戯れ言たれる侏儒
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冠動脈疾患と親族リスク

戯れ言たれる侏儒 / 2008.08.28 00:17 / 推薦数 : 1

急性心筋梗塞で病院に搬送された患者が血液検査で脂質異常がみられることはしばしば経験することです。
このことに触れることは、学会や講演会では一種のタブーとされています。
きょうは、そんな疑問のごく一部の解答が得られるかもしれない報告で勉強しました。
 

冠動脈疾患では親族リスクも高い
〔米オハイオ州クリーブランド〕グラスゴー大学(英グラスゴー)のC. K. Chow博士らは,早発性冠動脈疾患(CAD)の家族歴を有する中年層を対象にスクリーニングを行うだけで,早発性急性心筋梗塞(AMI)の42%,AMI全体の 8 %を予防できるとの知見を,BMJ(2007; 335: 481-485)に発表した。

生活習慣と遺伝的素因が同じ
Chow博士らは「同胞(兄弟姉妹)にCAD患者がいる人を一般人口と比較した場合,生活習慣と遺伝的素因を同胞と共有しているという理由から,CADリスクが少なくとも 2 倍になる」とし,さらに「一 親等は高リスク群であるにもかかわらず,臨床では彼らを対象としたスクリーニングは行われていない。例えば,デンマークでは早発性CAD患者325例の同胞のうち高血圧患者の83%,高コレステロール血症患者の33%しか治療を受けていなかった。
しかも,十分な治療域に達していたのは,それぞれ28%,7 %であった」と述べている(Hengstenberg C, et al. European Heart Journal 2001; 22: 926-933)。
 
ジョンズホプキンス大学(メリーランド州ボルティモア)で行われた研究(Yanek LR, et al. Hypertension 1998; 32: 123-128)では早発性CAD患者490例の同胞859例を対象としたが,米国の一般人口と比較した場合,患者の同胞は高血圧リスクに関する認知度が低く(60%対90%),高血圧を管理する方法に関する知識も低かった(16%対24%)。
 
同博士は「早発性CAD患者の親族に対して禁煙を促し,高血圧を治療し,他の危険因子を調整するなどCADを予防できる絶好のチャンスが医師の目前にある。また,家庭内で危険因子について話し合うことにより,家族のAMIを予防できる。だれかが早発性MIで病院に搬送されると,患者家族も来院するが,その家族もMIリスクを有していることから,このときが高リスク家族と接するのに理想的なタイミングである」と述べ,「従来,オンラインでのアンケート,あるいは学校や職場で高リスク者を検出する試みが行われてきたが,家族の来院時にCADリスクを説明し,高リスクとなる生活習慣を改めるよう指導するほうが予防的意義が高い」と主張している。
出典 Medical Tribune 2008.1.17
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

早期心疾患とメタボリックシンドロームに
まれな遺伝的変異が関与
〔米コネティカット州ニューへブン〕 エール大学(ニューヘブン)内科心臓病学のArya Mani助教授と同大学遺伝学のRichard Lifton学科長らによる国際的な研究から,メタボリックシンドロームと世界的に主要な死因となっている早期心疾患の実質的リスクである単独の遺伝子のまれな変異を同定したとScience(2007; 315: 1278-1282)に発表した。
新しい経路を特定
今回の研究では,心疾患に関与していると思われる新しい経路が特定された。
今回の知見からメタボリックシンドロームと早期心疾患に対する健康的側面を改善するための新たなアプローチが示唆された。
Mani助教授は「われわれの知見から,よく知られているWntシグナル伝達経路の活性の変化が,心疾患に寄与している複数の代謝経路に大きな影響を与えることが示された」と述べている。
一般に冠動脈疾患(CAD)は,高LDLコレステロール(LDL-C),高トリグリセライド値,低HDLコレステロール,高血圧,糖尿病などの危険因子の集積を含むメタボリックシンドロームにより引き起こされる。
今回の研究は,早期CADの有病率が異常に高いイラン人の大家族の家系に基づいている。
親族58例中28例は,男性が50歳以前に,女性が55歳以前に早期CADと診断された。
この28例中23例は,CADにより若年で死亡した。
対照的に,早期CADを発病しなかった親族は平均81歳で死亡している。
CADと診断された親族は,LDL-Cとトリグリセライドが高値で,高血圧,糖尿病であったが,CADに罹患しなかった親族ではこれらの疾患は認められなかった。
また,CAD罹患者は骨粗鬆症になりやすい素因を有していたが,骨粗鬆症とCADの関連性を示す最近のエビデンスを考えると,これは特に興味深い知見である。

複数の危険因子が関与
研究チームは,この家系のCADの遺伝的形質と各染色体断片の遺伝的形質を比較することにより,疾患の原因となる遺伝子の位置を第12染色体の短断片にまで絞り込むことに成功した。
この染色体領域において,LRP6と呼ばれる遺伝子に単一変異が発見された。
LRP6遺伝子はWntシグナル伝達経路に作用し,特定の癌の発現に関与していることが知られている。
この変異により 1 つのアミノ酸が蛋白質に変換し,この蛋白質がLRP6によりコードされている蛋白質の活動を変化させることがわかった。
Lifton学科長は「複数の危険因子が互いに関連している理由はこれまでなぞに包まれていたが,われわれの知見から多数の危険因子の形成と早期CADにおけるWntシグナル伝達経路の関与が示唆される。
今後,早期CADとメタボリックシンドロームの患者を対象にWntシグナル伝達経路の研究を進めれば,疾患原因の基礎生物学に関する新しい知見が得られるとともに,疾患予防の新たなアプローチが示唆されるのではないか」と見ている。 

出典 Medical Tribune 2007.5.17
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
■ 左主冠動脈と遺伝
http://blog.m3.com/reed/20080102/1

■ 日本人における虚血性心疾患の特徴
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000131_0016.html
日本人における狭心症あるいは冠動脈疾患への遺伝学的なアプローチもみられる。
性差や,従来の冠危険因子の有無などの条件にもよるが,apolipoprotein E(ApoE)やstromelysin-1(MMP3),またconnexin-37(GJA4)の特定の遺伝子多型が冠動脈疾患との関連性を示したという報告がある。
また,Heme oxygenase-1遺伝子プロモーターの多型と冠危険因子を有する冠動脈疾患患者との関連性を示す報告がある。
Paraoxonase(PON)のA/B多型は冠動脈疾患の危険性との関連はみられなかった84)が,PON-1については,そのR/R genotypeは冠動脈疾患になりにくいという報告がある。
また,アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子の多型性は日本人の血清ACE活性ならびに冠動脈疾患のリスク増加と関連するとされ,DDは冠動脈疾患の危険因子という報告がある。
von Willebrand因子の受容体である血小板GPI bαの大きさが異なる遺伝子多型では,日本人の心筋梗塞患者ならびに狭心症患者においては少なくとも1つの4-repeat alleleを持つものが多いという。
遺伝的背景の差異や対象症例数などにより必ずしも同様の成績が報告されるとは限らないが,今後とも検討の必要な領域である。
■ 心臓病と他の疾患を結びつける遺伝子
Gene Links Heart Disease and Other Disorders
http://www.sciencemag.jp/highlights/20070302.html
冠動脈疾患は、高血圧症や糖尿病など集合的に「メタボリック・シンドローム」と呼ばれる病気と関係している場合が多いが、その理由を解明する新たな手がかりが得られた。冠動脈疾患は心臓発作を引き起こし、全世界で主要な死亡原因となっている。
Arya Maniらは、メタボリック・シンドロームの特徴の多くを備えた、珍しい遺伝性の若年性冠動脈疾患に苦しむ家族を調査し、この疾患の原因となる遺伝子の突然変異が「Wntシグナル経路」の一部であるLRP6遺伝子で起こっていることを報告した。
Wntシグナル経路は幅広い生物学的プロセスに関与するタンパク質の複雑なネットワークで、胚発生や癌との関連が特によく知られている。
この経路でのたったひとつの変異により、冠動脈疾患に付随する様々な種類の疾患が生じるという発見は、これらの疾患が相互に関連していることが多い理由を説明するのに役立つだろう。  


■ Wnt Induces LRP6 Signalosomes and Promotes Dishevelled-Dependent LRP6 Phosphorylation
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/316/5831/1619


■ 骨粗鬆症治療画像集
http://www2.eisai.co.jp/motor/gazou/0607v5n3/01.html
http://www2.eisai.co.jp/motor/gazou/0607v5n3/02.html
http://www2.eisai.co.jp/motor/gazou/0607v5n3/03.html

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

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