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ごく最近聴いた学術講演会で、降圧剤の種類によらず降圧することで心血管死を減らすことが出来るという話がありました。
これはサイアザイド系降圧利尿剤を使った降圧でも同様であるということでした。
結構古い文献でのスライドもありましたが、ここは温故知新。
謙虚にその事実を受け止めなければいけないと思いました。
私達は、臓器保護作用が期待できるという比較的新しい降圧剤を処方することによって、一番重要な”厳格な降圧”をおろそかにしているのかも知れません。
ARBの講演会全盛の中、余りにもクラスエフェクトだの多面的作用だの薬剤特異性だのといった話が多かったような気がします。
昨今の厳しい降圧目標達成には、大抵は2剤以上の降圧剤が必要になります。
したがって、どのようなコンビネーションが適しているかといった各症例へのテーラーメイド治療の発想が一番重要かも知れません。
この講演会でも、以下の記事中の図がスライドで紹介されていました。
血圧上昇に伴い総死亡リスクが直線的に増加
日本人の総死亡リスクは男女とも血圧上昇に伴い直線的に増加することが,地域住民約18万人を対象とした国内13コホートの統合データ解析で明らかにされ,Hypertension(2008; 51: 1483~1491)に掲載された。
特に,より若い年齢層の男性の血圧上昇に伴う調整総死亡リスク増加が顕著で,収縮期血圧10mmHg上昇当たり40歳代で1.37倍,50歳代で1.23倍であった。
今回の知見は,循環器領域では日本人単独で初の統合データ解析であり,公衆衛生施策や高血圧治療指針にも影響を与えそうだ。
若年層は血圧上昇に伴う死亡率増加が顕著
今回の多施設共同研究EPOCH-JAPAN(the Evidence for Cardiovascular Prevention From Observational Cohorts in Japan Research Group,主任研究者:滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学・上島弘嗣教授)の解析責任者である同科の村上義孝特任講師は「わが国の代表的な13のコホート研究の協力によりデータを統合し,巨大データベースを構築することで,個々のコホートでは十分な数にない40歳代や高血圧前症についても多数のサンプルが集まり,信頼性の高い解析結果が得られた」と,日本人における血圧と総死亡率の関連を示す詳細な解析結果を,男女別,40~80歳代の年齢階級別に提供した意義を述べた。
EPOCH-JAPANの対象は,北海道から九州に分布する10の地域コホートと3つの全国規模コホートの計13コホートで構成され,それぞれ1,000例以上の規模と実測された健診データ,10年前後の追跡期間を有する。
40~80歳代男女18万8,141例のうち,心血管疾患の既往のない17万6,389例(男性6万5,463例,女性11万926例)を解析対象とし,血圧上昇とその後の総死亡との関連について,ポワソン回帰分析を用い,喫煙,飲酒習慣,BMIについて補正したハザード比(HR)を推定した。
その結果,収縮期血圧,拡張期血圧とも10mmHg上昇するごとにその後の総死亡リスクが直線的に増加する傾向が見られた(図)。

70~80歳代に比べて40~50歳代では死亡率は低いものの,血圧上昇に伴う総死亡リスク増加が顕著であった。
また,降圧薬服用者を除いた解析でも同様の傾向が示されている。
血圧10mmHg上昇当たりの総死亡リスクは40歳代男性で1.37倍に
EPOCH-JA PANでは,平均追跡期間9.8年で1万7,757例の死亡が認められた。
収縮期血圧10 mmHg上昇当たり総死亡の多変量調整ハザード比(HR)は,男性40歳代,50歳代,60歳代,70歳代,80歳代の順に1.37,1.23,1.16,1.14,1.09。
女性はそれぞれ1.19,1.16,1.21,1.12,1.07(図)。

米国高血圧合同委員会(JNC7)の分類と総死亡との関連を見ると,男女ともすべての年齢層で血圧が上昇するほど総死亡リスクが増加する傾向が示された。
特に男性の40~50歳代,女性の50~60歳代では,正常血圧に比べて,ステージ2高血圧では総死亡リスクの増加が著しく,女性の50歳代では高血圧前症でもリスクが有意に増加していた。
正常血圧に対する高血圧前症,ステージ1高血圧,ステージ2高血圧の総死亡の多変量調整HRは,40歳代男性では,それぞれ1.45(95%信頼区間0.89~2.38),1.28(同0.70~2.34),3.38(同1.76?6.50),50歳代女性では,それぞれ1.33(同1.06~1.68),1.56(同1.19~2.04),1.85(同1.30?2.64)だった。
高血圧前症レベルのPAF約10%
血圧上昇の予防による死亡減少効果を示した指標である人口寄与危険度(PAF)は,対象者全員が正常血圧であれば男性22.7%,女性17.9%,正常血圧か高血圧前症であれば男性11.9%,女性10.9%減少すると推定された。
血圧は加齢に伴う上昇があり,高血圧予防では高血圧前症レベルの目標設定が現実的と考えられるが,それでも約10%の死亡率抑制効果が期待できることが示された。
滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学の村上義孝特任講師は「公衆衛生施策の立案などに際して詳細な基礎資料を提供することができた。
血圧上昇に伴う総死亡リスクは40~50歳代では急峻に,高齢者においても着実に上昇しており,"The lower the better"の原則が確認された。血圧上昇による死亡リスクはある閾値を超えると増加するのではなく,直線的に増加することが明らかになった」と話す。
また,若年層では死亡率そのものが低く,高血圧前症の予防に関しては議論が必要だが,40~50歳代の未治療高血圧に対する受診勧告の重要性は再認識すべきと指摘している。
心血管死亡に特化した解析へ
データ統合解析は国際共同研究が主流で,英オックスフォード大学のグループの世界各国61コホート,100万人を対象とした報告(Lancet 2002; 360: 1903-1913)が最大である。
中高年世代では血圧が心血管死亡に強く関連することや,比較的若い年齢層の40~60歳代では死亡率が低いものの血圧上昇に伴うリスク増大はやはり顕著で,収縮期血圧20mmHg上昇当たりの心血管死亡リスクは2倍に上昇すると報告されている。
ほかに,アジア・オセアニア地域の国際共同研究( J Hypertension 2003; 21: 707-716)もあるが,日本人に絞った統合データの解析は今回が初めてである。
今回の研究では,血圧と心血管死亡との関連が検討されていないが,一般に心血管死亡は総死亡の3~4割を占めており,本研究結果はそれを如実に反映していると見ることはできる。
研究グループでは,既に各コホートから約20項目のデータを収集し,さらなるデータベースの整備を進めている。
喫煙習慣あるいは肥満と総死亡との関連について,さらに心血管死亡をエンドポイントとした解析も計画されており,今後の進展が期待される。
出典 Medical Tribune 2008.7.24
版権 メディカル・トリビューン社

「Heart and Kidney - 私たちの近くにあるもの」
制作 Heart and Kidney制作委員会
(シオノギ製薬 配布物)
<コメント>
きょうの記事や、今や旬(?)のCKDの面からは、血圧は"The lower the better"ということになります。
2型糖尿病を有する米国先住民(インディアン)における無症候性のアテローム動脈硬化症の進展を比較検討したStop Atherosclerosis in Native Diabetics Study(SANDS)で、115 mmHg以下まで積極的に下げる群(積極治療群)では、標準治療群と心血管疾患イベントの発生率には差はなく、降圧薬に関係した有害イベント発生率と重度な有害イベント発生数は,積極治療群で高かったと報告されています。
何だかよくわからなくなってしまいます。
糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値
http://wellfrog2.exblog.jp/d2008-07-29
<関連サイト>
高血圧死の危険、40代男性突出 厚労省が18万人調査
http://www.asahi.com/science/update/0705/TKY200807050110.html
http://hs-web.shiga-med.ac.jp/asahi080705.pdf
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21
http://wellfrog.exblog.jp/
があります。
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