戯れ言たれる侏儒
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抗血栓療法の出血リスク

戯れ言たれる侏儒 / 2008.07.14 00:23 / 推薦数 : 0

抗血栓療法の出血リスクは年間1.2~3.6%
日本人の抗血栓薬服用患者の出血合併症リスクを検討した初の多施設共同前向き観察研究であるBAT(Bleeding with Antithrombotic Therapy)研究(主任研究者=国立循環器病センター内科脳血管部門・峰松一夫部長)の結果が,Stroke(2008; 39: 1740-1745)に掲載された。
重篤・重症出血の年間発生率は,抗血小板薬単剤で1.21%(頭蓋内出血0.34%),ワルファリンと抗血小板薬の併用で3.56%(同0.96%)であった。
日本人の疫学的特徴として頭蓋内出血が多く,抗血栓療法による発生率増加が懸念されていたが,BAT研究では,欧米の報告と同程度の出血リスクであった。

W+A/Pの出血リスクはW単独の1.76倍
BAT研究は,国内の19施設による前向き観察研究で,脳血管障害や心血管病発症後に抗血小板薬かワルファリンを服用中の患者を対象とした。
2003年10月~06年3月に4,009例(男性2,728例,女性1,281例,平均年齢69±10歳)が登録され,抗血小板薬単剤(単A/P群,47.2%),抗血小板薬2剤併用(複A/P群,8.7%),ワルファリン(W群,32.4%),ワルファリン・抗血小板薬併用(W+A/P群,11.7%)の4群に分けて出血合併症の頻度を調査した。
当時はクロピドグレルが国内で認可されておらず,単A/P群の71%がアスピリン,複A/P群の63%がアスピリンとチクロピジンの組み合わせ,W+A/P群の71%がアスピリンを用いていた。
対象の54.8%が脳血管障害を,67.3%が心疾患を有し,前者は単A/P群と複A/P群に,後者はW群とW+A/P群に多かった。
 
19か月間(中央値)の追跡期間中,頭蓋内出血31例を含む重篤な出血(出血死,頭蓋内出血,出血性ショック,4単位以上の輸血を要する貧血)が57例,入院を要する重症出血が51例発生した。
重篤と重症を合わせた出血合併症の年間発生率は,単A/P群で1.21%,複A/P群で2.00%,W群で2.06%,W+A/P群で3.56%()。


患者背景で調整した多変量回帰分析の結果では,ワルファリンに抗血小板薬を追加した場合の重篤・重症出血リスクが1.76倍(95%信頼区間1.05~2.95,P=0.031),抗血小板薬単剤に別の抗血小板薬を追加した場合の全出血リスクが1.37倍(95%信頼区間1.07~1.76,P=0.014)であった。

出血予防には血圧管理がポイントに
今回の報告をまとめた国立循環器病センター内科脳血管部門の豊田一則医長は「抗血栓療法には一定の出血リスクが伴うため,適切な治療薬と用量の選択,不必要な併用療法の回避,血圧管理が重要」と話す。

頭蓋内出血を起こしたワルファリン服用者では,観察期間中に血圧の上昇傾向が認められており,詳しい解析を進めているという。

欧米と比べて出血リスク高くない
日本人の抗血栓療法に伴う出血合併症リスクに関する信頼性の高いデータが,BAT研究によって初めてもたらされた。
一般住民の疫学調査では,日本人は食塩摂取量が多く,欧米人に比べて高血圧や頭蓋内出血の頻度がかなり高いことが知られている。
しかし,BAT研究での抗血栓薬服用者の重篤・重症出血合併症の頻度は,最近の欧米の主要な報告とほぼ同じであり,特に高いとは言えない()。


 
国立循環器病センター内科脳血管部門の豊田一則医長は「疫学研究的に日本人の頭蓋内出血の頻度が高いにもかかわらず,抗血栓薬服用患者では発生率に差がなかった背景には,日本人の場合,抗血小板薬やワルファリンの投与量が欧米人に比べて少ないことが影響しているのだろう」と分析している。
心房細動患者に対するワルファリン療法について,欧米のガイドラインでは,プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)の推奨値を2.5以上としているが, BAT研究でのワルファリン服用患者の登録時PT-INRの中央値は2.0弱であり,わが国のガイドラインの推奨値(70歳以上PT-INR 1.6~2.6)で管理されていることがうかがわれる。

適正使用で出血リスクを回避
今回の知見から,抗血栓薬の使い方についてどのようなことが示唆されるだろうか。
豊田医長によると,日本人の経口抗血栓療法による出血リスクは目立って高くなかったものの,年間100人に約1.0~3.5人が出血イベントで入院を余儀なくされているのが実態だ。

一定の頻度で出血が起こる以上,根拠があいまいな処方を続けるのは好ましくない。
例えば,ふらつきや失神のみを主訴とする患者,あるいは脳ドックでのMRI撮影で脳梗塞ではなく大脳深部白質病変のみが検出された患者に対し,安易に抗血小板薬を処方することがないだろうか。
このような処方は有益性が必ずしも明確でなく,抗血小板薬の投与に値する動脈硬化性病変の有無をさらに精査するなどの対応が望ましいという。
 
抗血小板薬の2剤併用(特にアスピリンとチエノピリジン系薬の併用)やワルファリンと抗血小板薬の併用は,単剤治療に比べて出血合併症を増加させることが,BAT研究を含め多くの研究で明らかにされている。
患者の病態に応じて抗血栓薬併用が不可欠な場合もあるが,原則として不必要な併用療法を避け,適切な治療薬と強度を選択する。
例えば,抗血小板薬を1剤服用中に脳梗塞を含む血栓性の血管イベントを起こした場合,まず別の薬剤に変更し,それでも効果が不十分な場合に2剤併用を選択するという手順を踏む。
また,ワルファリンは,抗血小板薬に比べて出血リスクが高いため,本来の適応である心原性脳塞栓症の予防目的以外に,動脈硬化という理由で脳梗塞予防に用いることは原則として勧められないという。

頭蓋内出血の前に血圧が上昇傾向
抗血栓療法の出血合併症をいかに防ぐかについて,BAT研究で1つの手がかりが示されている
ワルファリン服用中に頭蓋内出血を起こした患者は,登録時,経過観察中,発生から至近の外来受診時の血圧を検討すると,経時的に血圧が上昇する傾向が見られたという。
 
豊田医長は「もともと血圧の高い患者や,ワルファリン服用中に血圧が上昇する患者は頭蓋内出血を起こしやすい可能性がある。
出血回避を考慮した抗血栓薬服用中の患者の至適降圧レベルを含めて検討を進めているが,出血合併症予防のためには,血圧測定,生活習慣改善指導や降圧管理を含む血圧管理が重要と考えられる」と述べた。
 
出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
どの先生もお考えのことでしょうが、脳梗塞の再発予防に抗血小板剤を処方した場合、次回のアッタクが脳出血だった場合どうしようということです。
脳梗塞も脳出血も血圧値に比例して発生頻度が増加するというデータがある以上、高血圧患者の場合にはどちらも起こりうるということになります。
出血性梗塞とかいうのは別として、同一患者に時を違(たが)えて脳梗塞と脳出血の両方を発症する発生頻度のデータはあるのでしょうか。
脳梗塞の再発予防のため抗血小板剤投与の際、脳出血が起きないということが担保されていないというのがつらいところです。
そして抗凝固剤と違って、抗血小板剤ではINRのようなコントロールの指標がない(血小板凝集能は臨床現場では実際には使われていない)ことが使用にあたって便利(?)でもあり怖いところでもあるのです。
 

<関連ブログ>
抗血小板剤の併用療法
http://blog.m3.com/reed/20080121/1
抗血小板剤の選択肢 その1(1/3)
http://blog.m3.com/reed/20071215
抗血小板剤の選択肢 その2(2/3)
http://blog.m3.com/reed/20071216
抗血小板剤の選択肢 その3(3/3)
http://blog.m3.com/reed/20071217
 

<自遊時間>
週末、山に行ってきました。
標高1600m強のところです。
7月12日の土曜日の夜空は快晴(?)でした。
深夜にリクライニングチェアーを出して星空を見上げていました。
目が慣れるにつれて星の数がどんどん増えていきます。
慣れきったころには満天の星。
高校生の頃、あちこちの部活を渡り歩き(当時、幽霊部員と当校では表現していました)、天文部にも入っていました。

当夜も星座の名前は皆目わかりません。
唯一、銀河(天の川、milky way)だけがわかりました。

なぜか遠い昔の高校時代のことを思い出していました。
部員は5人。
そのうちの一人は、本当の天文学者になり、国立天文台野辺山宇宙電波観測所にいます。
もう一人は現在、糖尿病の大家(某大学医学部教授)として活躍中です。
落ちこぼれの私以外の4人は、いずれもT大,K大に進学しました。
全員部活をやるという学校の方針もあり、天文部は格好の「幽霊部員」の居場所だったのです。
多分集まっても、天文についてまともに語れるのは「野辺山」だけのはずです。
夜中に学校の屋上に上って夜空をみんなで眺めたり(都会のためよく星はみえませんでしたが)、冬空を見上げて流星の数をカウントしたことは、今となってはいい思い出です。

そんなことを思い出した一夜でした。

<関連サイト>

~天の川写真集~
http://www.ne.jp/asahi/stellar/scenes/milky.html
天の川 全国調査
http://www.nao.ac.jp/phenomena/20050800/index.html
(国立天文台のサイトです)
天の川
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E5%A4%A9%E3%81%AE%E5%B7%9D&lr=
ナット・キング・コール “スターダスト”
http://setugetukasui.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_0f3f.html
(ナット・キング・コールの唄うスターダストをYou Tubeで見ることができます)
スターダスト Stardust ナット・キング・コール(Nat King Cole/1919~1965)
http://www.worldfolksong.com/pop/nkc/stardust.htm
(懐かしいLPレコードで聴ける「スター・ダスト」です)
 

 読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

 

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