戯れ言たれる侏儒
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最近、心臓血管研究所(東京)の山下武志先生の講演で、「抜歯の際、ワーファリン中止を指示する歯科医は東京では藪医者といわれるご時世だ」といわれました。
抗血小板剤も同じようなことと思われます。
必要で処方」しているわけですから、「いいおー!」と返書は書けません。
ましてや当院は医療訴訟になれば一家は勿論のこと職員も路頭に迷う一零細企業です。
返事は「アスピリンは必要のため処方しています。打ち切りの有無については貴科のお考えに従って行って下さい」ということになります。
今後、同じような症例はどんどん増えてくると思います。
DESの症例では、先生方はどのように対処してみえるのでしょうか。

さて、きょうはアスピリンについて勉強しました。
 

アスピリンによる1次予防効果が優れるハイリスク群が明らかに
アスピリンによる1次予防は、10年心血管疾患リスクが『>10%の男性』および『>15%の女性』において費用対効果が優れることが、Markovモデルを用いたシミュレーション研究で確認された。
アスピリンは心血管イベントの1次予防に有効なことが示されているが、アスピリンのベネフィットがより高いサブグループについては不明であった。

心血管リスクのレベルが異なる種々の年齢の男女で比較

アスピリンの費用対効果を、心血管リスクのレベルが異なる種々の年齢(45、55、65、75歳)の男女で比較するようデザインされたMarkovモデルを用いて、心血管イベント予防例数、質調整生存年(QALY)、10年間の費用を予測した。イベント発生率はオランダ人口統計データから算出し、アスピリンの相対的な有効性について性特異的メタ解析を行った。結果の信頼性を評価するために、感度解析およびモンテカルロ・シミュレーションを実施した。

おもな結果は以下のとおり。
●55歳のコホートにおけるアスピリンの1次予防効果
 ・男性の心筋梗塞の予防効果:127イベント/10万人・年の低減
 ・女性の虚血性脳卒中の予防効果:17イベント/10万人・年の低減 
 
●55歳の男性ではアスピリンによるQALYの改善が示唆された
 ・増分費用効用比:11万1,949ユーロ/QALY(1ユーロ=1.27ドル、2007年6月現在)
 
●心血管リスクが中等度(2倍に上昇)の55歳の男性、およびリスク因子のない65歳と75歳の男性(10年心血管疾患リスク>10%)でアスピリンの費用対効果を認めた
 
●心血管リスクが高度(5倍に上昇)の65歳の女性、中等度の75歳の女性(10年心血管疾患リスク>15%)でアスピリンのベネフィットを認めた
 
●これらの結果は、薬物治療コスト、アスピリン治療の有効性、アスピリン使用の効用値に対し高い感度を示した
 
●以上の結果より、10年心血管疾患リスク>10%の男性および10年心血管疾患リスク>15%の女性で、アスピリンによる1次予防の費用対効果が確認された

[監修者のコメント]
本研究は、一次予防におけるアスピリンの心血管イベント発症抑制効果の性差を、費用対効果の観点から研究した点である。 
費用対効果は各国により異なる。

また、その詳しい分析の新規性はよくわからないが、本研究を取り上げた理由は、血栓症の1次予防の考え方が重要と考えたからである。

血栓症予防・治療で使用される抗凝固薬や抗血小板薬などの血栓症治療薬と、降圧薬やスタチンなどとの大きな違いは、出血合併症が臨床的には無視できない割合で生じることである。
このことは、1次予防に関しては特に副作用に敏感なわが国では大きな問題となる。

1次予防の費用対効果の最も優れた血栓症予防・治療薬はアスピリンである。
しかし、心血管疾患の発症リスクが低い患者にアスピリンを投与することは、得られる予防効果よりも出血合併症のリスクが上回る。

アスピリンの2次予防目的の使用は、我が国では、2000年より、
1)狭心症(慢性安定狭心症、不安定狭心症)
2)心筋梗塞
3)虚血性脳卒中(一過性)能虚血発作・TIA、脳梗塞)
の発症既往を有する患者では、再発・2次予防に保険適応が認められており、コンセンサスが得られている。

問題は、一次予防である。

本研究は、心血管リスクが中等度(2倍に上昇)の55歳の男性、およびリスク因子のない65歳と75歳の男性(10年心血管疾患リスク>10%)でアスピリンの費用対効果が優れることを示した。
この費用対効果は明確な性差を認め、心血管リスクが高度(5倍に上昇)の65歳の女性、中等度の75歳の女性(10年心血管疾患リスク>15%)でアスピリンの有用性が見られた。

アスピリンの1次予防効果には、合併する心血管リスク、年齢、性別が大きく影響することが示された。

しかし、あくまでも、これらのデータは欧米人のものである。これまで、わが国ではアスピリンの1次予防の臨床的エビデンスがなかったが、現在、心血管リスクを有する高齢者を対象に、アスピリンの1次予防効果を検討する大規模臨床研究Japanese Primary Prevention Project with Aspirin (JPPP)が進行中である。
本研究より、近い将来、わが国のどのようなハイリスク群にアスピリン投与が有用であるかが、費用対効果も含めて明らかになるであろう。
([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
http://www.carenet.com/news/cardiology/newsnow/det.php?nws_c=4419

<原著>
Cost-effectiveness of aspirin treatment in the primary prevention of cardiovascular disease events in subgroups based on age, gender, and varying cardiovascular risk.Greving JP, Buskens E, Koffijberg H, Algra A.
Circulation. 2008 Jun 3;117(22):2875-83. Epub 2008 May 27.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18506010?ordinalpos=31&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum

 

新しい血小板活性化バイオマーカーの臨床的意義は? 
 
新たにみつかった血小板の内皮分泌蛋白であるSCUBE1[signal peptide-CUB(complement C1r/C1s, Uegf, and Bmp1)-EGF(epidermal growth factor)-like domain-containing protein 1]の血漿濃度は、急性冠症候群(ACS)および急性虚血性脳卒中(AIS)で有意に上昇するが、慢性期に存在する冠動脈疾患(CAD)では上昇しないため、急性血栓性疾患における血小板活性化の優れたバイオマーカーとなる可能性があることが、これらの疾患を有する患者と健常対照の比較研究で明らかとなった。ACS、AISでは血小板の活性化が重要であり、血小板が刺激されるとSCUBE1の血漿濃度が上昇する。SCUBE1のアミノ末端のEGF様繰り返し構造はリストセチン誘導性の血小板凝集だけでなく、血小板の接着能をも増強することがわかっており、そのためSCUBE1は血小板の内皮接着分子として機能し、心血管の生物学において病理学的な役割を担っている可能性が示唆されていた。
検出は症状発現後約6時間で可能に

ACS(40例)、AIS(40例)の血漿SCUBE1濃度を酵素免疫測定法(ELISA)で測定し、健常対照(40人)および慢性CAD(83例)の測定値と比較した。患者血漿中のSCUBE1蛋白の解析には2次元電気泳動法およびウェスタンブロット法を用いた。

おもな結果は以下のとおり。
●血漿SCUBE1濃度
 ・健常対照およびCADでは実質的に検出不能
 ・ACS:205ng/mL(中央値)、p<0.01
 ・AIS:95.1ng/mL(中央値)、p<0.01 
 
●血漿SCUBE1濃度の上昇は症状発現後約6時間で検出可能となり、84時間まで持続した。
 
●血漿SCUBE1濃度は、脳卒中の重症度(NIH脳卒中スケール)の、他の因子の影響を受けない独立の予測因子であった(β=3.18、p<0.001)。
 
●ACSではより小さなSCUBE1フラグメントが検出されたことから、病的状態下ではSCUBE1は蛋白分解的に働いている可能性がある。

[監修者のコメント]

本研究の新規性は、急性期動脈血栓症の診断や病態把握に有用な新たな血小板活性化バイオマーカーSCUBE1を提示した点である。

特に、急性期病態に血小板の活性化の関与が示唆されている急性冠症候群や、急性期虚血性脳卒中の中でもアテローム血栓性脳梗塞でそのレベルが増加しており、血小板活性化の関与が少ないといわれるラクナ梗塞では上昇していないことから、SCUBE1は臨床的に血小板活性化を評価するバイオマーカーとなる可能性が示唆される。

このSCUBE1は、不活性血小板のα顆粒に蓄積されており、血小板が活性化されると血小板表面に移動し、プロテアーゼにより切断されて、可溶性フラグメントとして血漿中に放出される。現在、切断部位やどのようなプロテアーゼが切断するかはわかっていない。しかし、SCUBE1には複数のアイソフォームがあることから、その切断過程は複雑であり、切断自体も急性期血栓症の病態を反映している可能性がある。

急性冠症候群では、急性期の再灌流療法とともに抗血小板療法をあわせて行なうが、その際、残存する血小板機能が急性期合併症や心血管予後に影響を与える。今後、アスピリンをベースに、チエノピリジン系薬剤や新たな抗血小板薬をどの時期にどのように組み合わせて、より有効な抗血小板療法を達成するかに関するエビデンス作りが必要であるが、その評価として、血小板機能を何での評価するかが重要である。

現在の血小板凝集検査、既存の血小板活性化マーカー、血小板マイクロパーティクルなどは採血条件や検査までの時間などの影響が大きく、煩雑である。今後、安定した新規血小板活性化バイオマーカーの開発が待たれる。

([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
http://www.carenet.com/news/cardiology/newsnow/det.php?nws_c=4418

<自遊時間>
昨夜、医学生のわが子が3か月ぶりにアメリカの短期留学から帰ってきました。
ボストン経由デトロイト発。
デトロイトからは13時間。日本時間の22日午後4時にデトロイトをたって日本には23日午後5時着。
何だか変です。
到着する2時間前に機内で朝食を食べたなんてことを言っています。
これから少しずつアメリカの医療事情を聞こうと思っています。
すっかりたくましくなって帰ってきたわが子にいささか興奮気味で、アルコールのピッチがあがってしまいました。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

 

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