戯れ言たれる侏儒
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< 冠攣縮性狭心症・診断基準と薬物治療 | メイン | 第72回日循 メタボリックシンドローム... >

第80回米国心臓協会学術集会(AHA 2007)
の記事で勉強しました。
心血管疾患制圧に向け新たなエビデンス加わる
〔米フロリダ州オーランド〕 第80回米国心臓協会学術集会(AHA 2007)が11月4日から4日間,当地で開かれた。
今回の参加者は約2万6,000人で,米国外からの参加が約9,000人を占めた。
同学術集会恒例のLate-Breaking Clinical Trialsセッションで示されたエビデンスは,心血管疾患の診断・治療を塗り替えるインパクトを持つ。

prasugrelは出血リスク増加も  虚血性イベント抑制で勝る
ハーバード大学Brigham and Women's病院(ボストン)心血管部門のElliot M. Antman教授らは,30か国707施設の参加を得て実施した第 III 相試験TRITON-TIMI38※を報告。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行予定の急性冠症候群(ACS)患者に対するアスピリン併用療法において,新規抗血小板薬prasugrelは通常量のクロピドグレルに比べて出血リスクを有意に増大させるものの,虚血性イベントを有意に抑制することを明らかにした。

イベント19%減,出血32%増
Prasugrelはチエノピリジン系薬で,活性代謝物が血小板ADP受容体P2Y12に特異的に結合し,その機能を抑制する点はクロピドグレルと同じであるが,より迅速に高い血小板凝集阻害効果を発現し,不応症が少ないとされる。
 
今回の対象は,PCI施行予定の中~高リスクのACS患者 1 万3,608例。不安定狭心症/非ST上昇型心筋梗塞が74%,ST上昇型心筋梗塞が26%を占めた。
対象を,
(1)クロピドグレル群(C群:初期用量300mg/日,維持用量75mg/日)
(2)prasugrel群(P群:初期用量60mg/日,維持用量10mg/日)の2 群にランダムに割り付け,全例にアスピリンを併用して,二重盲検で 6 ?15か月(中央値12か月)追跡した。
 
その結果,1 次評価項目の心血管死,非致死性心筋梗塞(MI)・脳卒中の発生率は,C群の12.1%に対してP群では9.9%と19%の有意(P=0.0004)なリスク減少を示した。

対象の94.5%(ベアメタルステントのみは47.5%)がステントを使用したが,ステント血栓症は,C群2.4%に対してP群は1.1%と52%の有意(P<0.0001)なリスク減少を示した。
これに対し,重要安全性評価項目である冠動脈バイパス術(CABG)に関連しないTIMI大出血(ヘモグロビン 5 g/dL超の低下)は, C群1.8%に対しP群は2.4%と32%の有意(P=0.03)なリスク増加を示した。
P群の出血リスク増大はCABG関連TIMI大出血では4.73倍(P<0.001),致死性出血では4.19倍(P=0.002)に及んだ。

脳卒中,TIA既往例は除外すべき
そこでpost hoc解析として,有効性と安全性を加味して心血管死,非致死性MI・脳卒中,CABGに関連しないTIMI大出血の発生を総合評価したところ,P群では13%の有意(P=0.004)なリスク減少が認められた。
両群の総死亡に有意差はなかった。
ただし,4 %を占めた脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)既往例では,P群で37%の有意なリスク増加が認められ,クロピドグレルが優れる結果となった。
16%を占めた75歳以上の高齢者,体重60kg未満例では,両群に有意差は認められなかった。
 
Antman教授は「脳卒中/TIA既往例はprasugrel投与例から除外すべきで,75歳以上,体重60kg未満例については,現在進行中のサブ解析から利益が得られる維持用量を明らかにできる可能性がある。
残りの対象には,維持用量10mg/日の投与により総合的な利益が得られた」と結論した。

※ TRial to assess Improvement in Therapeutic Outcomes by optimizing platelet InhibitioN with prasugrel Thrombolysis In Myocardial Infarction 38

<参考サイト> 

TRITON-TIMI38

http://www.theheart.org/article/823247.do
prasugrel

プラスグレルとアスピリンでステント血栓症リスクが減少
http://www.nejinews.co.jp/news/business/eid487.html
(プラスグレルの出血リスクについてはさらっとしか触れられていません)

2007年アメリカ心臓学会レポート
http://physician.pfizer.co.jp/cardiology/report/aha/2007/13.html#PS12-4
京都大学大学院医学研究科 循環器内科学 赤尾 昌治
抗血栓治療に伴う出血:リスク・ベネフィットのバランス
Bleeding with Antithrombotic Therapy: Balancing Risk and Benefit
(F Van de Werf, Leuven, Belgium)
多くの臨床研究の結果から,ACS患者における大出血の頻度は3~15%の範囲内で報告されており,これはSTEMIとNSTEMIの間には差はないとされる。
大出血を起こすリスク因子としては,高齢者,女性,腎不全,出血の既往,などが挙げられ,出血や輸血の施行は,poor clinical outcomeと相関が高いとされる。
CRUSADE研究で,入院中の輸血は全体で14.9%であり,腎不全,高齢が輸血と強く相関しており,輸血を受けた者は死亡あるいは再梗塞のリスクが有意に高かった。
輸血がpoor outcomeに関与する機序としては,血行動態を代償するためにカテコラミン分泌が増加すること,また輸血による一酸化窒素(NO)の消費のために炎症が惹起されるなどが考えられる。
以上より,ACSに対する抗凝固薬,抗血小板薬の使用に当たっては,予想されるリスク・ベネフィットのバランスを考慮することが常に重要である。

先述のように,OASIS-5研究でfondaparinuxがenoxaparinに比べて大出血が少なく,またACUITY研究においてbivalirudin単独投与群がheparin+GP IIb/IIIa受容体拮抗薬群に対して有効性は劣らず出血が減少する,などの知見は重要である。

aspirin を使用するACS患者において,clopidogrel追加投与の短期投与と長期投与の有効性および安全性を比較したCURE研究において,clopidogrelは一次エンドポイント(心血管死+非致死性心筋梗塞+脳卒中)の発生を有意に抑制し,大出血の発生率はclopidogrel群で有意に高かったが,生命にかかわる出血の発生率に有意差はみられなかったとして,出血と一次エンドポイントのバランスを強調している。
TRITON-TIMI38研究のprasugrelでは,clopidogrelに比して有意な出血リスクの増加が示されたが,これらは脳出血の既往のある患者に集中しており,脳出血既往の有無が抗血小板薬の選択に影響を与えることを示唆する。

血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬abciximabは,ISAR-REACT2研究などの結果から,STEMIでもNSTEMIでも少し出血が多くなるが,net outcomeの改善が期待でき,ベネフィットがリスクを上回るとした。

以上のように,リスク・ベネフィットのバランスを考えることは非常に重要であり,侵襲的PCIは適応を充分に吟味すること,また出血のハイリスク群にはfondaparinux,bivalirudinが推奨されること,またNSTEMIのハイリスク群にはGP IIb/IIIa受容体拮抗薬が良いことを挙げている。
また,穿刺は可能な限り橈骨アプローチで行うこと,またPPI(プロトンポンプ阻害薬)による消化管出血予防の重要性を述べて発表を締めくくっている。


 

黒沢吉蔵  「尾瀬遥か」 日本画 P10 
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p118143090

スタチンでは心不全患者の有意な心血管イベント抑制には至らず
至適治療を受けている慢性心不全患者へのスタチンの追加投与は,心血管イベントの有意な減少には至らないことが判明した。
欧州を中心に,5,000例を超える高齢心不全患者に対し,ロスバスタチンの予後改善効果を検討したCORONA※試験の結果から,イエーテボリ大学(スウェーデン・イエーテボリ)ウォーレンバーグ研究所のAke Hjalmarson氏が発表した。

「入院」は有意に減少
 CORONAは,従来の臨床試験で除外されていた収縮不全患者におけるスタチン療法の役割を明らかにする目的で計画された。
対象は,60歳以上の虚血性の収縮不全患者で,左室駆出率(EF)がニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類 III /IV度では40%以下,同 II 度では35%以下,心不全に対する至適治療を受けており,スタチン未使用または使用の必要がないなどの条件を満たす5,011例。
2週間以上のプラセボrun-in期間の後,
(1)プラセボ
(2)ロスバスタチン(10mg/日)
―の 2 群にランダムに割り付け,中央値で2.7年追跡した。患者背景は,平均年齢73歳,女性が24%を占め,NYHA II 度37%,III 度62%,IV度1.5%で,60%に心筋梗塞,12%に脳卒中の既往が認められた。
LDLコレステロール(LDL-C)は137mg/dLであった。
 
追跡の結果, 36か月後にはLDL-C,高感度C反応性蛋白はプラセボ群に比べて,ロスバスタチン群(スタチン群)でそれぞれ絶対値で34%(P<0.0001),37%(P<0.0001)有意に低値だった。
1 次評価項目の心血管死,非致死性心筋梗塞・脳卒中は,プラセボ群29.3%に対し,スタチン群では27.5%と 8 %のリスク減少を示したものの有意差には至らなかった(図,P=0.12)。
2 次評価項目については,入院数を除き,総死亡,総冠動脈イベント,心血管死のいずれも,両群に有意差は認められなかった。
入院数はスタチン群で有意(P=0.007)に減少したが,これは心血管疾患,心不全に基づく入院の有意な減少を反映していた。
安全性については,筋症状(プラセボ群207例,スタチン群225例),血清クレアチンの 2 倍化(順に32例, 23例)を含めて,スタチンにより有意な増加を示した有害事象は認められなかった。
 
以上を踏まえ,Hjalmarson氏は「今回の対象における心血管死の病因は,アテローム血栓性のイベントによるものではなく,主として心室拡張や瘢痕化に関連した電気的なイベントの可能性がある」との解釈を示した。
一方,プレスカンファレンスの司会を務めたAHA学術集会プログラム委員会のGordon F. Tomaselli委員長は「今回の結果からは,スタチンを投与中の患者の左室機能が低下したからといって投与を中止する必要はないが,スタチンの適応なしに,脂質低下を超えた効果のために同薬を虚血性の左室不全患者に投与することもない」とコメントした。

※ Controlled Rosuvastatin Multinational Trial in Heart Failure

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4050281&year=2007

出典 Medical Tribune 2007.12.13
版権 メディカル・トリビューン社

 <コメント>
何だか哲学的なコメントです。
要は「慢性心不全患者へのスタチンの追加投与は,心血管イベントの有意な減少には至らない」というネガティブデータということです。
枯れた田畑(傷害心筋をもつ慢性心不全)に用水の水をやっても(スタチンによるアテローム血栓の除去)「時既に遅し」ということなんでしょう。

<参考サイト> CORONA試験
至適治療を受けている慢性心不全患者に対するスタチン追加療法の新たな知見
-米国心臓協会学術集会にて発表、CORONA試験-
http://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2007/07_11_06.html
 

塩野義製薬など、慢性心不全患者に対するスタチン追加療法の新たな知見を発表
http://health.nikkei.co.jp/release/drug/index.cfm?i=2007110604676j5
塩野義製薬など、慢性心不全患者に対するスタチン追加療法の新たな知見を発表
 

試験責任医師であるノルウェー、オスロのRikshospitalet 大学病院心臓病学 John Kjekshus教授は「CORONA試験の結果によって、慢性心不全患者の医学研究/知見に大きな進歩が見られました。
慢性心不全患者のスタチン治療への反応は心不全でない人と比べて明らかに異なるのです。
我々は心不全に対する至適治療が施されている患者群に対し、きわめて効果の強いスタチンを追加しました。
試験結果から、患者の主な死因はアテローム性動脈硬化性イベントではなく、むしろすでに回復不能の損傷を受けていた心臓の状態が悪化したことに起因していたことが示唆されました。
従って、CORONA試験の結果から、アテローム性動脈硬化症の終末像である心不全に至る前に、スタチン投与により早期に介入することの重要性が強調されました」と話しています。

<コメント>
莫大な資金をかけた大規模臨床試験では、結果がネガティブで転んでもただでは起きません。
試験責任者の文章力が問われます。

 

医療ニュース【提供:毎日新聞社】 2008/06/17

<IGFBP―4>

心筋細胞の分化促す、たんぱく質発見 千葉大院教授ら、マウスで実験

心臓の形成に重要な働きをするたんぱく質を、小室一成・千葉大大学院教授らが発見した。
幹細胞の培養に使うと、10~20%の高い割合で心筋細胞が発生するという。
人にも存在し、重篤な心臓病の新たな治療法につながるか注目される。
心筋細胞の再生には、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)が注目されている。
だが、心筋細胞に分化する割合は1%程度だった。
研究チームは、心筋細胞への分化を促すたんぱく質が存在すると考えた。
マウスで実験した結果、「IGFBP―4」というたんぱく質を幹細胞の培養に使うと、10~20%の割合で心筋細胞が発生することを突き止めた。
また、孵化(ふか)直後のオタマジャクシで、このたんぱく質の働きを止めると、心臓が小さくなったり消滅することも分かった。
現在の重症心不全の治療は薬物治療が主流だが、生存率は5年で平均約50%。
心臓移植も国内で年間10例前後にとどまる。
小室教授は「このたんぱく質を使い、心筋細胞内の幹細胞を刺激し、心筋の再生を可能にしたい」と話す。
5日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080617ddm016040104/

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

 

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