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第51回日本腎臓学会学術総会ランチョンセミナー
「腎障害を伴う高血圧の薬物治療」
で勉強しました。
演者の土肥 靖明 先生は新進気鋭の方です。
最近、ベニジピン(商品名コニール)の学術講演を、ある講演会でお聞きし、講演後の懇親会でご本人と少しお話をしました。
現在,日本の透析患者数は26万人と推定されるが,水面下にはその予備軍である糸球体濾過量(GFR)60mL/min/1.73m2未満の患者が約1,926万人,GFR50mL/min/1.73m2未満の患者が約418万人存在するとみられる。
慢性腎臓病(CKD)対策が急がれる状況のもと,第51回日本腎臓学会学術総会において,新しい日本人のGFR推算式が発表された。
同総会では,名古屋市立大学大学院医学研究科心臓・腎高血圧内科学准教授の土肥靖明氏が腎障害を伴う高血圧の薬物療法について講演し,CKD治療におけるCa拮抗薬には腎輸出細動脈を拡張し,尿蛋白を減少させる薬剤が推奨されるなか,L型およびT型CaチャネルをブロックするCa拮抗薬ベニジピン塩酸塩(コニールR錠)の位置づけを明らかにした。
司会
東北大学大学院医学系研究科 腎・高血圧・内分泌学分野教授
伊藤 貞嘉 氏
演者
名古屋市立大学大学院医学研究科 心臓・腎高血圧内科学准教授
土肥 靖明 氏
ベニジピンはラットのNO依存性弛緩反応を改善
高血圧の持続により蛋白尿,腎障害・腎不全を来す一方,腎性高血圧にみられるように腎障害が高血圧の原因になることもありうる。
また最近では,微量アルブミン尿が心血管系疾患の危険因子の1つとして認識されるようになった。
このように高血圧と腎障害,心血管系疾患は密接に関連しているが,土肥氏は「いわゆる心腎連関の一部には血管内皮機能低下が絡んでいる」と指摘した。
同氏らの研究によると,高血圧自然発症ラットの腎抵抗動脈ではNO依存性の内皮弛緩反応が低下するが,ベニジピンの投与により正常血圧ラットと同レベルにまで改善することが明らかになった。
この効果は,検討したCa拮抗薬のうちベニジピンに特有なことから,同氏は「ベニジピンは,降圧に依存しない血管内皮改善作用を有することが示唆された」と考察している。
一方,種々の大規模臨床試験の結果から,心血管死は血圧が高値であるほど増加し,降圧治療により減少することが知られている。
同様に,腎機能は降圧に伴い改善し,とりわけ初期の厳格な降圧が重要であることが明らかになっている。
L型・T型Ca拮抗薬であるベニジピンは尿中アルブミン排泄量の改善に寄与
「高血圧治療ガイドライン2004」では,腎障害患者の降圧目標を130/80mmHg未満とし,一次選択薬としてACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を推奨している。またRENAAL研究において,ARBはプラセボに比べ末期腎不全に至るリスクを28%低下させ,腎機能を維持するうえでは厳格な降圧とともにレニン・アンジオテンシン(RA)系の抑制が重要であることを示した。
全身血圧の上昇に伴う腎輸入細動脈の自動調節の破綻により糸球体に流入する血流が増加している場合,RA系抑制薬は腎輸出細動脈を拡張して糸球体内圧を低下させ,過剰濾過,尿蛋白を是正する作用が知られている。
しかし,腎障害患者のうちRA系抑制薬単独で降圧目標をクリアできる例は25%に満たないという報告(Chobanian AV, et al: Hypertension 42: 1206-1252, 2003)があり,多くの症例においては複数の降圧薬の併用が求められるのが実情である。
昨年発表されたヨーロッパの「高血圧管理ガイドライン(ESH-ESC 2007)」では,RA系抑制薬との併用薬としてCa拮抗薬,利尿薬が推奨されている。
L型Caチャネルのみに作用するCa拮抗薬は,腎輸入細動脈を拡張するものの腎輸出細動脈は拡張しないことから,血圧が十分に低下しない場合はかえって糸球体内圧の上昇を来すと考えられている。
一方,ベニジピンはL型CaチャネルのみならずT型Caチャネルにも作用することから,腎輸入細動脈とともに腎輸出細動脈も拡張し,糸球体内圧を改善する効果が期待される。
実際,ベニジピン投与後は全身血圧が下降するとともに,腎輸入・輸出細動脈が拡張し,糸球体内圧が低下すると報告されている。
また,Dahl食塩感受性ラットを用いた実験では,ベニジピンは単独で同等の降圧効果を示す用量の他のCa拮抗薬と比較して,単独治療,RA系抑制薬との併用治療のいずれにおいても尿中アルブミン排泄量を減少させた(図1)。

以上より,ベニジピンとRA系抑制薬の併用は,他のCa拮抗薬とRA系抑制薬の併用に比べ,より腎機能を改善することが期待されている。
腎保護作用が期待されるCa拮抗薬をRA系抑制薬と併用する
土肥氏らは,微量アルブミン尿が検出された高齢者高血圧患者をベニジピン+ARB群,他のCa拮抗薬+ARB群の2群に分けて血圧および尿中アルブミン排泄量を検討した結果,血圧は両群で同等に低下したが,尿中アルブミン排泄量はベニジピン+ARB群で有意に低下したのに対し,他のCa拮抗薬+ARB群では有意な低下は認められなかったことを示した(図2)。

これらの結果を血圧低下度で補正したところ,ベニジピン+ARB群では降圧効果を超えた腎保護作用が示唆された。
以上の結果を踏まえ,同氏は「L型およびT型CaチャネルをブロックするベニジピンとARBを併用することで,腎輸入細動脈に比べ腎輸出細動脈がより拡張し,糸球体内圧が低下して尿蛋白減少効果が示された可能性がある」と指摘した。
また,別の報告では,ベニジピン服用時は,治療前に比べ,糸球体濾過圧が低下することを示唆する結果が得られている。
同氏は,最近のメタ解析の結果から降圧薬の臓器保護作用について,
1)脳卒中予防効果はCa拮抗薬がAC E阻害薬に優り,ARBはACE阻害薬と同等,
2)虚血性心疾患予防効果はACE阻害薬がCa拮抗薬,ARBに優る,
3)腎保護効果はRA系抑制薬がCa拮抗薬に優る,
4)降圧効果はCa拮抗薬がRA系抑制薬に優ると考えられるとした。
そのうえで同氏は,腎障害を伴う高血圧の治療についてはRA系の抑制とともに厳格な降圧が重要であると重ねて強調し,「RA系抑制薬で降圧目標に達しない場合,ベニジピンのように強力な降圧効果を示し,腎保護作用が期待されるCa拮抗薬を併用する意義は大きい」と述べ,講演を締めくくった。
出典 Medical Tribune 2008.8.7
版権 メディカル・トリビューン社
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