戯れ言たれる侏儒
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< 循環器あれこれ 2008.6.20 | メイン | 高血圧と高尿酸血症 >

腹部大動脈瘤とステント

戯れ言たれる侏儒 / 2008.06.21 00:23 / 推薦数 : 0

現在、80歳過ぎの弓部の胸部大動脈瘤の方と、70台の胸腹部大動脈瘤の方を内科的に経過観察中です。
大病院の血管外科にコンサルトしたのですが、ステントの適応もないとのこと。
こわごわ診察しているのが現状です。
年年歳歳齢を重ねられるので手術の可能性はどんどんなくなっていきます。
大動脈瘤径もボーダーラインです。

行くも地獄、戻るも地獄。
この言葉で思い出したことがあります。

村民に「熱い油に手を入れろ」命令 インド地方の無謀な裁判
インドのある村で、学校から食糧が盗まれる事件があった。長老たちは村民の男性150人に、無実を証明するために煮えたぎる油に手を浸せと命令した。
村の男性150人は、油が沸騰する大釜から銅の指輪をつまみ出すよう命じられた。
裁判では、この命令を拒否した50人が犯人に違いないとした。
現在、大勢の村民がやけどを治療中だ。

 

ちょっと、話がそれてしまいました。 

そんなわけで(?)、きょうは「腹部大動脈瘤とステント(血管内修復)」を勉強しました。

開腹修復と血管内修復ともに利点と欠点
〔ニューヨーク〕インペリアルカレッジ(ロンドン)のRoger M. Greenhalgh,Janet T. Powellの両教授は,腹部大動脈瘤(AAA)の血管内修復に関する臨床的論評をNew England Journal of Medicine(NEJM,2008; 358: 494-501)に発表し,「開腹修復と血管内修復は双方とも利点と欠点がある。

いずれも高い技術を要するため,どちらを選択するにせよ,定評のあるセンターで経験豊かな血管外科医または血管インターベンション専門医が行うことが重要」と述べている。

5.5cm以下では破裂リスクは低い
Greenhalgh教授らは「基本的に,血管内修復は開腹修復より低い早期死亡率に関連するが,のちに再介入を要するリスクが高く,長期アウトカムの確実性が低いことにも関連する。血管内修復を選択した患者には特に,術後の一貫した定期的なフォローアップが不可欠であることに留意すべきである」と述べている。
 
また,同教授らは「重要な点として,患者はAAAの修復を調査した試験で得られた知見について偏りのない情報を受け,両治療法の利点と欠点を検討すべきである」と主張している。
 
AAAはしばしば無症候性であるため,他の目的で腹部画像検査を行った結果として検出される場合が多い。
最も一般的な症状は腹部痛または背部痛である。
 
動脈瘤の既往を持つ同胞がいる者は,自身も動脈瘤を発症するリスクが高いと考えるべきである。
加えて,アテローム動脈硬化症患者はリスクが高い。
また,AAAは他の心血管疾患やさまざまな心血管イベントと関連する。
 
直径5.5cm以下のAAAでは破裂リスクは低いが,これより大きくなるにつれてリスクは急速に上昇する。
患者に症状がない場合,動脈瘤が直径5.5cmを超えて壊れやすくなった場合,または直径が毎年1cmを超えて増大する場合は,介入が推奨されることが多い。
いくつかの研究で,これらの基準に達するまで動脈瘤の開腹修復を待っても,早期の介入と比べて患者のリスクが増大しないことが示されている。
 
AAAの最初の臨床症状は破裂である場合が多い。破裂すると,患者の10%しか手術室に到達するまで生存できず,さらに手術死亡率は40%を超える。
一方,ACE阻害薬やスタチン系薬を投与されている患者はいずれも破裂リスクが低下する。
 
AAAの診断は通常,超音波検査で始まりCT,MRIを用いて確定診断される。

血管内修復は早期死亡率低い
AAAに関して開腹修復と血管内修復を比較した最も重要な研究はEVAR試験1,DREAM試験,EVAR試験2である。EVAR試験1の詳細は両教授らがLancet(2005; 365: 2179-2186)に,DREAM試験の詳細はRadbout大学ナイメーヘン医療センター(オランダ・ナイメーヘン)のJan D. Blankensteijn教授らがNEJM(2005; 352: 2398-2405)に, EVAR試験2の詳細は試験1と同じ研究者らがLancet(2005; 365: 2187-2192)にそれぞれ発表している。
 
患者1,082例によるEVAR試験1では,術後30日以内の死亡率は血管内修復群で1.7%,開腹修復群で4.7%であった(P<0.001)。
術後4年死亡率は血管内修復群では開腹修復群の約2分の1であった(P=0.04)。
全死因死亡率は血管内修復群で26%,開腹修復群で29%であったが,統計学的に有意ではなかった。
また血管内修復群の20%,開腹修復群の6%で再介入を要した。
 
DREAM試験には患者351例が参加。やはり,術後30日以内の死亡率は血管内修復群で有意に低かった。
術後2年目の全体的な生存率に有意差はなかった。
再介入は血管内修復群のほうが多く,動脈瘤関連の死亡は開腹修復群のほうが多かった。
 
EVAR試験2は開腹修復の候補者ではない患者338例を血管内修復群と介入なし群にランダムに割り付けた。
同試験では,介入なし群と比べて,血管内修復群で便益は認められなかった。
合併症とその後必要とした治療は,血管内修復群のほうが多かった。

 患者の適性が重要
AAAに対する開腹修復は十分に確立された方法で,きわめて効果的であると同時に重大なリスクに関連する。
血管内修復と比べて,開腹修復は集中治療または救急治療の利用が多く,入院期間が長く,手術による痛みも強く,術後30日以内の死亡率が高い。
また開腹修復は,血管内修復とは異なり全身麻酔を要する。しかし開腹修復後は,AAAに関連する治療の必要性が血管内修復より少ない。
 
手術リスクの高い患者と併存症のある患者は開腹修復の候補者として適していないため,患者の選択が重要である。
 
開腹修復の候補患者に血管内修復を行うと,便益が得られることが試験で証明されている。
対照的に,外科手術の候補ではない患者に血管内修復を行った場合の便益は不明である。EVAR試験1は,術後30日以内の死亡率の点では最も適合する患者が最大の便益を得ることを示している。
 血管内修復の候補患者は,特定の解剖学的要件を満たす必要があり,それは通常,CTで評価される。
その要件には,例えば動脈瘤頸部の形と長さ,腸骨動脈の直径などが関連する。さまざまな研究から,AAA患者の14~54%が血管内修復の解剖学的基準に適合することが判明している。
 
血管内修復では術前にグラフトを正確に決定しなくてはならないが,それは術前画像検査を行わなければならない。
移植後,通常は1か月と6か月時に,またその後は毎年1回,CT血管造影検査を行う。
 
AAAの血管内修復には多様な有害イベントが関連する。EVAR試験1では,血管内修復に割り当てられた患者543例中4例が動脈瘤破裂を発症したため,開腹修復に切り替えられた。
 
血管内修復では,虚血性合併症と腎臓合併症の可能性がある。
加えて血管内修復の有効性は,動脈瘤の瘤部から血流を継続的に排除することによりもたらされるが,これはおよそ患者の5例に1例で完全には達成されない。
グラフトの移動,グラフトまたは末梢血管の狭窄または閉塞,動脈瘤またはグラフトから遠位の動脈部位のいずれかの拡張が起こる可能性がある。
 
主要な臨床試験では4年間のフォローアップに関する結果が報告されているが,血管内修復の長期間の耐久性については確立されていないとしている。

出典 Medical Tribune 2008.6.19
版権 メディカル・トリビューン社

 

 

<参考サイト>

腹部大動脈瘤エンドグラフトは臨床試験をパスしたか
http://www.nv-med.com/tct/03/pdf/03.pdf
 

大動脈瘤の治療には積極的にステントグラフトを
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcs2007/200703/502754.html
「大動脈瘤治療は手術かステンドグラフトか?」で、慈恵医大血管外科学の大木隆生氏(米国Albert Einstein医科大学外科学教授)は、「日本でも積極的にステントグラフトを用いたEVAR(Endovascular Aneurysm Repair:血管内治療)を取入れるべきだ」と提言した。

大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2006年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2006_takamoto_h.pdf

展望;ステントグラフト治療の普及に向け実施基準および調査体制の確立を
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E8%85%B9%E9%83%A8%E5%A4%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E3%80%80%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%88&perpage=0&order=0&page=0&id=M41120511&year=2008&type=allround

腹部大動脈瘤にステントグラフト治療
東京医大で研修トレーニング
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E8%85%B9%E9%83%A8%E5%A4%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E3%80%80%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%88&perpage=0&order=0&page=0&id=M3940241&year=2006&type=allround

腹部大動脈瘤ステントグラフトが保険適用に
ただし対象症例を限定
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E8%85%B9%E9%83%A8%E5%A4%A7%E5%8B%95%E8%84%88%E3%80%80%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%88&perpage=0&order=0&page=1&id=M4020433&year=2007&type=allround

腹部大動脈瘤にステント治療 代用血管の筒、開腹せず挿入
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20060804ik0b.htm
大動脈瘤に対する血管内手術:ステント・グラフト留置術
http://www.yamaguchi-u.ac.jp/yu/yu47/47-33.html
大動脈瘤ステント治療
http://www.pref.chiba.jp/byouin/junkan/science/stent.html

腹部大動脈瘤
http://www.jikeisurgery.jp/diseasegroup/vasc-surg/aaa/treat_adv.html

肥満、アディポカイン、および腹部大動脈瘤―Health in Man 試験
http://blog.m3.com/reed/20071211/Health_in_Man__

ステントグラフト治療
http://blog.m3.com/reed/20080331/1

炎症性腹部大動脈瘤
http://blog.m3.com/reed/20080204/1

 

<コメント>
昨日日本医師会雑誌の特別号として「心血管疾患診療のエクセレンス」というタイトルの雑誌が郵送されてきました。
期待して見開いてみたのですが、その分野を専門とする方には物足りない内容と思われます。
「大動脈瘤」の分野ではこんなことが書かれています。
■大動脈瘤とは、大動脈壁の全周または局所が正常径(胸部30mm、腹部20mm程度)の1.5倍を超えた拡張をいう。
■ 腹部では45~50mm以上、胸部では55~60mm以上を目安に、外科的人工血管置換かステントグラフト治療を選択する。
(体格が違うので欧米のデータはそのまま適用できない可能性があります。胸部と腹部が違うので、胸部大動脈の方がもともと血管径が大きいからでしょうか。)
■1年間に10mm以上の速度で拡大する場合や嚢状瘤は破裂するリスクが高く、より早期の治療が必要である。

 

<自遊時間>
一昨日、超音波装置が壊れたので昨日早速業者に来て貰いました。
案の定、基盤がもうないということで、ご臨終を宣告されました。
早速新機種の選考に入りそうです。
壊れた器械はアロカSSD-650。
カラードップラーもIMT計測も出来ない機種です。
今度こそ、この両方は絶対やりたいのですが、CWが必要かどうか迷っています。

ある筋からは、東芝、日立がいいのではといわれています。
予算もあるしなあと思っていたところ、今度は透視のモニターがピンボケで写らなくなってしまいました。

限りなくブルーです。
掛け時計まで壊れて止まってしまいました。

どなたかカラードップラーの心エコーとIMT計測を検査の主体とする場合、お薦めがあれば教えていただけるとありがたいのですが。
開業医なので中級でコンパクトなのが希望です。

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

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