戯れ言たれる侏儒
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  • ~ 降圧療法の進め方 ~
    RA系抑制薬で降圧と尿蛋白減少を図る
    高血圧編では, CKD患者における高血圧治療の進め方を図1のようにまとめている。
     

第一選択薬にはRA系抑制薬を推奨。
降圧目標もガイドと同様130/80mmHg(蛋白尿1g/日以上では125/75mmHg)だが,1剤で降圧目標を達成できない場合の第二選択薬として,体液過剰型には利尿薬,心血管疾患のハイリスク型にはCa拮抗薬,第三選択薬は,前者にはCa拮抗薬,後者には利尿薬を推奨。
利尿薬も,腎機能が正常の場合とGFR 30mL/分未満(血清Cr値2.0mg/dL以上)の場合に分けて推奨するなど,きめ細かな指示が加わった。
Ca拮抗薬は輸出細動脈拡張作用を有するタイプを推奨。ACE阻害薬(ACEI)とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の併用も,通常,利尿薬併用後としたうえで考慮してよいとした。
ただし,腎硬化症,多発性嚢胞腎,間質性腎障害では,降圧薬の種類を問わないとしている。
 
飯野教授は「ACEI,ARBなどRA系抑制薬による腎保護効果についてはエビデンスが確立されている。降圧と尿蛋白減少を目標に,まずACEIまたはARBを第一選択薬として降圧療法を開始する」と指摘する。

厳格な降圧療法でESRDと心血管疾患発症を防ぐ
では,そもそもCKD患者に対して,なぜ厳格な降圧療法が求められるのか。
CKDに対する降圧療法の意義について,大石副科長は「加齢に伴って,GFRは年間1mL/分の割合で低下する。高血圧が加わると,この低下速度が4~8mL/分まで加速される」と指摘する。
CKDは心血管疾患の独立した危険因子でもあり,同副科長らも,通院中の本態性高血圧患者約700例を5年間追跡したNOAH※ studyのサブ解析により,高血圧にCKDを合併する例では非合併例に比べて心血管イベントの発生が有意に多いことを確認している(図2)。


CKDの治療目標はESRDと心血管疾患の発症を阻止することにあるが,降圧により腎機能の低下速度を遅らせることで,両者を先送りすることができるという。

※NOn-invasive Atherosclerotic evaluation in Hypertension

血清Cr値30%までの上昇は腎保護作用獲得を示唆
RA系抑制薬には糸球体輸出細動脈の拡張作用があり,糸球体高血圧による糸球体過濾過状態を是正して尿蛋白を減少させ,腎保護効果を発現する。
RA系抑制薬の投与に関して高血圧編では,「特に血清Cr値2mg/dL以上の腎機能低下例では,まれに投与開始時に急速に腎機能が悪化したり,高カリウム(K)血症に陥る危険性があるので,低用量から慎重に投与する」と注意する。
 
大石副科長によると,低用量から投与を開始しても,RA系抑制薬投与開始から1か月程度の早期には,血清Cr値の上昇は起こりうるという。
高血圧編では,治療開始後4か月以内の血清Cr値30%までの上昇(ベース3.0mg/dL未満)は,輸出細動脈拡張を反映しており,むしろ長期的に見た腎保護作用獲得を示唆する早期所見であるとしている。
ただ,非専門医にとっては,やはり血清Cr値上昇への懸念も残る。
 
その意味からも,血清Cr値が多少上昇しても影響が少ないと考えられる時点,すなわち蛋白尿は出現しているがGFRの低下が軽度にとどまっているステージ1,2までの早期の段階から投与を開始することが重要だ。

少量から2週ごとに増量
RA系抑制薬を上手に使いこなすこつについて,大石副科長は「ステージ2までの症例には半量~常用量で投与を開始。腎機能がさらに悪化した段階では8分の1量から投与を開始し,2週ごとに倍量にするステップアップ方式を取っている。また,投与開始時にNSAIDの投与を1か月程度中止してもらい,水分補給を心がけるように指導している。
RA系抑制薬による蛋白尿減少効果には用量依存性が認められるので,忍容できる限り最大用量まで増量することが大切だ」と述べる。
降圧目標の達成は3か月を目標にしているが,もう少しかかることも多いという。
 
また,血清Cr値の30%または1.0mg/dLまでの上昇が認められた場合,増量を中断して,その時点の投与量で1~2か月投与を継続して様子を見る。
「実地医家の方々からRA系抑制薬を中止して患者さんを紹介されることがあるが,いったん投与を中断すると,また少量から投与を開始しなければならない。
高血圧編で指摘されるように,
(1)腎動脈狭窄(特に両側性)
(2)NSAIDやシクロスポリン投与
(3)心不全
(4)脱水
(5)尿路異常
―などの可能性があるときは減量ないし中止の必要があるが,それ以外の場合には,ぜひRA系抑制薬を切らずに紹介してもらいたい」と同副科長は訴える。
血清K値の上昇には,K吸着剤などを用いて対処するという。

血圧低下にはCa拮抗薬追加,尿蛋白減少にはACEI+ARB
一方,併用薬の選択について,大石副科長の方針は,ARBの投与によって血圧はコントロールできたものの蛋白尿が依然として認められる場合にはARBとACEIの併用療法を実施,ARBで蛋白尿は減少したが血圧コントロールが不十分な場合にはCa拮抗薬を追加するというもの。
実際,ARBの最大用量を投与しても蛋白尿が認められる場合,ACEIを併用すると尿蛋白減少が認められる。
 
同科の藤澤智巳講師らの検討では,糖尿病性腎症患者に対し,ARBとACEIを半量ずつ併用したところ,それぞれの最大用量より有意な微量アルブミン尿減少が確認されている。
 
他医から紹介されたCKD患者の16年間の1/Crの経過からは,当初から現在のようにARBとACEIの最大用量を併用するCKD強化療法を実施していたと仮定した場合,従来療法を継続していた場合に比べて透析導入を13年遅らせることができると推測されるという。
このシミュレーションからも,「ステージ1,2の早期CKDの段階から,RA系抑制薬を用いた積極的な降圧療法が重要であることがわかる」と同副科長は強調する。

~ CKD対策の鍵握る診療連携 ~
診療連携の推進で早期治療の普及・徹底を
ところで,新しいGFR推算式に基づく推計では,尿蛋白陽性またはGFR 60mL/分未満のCKD患者数は約1,330万人。
これに対して,腎臓専門医は約3,000人にすぎない。
早期診断,早期介入とともにCKD対策の大きな柱となるのが,実地医家と専門医の円滑な診療連携だ。
事実,透析直前に専門医へ紹介されるケースが25?40%に達するとの報告もあり,実地医家と専門医の協力体制の構築が急務となっている。
CKDの診療には栄養士をはじめとしたコ・メディカル,循環器疾患や糖尿病専門医の協力も不可欠であり,職種や診療科の垣根を越えた連携も求められる。

急激な尿蛋白増加,血清Cr値上昇は紹介のサイン
CKD患者を専門医に紹介するタイミングについてガイドは,検尿異常か腎機能障害があり,
(1)0.5g/gCr以上または2+以上の蛋白尿
(2)eGFR<50mL/分
(3)蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上)
―のいずれかに該当する場合としている。
治療方針について専門医のコンサルテーションを受けた後は,かかりつけ医が治療を継続する。
 
こうした悪化の兆候を見逃さないためにも,定期的なフォローアップが欠かせない。
ガイドでは安定したステージ1~2の患者に対するかかりつけ医でのフォローアップ検査として,尿蛋白,血清Cr,eGFRは3?6か月に1回,糖尿病患者ではHbA1cを1~3か月に1回,血圧は毎診察時にチェックすべきであるなどとしている。
 
飯野教授は「急激な尿蛋白増加や血清Cr値上昇が認められたら,専門医に一度紹介する必要がある。
また,IgA腎症,急激に悪化する抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連腎炎なども,早期であれば完治できるので,ステージ1,2であっても糸球体腎炎,膠原病性腎障害の可能性が疑われれば,早急に腎臓専門医に紹介して欲しい」と注意を促す。
 
現在,CKD診療ガイド改訂版,日本腎臓学会と日本糖尿病学会との共同による糖尿病編,専門医向けのCKD診療ガイドラインの編集も進行中であるという。
「CKD患者は国民の約13%を占める。進展阻止や回復が期待できる早期からの介入を実践し,透析導入,心血管疾患の増加を阻止するためには,診療にかかわるすべての医療関係者が連携・協力して,CKD対策に取り組む必要がある」と同教授は話している。

出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社

シャガール「Lovers Over Paris」
http://page7.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/g68306813

<症例提示>(当院通院中)

59歳男性
高血圧症
糖尿病性腎症(インスリン療法中)

H20.7.5時点のデータ 
血圧 134/80
尿蛋白(3+)、尿糖(-)
BS(食後6.5H)116mg/dl、HbA1c 6.7% 
K 5.9mEq/L、BUN36.1mg/dl、Creat 2.09mg/dL
使用薬剤 ルプラック、テノーミン、オルメテック、バイアスピリン、ザイロリック、アクトス(30)、セイブル(50)、アテレック(10)

クレアチニン値の経過(H20)
2/9  2.03
3/8  2.13
4/5  2.27
5/31 2.37
7/5  2.09

5/10 コニール(4)2Tよりアテレック(10)2Tに変更。

 

<関連記事>

血圧管理のみでは不十分
アフリカ系米国人のCKD
〔米メリーランド州ボルティモア〕 ジョンズホプキンス大学(ボルティモア)内科のLawence Appel教授らは,たとえ血圧が最適の降圧薬で厳格に管理されていても,慢性腎臓病(CKD)のアフリカ系米国人患者はいずれ腎機能が悪化するとArchives of Internal Medicine(2008; 168: 832-839)に発表した。
今回の知見から,この人口集団のCKDはこれまで考えられていたよりもはるかに複雑で,血圧管理は治療の一部にすぎないことが示唆された。

血圧が目標値未満でも腎機能が悪化
アフリカ系米国人の腎疾患と高血圧を検討したAfrican-American Study of Kidney Disease and Hypertension(AASK)と呼ばれる今回の研究は,CKD患者の血圧に着目したこれまでで最長のものである。
AASKではCKDのアフリカ系米国人患者1,094例を最長で11年間追跡調査した。
被験者の大半は,降圧薬の併用療法により血圧がCKD患者の目標値である130/80 mmHg以下に維持されていた。
しかし,それでもほとんどの患者では腎機能が徐々に悪化し,しばしば透析,腎移植,あるいは死に至った。
 
Appel教授は「今回の被験者は良好な高血圧治療を受けていたにもかかわらず,腎疾患は驚くべき速さで進行した。血圧は重要だがそれだけではない。
CKD患者に対する最善の治療法の発見まで道のりはまだ長い」と述べている。
 
今回の研究は全米の21医療機関において,高血圧性腎疾患に罹患しているアフリカ系米国人を対象とした。
白人では腎機能が完全に失われる末期腎疾患の約19%は高血圧が原因であるが,アフリカ系米国人では約37%とされる。
 
高血圧がなぜCKDにつながるのかについてはまだ明確な答が得られていない。
現在,一般的には,高血圧により糸球体が酷使されるためだと考えられている。

3分の1がESRDか死亡に至る
Appel教授らは,血圧を低く維持することでCKDの進行を遅延あるいは阻止できるかどうかを検証するため,試験を前期と後期に分けた。
前期は1995年2月~2001年9月,後期は2001年10月~07年6月に行われた。
 
前期試験で同教授らは,1,094例全例を一般的に用いられている降圧薬のACE阻害薬,β遮断薬,Ca拮抗薬のいずれかに割り付けた。
各患者には,標準的な血圧目標値(140/90mmHg以下)またはより厳格な降圧目標値(130/80mmHg以下)のいずれかを設定。血液検査と尿検査で各患者の血圧,腎機能を評価し,さらに総合的な健康状態を追跡調査した。
 
前期試験の終了時点で,ほぼ全例が目標血圧値を維持していたにもかかわらず,約3分の1の被験者は腎機能の5割以上を失っているか,末期腎不全(ESRD)に至るか,あるいは死亡していた。
残りの被験者のうち759例は引き続き後期試験に組み入れ,前期試験で確認された結果に従い,全例にACE阻害薬を処方した。これは,前期試験でACE阻害薬が他の2剤よりも腎機能維持に有効であることが示されていたためである。

降圧治療の継続は必要
その後5年間,患者の血圧,腎機能,総合的な健康状態を追跡調査した。
しかし,ACE阻害薬による治療にもかかわらず,被験者の3分の1はやはり腎機能の5割以上を喪失するか,ESRDに至るか,あるいは死亡した。
 
Appel教授はこのような結果にもかかわらず,CKD患者が降圧治療をやめるべきではないと述べ,「血圧管理を行っていなかった場合のアウトカムはさらに悪いものになっていたことは間違いない」と説明している。
 
しかし,今回の知見は,CKDの増悪過程には,血圧以外の因子が働いている可能性を示唆するものである。
夜間の急激な血圧上昇,高い塩分摂取量,または鉛や水銀など重金属への曝露が,腎疾患の進行に影響を及ぼしている可能性がある。
同教授は「調べなければならない因子は多数ある」と指摘しており,今後の研究でこれらの因子について検討する予定である。
出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社

 

<記事の追加>
Channelopathy
http://blog.m3.com/reed/20070916/Channelopathy
に以下の記事を追加しました。

QT延長症候群関連遺伝子
QT延長症候群の関連遺伝子をわが国で初めて同定
 失神や突然死の原因となるQT延長症候群は,1990年代半ば以降,原因遺伝子が次々と同定され,病態生理が解明されつつある。
これまでに10の関連遺伝子が報告されているが,今回,滋賀医科大学内科学の堀江稔教授がわが国で初めて新規関連遺伝子を同定し,Human Mutation(in press)に報告した。

オーダーメード医療に道
QT延長症候群は,イオンチャネル蛋白の責任遺伝子に異常を認めるチャネル病であり,先天性素因だけでなく薬剤誘発性などの二次性の要因も関係している。
わが国では同症候群の関連遺伝子を3,000?4,000人に1人が保有していると言われているが,堀江教授によると,日本人の1%以上に認められる一塩基多型(SNP)の有無によって,QT延長作用のある薬剤を内服した場合に同症候群を発症しやすくなる可能性があるという。
 
このように,同症候群の発症には複数の遺伝子やその他の要因が絡んでおり,これまでにわかっている関連遺伝子のなかで同症候群患者で発現頻度が高いLQT1型やLQT2型を合わせても原因遺伝子の同定頻度は50%強と言われている。
今回,同教授らが同定したKCNE3については同症候群患者の1%程度に発現しているにとどまるが,関連遺伝子を解明していくことでQT延長作用のない薬剤の開発やオーダーメード医療につながると期待される。
 
わが国で遺伝子診断が可能な施設は同大学や京都大学など,数施設に限られている。
今後,より詳しい病態生理を解明するためにも,同教授らは不整脈専門医による全国ネットワークを構築し,データベース化を推進している。
 
出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

 

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