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AHA2007に関する記事で勉強しました。
DES留置患者における遅発性ステント血栓
重要視される抗血小板療法による抑制
冠動脈疾患のステント治療では、遅発性ステント血栓症(Late ST:Late stent thrombosis)の克服が大きな課題となっている。
そこで、2007年11月に、米国オーランドで開催された米国心臓協会・学術集会(AHA2007)の「Late Stent Thrombosis:Mechanisms,Modulators and Clinical Implications」のセッションでは、Late STの発症機序、リスクの定義、適応、患者教育、経済などの面から検討が行われた。
米国 CVPath Institute, Inc.のRenu Virmani氏は、第1世代DES(Drug-Eluting Stent:薬剤溶出性ステント)留置例におけるLate STの病理所見や解析結果などを示しながら、その発症機序について解説した。
まず、DESによる血栓症の主な原因としては、長いステント、ステントの重なり、不適切な留置(malapposition)、新生内膜による被覆の遅れ、ストラット金属やポリマーに対する過敏性(炎症反応)、分岐部のステント挿入、心筋梗塞と不安定プラーク、再狭窄などを指摘した。
また、Late STのリスクを増加させる患者側の要因としては、糖尿病、腎不全、駆出率低下、抗血小板療法コンプライアンスを挙げた。
心筋梗塞におけるDESの使用に関しては議論があるが、Virmani氏は、プラークの破綻、TCFA (Thin Cap Fibroatheroma)を伴った心筋梗塞例では、責任病変部分における新生内膜形成が十分でなく、炎症反応が生じているストラットが多いために血栓症が発症することが多いので、DESは使うべきではないと訴えた。
■ 抗血小板療法のコンプライアンスが最も重要
症例登録のデータやメタアナリシスによって、DESとBMSを比較した多くの研究が行われているが、その結果は異なっており、その原因はステント血栓症の定義の不統一があると考えられている。
そこで、米国とヨーロッパの研究者、企業、行政によってARC (Academic Research Consortium)という組織が設置され、ステント血栓症はDefinite/Confirmed、Probable、Possibleという3段階に分けられた。
Definite/Confirmedは、血管造影または剖検によってステント閉塞あるいは血栓症のエビデンスが認められる新規の急性虚血イベント。
Probableは、30日以内の原因不明の死亡および血管造影または他の責任病変によることを示すエビデンスがない標的血管における心筋梗塞。
Possibleは30日を過ぎた原因不明の死亡とし、標的病変における再開通処置に伴うイベントも含む。
また、発症時期に関しては、Early(Acute:24時間以内、Subacute:24時間~30日)、Late (31日~1年)、Very Late(1年~)に分けられた。
米国のベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのDonald Cutlip氏は、このARC分類の意義について述べ、さらにそれを用いた試験結果や解析結果を紹介した。
DESとBMSの無作為化比較試験では、1年後以降、DES群でDefinite/Probableのリスクが約0.2%/年の率でBMS群を上回ることを示すデータが報告されている(Mauri L et al. N Engl J Med.2007; 356:1020-1029)。
また、米国の症例登録EVENTのデータでステントの適応内使用 (On-Label)群と適応外使用 (Off-Label)群を比較すると、Definite STのリスクが適応外使用群において有意に高いことを示すデータが報告されている(Win H et al. JAMA 2007; 297:2001-2009)。
これらはARCの定義を用いて解析されており、今後、他の試験結果や解析結果と比較するうえで意義は大きい。
Early、Late STの大きなリスク要因としては、2剤による抗血小板療法(DAT:dual antiplatelet therapy)に対するコンプライアンスの欠如が指摘されており、コンプライアンスの欠如によって、ステント挿入後6~9カ月のリスクは、20倍以上になると報告されている。
そこでCutlip氏は、クロピドグレルに対するコンプライアンスは、Early、Late STのリスク要因として最も重要である、と指摘した。
また、Very Late STの主要なリスク要因は、新生内膜形成の遅れであり、DATが有効であるかどうかは、まだ明確になっていないと言及した。
■ DESの使用が推奨される患者は
フランス パリ大学のPhillipe Gabriel Steg氏は、抗血小板療法からみた、DESの適応について報告した。
BMS留置患者に比べて、DES留置患者ではLate STの発症率が高いことが示されている。
しかし、死亡率に関するDESとBMSの比較では、異なった結果が報告されている。
例えば、スイスベルン大学で行われた無作為化試験のメタアナリシスでは、DES群とBMS群の間で4年間の死亡率に差はみられていない(Settler et al. Lancet 2007; 370:937-948)。
しかし、スウェーデンの症例登録SCAARのデータでは、4年間の死亡+心筋梗塞の率は、DES群においてBMS群より高くなっている(James SK et al.ESH2007)。
さらに、米国マサチューセッツ州における2003~2004年のステント挿入患者をDES群とBMS群に分け、5441対について傾向適合解析を行った結果では、死亡率と再開通処置率はBMS群で有意に高く、心筋梗塞は有意差が認められていない(Mauri L et al. AHA 2007)。
一方、DES留置患者におけるステント血栓症の発症率は、クロピドグレル中止によって有意に高くなることが示されている(Spertus JA et al. Circulation 2006; 111: 341-348、Eisenstein et al. JAMA 2007; 297:159-168)。
こうした研究結果は、DATを伴わないDES挿入例では、期待した結果が得られないことを示していることから、Steg氏は出血やその既往がある患者、出血のリスクが高い患者、長期のDATに対するコンプライアンスが期待できない患者、癌や手術・生検の予定があるためにDATの早期中断が必要になる患者、長期の経口抗凝固薬の服用が必要な患者では、DESは挿入すべきでないと述べた。
また、DES留置例では再狭窄率が低いことから、再狭窄のリスクが高い病態ではDESを使用すべきであると指摘。
これらの病態としては、糖尿病、小血管 (3.0mm未満)、長い病変 (20mm以上)が挙げられる。
カナダの症例登録(Cardiac Care Network of Ontario)の1万3353例のデータでは、標的血管径3.0mm未満、病変長20mm以上、糖尿病の3リスク要因のうちの2~3要因を保有する症例は半数以下で、過半数は0~1要因しか保有していない。これら低リスク患者では、BMSを使うことができる、と同氏は指摘した。
STEMI (ST elevation myocardial infarction:ST上昇型心筋梗塞)では、1年以内に再度インターベンションを行う率は、BMS群よりもDES群で低いと報告されているが、退院後2年間の死亡率はBMS群よりもDES群の方が高いと報告されている。
したがって、STEMIにおいてDESを使うかどうかは、これらのことを考慮して決めなければいけない、とSteg氏は強調した。
また、びまん性病変で多枝の糖尿病性血管病変、STEMIに対する1次的PCI、適応外あるいは未試験の適応におけるDESの使用に関しては、ケース・バイ・ケースの判断が求められると述べた。
■ ステント治療における新しいインフォームドコンセント
ミズーリ大学のCarole Decker氏は、ステントの選択に際し、患者に十分な情報を提供して決定に参加してもらうことの重要性を強調し、その目的に沿ったインフォームドコンセントの新しい方法を紹介した。
米国の症例登録PRIMIER (The Prospective Registry Evaluating Myocardial Infarction: Events and Recovery) のデータでは、急性心筋梗塞でDESを挿入した患者で、1カ月後にクロピドグレルを服用していなかった患者は13.6%に上っている。
また、1カ月以後1 年までの死亡率は、クロピドグレル服用中止群では7.5%で、服用群の0.7%より有意に高いことが示されている。
こうしたことから、Decker氏は、抗血小板療法に対するコンプライアンスを高めるうえで患者教育が重要視されると語った。
Decker氏が紹介した新しいインフォームドコンセントの方法はPREDICT (Patient Refined Expectations for Deciding Invasive Cardiac Treatment) と呼ばれ、これによって各患者のリスク評価、報告データによる死亡率・血管合併症・再狭窄率の評価、患者への情報提供が行われる。
患者が書類を読んだ率は、従来の方法では41%であったのに対し、PREDICTでは71%に上った。
また、決定に参加したという意識をもった患者の率も従来の方法44%に対し、PREDICTで65%だった。この方法を介して医師と話し合い、DESを選択した患者で抗血小板療法の重要性の理解が深まることが期待できるとDecker氏は述べた。
■ ステント血栓症発症抑制やクロピドグレルの投与期間の短縮が目標
米国 Saint Luke's Mid America Heart InstituteのDavid J. Cohen氏は、DESによる治療を経済面から検討した結果について報告した。
米国の高齢者医療保険制度であるMedicareの1998~1999年のデータでは、PCIを受けた患者の医療費は、再狭窄を起こさなかった場合の 4087ドルに対し、再狭窄を起こした場合は2万3808ドルで、その差は1万9721ドルとなっており、補正すると再狭窄によって生じるコストは1万 8944ドル、PCI患者1人当たり2550ドルの費用増になる。
一方、1ステント当たりのDESの費用はBMSより1400ドル高く、1処置当たり1.6~1.7のステントを使う。
またDESによる再狭窄の抑制率は70~80%であり、DATのコストが最低限1200ドル必要になる。
医療の費用対効果の検討では、単に医療費を節約することではなく、得られる生命の延長や質の向上と比較して費用を判断する必要がある。
その指標としては QALY (quality-adjusted life-year:質調整生存年数)とQOLがある。
再狭窄を避けることによってQOLは高くなり、再狭窄1回を回避するために社会的に受け入れられる費用が1万ドルとすると、BMSでTVR (target vessel revascularization)の率が10%を超える病態では、DESの費用対効果の方が優れているとCohen氏は述べた。
これらの病態としては、糖尿病で血管径が小さく、病変長が長い場合などが該当する。
症例登録のデータでは、ステント挿入後の1年間の医療費は、DES群ではBMS群に比較して1894ドル低くなっており、再開通処置1回を回避するための費用は760ドル、QALY (quality-adjusted life-year:質調整生存年数)1年を得るための費用は5105ドルになり、費用対効果は優れている。
また、ステント血栓症が発症した場合のコストを1イベント当たり1万7000ドル、ステント血栓症(Early+Late+Very Late)を年1.5%とすると、1ステント当たり400ドルの費用増でステント血栓症を25%以上抑制できれば、社会的に受け入れられると考えられる QALY当たりコスト5万ドルが達成できるとした。
さらに、DESのコストを1ステント当たり2000ドル、DESによるTVRのリスク抑制率を70%、BMSでのTVRの率を14%、BMSでのDAT を1カ月とすると、再開通処置1回を避けるための費用を1万ドル以下にするためにはDATの期間は18カ月以内という試算結果を示した。
最後にCohen氏は、DESは多くの場合、費用対効果は優れているが、再開通処置率は毎年低下しているため、今後は、ステント血栓症発症率やクロピドグレルの投与期間の短縮が目標になると結論した。
(日経メディカル開発)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/special/ATT08/ac/topics/200803/506038.html
読んでいただいてありがとうございます。
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