戯れ言たれる侏儒
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Doctors Blog

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まずは、当院での症例を紹介します。
 

<症例> 64歳、男性
<病名> 糖尿病、本態性高血圧症
H18.9より当院へ通院中。

         血糖   HbA1c  BUN    Creat 尿酸
H19.7.14  176   6.6   21.8   1.10  7.1
H19.11.15 119   6.4   29.0   1.30  8.6
H20.1.12  256   6.4   31.2   1.35  7.9
H20.3.13  231   6.8   26.1   1.36  8.3
H20.6.10    93   7.1   31.5   1.54  10.1 

血圧112~148/72~80mmHg
尿蛋白(++)、尿糖(±)

使用薬剤 
ブロプレス(8)1T、ノルバスク(5)1T、アマリール(1)4T

H20.7.10~変更
ブロプレス(8)1T、アテレック(10)1T、ザイロリック1T、
アクトス(30)1T、メルビン(250)2T

<コメント>
クレアチニンが不気味にじわじわ増加しています。
こういったケースを先生方も数多く経験されているのではないでしょうか。
H20. 6.10時点での推算GFRは37.6でCKDステージ3(腎臓専門医への紹介が望ましい)です。
65歳男性ではCreatが1.2mg/dlを超えると「腎臓専門医に紹介し、連携して治療する」レベルとなるわけですから、本来なら昨年11月には「腎臓専門医」に紹介しなければならないことになります。

外来診療ゆえ、食事指導は十分とはいえません。CKDにおける蛋白制限についてどれだけ意味があるのか、そしてどこまで厳しくするのか、またエビデンスがどれだけあるのか私にはよくわかりません。

自分の治療のどこがいけないか、腎臓専門医の早期介入により腎機能悪化が防止できたのか。

そのあたりを知りたいと思います。

 

開業医は血液検査は、臨床検査センターの「セット検査」でオーダーします。
今回カルテをみていて、この症例ではKなどの電解質が(セットに入っていないため)検査されていないことに気づきました。

まことにもって恥ずかしいことです。
外来での診察中には、細かい(?)チェックは、つい疎かになってしまいます。
この症例でも1日尿蛋白排泄量(定量)、シスタチンC、腎エコー、空腹時IRI、HOMA-Rなどをきちんと検査しなければいけないと反省しています。
私の場合、治験などで後でカルテを見なおしたときに、検査もれがいっぱいあります。

診察終了後に、チェックをすべきとはいつも思うことですが。

先日ある講演会後の懇親会で、昔からよく知っている先生に久しぶりにお会いする機会がありました。
ある病院を定年退職後、循環器専門の外来をオフィス開業でやってみえます。
完全予約制とのことで診察前には、必ず前もってそれらのカルテに目を通しておくとのことでした。
その先生の、昔も今も変わらぬ臨床に対する真摯な態度に頭が下がるとともに、自分のいい加減さを反省した次第です。

さてきょうは、この症例にピッタリの内容を勉強しました。

腎機能の黄色信号の早期発見,早期治療の重要性
意外に多い高血圧患者に潜在する腎機能障害
高血圧治療の目的は,脳,心,腎など重要臓器の合併症や動脈硬化予防にある。
糸球体濾過量(GFR)の低下やアルブミン尿の存在によって診断される慢性腎臓病(CKD)が,心血管疾患(CVD)の独立した危険因子であることが明らかになり,腎機能障害をともなう高血圧症に対しては,JSH2004でも特に厳格な降圧が求められている。
高血圧患者における腎機能障害を見逃さないことは,高血圧管理者の主体であるかかりつけ医にとって重要な役割の1つである。
そこで今回は,高血圧患者に潜む腎機能障害を診断するポイント,腎機能を考慮した降圧療法について,福島県立医科大学第3内科の渡辺毅氏に伺った。

慢性腎臓病(CKD)と高血圧の悪循環
糖尿病によるCKD患者は増加が著しいのですが,高血圧によるCKDはどうでしょうか?
渡辺 
腎臓病の終末像である末期腎不全患者による新規透析導入は年々増加し,1983年頃の約1万人が,2006年には約3万5千人に至っています。
その結果,慢性維持透析患者数は毎年死亡透析患者を差し引いた約1万人増加し,2006年末には約26万5千人となり,今後も増加が見込まれています。
透析導入の原疾患は,かつては慢性糸球体腎炎が首位でしたが,1998年以後は糖尿病性腎症が取って代わり2006年には43%を占めています。
一方,高血圧を病因とする良性腎硬化症は,2006年の新規透析導入の第3位(9.4%)であり,やはり増加傾向にあります。
また,多くの疫学的研究で,高血圧患者は約30%と高頻度に腎障害を合併していると報告されています(図1)。


 

さらに,糖尿病には高血圧,高血圧には糖尿病の合併頻度が高く,糖尿病性腎症や良性腎硬化症などによる慢性腎臓病(CKD)患者ではさらに高血圧の頻度が高まり,高血圧はCKDの増悪因子です。
すなわち,糖尿病と高血圧はおのおのが透析に至るCKDの主たる原因であり,CKDの進行や心血管イベント発症に相乗的な悪循環を形成します図2)。

 

高血圧によるCKDの腎障害機序と降圧の意義は?
渡辺 
腎臓の濾過装置である糸球体の血圧(糸球体内圧)は,多臓器に比較して高圧(60mmHg程度)ですが,さらなる血圧負荷による血管内皮障害を防ぐため,全身血圧が上昇すると輸入細動脈が収縮して糸球体内圧を一定に保つ自己調節機構が働きます
しかし,糖尿病,慢性糸球体腎炎,高血圧などによるCKDでは,この自己調節能が早期から破綻していることが知られています。
さらに,
腎機能(腎濾過:GFR)低下による腎のレニン・アンジオテンシン系(RAS)の活性化によって増加したアンジオテンシンII(AgII)は,輸出細動脈のAgII受容体に作用して収縮させ,さらに糸球体内圧を上昇させます

糸球体内圧の上昇は,内皮細胞障害・尿蛋白の増加から糸球体のみならず腎間質の細胞障害・炎症・硬化を引き起こす原因となります。
したがって,CKD患者では,腎障害のない方と比較して厳格な降圧が必要です。
さらに,AgIIは,糸球体内圧上昇と同時にメサンギウム細胞や間質細胞に直接作用して,形質転換やマトリックスの産生を増加し,腎硬化を進行させます。そのため,RAS系の抑制はCKDの治療では特に重要となります。

高血圧患者さんの腎障害を早期発見する意義
高血圧患者さんでの腎障害の早期発見はどうすれば可能か?
渡辺 
CKD患者さんは腎機能が高度に低下しない限り症状や徴候が乏しいのが一般的です。
しかし,糖尿病,慢性糸球体腎炎などの糸球体疾患では,蛋白尿や血尿などの尿異常が比較的早期から出現します。
特に,糖尿病患者さんでは尿中アルブミンの定量(微量アルブミン尿)が早期診断に有用なことは知られています。
一方,高血圧患者さんの良性腎硬化症のような血管疾患(細動脈硬化症)では,蛋白尿は必ずしも陽性ではなく,腎機能が高度に低下した患者さんでも蛋白尿は陰性の方が多いことは知られています。
したがって,腎障害の早期発見には,血清クレアチニン(Cr)値からの推算GFR(eGFR)の評価も必要となります。
日本腎臓学会で2008年に策定した推算式(194×血清Cr値-1.094×年齢-0.287,女性ではさらに×0.739)からeGFRを算出し,腎機能別CKDのステージを評価します(表1)。


すなわち,健診とかかりつけ医によるCKDの危険群(糖尿病,高血圧,メタボリック症候群)を対象とした検尿(糖尿病で蛋白尿陰性なら尿中アルブミン定量)とeGFRを,最低年一回程度は測定することがCKDの早期発見に重要です。

早期に発見して介入すれば,
腎障害は回復(寛解)することが可能なのでしょうか?
渡辺 
CKD患者さんのアルブミン尿をRAS抑制薬の使用で低下させると,腎機能低下速度と心血管イベントの抑制が可能であることが報告されています。
一方,糖尿病,慢性糸球体腎炎,高血圧などの原疾患にかかわらず,CKD患者さんでは降圧と腎機能低下速度の抑制の程度は相関することが証明されています図3)。


しかも,降圧やRAS抑制薬の使用による介入はCKDが進行しないばかりか,アルブミン尿や腎機能の回復(寛解)が起こることが報告されています。
この寛解は,CKDステージが低いほど確率が高く,腎機能の改善もCKD3程度までなら望めることが最近報告されています。
また,それ以後のCKDステージの患者さんでも腎機能低下の抑制は可能ですので,諦めないで末期腎不全への進行を遅延させる努力をすべきと考えます。
この場合,治療効果の指標としては,血圧(家庭血圧を含む)と尿中アルブミン・蛋白量,eGFRが有用です。
また,最近では,腎障害の寛解と心血管イベント抑制のためには,降圧やRAS抑制薬の使用に生活習慣改善(体重管理を含む),脂質管理,アスピリンによる抗血小板療法などを組み合わせた集学的強化療法を早期から行うことが望ましいことも報告されています(糖尿病性腎症)ので,高血圧患者さんでも高血圧以外の危険因子の管理を早期から行うべきと推察できます。

腎障害を合併する高血圧患者さんの管理・治療におけるかかりつけ医の役割
高血圧を合併するCKD患者さんの治療で
かかりつけ医が果たす役割は何でしょうか?
渡辺 
CKDは原発性・二次性腎疾患を包含する一種の症候群であり,病因,臨床経過,合併症,治療法・治療反応性は多様です。
したがって,正確な診断を行い,的確な治療方針を立てるには専門的な腎疾患に関する幅広い知識,技量,経験をもつ腎臓専門医の関与が望ましいと思います。
一方,CKD患者さん(CKD1-5)が約1,380万人と推定されることを考慮すると,全国で約2,800人の認定腎臓専門医のみで全てのCKD患者の治療を担当することは不可能です。
したがって,現実的には健診機関またはかかりつけ医は,CKDが進行し末期腎不全に至る可能性がある患者さんを選別して,腎臓専門医に紹介するべきと考えます。
もちろん,紹介基準に達しないCKD患者さんの管理・治療はかかりつけ医が主体であることは言うまでもありません。
一方,専門医に紹介された患者さんも,専門医によって診断が確定し,危険因子を考慮した治療方針が決定した後には,患者さんの通院の便宜と医療資源の有効活用を考慮するとかかりつけ医に逆紹介し,慢性期の治療はかかりつけ医が担当することが理想的です。
そして,症状や検査データに変化のあったときは定期的に腎臓専門医を受診してコンサルテーションを受けることも望まれます。
すなわち,健診機関,かかりつけ医と腎臓専門医からなる双方向性の医療連携システムが構築されるべきで,かかりつけ医はその中心に位置すると考えます(図4)。

 

高血圧を伴うCKDの治療薬の選択
RAS抑制薬はどのように評価されていますか?
渡辺 
腎臓は,臓器由来のRAS活性が強く,機能的にもRAS依存性が高いという特徴があり,CKDなどの腎障害時にはさらに活性化しています。
大規模臨床試験によると,CKDでは,原疾患を問わずRAS抑制薬によるアルブミン尿・蛋白尿の減少,腎機能保護作用と心不全に対する作用は,脳血管障害や心不全を除く心疾患に対する作用と比較して際立っています。
ARBの腎保護作用を検討した大規模臨床試験としてはロサルタンのRENAALやイルベサルタンのIRMA-2,IDNTなどがあります。
また,ARBはインスリン抵抗性改善作用があり,CKDや高血圧患者に多いとされる糖尿病の新規発症抑制作用も報告されています。
したがって,ARBがCKD患者の降圧薬の第1選択薬のひとつであることは異論の無いところです。
ARBの通常量で降圧目標(130/80mmHg未満,尿蛋白1g/日以上では125/75mmHg未満)を達成できない場合は,長時間作用型Ca拮抗薬や少量の利尿薬などを追加し,降圧目標達成を図るべきと考えます。

患者さんの管理で実際上注意すべき点は何でしょうか?
渡辺 
食塩感受性やメタボリック症候群の患者さんには適切な生活習慣改善は治療の前提として重要です。
薬物療法でも,患者さんのコンプライアンスの確認と血圧自己測定による日内変動に配慮した薬剤の種類,量,投与法の選択をお願いしたいと思います。
これらの点で,患者さんと身近に接している利点をかかりつけ医に活かしていただきたいと思います。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

 

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