL,VALIANTと続きます。
欧米ではCHD既往高血圧症患者さんの二次予防ガイドラインで,ACE阻害薬を第一選択薬としていますが,それはこれらのエビデンスに基づいています。
室原
私は,ARBはACE阻害薬と同様にCHD既往高血圧症患者さんに有用だと考えています。
動脈硬化の進展に大きくかかわる炎症をいずれの薬剤も抑制するからです。
一方,PCI後の再狭窄の抑制は,動物実験ではARB,ACE阻害薬ともに報告されていますが,再狭窄に関連した成績が臨床で認められているのはARBのみです。
例えば,ARBのカンデサルタンを用いたOGAKI Studyでは,冠インターベンション(PCI)施行6か月以上経過後に有意狭窄がないことを確認した患者さんの心血管系イベント(CVD)の発症を有意に抑制しました。
血管内超音波(IVUS)を用いた検討でも,カンデサルタンを用いた降圧療法によりステント留置例の新生内膜の増殖を抑制することを認めています(図2)。

また,PCI後は,骨髄由来の平滑筋前駆細胞の沈着によるプラークの蓄積と不安定化が生じますが,カンデサルタンはそれらを抑制することが認められています。
日本人CHD既往高血圧症患者さんの再発抑制が証明されていることや平滑筋前駆細胞の沈着の抑制からもカンデサルタンに対する期待が高まります。
森下
動脈硬化病変におけるRA系活性化は,健常人の血管と異なっています。
梗塞箇所などの炎症部位では,キマーゼの大きな産生源であるmast cellの発現が亢進し,ACEによらないアンジオテンシンII(A II)の産生が増加します。
したがって,動脈硬化病変が進めば進むほどACE阻害薬が効きにくい可能性が高いのです。
また,血管病変において平滑筋細胞の増殖を抑制したりNOの産生を亢進するなど,血管に対し保護的に働くA II type2(AT2)受容体は,動脈硬化が進行するほど発現が亢進します(図3)。

このことからもAT1-Pathwayを抑制しAT2-Pathwayを活性化させるARBの有用性がうかがえます。
つまり,高血圧症や糖尿病,脂質異常症の罹病期間が長い動脈硬化が進行している症例,あるいは脳・心血管系イベントの既往がある症例ではARBを選択する利点がたくさんあると思います。
血管だけでなく,膵臓のβ細胞でもAT2受容体の関与は大きいと思います。
高血糖により膵臓に酸化ストレスが加わると,膵臓においてもA II type1(AT1)受容体の発現が亢進します。
それにより線維化が進行すると,AT2受容体の発現が亢進することがわかっています。
このことからも膵臓への影響,血糖に対する影響もARBのほうが強いと考えられます。
しかし,糖尿病の新規発症を抑制した試験成績のあるARBもあれば,そのような試験成績のないARBがあることも事実です。
このことからもAT1受容体を強力に長時間ブロックすることが重要なのです。
HIJ-CREATEでは,標準治療群の71%にACE阻害薬が投与されていたにもかかわらず,カンデサルタンが糖尿病の新規発症を63%有意に抑制しました。
降圧薬は,骨格筋の血流改善を介してインスリン抵抗性を改善しますが,カンデサルタンは,インスリン分泌顆粒やミトコンドリアを正常化し,インスリン分泌も改善することが報告されています(図4,5)。


CHD患者さんで一番問題になるのは,降圧療法中に糖尿病を発症すると,その糖尿病が次の病変を作ることです。
CHD患者さんの再発抑制のためには,ARBを用いた降圧療法が最適だと思います。
ARBの投与量と降圧目標
光山
腎機能低下例では,全身のRA系が著しく活性化しているため,RA系抑制薬が大きなメリットをもたらします。
HIJ-CREATEでは,CKD症例のCVD発症をカンデサルタン群が21%有意に抑制しました。
詳細は発表されていませんが,標準治療群にACE阻害薬投与例が多く含まれていた可能性がありますが,この結果は何が影響したのでしょうか。
長谷部
RA系抑制薬は,A II抑制により腎保護が期待できます。
しかし,CKDのように腎機能が障害されると,糸球体,尿細管等に腎保護的に作用するAT2受容体の発現が増強するので,その結果としてカンデサルタンが奏効した可能性があります。
また,ACE阻害薬はブラジキニン濃度を上昇させることが知られていますが,腎機能低下例では,ブラジキニンがメサンギウム細胞の増殖を促進するため,腎機能をさらに悪化させる可能性も指摘されています。
これは,CHD患者さんの腎機能と投与薬剤別に予後を検討したAPPROACH試験の結果からも指摘できます。
これらを総合的に考えると,特に腎機能が低下したCHD患者さんの降圧療法はARBを選択することは妥当であろうと思われます。
室原
CASE-Jで,カンデサルタンはアムロジピンと同等の降圧を示したうえで,CKD症例の腎イベントを57%低下,特に高齢者やCHD等の既往例の腎機能低下を大きく抑制しました。さらに,有意ではありませんがCKD症例のCVD発症を22%抑制したことから,腎機能低下例であっても予後を改善することが期待されます。
末梢血管レベルでACEを介さないA IIもブロックする点で,ARBが優れているのでしょう。
倉林
HIJ-CREATEでは,治療開始時から血圧が十分コントロールされていたこともあり,平均投与量が5mg/日と用量が非常に少なかったことも特徴だと思います。
腎機能改善作用は用量に依存し,一直線に尿蛋白が減少すると報告されています。
したがって,忍容性を確かめながら可能であれば,保険で認められた最大用量までARBを使い,それでも降圧が不十分なときに初めてCa拮抗薬を加えていく治療が大切だと思います。
光山
降圧療法中であっても,外来血圧,家庭血圧ともコントロールできているのは,わずか20%でしかなく,その一方で十分量の投薬,多剤併用がなされていないと報告されています。
降圧目標を達成するためにもまずは十分量のARBを使う必要があるということですね。
しかし,CHD患者さんは血圧が低すぎるとかえってイベント発現率があがる「Jカーブ」が指摘され,どこまで血圧を下げるべきか議論されています。
長谷部
確かにJカーブは存在します。
しかし,これは原因ではなく結果を表していると思います。
つまり,心機能の低下と動脈硬化の進展による低血圧状態の結果として悪化した予後を見ているのです。
収縮期血圧の低下はポンプ機能の低下,拡張期血圧の低下は動脈硬化の進展を反映しています。
すなわち,血圧低値を示す患者さんは,降圧の結果として低値に到達したのではなく,もともとイベント発生リスクの高い方が血圧低値なのです。
また,われわれの検討では高血圧症合併狭心症患者さんでは拡張期血圧が低いほど冠動脈病変は重症です。
その一方で,冠動脈疾患治療後の心臓死,心筋梗塞などの重篤なイベント発生は,拡張期血圧が低いほど低率でした。CHD患者さんであっても,血圧は下げられるところまできっちりと下げることが必要だと考えています。
CHD既往高血圧症治療におけるARBの位置付け
倉林
DESの登場により再狭窄は減少しましたが,生命予後は改善しておらず,今後の課題です。
COURAGE試験では,狭心症患者さんにPCIを実施しなくても,最適な薬物療法により生命予後を改善することが報告され,薬物療法の重要性が示されました。
DESで再狭窄を予防し,薬物療法で新規病変を予防することが最適なCHD治療だと思います。
またCHD患者さんは,PCI施行時だけでなく,その後のフォローでも造影剤を使うため,特に腎機能を保持することが望まれます。
CASE-Jで,カンデサルタンはCHD既往高血圧症患者さんの腎機能低下を大きく抑制したことからも,CHD既往高血圧症患者さんにはARBをfirst choiceにすべきだと思います。
長谷部
HIJ-CREATEの患者背景を見ると,PCIが83%,冠動脈バイパス術(CABG)12%と,冠血行再建術が95%も施行されています。
これは,これまでのRA系抑制薬の臨床試験と異なり,日本の冠動脈疾患治療の実態を反映しているものと言えます。今後の日常診療に,HIJ-CREATEという日本人のエビデンスが非常に参考になるでしょう。
室原
今回のHIJ-CREATEでは,「ARBをCHD既往高血圧症例の第一選択薬に位置付けられる」ことが示され,むしろ長期的な臓器保護という立場からCHD患者さんの降圧療法にはカンデサルタンを使うのがよいと思います。
CHD患者さんの予後を考えると,糖尿病の新規発症を抑制すること,腎機能低下例で有用なことはきわめて大きな意義があり,将来予想される糖尿病やCKD患者数の増加を考えると,ARBによる降圧療法は非常に有用であると思います。
森下
十分な臓器保護作用を得るためには,より強くA IIを抑える必要がありますが,ACE阻害薬は,日本人は咳が出やすいという理由から海外に比べて用量が非常に少なく,その量は1/3~1/4程度です。
したがって,日本の承認用量でACE阻害薬が海外の臨床試験と同じ効果が得られるかは疑問が残ります。
投与量を考えてもARBが降圧薬のfirst choiceに適していると思います。
光山
DESが登場してもCHD患者さんの長期予後に関してはまだ解決には至っていませんが,今日のディスカッションでARBは長期予後改善の点でも有用な治療法として十分期待できることがわかりました(表)。

出典 Medical Tribune 2008.7.24
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
文中に
「PCI後の再狭窄の抑制は,動物実験ではARB,ACE阻害薬ともに報告されていますが,再狭窄に関連した成績が臨床で認められているのはARBのみです。」
とあります。
大規模臨床試験は現実的には、残念ながら製薬メーカーの資金的援助がされて行われているのが現状です。
高薬価のARBに対して、低薬価のACEIは大規模臨床試験が行いにくい事情が(国内では)あります。
さらには、相対的に旧世代に属するACEIで、同じような臨床試験が行われているかどうかが問題だと思われます。
両者で再狭窄に関連した試験が行われており、ACEIではnegative、ARBではpositiveという結果が出て初めてARBの優位性が証明されるはずです。
もしACEIでこのような試験が行われていなければ欠席裁判ということになります。
実際にはどうなんでしょうか?
明日から少し夏休みをとらせていただきます。
読んでいただいてありがとうございます。
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第51回日本腎臓学会学術総会ランチョンセミナー
「腎障害を伴う高血圧の薬物治療」
で勉強しました。
演者の土肥 靖明 先生は新進気鋭の方です。
最近、ベニジピン(商品名コニール)の学術講演を、ある講演会でお聞きし、講演後の懇親会でご本人と少しお話をしました。
現在,日本の透析患者数は26万人と推定されるが,水面下にはその予備軍である糸球体濾過量(GFR)60mL/min/1.73m2未満の患者が約1,926万人,GFR50mL/min/1.73m2未満の患者が約418万人存在するとみられる。
慢性腎臓病(CKD)対策が急がれる状況のもと,第51回日本腎臓学会学術総会において,新しい日本人のGFR推算式が発表された。
同総会では,名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学准教授の土肥靖明氏が腎障害を伴う高血圧の薬物療法について講演し,CKD治療におけるCa拮抗薬には腎輸出細動脈を拡張し,尿蛋白を減少させる薬剤が推奨されるなか,L型およびT型CaチャネルをブロックするCa拮抗薬ベニジピン塩酸塩(コニールR錠)の位置づけを明らかにした。
司会
東北大学大学院医学系研究科 腎・高血圧・内分泌学分野教授
伊藤 貞嘉 氏
演者
名古屋市立大学大学院医学研究科 心臓・腎高血圧内科学准教授
土肥 靖明 氏
ベニジピンはラットのNO依存性弛緩反応を改善
高血圧の持続により蛋白尿,腎障害・腎不全を来す一方,腎性高血圧にみられるように腎障害が高血圧の原因になることもありうる。
また最近では,微量アルブミン尿が心血管系疾患の危険因子の1つとして認識されるようになった。
このように高血圧と腎障害,心血管系疾患は密接に関連しているが,土肥氏は「いわゆる心腎連関の一部には血管内皮機能低下が絡んでいる」と指摘した。
同氏らの研究によると,高血圧自然発症ラットの腎抵抗動脈ではNO依存性の内皮弛緩反応が低下するが,ベニジピンの投与により正常血圧ラットと同レベルにまで改善することが明らかになった。
この効果は,検討したCa拮抗薬のうちベニジピンに特有なことから,同氏は「ベニジピンは,降圧に依存しない血管内皮改善作用を有することが示唆された」と考察している。
一方,種々の大規模臨床試験の結果から,心血管死は血圧が高値であるほど増加し,降圧治療により減少することが知られている。
同様に,腎機能は降圧に伴い改善し,とりわけ初期の厳格な降圧が重要であることが明らかになっている。
L型・T型Ca拮抗薬であるベニジピンは尿中アルブミン排泄量の改善に寄与
「高血圧治療ガイドライン2004」では,腎障害患者の降圧目標を130/80mmHg未満とし,一次選択薬としてACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を推奨している。またRENAAL研究において,ARBはプラセボに比べ末期腎不全に至るリスクを28%低下させ,腎機能を維持するうえでは厳格な降圧とともにレニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制が重要であることを示した。
全身血圧の上昇に伴う腎輸入細動脈の自動調節の破綻により糸球体に流入する血流が増加している場合,RA系抑制薬は腎輸出細動脈を拡張して糸球体内圧を低下させ,過剰濾過,尿蛋白を是正する作用が知られている。
しかし,腎障害患者のうちRA系抑制薬単独で降圧目標をクリアできる例は25%に満たないという報告(Chobanian AV, et al: Hypertension 42: 1206-1252, 2003)があり,多くの症例においては複数の降圧薬の併用が求められるのが実情である。
昨年発表されたヨーロッパの「高血圧管理ガイドライン(ESH-ESC 2007)」では,RA系抑制薬との併用薬としてCa拮抗薬,利尿薬が推奨されている。
L型Caチャネルのみに作用するCa拮抗薬は,腎輸入細動脈を拡張するものの腎輸出細動脈は拡張しないことから,血圧が十分に低下しない場合はかえって糸球体内圧の上昇を来すと考えられている。
一方,ベニジピンはL型CaチャネルのみならずT型Caチャネルにも作用することから,腎輸入細動脈とともに腎輸出細動脈も拡張し,糸球体内圧を改善する効果が期待される。
実際,ベニジピン投与後は全身血圧が下降するとともに,腎輸入・輸出細動脈が拡張し,糸球体内圧が低下すると報告されている。
また,Dahl食塩感受性ラットを用いた実験では,ベニジピンは単独で同等の降圧効果を示す用量の他のCa拮抗薬と比較して,単独治療,RA系抑制薬との併用治療のいずれにおいても尿中アルブミン排泄量を減少させた(図1)。

以上より,ベニジピンとRA系抑制薬の併用は,他のCa拮抗薬とRA系抑制薬の併用に比べ,より腎機能を改善することが期待されている。
腎保護作用が期待されるCa拮抗薬をRA系抑制薬と併用する
土肥氏らは,微量アルブミン尿が検出された高齢者高血圧患者をベニジピン+ARB群,他のCa拮抗薬+ARB群の2群に分けて血圧および尿中アルブミン排泄量を検討した結果,血圧は両群で同等に低下したが,尿中アルブミン排泄量はベニジピン+ARB群で有意に低下したのに対し,他のCa拮抗薬+ARB群では有意な低下は認められなかったことを示した(図2)。

これらの結果を血圧低下度で補正したところ,ベニジピン+ARB群では降圧効果を超えた腎保護作用が示唆された。
以上の結果を踏まえ,同氏は「L型およびT型CaチャネルをブロックするベニジピンとARBを併用することで,腎輸入細動脈に比べ腎輸出細動脈がより拡張し,糸球体内圧が低下して尿蛋白減少効果が示された可能性がある」と指摘した。
また,別の報告では,ベニジピン服用時は,治療前に比べ,糸球体濾過圧が低下することを示唆する結果が得られている。
同氏は,最近のメタ解析の結果から降圧薬の臓器保護作用について,
1)脳卒中予防効果はCa拮抗薬がAC E阻害薬に優り,ARBはACE阻害薬と同等,
2)虚血性心疾患予防効果はACE阻害薬がCa拮抗薬,ARBに優る,
3)腎保護効果はRA系抑制薬がCa拮抗薬に優る,
4)降圧効果はCa拮抗薬がRA系抑制薬に優ると考えられるとした。
そのうえで同氏は,腎障害を伴う高血圧の治療についてはRA系の抑制とともに厳格な降圧が重要であると重ねて強調し,「RA系抑制薬で降圧目標に達しない場合,ベニジピンのように強力な降圧効果を示し,腎保護作用が期待されるCa拮抗薬を併用する意義は大きい」と述べ,講演を締めくくった。
出典 Medical Tribune 2008.8.7
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周知のように、ビフォスフォネート製剤は破骨細胞の活性を低下させ、その数を減らすことによって強力な骨吸収抑制効果を発揮します。
したがって現在では、骨粗鬆症の薬物療法の中心的な役割を果たしてきています。
最近、ビフォスフォネート製剤の一つであるアレンドロネート
が心房細動発生リスクを高めるという報告がされました。
まだcontroversial(debatable)なようですが、心房細動が脳塞栓の発症リスクを高める意味でも看過できません。
そして他のビフォスフォネート製剤ではどうなのかということも多いに興味があります。
<参考>
アレンドロネート
フォサマック錠(万有)
ボナロン錠(テイジン)
添付文書に当たってみましたが、副作用の欄に「心房細動」の記載はありませんでした。
Alendronateと心房細動のリスク
Alendronate and Risk for Atrial Fibrillation
最近の研究では、bisphosphonate系薬物を使用している患者における心房細動(atrial fibrillation:AF)のリスクについて相反する結果が得られた。
ある研究では、静注zoledronateの投与を受けた患者で「重篤な」AFのリスクが高いことが示された(日本語版Journal Watch May 2 2007)のに対し、別の研究では、bisphosphonate薬の経口投与を受けた患者において、未使用者との比較でリスクは高くなかった(日本語版Journal Watch Apr 8 2008)。
この問題の解決の一助とするため、この研究では、Washington州の大規模な総合医療システムにおいて、地域住民に基づいたケースコントロール研究を実施した。
心房細動を新規発症した女性719人および対照者966人を対象とし、alendronateの使用経験者と未使用者のAFリスクを比較評価した。
年齢および高血圧の状況に応じて患者をマッチさせ、HDLコレステロール値および糖尿病を含む複数のリスクファクターについて調整したところ、alendronateの使用と新規発症AFの高いオッズ(オッズ比[odds ratio:OR]1.83)とのあいだに関連が認められた。
過去の使用者で新規発症AFのリスクがもっとも高かった(OR 3.27)のに対し、現在の使用者では、未使用者よりもリスクは高かったが有意ではなかった(OR 1.42)。
コメント:
この観察研究では、新規発症AFのリスクは、alendronateの過去の使用者で有意に高く、現在の使用者でも有意ではないが高かった。
これらの辻褄の合わない結果(現在の使用者に対して過去の使用者のほうがリスクが高い)は興味深いが、(とくにこれまでの研究を考慮すると)結論をもたらすものではない。すなわち、経口bisphosphonate薬の使用方法を変えるような、説得力のあるエビデンスとはならない。
Jamaluddin Moloo, MD, MPH, and Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP
Published in Journal Watch General Medicine May 6, 2008
Citation(s):
Heckbert SR et al. Use of alendronate and risk of incident atrial fibrillation in women. Arch Intern Med 2008 Apr 28; 168:826.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0506-04.html
Journal Watch 日本語版 2008 May 06
<参考サイト>
Use of bisphosphonates among women and risk of atrial fibrillation and flutter: population based case-control study
http://www.bmj.com/cgi/content/short/bmj.39507.551644.BEv1
Conclusion
No evidence was found that use of bisphosphonates increases the risk of atrial fibrillation and flutter.
(両者の関連は見出せなかった)
Bisphoshonates and atrial fibrillation - Not yet a clean bill of health.
http://www.bmj.com/cgi/eletters/bmj.39507.551644.BEv1#192270
We found no evidence that use of the oral bisphosphonates included in our study increase the risk of atrial fibrillation/flutter. However, as mentioned in our paper, we were not able to examine the risk of atrial fibrillation/flutter in relation to use of zoledronic acid and risedronate.
(経口ビスフォネートと心房細動発生の関連は見出せなかった)
Bisphoshonates and atrial fibrillationhttp://www.bmj.com/cgi/eletters/bmj.39507.551644.BEv1#195546
http://www.bmj.com/cgi/eletters/bmj.39507.551644.BEv1#195546
Use of Alendronate and Risk of Incident Atrial Fibrillation in Women
Arch Intern Med. 2008;168(8):826-831.
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/abstract/168/8/826
Conclusion
Ever use of alendronate was associated with an increased risk of incident AF in clinical practice.
(アレンドロネートの服用歴があると心房細動の発生が増加)
「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)
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コレステロール値の検査はどの程度の頻度で必要か?
How Often Do We Need to Check Cholesterol Levels?
コレステロール値の変動を調査するために、LIPID研究(Long-term Intervention with Pravastatin in Ischaemic Disease、虚血性疾患でのpravastatin長期介入研究)で得られたデータを用いて研究が行われた。
LIPID研究では、冠動脈心疾患を有する患者9,014人(平均62歳、男性83%)がpravastatin(40mg)投与群とプラセボ投与群にランダムに割り付けられた。
単一の検査室で、ランダム化時、6ヵ月後および12ヵ月後に脂質濃度が測定された後、年1回の測定が5年後まで続けられた。
治療前の平均コレステロール値は5.65mmol/Lであった。
1回の測定の個人内短期変動の標準偏差(ランダム化の4週間前に行なわれた測定を基準とする)は、プラセボ群で0.38mmol/L、pravastatin群で0.42mmol/Lであった(平均の変動7%)。
両群とも時間を経るにつれ個人内の変動は微増した。
6ヵ月後から5年後までの、pravastatin群におけるコレステロール値増加の平均は0.14mmol/L(平均の変動は年あたり0.7%)であった。
平均のLDL(low-density lipoprotein)値は経過を通じて同様の分散を示した(ベースライン値と1、3、5年後の値の差の分散は、それぞれ、プラセボ群で0.32、0.42、0.45mmol/L、pravastatin群で0.49、0.53、0.56mmol/Lであった)。
コメント:
この研究により、医師の指示を遵守し、コレステロール値が適切に管理されている患者は3~5年ごとにモニターすればよいということが再確認された。
よく忘れられがちな臨床的なポイントは、コレステロール値は7%の変動を示しうるということである。
このため、治療の決定は1回のみの測定に基づいて行なわれるべきではない。
これらの知見は、より変動の大きいトリグリセリド値には適用されない。
Joel M. Gore, MD
Published in Journal Watch Cardiology May 21, 2008
Citation(s):
Glasziou PP et al. for the Lipid Study Investigators. Monitoring cholesterol levels: Measurement error or true change? Ann Intern Med 2008 May 6; 148:656.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0529-04.html
Journal WATCH Online 日本語版 2008 May 29
<コメント>
何だかよくわからない内容でした。
1日1回の降圧薬は服薬アドヒアランス不良が多い
Poor Adherence to Once-Daily Antihypertensive Drugs Is Common
降圧薬の服薬アドヒアランス不良は、十分な血圧コントロールを妨げる主要な原因である。
この縦断的な研究では、1日1回の降圧薬43種類のうちいずれか1つの処方をうけた4,783人の患者について服用アドヒアランスを検討するため、21件の臨床研究のデータを用いた。
開けるごとに電子的に日時を記録するピルケースを用いて、アドヒアランスを検討した。
1年の時点で、半数近くの患者が治療を完全に停止していた(服薬中止[nonpersistence])。
どの一日をとっても予定された服薬のうち、約10%が服薬されなかった(服薬不履行[nonexecution])。
全体で95%の患者が少なくとも年に1回服薬を忘れ、半数の患者は月に1回服薬を忘れ、半数近くの患者で少なくとも年に1回、3日以上薬を飲まない期間があった。
服薬の不履行は、4月から9月の間および週末により多くみられた。
朝の服薬は夜の服薬と比較して服薬履行率が高かった。服薬履行の高い患者は服薬の継続率が有意に高かった。
コメント:
著者が結論づけているように、服薬をやめてしまうリスクの高い患者には、(中止理由が有害作用でない限り)治療継続するよう支援が必要であり、一方で服薬履行が悪い患者では投与を日々のルーティンに取り込むよう手助けする必要がある。
この所見はまた、朝の投与を推奨し、休暇中や週末の服薬履行の障碍となっているものに取り組むことが必要であることを示唆している。
最後に、これらの結果は、血圧コントロールが十分でない患者に対しては、アドヒアランスをより困難にする処方の追加を行う前に、まず医師が服薬の不遵守について尋ね、指導を行うべきであることを示唆している。
Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP
Published in Journal Watch General Medicine June 12, 2008
Citation(s):
Vrijens B et al. Adherence to prescribed antihypertensive drug treatments: Longitudinal study of electronically compiled dosing histories.
BMJ 2008 May 17; 336:1114.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0612-03.html
Journal WATCH Online 日本語版 2008 June 12
<コメント>
都会で開業しているため、高血圧の治療もなかなかうまくいきません。
「忙しくて診察が待てない、用事があって急いでいるからきょうは検査が出来ない」
そんなことを、よくいわれます。
その多くは方便です。
当院では前もって次回の検査を予告する用紙を渡しています。
そこまでしてもこんな状態です。
なんだか、最近にそんな患者が多くなって来ました。
逆にいえば、大病院に高血圧で通院するような方は余程暇な人かも知れません。
高血圧の診察こそ、診察室を出て行かれる患者さんが満足感を得られる工夫がいるはずです。
大病院で、特に工夫しているとも思えません。
それはさておき、きのうも「診察はいい。薬さえ貰えればいい」というモンスターペイシャントがいました。
何だか世の中が音を立てて壊れていくようで寂しくなります。
老後は島の診療所で、純朴な患者さんに囲まれた診察をしてみたいと真剣に思う今日このごろです。
医師と患者の信頼関係のない医療。
そんな寂しい医療は嫌です。
<追加2008.8.9 AM2:20>
昨夜の北京オリンピックの開幕式の興奮とモンスターペイシャントの悔しさでよく眠れません。
今朝から院内に以下のような貼紙をするためにパソコンで印刷しました。
「お知らせ
受療態度の余りにも良くない方は、他の医療機関への受診をお勧めする場合があります。
これは「診療拒否」とは異なりますので、予めご了承下さい。
○○○○ 院長」
読んでいただいてありがとうございます。
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ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
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http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
昨秋のエプレレノン(商品名セララ)の発売で「アルドステロン」は一定の盛り上がりがありました。
きょうは、「原発性アルドステロン症」を勉強しました。
アルドステロン研究の現在
http://blog.m3.com/reed/20080623/1
アルドステロン・ブレイクスルー
http://blog.m3.com/reed/20080704/1
原発性高アルドステロン症:まれだが診断と治療が重要
Primary Hyperaldosteronism: Rare, but Important to Diagnose and Treat
高血圧患者における原発性高アルドステロン症の有病率の推定値には、選択されない患者において20%にも及ぶものから1%に過ぎないものまである。
この研究では、20年間にギリシャのある高血圧診療所を受診した連続する患者1,616人を対象に、原発性高アルドステロン症の有病率を検討した。
患者はすべて治療抵抗性の高血圧(利尿薬1種類および他の薬物2種類でコントロールされておらず、自宅または自由行動下の血圧測定で確認された)であった。
すべての患者について、コントロールされた状況でアルドステロン/レニン比(aldosterone-to-renin ratio:ARR)および血清アルドステロン濃度を測定した。
両方の測定値が上昇していた患者338人に対し、塩負荷による抑制試験 および4日間のfludrocortisone試験を行い、原発性高アルドステロン症であるかを確認した。
原発性高アルドステロン症が確認されたすべての患者に対し、spironolactone単独療法を行い、血圧のコントロールに必要であれば他の薬剤を追加した。
患者182人(ARR高値の患者の53.8%、患者全体の11.3%)で、原発性高アルドステロン症が確認された。
これらの患者すべてにおいて、spironolactone単独療法開始後2~4週間以内に統計学的に有意な血圧低下が認められ、spironolactone単独(37%)または他の薬物との併用により、すべての患者で血圧の目標値が達成された。
コメント:
高血圧症例の約10%が治療抵抗性で、原発性高アルドステロン症が(この研究におけるように)それらの症例の約10%を占めるとすると、全体での有病率は約1%となる。
しかしそれでも、症例の発見は重要である。
というのも、原発性高アルドステロン症では、本態性高血圧と比較して標的臓器の障害のリスクがより高いと考えられ、また高アルドステロン症は治療が容易であるからである。
低カリウム血症は、感度も特異度も低い。ARRおよび血清アルドステロン値は非特異的であり、確定診断(例、場合によっては特定の降圧薬を中止後に、塩負荷による抑制試験を実施)は、費用がかかり、リスクを伴う可能性がある。
エディトリアル執筆者は、ARRおよび血清アルドステロン濃度が高値である患者、またはアルドステロン阻害薬の経験的な投与に反応しない患者は、専門施設に紹介するよう勧めている。
Bruce Soloway, MD
Published in Journal Watch General Medicine July 22, 2008
Douma S et al. Prevalence of primary hyperaldosteronism in resistant hypertension: A retrospective observational study. Lancet 2008 Jun 7; 371:1921. (http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(08)60834-X)
Kaplan NM. Deja vu for primary aldosteronism. Lancet 2008 Jun 7; 371:1890. (http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(08)60809-0)
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0724-01.html
Journal WATCH Online 日本語版 2008 July 24

「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)
<関連サイト その1>
慢性腎疾患に対するアルドステロン遮断?
Aldosterone Blockade for Chronic Renal Disease?
アルドステロンは心筋に対して直接的な有害作用を示し、またアルドステロン遮断によって、心不全患者の罹患率と死亡率が低下する。
さらに少数のエビデンスであるが、慢性腎疾患患者に対するアルドステロン遮断の役割も示唆されている。
このデンマークの二重盲検クロスオーバー試験では、2型糖尿病、高血圧および顕性アルブミン尿を有する患者21人を、spironolactone(連日25mg)とプラセボをランダムな順に8週間投与するコースに割り付けた。
ベースライン時点で、すべての患者が利尿薬とアンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting-enzyme:ACE)阻害薬またはアンジオテンシン受容体遮断薬を服用していた。
大部分の患者はカルシウムチャネル遮断薬も服用していた。適格基準は、糸球体濾過率>30mL/min/1.73m2と、血清カリウム値<4.5mmol/L未満であった。
尿アルブミン値および24時間自由行動下血圧の平均は、spironolactone投与後がプラセボ期間終了後より有意に低かった(1.1g対1.6g/24時間、および132/67mmHg対138/71mmHg)。
アルブミン尿と血圧の個々の変化の大きさは相関していなかった。
1人の患者はspironolactoneの2週間投与後に重度の高カリウム血症(血清カリウム濃度7.1mmol/L)を起こしたため、分析から除外した。
コメント:
これらの所見が示唆しているように、アルドステロン遮断は糖尿病性腎症(おそらくは他の慢性腎疾患も含む)の治療に役立つかもしれない。
しかし、アルブミン尿と血圧におけるこれらの短期的な改善が持続するかどうか、またこれらによって臨床アウトカムが最終的に改善するかどうかを判断するには、より大規模な研究が必要である。
さらに、このような治療では致死的な高カリウム血症のリスクがあることから、きわめて慎重に監視する必要があろう。
Allan S. Brett, MD
Published in Journal Watch September 23, 2005
Rossing K et al. Beneficial effects of adding spironolactone to recommended antihypertensive treatment in diabetic nephropathy. A randomized, double-masked, cross-over study. Diabetes Care 2005 Sep; 28:2106-12.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW05-0923-01.html
Journal WATCH Online 日本語版 2005 September 23
<関連サイト その2>
もう1つのアルドステロン拮抗薬がLV機能障害患者に有益
Another Aldosterone Blocker Benefits Patients with LV Dysfunction
RALES研究は、重度のうっ血性心不全の治療におけるアルドステロン拮抗薬spironolactoneの役割を確立した(Journal Watch Sep 10 1999)。
今回、企業支援を受けた新たな国際研究で、研究者らはもう1つのアルドステロン拮抗薬eplerenoneについて検討している。
研究者らは、6,632人の患者を、心筋梗塞後3~14日の時点でeplerenoneかプラセボ投与にランダムに割り付けた。患者全員で心不全の臨床的徴候が認められ、左室駆出率(LVEF)が40%以下であり、ほとんどの患者がβ遮断薬とアンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の投与を受けていた。
血清クレアチニンレベルが2.5mg/dLを超えるか、血清カリウムレベルが5.0mmol/Lを超えている患者は除外した。
平均16ヵ月のフォローアップ期間中、全体の死亡率はeplerenone群のほうがプラセボ群よりも有意に低かった(1年間の推定死亡率、11.8%対13.6%)。もう1つのエンドポイントとした心血管系の原因による死亡あるいは入院も、eplerenone群で有意に頻度が低かった(26.7%対30.0%)。
重篤な高カリウム血症はeplerenone群でプラセボ群よりも有意に多く認められ(5.5%対3.9%)、重篤な低カリウム血症は有意に少なかった(8.4%対13.1%)。
コメント:
この試験は、LV機能が相当に障害を受けている患者でのアルドステロン拮抗薬の適応を広げる。
RALES研究の患者と比較し、この試験での患者はLVEFの平均がより高く(33%対25%)、β遮断薬の使用が多かった(75%対10%)。
さらに、今回の研究の患者は全員、虚血性心疾患を伴っていた(RALES研究の患者では半数のみであった)。spironolactoneはeplerenoneよりもかなり安価であるため、臨床家は最初にspironolactoneを使用し、いずれかの薬物を使用する際は、血清カリウムとクレアチニンを慎重にモニターするように、エディトリアル執筆者は提案している。
米国では、eplerenoneを心不全の治療に利用することはまだできない。
Allan S. Brett, MD
Published in Journal Watch April 18, 2003
Pitt B et al. Eplerenone, a selective aldosterone blocker, in patients with left ventricular dysfunction after myocardial infarction. N Engl J Med 2003 Apr 3; 348:1309-21.
Jessup M. Aldosterone blockade and heart failure. N Engl J Med 2003 Apr 3; 348:1380-2.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW03-0418-03.html
Journal WATCH Online 日本語 2003 April 18
<関連サイト その3>
原発性高アルドステロン症におけるアルドステロン/レニン比
Aldosterone-Renin Ratio in Primary Hyperaldosteronism
高血圧の原因として過少に診断されていると思われる原発性高アルドステロン症のスクリーニング検査として、アルドステロン/レニン比(aldosterone-renin ratio:ARR)が普及しつつある。
しかし、検査陽性については研究によってさまざまな定義がなされている。
香港のこのレトロスペクティブ研究では、原発性高アルドステロン症が疑われ(通常は高血圧に低カリウム血症が合併しているため)、病院の内分泌科に紹介された患者62人の結果を分析した。
最終診断は、外科病理、食塩水負荷検査、CT(コンピュータ断層撮影)所見および副腎静脈からの血液のサンプリングに基づいて行われた(すべての患者が全検査を受けたわけではなかった)。
ARRは一晩横臥した後、30分間座った後、4時間の自由行動の後に各患者について測定した。
原発性高アルドステロン症は最終的に45人の患者で診断された。
他の17人は本態性高血圧と推定された。ARRのすべての結果を再評価した後、30分間座った後の検査がスクリーニングとして受け入れ可能であると著者らは結論付けている。
ARRのカットオフ値を1ng/mL・時間あたり23.6ng/dLとした場合の感度が97%、特異度が94%であった。
カットオフ値を66.9とすると特異度100%となり、このカットオフ値を超える値を示した患者はすべて原発性高アルドステロン症であった。
ARRの中央値は、高アルドステロン症の患者では136.4、対照では5.6であった。
コメント:
この研究では、30分間座位の後のARRが66.9を超える場合原発性高アルドステロン症が確認され、一方、ARRが23.6未満の場合はほぼ確実に除外された。
これら2つのカットオフ値のあいだでは、診断を確認あるいは除外するために追加検査が必要であった。
他の重要な変数(たとえば使用する検査キットの性能、各研究での患者集団の差)があることから、原発性高アルドステロン症を診断する際には、経験のある医師に患者を評価してもらうのがもっとも良いと思われる。
Allan S. Brett, MD
Published in Journal Watch February 11, 2005
Source
Tiu S-C et al. The use of aldosterone-renin ratio as a diagnostic test for primary hyperaldosteronism and its test characteristics under different conditions of blood sampling. J Clin Endocrinol Metab 2005 Jan; 90:72-8.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW05-0211-01.html
Journal WATCH Online 日本語版 2005 February 11
<関連サイト その4>
治療抵抗性高血圧を伴う糖尿病患者の原発性アルドステロン症
Primary Aldosteronism Among Diabetic Patients with Resistant Hypertension
いくつかの研究で、原発性アルドステロン症は臨床医が一般に考えるより二次性高血圧の原因としてよくみられることが示唆されている。
このEmory Universityの研究では、治療抵抗性高血圧(3種類以上の降圧薬を服用し、血圧が>140/90mmHgであることと定義した)を伴う連続100人の糖尿病患者(平均年齢59歳)を同定し、原発性アルドステロン症についてスクリーニングを行った。
高血圧の平均持続期間は16年であり、患者の93%は黒人であった。
患者34人はアルドステロン・レニン比の上昇(ここでは>30と定義した)が認められ、その後に確認検査(塩類負荷後のアルドステロン測定)を受け、14人が最終的に原発性アルドステロンと診断された。
副腎画像診断の結果や治療に対する反応に関する情報は報告に示されていなかった。
コメント:
治療抵抗性高血圧で紹介されたこれらの糖尿病患者では、原発性アルドステロン症の有病率が14%ときわめて高いが、これは治療抵抗性高血圧として紹介された患者に関する他の研究と一致している(Journal Watch General Medicine May 1 2001など)。
プライマリケアの設定における原発性アルドステロン症の有病率(およびアルドステロン/レニン比の最適なカットオフ値)に関する大規模な研究があれば、有用であろう。
当面、臨床医は多剤療法に抵抗性の高血圧を有する患者で、この診断を考慮する閾値を低くすべきであろう。
Allan S. Brett, MD
Published in Journal Watch General Medicine July 26, 2007
Umpierrez GE et al. Primary aldosteronism in diabetic subjects with resistant hypertension. Diabetes Care 2007 Jul; 30:1699-703.
http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW07-0726-05.html
Journal WATCH Online 日本語 2007 July 26
<追加・森下竜一先生のブログから>
恩師の退官③
http://blog.m3.com/yomayoi/20070310/1
(阪大・荻原先生の最終講義の写真が見れます)
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
「前高血圧」という言葉自体、目新しいものではありません。
しかし、近々発表を控えたJNC8やJSH2009でどのようにとりあつかわれるか興味のあるところです。
日経メディカルの最新号の巻頭に、たまたま「前高血圧」がとりあげられていたので勉強しました。
これらで取り上げられる血圧の数値。
測定するだけの数があるといわれる血圧値の中でどれをとりあげて話をしているのか。
そして収縮期血圧と拡張期血圧の数値がandなのかorなのか、はたまたand/orなのか。
知らないのが自分だけかと思うとなかなか他人には聞けません。
120/80でも黄信号?
高血圧は”prehypertension”の直訳。
prehypertensionという言葉は、JNC7(高血圧の予防、
発見、診断、治療に関する米国合同委員会第7次報告、2003年)に登場したもので、JNC Ⅵで「正常血圧」(120~129/80~84mmHg)と「正常高値血圧」(130~139/85~89mmHg)に分類していたものを合わせた新しい概念である。
日本や欧州の高血圧学会やWHOのガイドラインにはない独自のものだが、JNC7では、糖尿病やCKD(慢性腎臓病)など心血管疾患の危険因子がなければ薬物療法は不要で、生活習慣の改善を促すことになっている。
前高血圧に対するわが国の専門医の見解は微妙に分かれる。
獨協医大循環器内科主任教授の松岡博昭氏は「努力して生活習慣を改善し、120/80mmHgを維持している人
に、『前高血圧、要注意」とレッテルを貼るのは、現実的ではない」と話す。
「120~139mmHgをひとくくりにするのも疑問。ただし、減塩、減量など健康の維持・増進への意識付けという公衆衛生学的意義はある」。
前高血圧の概念の推奨派を自認する東京都老人医療センター副院長の桑島巌氏も「生活習慣の改善を求める警告として重要だが、130~139mmHgの人を前高血圧と呼ぶのが妥当だろう」と言う。
米国では、JNC8に向けての策定作業が始まり、前高血圧の扱いが議論の的となっている。
5月に行われた米国高血圧学会では、前高血圧を巡るディベートやセッションが設けられたが、それらの結論は「血圧は検査値の一つにすぎない。前高血圧の段階で、心血管疾患の危険因子を早期に発見することが重要である。危険
因子があれば、血管病変の程度を評価し、降圧、血糖コントロール、脂質低下など、血管保護のための的確な治療を選択する」ことに落ち着いた。
前高血圧と呼びながら、降圧に固執せず、血管保護に力点を置いたところが、近年の高血圧診療の風向きの変化を象徴している。
1998年にHOT研究の結果が発表されて以来、血圧はできるだけ低く厳格に管理することが世界的に推奨されてきた。
その間に、降圧薬の主流は、利尿薬、Ca拮抗薬からACE阻害薬、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)などRA系抑制薬へと広がってきた。
一方で「RA系抑制薬だけでは、十分な降圧効果が得られない」と指摘する臨床医は少なくない。
実際、ARBを用いた大規模臨床試験では、降圧が不十分な場合はARB以外に利尿薬などを併用して、降圧目標を達成した試験もある。
米国で、前高血圧への対応が「降圧」から「心血管疾患の予防」へとシフトしつつあるのは、ARBの降圧効果の限界が背景との指摘もある。
JNC8で前高血圧への対応がどう変わるのか、また、この秋に発表予定のJSH2009(日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン)で、厳格な降圧がどこまで強調されるのか、注目される。
出典 Nikkei Medical 2008.8
版権 日経BP社
<関連サイト>
前高血圧症の生活改善指導は開業医泣かせ! 新基準で血圧に泣く人が増える?
http://allabout.co.jp/health/familymedicine/closeup/CU20031225BP/
前高血圧症では食事、減量、運動、節酒などの生活改善指導などの予防医療が基本となります。原則として高血圧と異なり投薬はしません。
推定では日本人の1/3が前高血圧症です。もし米国に準じて開業医の方が、前高血圧症の方にも生活改善指導をするとしたら、忙しい外来診療の世界は大変な事になりそうです。
米国の後に、欧州の血圧分類ガイドラインが発表されました。欧州のガイドラインでは、前高血圧症という考えは用いていません。
高血圧前症への薬物治療(TROPHY)
http://intmed.exblog.jp/3342678/
TROPHY
ARBカンデサルタンによる早期介入で高血圧発症が66%減少
TRial Of Preventing HYpertension
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/ebm/topics/200804/506012.html
アンジオテンシン受容体拮抗薬による前高血圧に対する治療の実行可能性 http://minds.jcqhc.or.jp/G0000085_S0028648_0004.html
「高血圧前症」でも心疾患のリスク増大
http://health.nikkei.co.jp/hsn/news.cfm?i=20050812hj000hj
高血圧前症は冠動脈疾患、心筋梗塞のリスク上昇と関連する
http://tomochans.exblog.jp/3317329/
<自遊時間>
あるメーカーのMRさんが「AKI」の講演会の案内をもって来ました。
何でも急性腎不全acute renal failure(ARF)を、最近はccute kidney injury(AKI)と呼称されるようです。
CKDが一段落したら、今度はAKI。
循環器領域でも造影剤を使うインターベンショニスト(?)には、興味がいささかでもあるかも知れません。
一開業医としては関係なさそうなので欠席する予定です。
ARFとAKI。
若干概念が違うのかも知れません。
今後の書籍やMedical Tribune誌でチェックということで。
先端腎疾患病態研究グループ
http://plaza.umin.ac.jp/~kid-endo/a-3-02.html
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。