戯れ言たれる侏儒
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〔米テキサス州ダラス〕 アラバマ大学バーミングハム校(アラバマ州バーミングハム)内科・血管生物学と高血圧プログラムのDavid A. Calhoun教授を委員長とする米国心臓協会(AHA)ガイドライン作成委員会が,治療に抵抗を示す高血圧に対する初めての共同声明として治療ガイドラインをHypertension(2008; 51: 1403- 1419)に発表した。

MRA追加で利益得る患者も
今回のガイドラインでは,3剤以上の降圧薬を服用しているにもかかわらず,血圧が目標値まで下がらない場合を治療抵抗性としている。
血圧は管理されているが,その維持に4剤以上を必要とする場合も抵抗性と考えられている。
 
Calhoun教授は「患者は血圧管理の重要性を認識する必要がある。ほとんどの患者にはライフスタイルの改善と降圧薬を併用した治療が必要である」とし,さらに「治療抵抗性高血圧は診断と治療に際して特別な配慮を要することを医師は理解しなければならない」と述べている。
 
同ガイドラインによると,治療抵抗性高血圧患者に対して利尿薬が十分活用されていない場合が少なくない。
また,ミネラルコルチコイド受容体阻害薬(MRA)を治療レジメンに加えることで利益が得られる患者もいる。
MRAは治療抵抗性高血圧患者の約20%に認められる原発性アルドステロン症に有効である。
 
同教授は「治療抵抗性高血圧の治療におけるMRAの便益が確認されたのはつい最近のことだ。高血圧専門医はMRAを使う傾向が強いが,一般にはおそらくまだ十分活用されていないと思われる。MRAを使用する際は,特別な生化学検査によるモニタリングが必要で,特に高カリウム血症リスクが存在することから,血中カリウム濃度の測定が必要である」と説明している。
 
治療抵抗性高血圧の有病率を定量的に評価したデータはまだないが,さまざまな臨床試験から,高血圧患者のうち最大で30%程度が治療抵抗性とされている。
同ガイドラインは「治療抵抗性高血圧との関連性が指摘されている最も強力な危険因子は高齢と肥満で,人口の高齢化と肥満化傾向の進展と平行して増えているようである」としている。

管理不良高血圧との鑑別を
治療抵抗性高血圧患者は,心血管疾患リスクが高く,血圧管理を困難にさせる健康問題を複数抱えていることが多い。同ガイドラインは,患者の状態が本当に治療抵抗性であるか否かを鑑別することが重要であると指摘。
管理不良の高血圧は服薬遵守の不良や不適切な治療レジメンが原因で引き起こされるもので,治療抵抗性高血圧と同じではない」としている。
 
治療抵抗性かどうかを確認することが,治療が難しい高血圧を正しく診断するための第一歩である。
治療抵抗性高血圧を適切に治療するには,原因となるライフスタイル因子を考慮し,二次性高血圧の原因を診断・治療したうえで,多剤を効果的に使用することが必要である。

各ライフスタイル因子を解説
今回のガイドラインでは,おもなライフスタイルについて以下のように記載されている。
(1)体重:肥満は重度高血圧との関連性が示唆されており,多剤併用の必要性とも関連している。
したがって,肥満は治療抵抗性高血圧にしばしば認められる特徴である。治療抵抗性患者に限定した減量の評価は行われていないものの,減量には降圧と血圧管理に必要な薬剤数の削減という明らかな便益がある。
(2)ナトリウム:食事からの塩分過剰摂取は,治療抵抗性高血圧患者に一般的に見られ,高齢者,アフリカ系米国人など,食塩感受性の高い患者でより多く認められ,さらに慢性腎臓病(CKD)患者でも特に顕著に認められる。
一般的な高血圧患者では食事からの塩分摂取量を減らすだけで,収縮期血圧(SBP)を5~10mmHg,拡張期血圧(DBP)を2~6mmHg低下することができる。アフリカ系米国人や高齢の患者では,食塩摂取量を減らすことでより大きな便益が得られる。
(3)アルコール:大量の飲酒は,高血圧および治療抵抗性高血圧との関連性が指摘されている。
ある試験では,大量飲酒を中止した小グループの患者の24時間自由行動下のSBPが7.2mmHg,DBPが6.6mmHg低下し,高血圧有病率は42%から12%に低下した。

可逆性の原因も多い
治療抵抗性高血圧患者は,高血圧の原因として可逆性の疾患も抱えていることが多い。
閉塞性睡眠時無呼吸,腎実質疾患,原発性アルドステロン症,腎動脈閉塞などは同患者にしばしば認められる。
専門医への紹介を含め,これらの疾患の治療により血圧管理が改善することがある。
 
薬物療法については以下の通り。
(1)原因薬物の中止:
非ステロイド抗炎症薬(NSAID)など血圧を上昇させる薬剤は,できるだけ中止もしくは減量すべきである。
降圧のための効果的な多剤レジメンが不可欠である。
(2)利尿薬:
高血圧専門クリニックからの報告では,治療抵抗性の原因の一部として,利尿薬の未使用もしくは不十分な利用が示唆される場合が多い。
(3)MRA:
現状の多剤併用レジメンに追加することで大きな降圧効果が得られる場合がある。
平均4剤の降圧薬服用患者を対象とした小規模試験では,MRAの追加によりSBPで平均25mmHg,DBPで平均12mmHgの降圧が得られた。
(4)多剤併用レジメン:
作用機序の異なる降圧薬の併用を継続することが最も適切と考えられる。
したがって,ACE阻害薬もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),Ca拮抗薬,サイアザイド系利尿薬の3剤併用レジメンは効果的で一般的には耐容性に優れている。
しかし,最終的には,3剤以上の併用については過去の便益,有害事象の既往歴,CKDあるいは糖尿病の共存や患者の経済状況なども考慮したテーラーメードのレジメンとしなければならない。
(5)服用タイミング:
さまざまな試験で,少なくとも1つの降圧薬を就寝時に服用する患者で血圧管理が優れており,特に夜間血圧の低下に有効であることが示されている。
(6)服薬遵守:
降圧薬を規則正しく適切に服用するよう患者を指導するには複数のステップを踏まなければならない。
長時間作用型で1日1回服用の薬剤をできるだけ多く使用し,処方を単純化すべきである。診察と家庭血圧測定の回数を増やすことで,ルーチンの服薬遵守は一般的に改善する。さらに,費用がかかり,労働集約的な選択肢にはなるが,看護師のケースマネジャー,薬剤師,栄養士などを含むチームアプローチができれば,アウトカムは改善する可能性がある。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社

 

<参考サイト>
治療抵抗性高血圧の対処法
http://www.cwo.zaq.ne.jp/momokuri/image_animusu_etc/animus.pdf

治療抵抗性高血圧の血圧基準の変遷
http://www.lifescience.jp/ebm/sa/2004/0407/1.htm
治療抵抗性高血圧の血圧基準の変遷をみると,最近,血圧管理基準が厳重になり,その基準値も低くなっている。Setaroら(1992)は,治療抵抗性高血圧とは
(1)治療しても血圧が140/90 mmHg(60歳以上では160/90mmHg)を超え,
(2)二次性高血圧は否定的で,
(3)少なくとも2種の降圧薬の最大量で(一般には3~4種類の降圧薬に反応しない場合をさすが),降圧薬の治療効果が発現するまでの時間が経過していることを条件とした。McAlisterらのオーバービュー(1996)では,治療開始前血圧が180/115 mmHg以上の症例に,利尿薬を含む3種の降圧薬を用いても150/100mmHg未満に低下しない場合,または治療開始前血圧180/115mmHg未満の症例が,同様の治療により140/90mmHgを超えている場合を治療抵抗性高血圧と呼んでいる。
老年者収縮期高血圧では,収縮期血圧が200mmHgを超えている症例が,3種の降圧薬を用いても170mmHg未満とならない場合,また収縮期血圧 160~200mmHgの症例が160mmHg未満とならない場合,治療抵抗性高血圧と定義している。Ram(2003)は,利尿薬を含む適切な3種の降圧薬(すべての降圧薬は,忍容性が認められる範囲での最大限に近い用量)を用いても目標血圧以下に下降しない場合を治療抵抗性高血圧としている(収縮期高血圧例では収縮期血圧140mmHg未満)。

治療抵抗性の高血圧にバルサルタンが有効
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2006/200603/500039.html
バルサルタン高用量単剤投与は従来薬に比べて収縮期血圧、脈圧を低下させたことから、服薬コンプライアンスを考慮すれば、治療抵抗性高齢者高血圧に対する一つの選択肢となりうる。

治療抵抗性高血圧の特徴:高アルドステロン血症 
http://intmed.exblog.jp/7197482/
Gaddamらは前向きに279名の抵抗性高血圧患者で、53名の対照比較で、血中アルドステロン高値・24時間尿中アルドステロン増加と、血管内容量増加(すなわち、BNP、ANP増加)することを見いだした。

治療抵抗性高血圧のAHAステートメント 
http://intmed.exblog.jp/7003295/
偽性抵抗性、すなわち、医薬品アドヒランス不良、白衣高血圧による血圧コントロール不良などを含め、除外診断が必要である。
RHは疫学的にはほぼつねに多因子的である。治療の成功には、抵抗性に寄与するライフスタイル要因の同定と改善;高血圧の二次的原因による診断と適切な治療;有効な多剤レジメン使用といったものが必要。

治療抵抗性高血圧症患者におけるスピロノラクトンの降圧効果
http://www.aldosterone.jp/evidence_box/page_2.php

高血圧の評価と
治療抵抗性高血圧の対応
http://www.healthcare.omron.co.jp/medical/study03/pdf/record_20080202_b.pdf
二次性高血圧のうち最も頻度が高いのは腎実質性で、2番目が腎血管性、そして3番目が最近注目されている原発性アルドステロン症です。
日常診療では、例えば、若年や高齢で急に高血圧を発症した場合などは、二次性高血圧を疑う必要があります。
また、利尿薬を服用していないにもかかわらず低カリウム血症があり、アルドステロン拮抗薬以外の降圧薬では血圧が下がらない、副腎腫瘍がある、といったケースでは、原発性アルドステロン症が強く疑われます。
治療抵抗性高血圧患者のなかでは、二次性高血圧の可能性についても留意することが必要です。

難治性高血圧
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000049_0098.html

難治性高血圧症治療のガイドライン
http://homepage.mac.com/k_kudo/iblog/B2007620793/C177514499/E20080409230006/index.html

家庭血圧による治療抵抗性高血圧の検討
http://www.healthcare.omron.co.jp/medical/study/pdf/past16_10.pdf

<コメント>
「3剤以上の降圧薬を服用しているにもかかわらず,血圧が目標値まで下がらない場合を治療抵抗性」ということであれば、当院へ通院中の高血圧患者の多くは治療抵抗性高血圧(RH)ということになってしまいます。
各降圧薬の投与量を最大にして3剤というのは現在の高血圧治療では一般的ではありません。
したがって投与量について言及せずにただ3剤投与というのでは、「治療抵抗性高血圧」の定義があいまい、と思ってしまいます。
私だけでしょうか。

 

<記事追加2008.7.9>
第72回日循総会 Af総合的治療戦略
http://blog.m3.com/reed/20080513
「心房細動を伴う心不全患者における心調律コントロールと心拍コントロールの比較」

読んでいただいてありがとうございます。

コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/?2008.5.21
「井蛙内科/開業医診療録」~2008.5.21 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
 があります。

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