戯れ言たれる侏儒
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< 抗血栓療法の出血リスク | メイン | ARBによるCV Continuum阻止... >

冠攣縮の関与の多い日本人の狭心症の治療はCa拮抗薬の役割は大きいといわざるを得ません。
数多くのCa拮抗薬が発売されている現在、先生方はどの薬剤を主としてお使いになってみえますか?
異型狭心症の患者さんを診た場合、どの薬剤を選択するのか、どのタイミングで服用するように指示するのか、投与量をどれだけにするのか。
このことはまさに循環器内科医の醍醐味であり、循環器科を選択してよかったと思う瞬間でもあります。
患者さんの個人差はあるでしょうが、このように薬剤の使用法によってものの見事に発作が抑えられたり、逆に悪化するかが分かるので
どの薬剤がよいかは一目瞭然です。
そんな中で、今日とりあげるのは、バイエル社の企画ということで当然ニフェジピンのお話です。
 

特別企画
座談会
狭心症に対する薬物療法を考える
日本人の冠動脈疾患の特徴とCa拮抗薬ニフェジピンによる治療意義
  
高齢化社会を迎え,冠動脈疾患を含む脳・心血管イベント抑制が大きな課題になっているが,日本人は欧米人と比較して異型狭心症の頻度が高く,特に冠攣縮(スパズム)を伴うことが少なくない。
薬物療法においては,これらの特徴を考慮することが重要であるが,ジヒドロピリジン(DHP)系Ca拮抗薬ニフェジピンは,30年以上にわたり狭心症に対して頻用されており,近年,血管保護を示す成績も報告されていることから, 高い有用性が期待される。
本座談会では,狭心症に対する薬物療法を中心に,日欧のエキスパートの先生方に討論頂いた。
注)ACTION試験, INSIGHT試験は本邦未承認の1日1回型ニフェジピン製剤を用いた大規模試験です。

出席者:
東北大学大学院医学系研究科 循環病態学 教授
下川 宏明 氏(司会)
名古屋市立大学大学院医学系研究科 心臓・腎高血圧内科学 准教授 
土肥 靖明 氏 
スイス・チューリッヒ大学
Noll G 氏 

日本人における冠動脈疾患の特徴と治療のあり方
下川 
本日は,狭心症に対する薬物療法について,特に日本人の冠動脈疾患の特徴を踏まえてCa拮抗薬の意義を検証してみたいと思います。
まず,日本人の狭心症は,白人に比べて冠攣縮の頻度が高いことが知られています。急性心筋梗塞後患者を対象に実施された,日本とイタリアの共同研究の結果では,アセチルコリン誘発による冠攣縮発現頻度は,白人に比べ日本人では約3倍高いことが示されており,日本人の冠動脈は冠攣縮を起こしやすいことがわかっています。
また,日本人では心筋梗塞関連部位に冠攣縮が多くみられるのに対して,白人では心筋梗塞との関連は認められていません図1)。

 

Noll 
冠攣縮を引き起こす原因について日本と欧米で相違があるのでしょうか?

下川 
酸化ストレスや高血圧,糖尿病,脂質異常等が引き金になって内皮障害を起こし,冠攣縮を誘発しているのではと言われていますが,現時点では不明です。
一方で日本人と欧米人,特に白人では冠動脈疾患の病態に違いがみられることから,治療方針や使用薬剤にも相違が出てしかるべきだと思います。
欧米の第一選択薬はβ遮断薬ですが,冠攣縮の頻度が高い日本では,ニフェジピンの登場以降,DHP系Ca拮抗薬が頻用されてきました。
この違いについてそれぞれの有用性を検証するためにJBCMI試験が実施され,心血管死,不安定狭心症,非致死性心筋梗塞,脳卒中の発現率がβ遮断薬,DHP系Ca拮抗薬の両群で同等であったことが示された一方で,冠攣縮による不安定狭心症と心不全の新規発症頻度はCa拮抗薬群で有意に抑制されたことが明らかにされました()。

 

Noll 
Ca拮抗薬群で心不全の新規発症が有意に低下したのはなぜでしょうか。

下川 
最大の要因は,心機能低下例に対する当時のβ遮断薬の用量設定が不適切であったと考えられています。
その一方で,Ca拮抗薬が心不全の発症を抑制したのは,心筋梗塞部位に頻発する冠攣縮を抑制したことが,病態の進展・悪化を抑制した結果であると考えられます。
いずれにせよ,Ca拮抗薬は安全性に優れ,また冠攣縮による不安定狭心症の発症予防にも優れた薬剤であるといえます。

1日1回型ニフェジピン製剤の有用性を実証したACTION試験
下川 
90年代にDHP系Ca拮抗薬は,メタ解析の結果から冠動脈疾患の予後を悪化させる報告が出て大きな論争が巻き起こりました。
しかし,このメタ解析の対象となっていたのは,短時間作用型Ca拮抗薬であり,現在の主流である長時間作用型Ca拮抗薬にこの結果が当てはまるのかどうかについては疑問の声が少なくありませんでした。
特に頻用し,かつ十分な治療実績をもつ日本の循環器専門医は懐疑的でした。
そのような中で,長時間作用型Ca拮抗薬の有効性と安全性を実証したのが,2004年に報告されたACTION試験でした。

既に十分な治療を受けている安定狭心症患者を対象に,1日1回型ニフェジピン製剤の有効性と安全性をプラセボ対照二重盲検法により比較検討したところ,ニフェジピン群では死亡や心筋梗塞の発症率を増加させることなく,脳卒中や狭心症悪化,冠動脈バイパス術をプラセボに比べ有意に減少させ,さらには心不全の新規発症までも有意に抑制しました(図2)。


 

つまり長時間作用型ニフェジピン製剤は虚血性心疾患患者の予後改善に有用であると考えられます。
また,長時間作用型Ca拮抗薬が心不全の新規発症を抑制したことを実証したのはこの試験が初めてですが,この結果がもたらされた背景として,どのようなことが考えられますか。

Noll 
心不全の新規発症抑制を含めACTION試験の結果は,主にニフェジピンの強力な降圧効果によってもたらされたと考えています。
高血圧は,冠動脈疾患に加え,慢性心不全の進展要因であるからです。
事実,試験開始時に高血圧を合併した患者のみで比べると,ニフェジピン群では心不全の発症抑制がより大きいことが示されています。
一方で,冠動脈バイパス術の施行が有意に減少したことは,降圧によらない効果=血管保護効果がニフェジピンにはあるのではないかと考えられます。

ニフェジピンの降圧以外の作用を検証する
下川 
ACTION試験で示された,1日1回型ニフェジピン製剤によるイベント抑制の機序を考える上で考慮すべきことは,Noll先生らが報告された内皮機能へのニフェジピンの作用です。Noll先生,ご自身からご紹介頂けますか。

Noll 
内皮機能の異常が動脈硬化進展と密接な関連があるとの考えに基づいて,1日1回型ニフェジピン製剤(本邦未承認GITS製剤)による冠動脈血管内皮機能の改善について検討を行いました。
ニフェジピン群では,短期間に血管内皮機能の改善がみられ,その作用はニフェジピンの投与継続により6か月以上の長期にわたって維持されることを確認しています。
また,同時に,プラーク進展抑制も確認され,IVUSによる検討では動脈硬化進展抑制が認められています。

下川 
1日1回型ニフェジピン製剤による冠動脈血管内皮機能の影響については,土肥先生は炎症との関連性を示す興味深いデータを報告されていますが,ご紹介頂けますか。
土肥 
PCIを施行した安定労作狭心症17例を,1日1回型ニフェジピン製剤(ニフェジピンCR)群8例,プラセボ群9例に無作為に割り付け,4か月間追跡したところ,ニフェジピンCR群で,冠循環中の炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)濃度が投与前と比較して有意に低下していました(図3・右)。
また,これに伴い,冠動脈の血管内皮依存性弛緩反応もニフェジピンCR群で有意な改善が認められました(図3・左)。

 

Noll 
CRP濃度の低下と血管内皮機能の改善が相関している点は,非常に興味深いですね。

ニフェジピンは高リスク高血圧症患者の血管内皮機能を改善するのか?
下川 
さらに土肥先生は,高血圧患者においてもニフェジピンCRによる血管内皮機能の改善についても報告されていますね。

土肥 
軽症高血圧症例を対象に検討したところ,ニフェピンCR群では対照群と比べて,前腕動脈内皮機能の改善とともに,EPC(血管内皮前駆細胞)の有意な増加が認められました(p<0.05)。
またEPC増加と血管内皮機能の改善には有意な正の相関を認めました。

下川 
ニフェジピンがEPCを増加させ,結果的に内皮機能が改善するということですね。
それではその機序はどのように考えられますか。

土肥 
高血圧患者から採取した末梢血単核球を培養し検討したところ,ニフェジピンはEPCの数だけでなく,分化・増殖遊走能といった機能をも改善することが明らかになりました。
酸化ストレスはEPCの機能を低下させますが,ニフェジピンは酸化ストレスに対するEPCの抵抗性を高めました。
したがって,このEPCに対する作用にはニフェジピンのもつ抗酸化作用が少なからず関与しているものと考えます。
また,このとき用いたニフェジピンの添加濃度は,通常の臨床用量に相当することがわかっています。

Noll 
私たちの研究では,1日1回型ニフェジピン製剤の血管内皮機能改善の機序として,エンドセリン1への拮抗作用を明らかにしています。
本態性高血圧症21例に対して,6週間1日1回型ニフェジピン製剤(本邦未承認GITS製剤)を投与したところ,前腕動脈内皮機能が有意に改善しました(p<0.05)。
同時に,ノルエピネフリン,あるいはエンドセリン1に対する前腕動脈の収縮反応が有意に抑制されたことも認められています。
さらに興味深いことに,ニフェジピンによるエンドセリン1拮抗作用が認められたのは,高血圧症患者と脂質代謝異常患者のみで,血圧が正常な場合には拮抗作用を認めませんでした。
つまり,ニフェジピンは内皮機能障害が進展している患者の内皮機能を修復しており,機能障害が進展している高リスク患者ほどその改善作用は大きいと考えられます。

下川 
高リスク患者ほど,血管内皮機能の改善が期待できる点は面白いですね。

Noll 
今後は糖尿病合併高血圧症患者においても検討をすべきであると考えています。
既に1日1回型ニフェジピン製剤は,INSIGHT試験において糖尿病の新規発症を抑制することが示されていることからも,少なくとも糖代謝には悪影響は与えませんので,内皮機能の改善が得られるとすれば臨床的メリットが大きいと考えられます。

ニフェジピンは冠攣縮を伴う狭心症への第一選択薬となりうるか?
下川 
既に述べました通り,日本人では冠攣縮の頻度が高く,特に心筋梗塞関連部位に冠攣縮が多く認められるという事実には十分な注意を払うべきです。
したがって狭心症患者では常に冠攣縮を念頭に置き,冠攣縮抑制を考慮した治療法を選択することが必要といえます。

Noll 
冠攣縮の発現が少ないとされる欧米人でも,冠動脈造影時に攣縮が誘発されるケースはさほど珍しいことではありません。

下川 
そのような症例ではどのような薬剤を選択されていますか。

Noll 
1日1回型ニフェジピン製剤を使います。
欧州において安定狭心症患者を対象とした大規模臨床試験において有用性が確認されたCa拮抗薬は,1日1回型ニフェジピン製剤のみだからです。

下川 
欧州においても,冠攣縮を認める狭心症に対しては,1日1回型ニフェジピン製剤が第一選択薬ということでよいでしょうか。

Noll 
はい,そう思います。

土肥 
日本において,異型狭心症の適応を有しているDHP系Ca拮抗薬は,ニフェジピンを含めて2成分しかありませんので,狭心症の薬物療法における第一選択薬になると思います。

下川 
本日は,狭心症をはじめとする冠動脈疾患に加え,血管保護におけるニフェジピンの有用性について両先生にお話いただきました。狭心症の薬物療法において本日の話題が参考になればと思います。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社

冠攣縮(冠スパスム)
http://blog.m3.com/reed/20071002/1
誘発冠攣縮
http://blog.m3.com/reed/20080223/1
日本人の狭心症 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080328/1
日本人の狭心症 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080329/1
第72回日循シンポジウム「冠攣縮」
http://blog.m3.com/reed/20080510/_72_
冠攣縮性狭心症・診断基準と薬物治療
http://blog.m3.com/reed/20080617/1
 

<番外編>
分子生物学のフロンティア   柳沢 正史 氏
筑波大学基礎医学系博士課程に在籍中の1987年,強力な血管収縮作用を持つ生理活性物質エンドセリンを発見,間髪を入れずその異性体と受容体を同定し,世界に衝撃を与えた米テキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンター教授兼ハワード・ヒューズ医学研究所研究員の柳沢正史氏。
神経ペプチド,オレキシンの研究でも注目され,ノーベル賞に近い日本人の1人と言われる。

猛スピードの研究で発見したエンドセリン
柳沢氏は1960年,東京・練馬の生まれ。生来,探求心が強く,物心が付くころには研究者の姿に自らの将来像を重ねていたという。
筑波大学卒業後,分子生物学に着目していた同大学の眞崎知生教授(現・大阪成蹊大学学長)の薬理学研究室に入局,その意を受けて岡崎国立共同研究機構に出向し,1年ほどで基礎を身に付けた。
この経験は研究室に戻ってほどなく,教授がテーマに掲げたミオシンのクローニングの成功という形で結実を見る。
 
次の目標を模索し始めた1987年の4月,同教室の助教授が米国で手に入れた教科書の一文に目がとまった。
「血管内皮細胞の培養上清中には,未知の血管収縮因子が存在する」。
早速,調べてみると,まだだれも本格的な研究に手を付けてはいない。
内皮由来弛緩因子(EDRF)が一酸化窒素という意外な正体を明かす前夜,時代の風が吹き寄せつつあった。
 
時を移さず研究に乗り出すと,7月には早くもブタの大動脈内皮の培養上清から未知の因子(エンドセリン)を単離できた。しかも,年内に構造の確定,相補的DNA(cDNA)のクローニング,ペプチド合成,薬理学的な作用の確認を完了,翌3月には最初の論文が英国の科学雑誌Natureに掲載された。
そのスピードたるやすさまじい。
「ペプチドの精製,測定や動物実験などにかかわる技術のアドバイザーがそろい,人的・経済的な資源にも恵まれたうえ,皆が本気で取り組んだことが成功につながった」

オーファン受容体へテーマを拡大
研究の終了と同時に母校の講師に就任した柳沢氏。
注がれる海外の視線は熱かった。
米ハーバード大学MGH,ジェネンテック社と相次ぐ誘いに心が動いた矢先,1985年のノーベル生理学・医学賞を受賞したテキサス大学メディカルセンター教授のジョセフ・ゴールドスタインとマイケル・ブラウンが声をかけてくる。
「世界第2位の医学研究財団,ハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)に研究員として迎え,テキサス大学にも准教授のポストを用意したい」―彼らの膝詰めの説得は直截だった。
 
そこで1991年4月,京都大学に転身する眞崎教授とともに筑波大学を辞し,恩師の研究室の立ち上げがほぼ完了した11月,ダラスへと赴く。
ラボの人材採用でつまずき,しばしの空白を強いられたが,94年には足場を確保,エンドセリン関連の論文を矢継ぎ早に,Cellに送り出した。
 
続いてオーファン受容体へとテーマを拡大させた。細胞の表面に分布する受容体(特にG蛋白質共役型受容体)のなかには,遺伝子配列が判明しながら,機能が明らかでないものが含まれる。
この"種"の受容体をいわばおとりに使い,スイッチングを誘う生理活性物質(リガンド)を吊り上げようというわけである。
 
1998年,HFGAN72と呼ぶオーファン受容体として働く神経ペプチド,オレキシン(食欲という意味を持つギリシャ語,オレキシスにちなむ)の同定に成功し,再び世界をあっと言わせた。
おまけに,このペプチドが摂食行動をコントロールする一方,睡眠や覚醒と密接に関係し,その欠乏が睡眠障害の一種,ナルコレプシーを引き起こすこともわかった(2001~06年,独立行政法人・科学技術振興財団機構の出資で実施された「柳沢オーファン受容体プロジェクト」による)。
 
オレキシンは血液脳関門を通過しないため,臨床には応用しにくい。
そこから,オレキシン受容体のアゴニスト(作動薬)やアンタゴニスト(拮抗薬)が睡眠障害の治療薬の候補と目されるようになった。
柳沢氏も複数のアゴニストに着目,創薬を検討中という。
 
科学者であり,またクリスチャンでもある柳沢氏は毎日曜日,愛用のフルートを携え,賛美歌の伴奏役を引き受ける。
「科学者は,データという個人を超えたのものに謙虚であるべきで,現実に頭のなかで描き上げた構図よりも,真理のほうがはるかにおもしろい」

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

 

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