戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2008/08 >>
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

特別企画
「CKD 診療ガイド―高血圧編―」発刊!
そのポイントと上手な使い方を聞く  その2(2/2)

蛋白尿の原因として注目される糸球体足細胞とネフリンの障害
―そもそも,RA系抑制薬によってどうして蛋白尿が減るのでしょう。
「ACE阻害薬やARBの蛋白尿減少機序は,従来,糸球体内圧などの腎血行動態で説明されてきました。アンジオテンシンII(A II)は輸出細動脈を収縮し糸球体内圧を上げ,メサンギウム基質を増やし糸球体硬化を進めますが,ACE阻害薬やARBはこれを抑えるからです。しかし近年,蛋白尿の機序について糸球体足細胞(podocyte)の障害が注目されています」

―足細胞とはどんなものですか。
「足細胞は,基底膜の尿腔側にあって内皮細胞,基底膜とともに糸球体毛細血管で血清蛋白を保持するための障壁を形成します(図3)。

 

糖尿病や慢性腎炎などで糸球体毛細血管の内圧が上がると,足細胞にかかる張力が増大します。これが続くと,足細胞は平坦化しeffacement(消失)と呼ばれる腎生検所見を呈します。これは,足細胞表面のAT1受容体が増え,足細胞がアポトーシスに陥ったためと考えられます。
そして,足突起と足突起の間のスリット膜を構成する分子として,1998年Tryggvasonらがネフリンを同定しました。ネフリンは,足細胞と同様に,糸球体毛細血管の透過選択性の維持に必須の分子です。慢性腎炎患者で尿蛋白量とネフリン発現量の相関をみた結果,両者に負の相関があることも確認されています」

バルサルタンはネフリンを増やし足細胞のアポトーシス抑制(ラット)
―それではARBは,足細胞に対してどのように作用するのですか。
「Mifsudらは,糖尿病性腎症ラットの足細胞を電子顕微鏡で観察しました。糖尿病ラットでは顕著な足細胞のeffacementが見られましたが,ARBバルサルタンを投与しておくとeffacementは正常化しました」

―ネフリンにはどう働きますか。
「ネフリンに関しては,Davisらの興味深い検討があります。彼らは糖尿病ラットの糸球体で免疫染色を行い,ネフリン発現が著明に低下する点を見出しました。ところが,バルサルタンを16週間単剤投与したラットでは,ネフリンは対照と同程度に回復。一方,Ca拮抗薬アムロジピンを併用したラットでは,ネフリンは増加しませんでした(図4)。

 

このとき両群の降圧は同等で,アルブミン尿はバルサルタン群のみ減少していました。以上の結果から,バルサルタンの尿蛋白減少作用にはネフリン回復が強くかかわると推測できます。
このように,腎糸球体の微細構造とARBによる腎保護作用は並行して解明されてきました。Tryggvasonらのネフリン同定以降,ARBの腎保護作用のとらえ方も大きく変化したと言えるでしょう(図5)」

SMART;バルサルタンは高血圧合併糖尿病性腎症のアルブミン尿を抑制
―バルサルタンのそうした腎臓での好ましい作用は,臨床でも確認されていますか。
「バルサルタンが早期腎症患者の微量アルブミン尿を有意に減らすことは,2002年のMARVAL試験ですでに確認されています。
日本でのエビデンスとしては,滋賀医科大学の柏木教授が昨年発表したSMART試験があります。SMARTでは糖尿病性腎症150人をバルサルタン群とアムロジピン群に割り付け,6か月間観察しました。そして,試験終了時のHbA1c,血圧値は2群間で差がなく,両群で131/75mmHgと十分な降圧を達成したにもかかわらず,尿中アルブミン排泄量はアムロジピン群で増加,バルサルタン群で減少。群間差が認められました(図6)。


 

さらに,終了時の収縮期血圧130mmHg未満例と以上例を比べると,バルサルタン群では両方で微量アルブミン尿が同等に減っていました。この結果は,バルサルタンの腎保護作用が降圧に依存したものではないことを示唆しています。
微量アルブミン尿患者は,1年間に2.8%が顕性腎症に進展し,3%がCVDなどで死亡します(図7)。

これこそ,CKDの恐ろしさと早期介入の必要性を端的に表した図ですが,SMARTはその解決策を提示した画期的な臨床試験と言えるでしょう。透析大国と呼ばれる日本の状況も,ARBを活用することで5,6年後には患者数が減少に転じるのではないかと,強く期待しています」

出典 Medical Tribune 2008.8.21
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

固定リンク | コメント (2)