戯れ言たれる侏儒
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Doctors Blog

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高血圧と糖尿病。
いずれもCHDのリスクファクターですが、両者の合併が多いことは臨床場面でしばしば経験することです。
困ったことに、両者とも症状がない疾患のため、この合併がいかによくないかということを患者さんに納得していただくことは実際には困難です。
”5分”診療でもほとんど世間話で終わってしまう自分の診療。
大規模臨床試験より得られた”エビデンス”を診察の中で噛み砕いて説明できるといいのですが、実際にはなかなか・・・。

さて話が変わりますが、製薬メーカー提供によるRAS抑制剤に関する座談会。
薬価の高いARBばかりでACEIはすっかり影をひそめています。
このARB。
ACEIに対しての非劣性とか、副作用の少なさ(コンプライアンスの良さ)とかあまりパッとした話もなく「高性能ACEI」の話題もあり、その立場も少しあやしくなっていました。
しかし最近はAT1ブロッカーだけでなくAT2ポテンシエーターといった”Dual effect”や”多面的作用”で土俵の真ん中に押し戻し、さらにはACEIを押し出す勢いです。

私自身、最近まで薬価のことを考え、まずはACEIを処方し、忍容性が悪ければそこでARBというスタンスでした。

しかし、なぜだか最近はいきなりARBを処方することが多くなってしまいました。
もしかして”座談会”の読み過ぎかも知れません(サブリミナル効果?)。

薬価が同じだったり将来的にジェネリックが出たらARBになってしまうような気がします。
その時にはACEIはどうなっているのでしょうか。

さて、きょうはまた”座談会”で勉強しました。

高性能ACEI
http://blog.m3.com/reed/20071023/_ACEI

三塩 清巳「ソーリオ(スイス)にて」 油彩 キャンヴァス6号
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p117349635


特別企画
Round Table Discussion 座談会
高血圧症患者の糖尿病新規発症を抑制する臨床的意義は?

ARBは,血圧を良好にコントロールするだけでなく,糖尿病の新規発症を抑制することも示されている。
これは,欧米だけでなく,日本人の高血圧症患者を対象としたCASE-J試験とHIJ-CREATE試験でも明らかにされている。
そこで,なぜ,高血圧症患者が,糖尿病を新規に発症するのか?
そして,それを抑制することの臨床的意義について討論していただいた。

熊本大学大学院医学薬学研究部 生体機能薬理学 教授
光山 勝慶 氏(司会)
東京医科大学第三内科 主任教授
小田原 雅人 氏
順天堂大学大学院医学研究科 代謝内分泌内科 准教授
綿田 裕孝 氏
小倉記念病院循環器科 部長
横井 宏佳 氏 
(発言順)
 

高血圧症は糖尿病の新規発症リスクとなるのか?

光山 
一般に高血圧症と糖尿病は合併しやすく,それが脳・心血管系イベントの発現リスクを相乗的に高めると言われています。
一方で,ARBなどのRA系抑制薬を降圧療法に用いると,血圧のコントロールとともに,糖尿病の新規発症抑制が得られるとした成績が報告されています。
これは,日本人を対象にした検討でも同様で,カンデサルタンを用いたCASE-J試験やHIJ - CREATE試験で認められています。
これらの事実は,高血圧症から糖尿病が発症する過程において,RA系の活性化が関与していることを強く示唆するものです。
そこで,本日は,高血圧症から糖尿病が発症するメカニズム,そして,糖尿病の新規発症を抑制することの臨床的意義について,意見を交わしたいと思います。
 
まず,小田原先生,高血圧症から糖尿病は発症しやすいと考えてよいのでしょうか。

小田原 
疫学的調査では,糖尿病患者さんで高血圧症を有する割合は,糖尿病でない方の約2倍です。
また,高血圧症患者さんで糖尿病を有する割合は,高血圧症でない方の2~3倍にもなります。
このことからも,両疾患は明らかに関連があると言えます。
 
また,外来高血圧症患者さんの半数以上(54%)が耐糖能異常(IGT)もしくは境界型糖尿病(IFG)であるとの報告もあります。
つまり,高血圧症の治療中に糖尿病が発症する可能性は非常に高く,降圧療法中には,血糖値の変動にも注目する必要があるでしょう。

光山 
確かに,正常血圧(120~129/75~84mmHg)の方に比べて高血圧症の方は,3.3倍,糖尿病の発症リスクが高まるとの成績もあります(図1)。
それでは,なぜ,両者は合併しやすいのでしょうか。

小田原 
ベースとして考えられるのがインスリン抵抗性だと思います。最近は特に,肥満・メタボリックシンドローム(MetS)が増えており,これは同時にインスリン抵抗性が亢進している方が増えていることを意味します。

綿田 
インスリン抵抗性とともに重要なのが,膵臓のβ細胞だと思います。
インスリン抵抗性が亢進した状態であっても,それに対応できるβ細胞機能が保持されていれば,糖尿病は発症しないと考えます。

光山 
心筋梗塞患者さんや慢性心不全患者さんにも糖尿病が多いと聞きますが,いかがでしょう。

横井 
IGTの病態で,もうすでに動脈硬化がかなり進行しています。
そこで,脳・心血管系イベントを予防するためにも運動療法を指導するのですが,心筋梗塞などの致死的可能性がある疾患に遭遇した方は,何事にも慎重になってしまう傾向があります。
そのため,運動量も低下し,IGTから糖尿病へと進展してしまうのかもしれません。
 

RA系の活性化と糖尿病の発症
光山 
肥満・MetSの増加が社会的にも注目されています。
肥満者では,RA系の活性化が亢進しています。
RA系の活性化は,高血圧症を発症する前からすでに亢進しており,それをブロックすることが,後の病態形成抑制に重要であることが,カンデサルタンを用いたTROPHY試験で明らかにされています。
糖尿病の発症に対しても,RA系の活性化は関与していると考えてよいでしょうか。

綿田 
インスリン抵抗性の改善は,多くの降圧薬で認められています。
末梢血管が拡張し骨格筋の血流量が増加すれば,糖取り込みの機会が増えますから,インスリン抵抗性が改善されます。
しかし,RA系抑制薬は,ほかの降圧薬と比較しても糖尿病の新規発症を抑制しており,その機序をインスリン抵抗性改善のみでは説明できません。
 
糖尿病の発症に対しきわめて重要なのが,β細胞機能です。
ただ,β細胞は酸化ストレスに非常に弱く,わずかな酸化ストレスでインスリン遺伝子の発現やインスリン分泌量を調整するグルコキナーゼ遺伝子の発現が低下してしまいます。
この酸化ストレスが生じる引き金になるのが,グルコースでありRA系の活性化です。
実際,糖尿病のモデルラットでは,β細胞のアンジオテンシンII受容体の発現が亢進しています。
そして,肥満2型糖尿病モデルであるdb/dbマウスでは,酸化ストレスの指標である8-OHdGの発現亢進,ミトコンドリアの肥大が認められ,インスリンの分泌も低下します。
しかし,このdb/dbマウスにカンデサルタンを投与すると,酸化ストレスが軽減し,インスリン分泌顆粒やミトコンドリアが正常化し,インスリン分泌も軽度ではありますが,改善します(図2)。
これらのことから,カンデサルタンは,膵β細胞の機能障害改善にも寄与していると思います。

小田原 
大変よい成績ですね。
RA系の活性化と膵β細胞障害との関係を明快に示した成績だと思います。
ARBは,骨格筋でのインスリン抵抗性を直接的に,また,血流改善を介して改善するとされてきました。
それに加えて,膵臓にも作用して,糖代謝を改善するということですね(図3)。

 

糖尿病の合併がイベントリスクを高めるのか?
横井 
横井 
心血管系イベント(CVD)を専門とする者の意見として,やはり,高血圧症と糖尿病が合併することを防ぐ一次予防を,多くの臨床医が心がけるべきだと思います。
なぜなら,私の施設で冠動脈インターベンション(PCI)を施行した患者さんの背景を調べると,高血圧症あるいは糖代謝異常だけというよりも,両者の合併例のほうが,リスクがきわめて高くなるからです。
心筋梗塞は,動脈硬化が徐々に進行して発症するのでなく,血管に形成されたプラークが突然破裂して発症します。
このプラークの破裂は,高血圧症に加えて肥満,糖・脂質代謝に異常を認めるなど,いわゆるMetSの方ほど多いのです。
特に,若年の男性に多いです(図4)。
ですから,リスクを増やさない,可能であればリスクを減らす治療が重要なのです。

光山 
PIUMA研究では,高血圧症の治療中に新たに糖尿病が発症した例のCVDの発症率は,糖尿病合併高血圧症例とほぼ同等であると報告されています。
同様の傾向がCASE-J試験でもみられたと,2007年の欧州高血圧学会で発表されています。

小田原 
CVDの予防において,降圧療法は非常に重要です。
その一方で,糖代謝を悪化させる降圧薬があることも事実です。
これは,諸刃の剣というべきか,血圧を下げるメリットは大きいのですが,糖代謝の異常を助長させる,さらには糖尿病を発症させるのです。
そうなると,長期的な生命予後という観点では,糖代謝を改善する薬剤が投与されている患者さんに比べると,大きな差になって現れてくるでしょう。
 
エビデンスが重視されていますが,大規模試験の観察期間は長くても5年程度でしかなく,糖代謝の悪化による影響が明らかになる前に臨床試験は終了してしまいます。
糖尿病の新規発症に関する成績を評価しないという意見もあるようですが,中・長期的な視点で臨むと,糖代謝に好影響を与える降圧薬が,まず選択されるべきだと思います。

横井 
心筋梗塞の再発を防ぐという観点からも,「糖尿病を発症させない降圧療法」は重要です。
糖尿病患者さんは,バルーンだけに限らず,ベアメタルステント,さらには,薬剤溶出性ステント(DES)を用いても,イベントの再発リスクは,依然として高いままです。
PCIは,心筋梗塞を起こした責任病変の治療はできますが,全身の至る所の血管に生じているプラークの破裂を防ぐことはできません。
消防士が火事場で火を消すことはできても,火事を予防できないのと同じです。
そのためにも,全身療法である薬物療法をしっかりと行わなければならず,薬剤の選択にこだわる必要があると考えます。

光山 
イベントの再発を防ぐ降圧療法には,やはり,血管の内皮機能を改善する薬剤,たとえばARBが必要だということですか。

横井 
その通りだと思います。
それは,カンデサルタンのエビデンスを振り返れば明らかです。
いずれも降圧療法が必要な患者さんを対象としていますが,OGAKI研究では,安定期にある虚血性心疾患(CHD)患者さんの心イベントリスクを45%低下させました。
また,HIJ - CREATE試験では,急性冠症候群をも含むCHD患者さんを対象にしており,有意ではありませんが,カンデサルタン投与群のほうがCVDを軽減させています。
現在,DES使用例の予後に対するカンデサルタンの有効性を検討する4C研究も進行中です。
このように,カンデサルタンには,日本人を対象にしたエビデンスがあります。
実は,日本人を対象にしている点が重要で,日本人のプラーク破裂には,スパズムの関与が大きいと言われています。
その予防にはNOを増加させることが重要なのですが,この点は,理論的にはARBよりもACE阻害薬のほうが有利と考えられていました。
しかし,カンデサルタンとACE阻害薬を比較したHIJ - CREATE試験のpost hoc解析では,CVDの発症に全く差が見られません。
それだけ,カンデサルタンは血管内皮機能の改善が優れた薬剤なのかもしれません。
そうなると,ほかのメリットを含めて総合的に考えると,カンデサルタンを用いたほうが効果的であると判断してよいと思います。

 

糖尿病の発症抑制を考慮した降圧療法とは?
小田原 
降圧療法中の糖尿病新規発症を抑制するエビデンスを振り返ってみますと,初めての報告がHOPE試験で,ACE阻害薬が糖尿病の発症を32%も抑制することがわかり,ARBのstudyでも解析されるようになりました。
β遮断薬と比較したLLIFE試験,プラセボが対照のCHARM試験,そしてVALUE試験やCASE - J試験では,Ca拮抗薬と比較しています。
このなかには,糖代謝を悪くする降圧薬と比較した試験もありますが,いずれも,ARB群が糖尿病の新規発症を抑制しています。
ACE阻害薬を用いたDREAM試験では,糖尿病の発症抑制は認められませんでしたが,糖代謝は改善しています。 
高血圧症の治療は,血圧を下げることが第一義です。
一時代前に比べて,降圧効果が優れた薬剤が多い現代では,そのなかで,どのような薬剤をベースにするかが大切で,リスクを1つでも減らすために,糖代謝に好影響を与えるRA系抑制薬は第一選択薬に入るでしょう。
IGTはもちろん,糖尿病をすでに認める方も,その悪化を防ぐためにも,ベース薬として優れています。

光山 
HIJ-CREATE試験では高血圧症を伴う冠動脈疾患患者さんを対象にしていますが,ACE阻害薬と比較しても,カンデサルタンが糖尿病の新規発症リスクを63%も低下させましたね。

小田原
その発表の少し前にネットワーク・メタ解析という方法で各種降圧薬の糖尿病発症リスクが報告されました。
それによると,糖尿病の発症抑制効果は,ACE阻害薬よりもARBのほうがやや優れる傾向にありました(図5)。
HIJ - CREATE試験については,まだ,AHAのlate-breakingで発表になったばかりなので詳細がわかりませんが,もし,投与量などの条件が同等であるとすれば,ARBが優れていることの証明になりますね。
ただ,一番大事なのは,直接比較することですね。

横井 
繰り返しになりますが,現代人のCHDはプラークの破裂によって突然起こります。
それが,心臓突然死にもつながるので,プラーク安定化のためにもリスクを増やさないことが大切です。
糖尿病になりにくい降圧薬があるのなら,患者さんのためにも,それを選択すべきです。
 
もう1つ付け加えたいのが,高血圧症に糖尿病を合併すると腎機能が低下しやすくなります。
腎機能が低下すると,PCIを行う際に,造影剤腎症を懸念しなければいけません。
そして,何よりも院内死亡率が高く,長期予後も悪くなります。

HIJ - CREATE試験の対照群の7割以上には,腎保護のあるACE阻害薬が投与されていたにもかかわらず,カンデサルタンが腎機能低下例のCVDを21%も抑制しました。
非常にインパクトのある成績です。
臨床のあらゆる場面で,カンデサルタンの効果が発揮されると期待できる成績です。

光山  
本日は,糖尿病を専門とされる先生,そして,循環器疾患を専門とされる先生から,高血圧症と糖尿病の合併について興味深いお話を伺うことができました(表)。
糖尿病の新規発症を抑制することは臨床的にも非常に意義深いことを,あらためて実感しました。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=OGAKI&perpage=0&order=0&page=0&id=M41160941&year=2008&type=allround
(図表についてはこのサイトで確認下さい)

出典 Medical Tribune 2008.4.17
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

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