戯れ言たれる侏儒
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< 第72回日循 心筋症 | メイン | ビバリルジン >

エゼチミブ(商品名:ゼチーア)といえば最近ENHANCE 試験が話題になりました。
デザイン上の問題があったもののLDLコレステロール低下療法至上主義に対する警鐘とも考えられます。

スタチンや今回取り上げるコレステロールトランスポーター阻害薬の影に隠れた薬剤。
たとえばEPA。
ひょっとして"beyond lipid lowering effect"があるんではないかと、私はしばしば単独投与ないしスタチンやエゼチミブと併用しています。
はたしてEPAの上乗せ効果をみた治験は現在行われているのでしょうか。
気づいたら、きょうの内容とはすっかりずれてしまいました。

特別企画
コレステロール吸収阻害による新しい脂質異常症の治療戦略
小腸コレステロールとランスポーター阻害剤エゼチミブの臨床的位置付け
LDLコレステロール(LDL-C)低下療法によって脳・心血管イベントの発症が抑制されることは,国内外の臨床試験成績からも明らかである。
しかし,実地臨床においてはさまざまな原因により動脈硬化性疾患予防ガイドラインが推奨するLDL-Cの管理目標値に到達できない場合がある。
わが国のこうした状況は,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブの臨床導入によってどのように変わっていくのか。
今回の座談会は,コレステロール吸収阻害の臨床的意義,エゼチミブの臨床的位置づけなどについての討論です。

水野 杏一 氏(司会) 
日本医科大学内科学 主任教授
吉田 雅幸 氏 
東京医科歯科大学生命倫理研究センター 教授
稙田 太郎 氏 
埼玉県済生会栗橋病院健診センター長
長嶋 浩貴 氏 
東京ハートセンター副院長臨床薬理研究所長


Presentation
コレステロール吸収阻害の重要性とエゼチミブの臨床的意義
吉田 雅幸 氏 
東京医科歯科大学生命倫理研究センター 教授
脳・心血管イベントリスクとしてのコレステロール吸収亢進とその臨床像
ライフスタイルの欧米化に伴い,日本人の血清総コレステロール値は年々上昇し,現在では欧米人とほぼ同じレベルに達した。動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは患者が保有するリスクに応じ,LDL-Cの管理目標値を設定し,まずは食事療法など生活習慣の改善を推奨している。
食生活の欧米化を背景とした日本人の高コレステロール血症の導入治療法として食生活の改善は非常に重要な位置を占める。
しかしながら,脂質異常症患者と医療従事者を対象とした意識調査では食事療法の継続の困難さがクローズアップされている。
 
さらに,ガイドラインでは生活習慣の改善によってもLDL-Cが管理目標値に到達しない場合には,薬物療法の導入を推奨している。
生体におけるコレステロールの供給源には,肝臓における合成と小腸からの吸収があり,血中のコレステロール値は両者のバランスによって調整されている。
これまでのLDL-C低下療法は,合成抑制が中心であったが,近年,小腸における吸収阻害に注目が集まっている。
 
大規模臨床試験4S(Scandinavian Simvastatin Survival Study)のサブ解析では,コレステロール吸収亢進群で,合成抑制による冠動脈イベント抑制効果が減弱することが示された。
また,DEBATE(Drugs and Evidence-Based Medicine in the Elderly)試験では,LDL-C値は同じレベルであったにもかかわらず,コレステロール吸収が亢進した群では非亢進群に比較して脳・心血管イベントの発生率が有意に高かったことが報告されている。
これらの結果から,脳・心血管イベント抑制において,コレステロール吸収阻害の重要性が示唆される。
どのような病態でコレステロール吸収が亢進しているのかというと,肥満者では胆汁性コレステロールの排泄量が多いため,吸収量が非肥満者に比べて多いとの報告や,2型糖尿病患者では,小腸におけるリポ蛋白の合成に関わるMTP(microsomal triglyceride transfer protein)やコレステロールトランスポーターNPC1L1(Niemann-Pick C1 Like 1)の遺伝子発現が非糖尿病患者に比べて有意に高いことが報告されている。

コレステロール吸収を阻害するエゼチミブの臨床的ベネフィット
最近,小腸の粘膜に発現するNPC1L1を特異的に阻害する小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブの臨床使用が可能となり,新しい治療の選択肢として注目されている。
わが国のエゼチミブ臨床試験では,単独投与によってLDL-C値を約18%低下させ,トリグリセライド(TG)やHDLコレステロール(HDL-C)など血清脂質全般に好影響を及ぼすことが示された。
また,動脈硬化惹起性の高いSmall, dense LDLを減少させることが報告されている(図1)。


さらに,エゼチミブはピュアなコレステロールのみならず,劣化変性した酸化コレステロールの吸収をも抑制することが確認されている。
この酸化コレステロールは,調理などの加熱や長期保存により,劣化変性したコレステロールであり,動物実験では,この酸化コレステロールをわずかに含む脂質負荷により,動脈硬化形成がさらに促進することが確認されている。
 
また,エゼチミブはスタチンとの併用により強力なLDL-C低下効果を示す。エゼチミブをアトルバスタチン10mgに併用することによりLDL-C値は53%低下し,大規模臨床試験EASE(Ezetimibe Add-on to Statin for Effectiveness)では,スタチンにエゼチミブを併用することによってLDL-C値はさらに約25%低下すること,その効果はいずれのスタチンへの併用時にも一貫して認められることが示された(図2)。


この併用による効率的なLDL-C値の低下により,ガイドラインが推奨するLDL-C管理目標値への到達が容易になることが期待される。
LDL-C管理目標値への到達状況を調査したJ-LAP(Japan Lipid Assessment Program)では,糖尿病やリスクを重複するハイリスク群に対するスタチン療法の目標値達成率は約50%,冠動脈疾患既往例では約30%程度との結果であった。
このような背景から,スタチン投与によってもLDL-C管理目標値に到達しないハイリスク群または二次予防群は,エゼチミブ追加療法の良い適応になるといえる*。

Discussion
わが国におけるエゼチミブの臨床的位置付けを考える
継続が難しい食事療法とコレステロール吸収阻害の臨床的有用性
水野 実地臨床におけるLDL-C値の管理状況はどの程度でしょうか。

稙田 
糖尿病患者の血糖管理においては,入院による食事指導は歴然とした効果を発揮しますが,外来における食事指導では管理は難しく,なかなか改善されません。
まずはライフスタイルの改善を目指し,食事・運動療法を指導しますが,ほとんどの症例が1年以内に脱落してしまいます。
コレステロール管理についても,同様のことがいえると思います。

水野 
MEGA Studyでは,食事療法を徹底するために管理栄養士による講習会なども実施しましたが,食事療法だけではLDL-C値は3%程度しか低下しませんでした。
食事療法だけでLDL-C値を下げるのは難しいと実感しています。

吉田 
日本においては,さまざまな食品が,容易に入手できるため,食事療法の遵守というのが難しいのが現状ではないでしょうか。

水野 
コレステロール吸収亢進そのものが独立した危険因子になるのではという指摘もありますね。
コレステロール吸収の亢進は生体にとって有害なことなのでしょうか。

吉田 
小腸からのコレステロール吸収は,われわれが生きていくためには必要なプロセスですが,先述の加熱調理などで生成した酸化コレステロールは動脈硬化惹起性が高いことを考慮すると吸収を抑制することは重要かもしれません。

水野 
このような背景もあり,LDL-C低下療法の新しい選択肢,小腸コレステロールトランスポーター阻害剤エゼチミブが注目されているわけですが,吸収亢進例では,エゼチミブがファーストチョイスになると考えられますね。

稙田 
肥満や糖尿病患者などインスリン抵抗性がある場合にも,小腸からのコレステロール吸収が亢進するのでしょうか。

吉田 
高インスリン血症がコレステロール吸収を亢進させるかどうかについては明らかにされていませんが,吸収が亢進している状態では,インスリンの作用がかなり低下することが予想されます。
われわれの肥満モデルラットを用いたデータでも,そのような病態が認められ,エゼチミブの投与によって改善されることが示されております(図3)。

 

長嶋 
われわれが冠動脈疾患既往例約1,800例を対象に行った調査では,ガイドラインが推奨するLDL-C管理目標値への到達率は30%程度でした。
食事指導にも力を入れ,薬物療法を行っても管理は難しいのが現状です。
肝臓でのコレステロール合成を阻害するだけでは管理目標値へ到達させることが難しいことから,小腸からのコレステロール吸収を選択的に阻害するエゼチミブは魅力的な作用機序を有する薬剤だと思います。

水野 
コレステロール合成を長期間阻害すると代償的にコレステロール吸収が亢進することが報告されていますから,糖尿病やリスク重複例などのハイリスク群や二次予防群でLDL-C管理目標値に到達しない場合には,合成を阻害するのと同時に吸収を阻害することが,治療薬の選択において非常に重要ではないかと思います。

各科領域のエキスパートが語るエゼチミブの臨床使用経験
水野 エゼチミブの臨床での有用性についてはいかがでしょうか。

長嶋 
私はこれまでに十数例にエゼチミブを投与しましたが,確実にLDL-C値は低下し,合併症がある患者さんにも好印象があります。

吉田 
エゼチミブはTGにも好影響を及ぼしますから,LDL-C値だけでなくTG値も高い複合型の患者にはエゼチミブをファーストラインとして使用し,厳格にLDL-C値を下げたい場合には,スタチンを追加するといった使い方もあると思います。

稙田 
糖尿病患者の場合,LDL-CだけでなくTGやHDL-Cの異常が問題になります。
また,Small, dense LDLも高い傾向がありますので,血清脂質全体に好影響を及ぼすエゼチミブは糖尿病合併例に効果が期待できると思います*。

*エゼチミブの使用上の注意:糖尿病合併の患者さんにおいては,空腹時血糖の上昇が報告されており,慎重投与となっております。


Medical Tribune 2008.6.12
メディカル・トリビューン社
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41240701&year=2008

 

<参考サイト>
エゼチミブ(商品名:ゼチーア)
http://blog.m3.com/reed/20070927/1
ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE
コレステロール吸収阻害の臨床的意義
http://blog.m3.com/reed/20080115/1
エゼチミブの臨床的有用性を考える
http://blog.m3.com/reed/20080116/1
エゼチミブの臨床的有用性 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080502/1
エゼチミブの臨床的有用性 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080503/2
ENHANCE試験をめぐる論争 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080428/1
ENHANCE 試験をめぐる論争 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080429/ENHANCE__
ENHANCE 
Ezetimibe and Simvastatin in Hypercholesterolemia Enhances Atherosclerosis Regression
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002764.html
(以下帝京大の寺本先生のコメントです)
ezetimibe(エゼチミブ)は新規の薬剤で,スタチンとの併用でLDL-Cの低下作用が格段に上がることが分かっている。LDL-C低下作用が心血管イベントを抑制することはスタチンの一連の試験で明らかにされているところから,エゼチミブとの併用がさらなる効果を上げることが期待されている。
しかしながら,本試験では強力なLDL-Cの低下作用は示したものの,家族性高コレステロール血症(FH)の頸動脈の内中膜肥厚度(IMT)の改善をもたらさなかった。
この結果が,エゼチミブの有効性を否定するものか否か議論になっている。
本試験の対象者はFHであるが,他の危険因子はほとんどなく,年齢も約46歳で半数が女性である。
さらにその81%はスタチン治療を受けている患者であり,FHとしては低リスク群といえる。
そのためともいえるが,ベースラインの頸動脈のIMTは約0.7mmと正常範囲である。
基本的にはこのような対象者を選択したこと自体に問題があったのではないかと思われる。
しかも試験期間は2年であり,正常のIMTの改善を観察するには短期間過ぎるように思われる。
今後,もう少し,緻密な試験デザインを組むという努力が必要と思われる。
小腸由来のコレステロールの影響をみることができるという期待もあり,2011年に終了する臨床的アウトカムをみるIMPROVE-ITという試験の結果を待ちたい。

(デザイン上の問題を指摘して、寺本先生の立ち位置を教えてくれているようなコメントです)
 

重要性を増す大規模臨床試験JELISへの期待
http://www.mochida.co.jp/dis/jelis/jlnwepm1.html
「エパデール」が糖代謝異常症例において冠動脈イベントを抑制
http://www.mochida.co.jp/news/2007/0920.html
EPA
http://blog.m3.com/reed/20080403
JELIS 臨床試験   EPA 製剤の冠動脈イベントに対する効果
http://tomochans.exblog.jp/2629908/
 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

 

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