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第36回日本血管外科学会
頸動脈狭窄に対する治療選択―CASかCEAか?
頸動脈狭窄に対する血管内治療による頸動脈ステント留置術(CAS)が4月から保険適用となり,頸動脈内膜離術(CEA),CASの適応について議論が活発化している。
東京都で開かれた第36回日本血管外科学会(会長=日本大学心臓血管外科・根岸七雄教授)のパネルディスカッション「頸動脈狭窄に対する治療選択―CASかCEAか?」(座長=東京慈恵会医科大学血管外科・大木隆生教授,三重大学脳神経外科・滝和郎教授)から,2つの報告を紹介する。
NIRSモニタリングによりCEAの安全性が向上
国立病院機構金沢医療センター心臓血管外科の松本康氏らは, CEAを施行した55例の検討結果から,内シャントを挿入すべきかを判断するうえで,近赤外線分光法(NIRS)による術中脳血流モニタリングが有用であることを示した。
NIRSモニタリングで血行遮断後に虚血が示唆される波形パターンを示す患者に選択的に内シャントを使用することで内シャント使用率が30%程度となり,良好な手術成績が得られたという。
内シャント使用は27例中8例
対象は,2008年3月までに頸動脈硬化病変に対してCEAを施行し,脳血流モニターとしてNIRSを用いた連続した55例(年齢72.4±7.8歳)。
麻酔導入前に,手術側の頬骨弓上方の側頭窩に4波長2受光方式のNIRS(OM-200)を固定し,組織酸素飽和度,酸化ヘモグロビン(Hb)および還元Hbを測定した。
まず,前半の28例を対象に,血行遮断後のNIRS所見のパターン分類を試みた。
その結果,脳血流低下が10%以下の微小変動型(68.9%),酸化・還元Hb曲線が近接したまま推移する近接型(17.2%),同曲線が完全に交叉解離する逆転解離型(13.7%)の3型に分類された。
微小変動型の10%,近接型の20%,逆転解離型の25%は,術前の脳血流スキャンで血流低下を指摘されていた。
逆転解離型は明らかに虚血と診断され,近接型は1例で一過性脳虚血発作(TIA)が認められたため,逆転解離型と近接型を虚血と定義した。
後半の27例に対しては2分間のクランプテスト後,微小変動型19例を除く逆転解離型,近接型各4例の計8例(29.6%)のみに内シャントを使用した結果,神経学的合併症は1例も認められなかった(図)。

全体として,TIAの1例を除いて神経学的合併症は認められず,良好な手術成績が得られたという。
保険適用後のCASの安全性確立には適応選択,術中遠位血栓など課題
末梢血栓防止用デバイス(Angioguard XP)を使用したCASは,CEA高リスクの頸動脈狭窄に対し, 4月から健康保険が適用された。
神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科の坂井信幸部長らは,国内でもCASはCEAと同等の周術期成績が得られているが,no flowに起因する遠位血栓が新たな課題となっていると指摘。
また,CASの適応選択について,「CEA高リスク症例すべてがCASの適応ではない。
CEAもCASも危険な病変を見逃さないという視点で診断とリスク評価を行い,適切な治療法を選択すべきである」と述べた。
CASの周術期成績はCEAと同等
同科では,1997?2007年の11年間に頸動脈狭窄854例に対しCASを施行したところ,周術期死亡(術後30日以内)は4例(0.47%), major strokeは5例(0.59%),minor strokeは11例(1.29%),一過性症候は30例(3.51%)であった。
死亡4例の内訳は心疾患2例,ステント位置不良1例,過灌流1例であり,major strokeは5例中4例が術中遠位血栓,1例が閉塞に伴う脳梗塞であった。
また,日本脳神経血管内治療学会(JSNET)の2007年CASサーベイランス報告によると,全国で施行されたCAS 7,929件の周術期死亡(術後30日以内)は0.6%,major stroke 1.0%,minor stroke 1.8%,一過性症候3.3%で,これらを合わせた合併症発症率は6.7%と,過去に報告されたCEAの成績とほぼ同等であった。
No flowのリスク評価や対策を
一方,末梢血栓防止用デバイスを使用したCAS承認後の周術期成績については,全国で施行された614例(ジョンソン・エンド・ジョンソン社調べ,2008年3月14日集計)では死亡例はなく,有害事象〔死亡,脳卒中,心筋梗塞,一過性脳虚血発作(TIA),徐脈,重度低血圧,ステント内血栓,急性閉塞,スパズム,no flow,過灌流症候群〕は77例(12.5%)で,このうち脳卒中は15例(2.4%),TIAは7例(1.1%),急性閉塞,ステント内血栓が各1例発生している。
坂井部長らは承認後CASを,CEA高リスク患者50例を含む55例に施行し,24時間以上症状が遷延した4例のうち,major stroke 1例(1.8%),minor stroke1例(1.8%)が発生した。4例中1例は過灌流,残り3例は,後拡張の血管造影でフィルターを介する血行が消失するno flowによる遠位血栓が原因であった。
国内19施設の共同研究の結果では,症候性,高度狭窄,CEA高リスク群,前拡張のバルーンがやや大きめの場合にno flowのリスクが高いことが判明している。
フィルターに詰まったプラークがslowもしくはno flowを惹起することもわかってきており,no flowが生じた場合はフィルター回収前に血液の吸引が必要になる。
同部長らは,頸動脈狭窄症に対しCASの適応を検討する際は,MRI (Black Blood)による頸動脈プラークの診断,DSAによるアクセス路の確認などの手順を踏んで血行再建の適応を判断し,CEA,CAS双方の有益性とリスクを比較検討したうえで最終的に決定するという(図)。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社
<関連記事> 2008.7.14追加
頸動脈狭窄例に対する脳卒中予防
PTAはCEAと同等以上の効果
〔独シュツットガルト〕 ドイツでは,毎年約 4 万人が頸動脈に関連した脳卒中を発症しており,その約半数は,その後,永続的に介助が必要な状態となる。
カール・オルガ病院(シュツットガルト)のThomas Stork教授は「頸動脈高度狭窄例に対する脳卒中予防措置として,経皮的血管形成術(PTA)は頸動脈内膜切除術(CEA)に代わる興味深い手技である」とKlinikarzt(2006; 35: 134-139)に発表した。
高リスクなほどPTAが有利
頸動脈に対するPTAが初めて適用されたのは1977年であるが,その後ステントや塞栓予防手技の利用により,同手技は著しく改善された。
しかし,頸動脈狭窄に対するPTAが本格的に脚光を浴びるようになったのは,2002年にSAPPHIRE(Stenting and Angioplasty with Protection in Patients at High Risk for Endar-terectomy)試験のデータが公表されて以降のことである。
同試験は前向きランダム化試験としてデザインされ,高リスク患者307例を対象としてステントを使用したPTAとCEAが比較検討された。
その結果,30日後の主要心血管イベントリスクは,PTA群の5.8%に対してCEA群では12.6%,1 年後でもPTA群の11.9%に対してCEA群では19.9%とPTA群のほうが低かった。
数多くの前向き試験の登録ずみデータからも,高リスクおよびきわめて高リスクの患者に対する頸動脈PTAの安全性は裏づけられている。
さらに,約6,000例を対象としたステント使用PTAとCEAとの比較試験も現在進行中である。
頸動脈狭窄に対するPTAやCEAの適用を検討する前に,duplex超音波検査,動脈造影あるいはMRI血管造影を用いて診断を確定しておく必要がある。
こうした検査を通じて個々の患者リスクを見極めれば,どちらの方法が有用かは明らかになる。
比較的年齢の低い患者(平均65歳)で重大な随伴疾患がない場合のリスクは中等度とみなすことができる。
特に症候性狭窄例での 5 年間の経過を見ると,CEAの適用に踏み切るほうが自然経過に委ねるより有利であることが証明されており,PTAには少なくともCEAと同等の効果があるようだ。
治療手技が原因で脳卒中あるいは死に至るリスクは,いずれを選択した場合でも,無症候群では 2 ~3 %,症候群では 3 ~ 6 %である。
SAPPHIRE試験や登録ずみデータから判断する限り,高リスクまたはきわめて高リスクの患者では,ステント使用PTAのほうがCEAより有利な傾向にある。
PTAにより脳卒中または死に至る確率は高リスク群では約 6 %,きわめて高リスク群では約 8 %であるのに対して,CEAでは14%に達している。
これまでのデータによると,PTAの臨床的有用性は年齢および狭窄度が上昇するにつれて高まる。
頸動脈の再狭窄は,冠動脈狭窄の場合とは異なり,PTAでもCEAでもあまり問題とはならない。
出典 Medical Tribune 2007.1.11
版権 メディカル・トリビューン社
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ふくろう医者の診察室
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