戯れ言たれる侏儒
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NEW Original Articles of Olmesartan
オルメサルタンの優れた降圧効果とRA系抑制の新展開
―ACE2,Ang-(1-7)の意義―
 
従来レニン-アンジオテンシン(RA)系では,アンジオテンシノーゲンからアンジオテンシン I (A I )を経て,アンジオテンシンII(A II)が産生される経路が主軸であると考えられてきた。
しかし最近,
A IIのAT1受容体を介した作用とは逆の作用を有するAng-(1-7)の産生酵素であるACE2が発見され,RA系の新たなカスケードの存在が注目を集めている。
伊賀瀬氏は,ACE2やAng-(1-7)に対する,A II受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタン メドキソミル(オルメテックR)〔以下,オルメサルタン〕の影響を検討した動物実験を行った。そこで今回,ACE2ならびにAng-(1-7)の役割に併せ,実験の成績について解説していただいた。なお,聞き手は堀内氏が務めた。

 

聞き手
堀内 正嗣 氏 愛媛大学大学院医学系研究科 分子心血管生物・薬理学教授
解説
伊賀瀬 道也 氏 愛媛大学大学院医学系研究科 加齢制御内科学講師

ARB オルメサルタンの優れた降圧効果
堀内 
心血管系イベントを抑制するには,降圧の達成が非常に重要であることについては,数多くの大規模臨床試験やそのメタ解析の報告があります。
それではどのような降圧薬で血圧を下げたらいいかということなのですが,日本でよく使われているのがCa拮抗薬とARBです。
そのなかでもオルメサルタンは優れた降圧効果を有しており,海外の臨床試験では2週後から血圧が有意に低下し,24時間血圧の測定でも優れた降圧効果が報告されています(図1)。


 
また,通常はARBを投与していますと,A IIの血中濃度が上昇し,さらには一旦低下した血中アルドステロンが再上昇するアルドステロンブレイクスルーが発現することがあるのですが,オルメサルタンは日本人を対象とした検討で,A IIやアルドステロンの血中濃度が低下し,このような低下が1年後も持続していました〔Ichikawa S,et al:Hypertens Res 24(6):641-646,2001〕。
 
これよりオルメサルタンは,従来のARBとは異なる作用を有している可能性が考えられるのですが,そのような作用の発現対象として注目されているのが,伊賀瀬先生がご研究になられているACE2やAng-(1-7)です。

それでは最初に,ACE2やAng-(1-7)とはどのようなものかということについて,教えていただけますか。

Ang-(1-7)はA IIからアミノ酸が1つとれたペプチドで,A IIとは逆の作用を示す
伊賀瀬 
Ang-(1-7)は血管拡張作用や降圧作用,あるいは血管平滑筋増殖の抑制といったA IIとは逆の作用を示すペプチドで,ACE2はその産生酵素です。
 
私は,2003年から2年間Wake Forest大学のFerrario教授のもとに留学していたのですが,Ferrario教授は1980年代後半からAng-(1-7)の存在を提唱されていました。
ただ当時は,Ang-(1-7)の力価や特異的な受容体が不明であったことから,懐疑的な見方をされることがあったそうです。
 
しかし2000年代になって,DonoghueらがACEの相同体であるACE2のクローニングに成功し〔Circ Res 87(5): E1-E9, 2000〕,CrackowerやFerrario教授らがACE2ノックアウトマウスが拡張型心筋症のようなフェノタイプを示すことをNatureに発表しました〔Nature417(6891): 822-828, 2002〕。

さらにSantosらがAng-(1-7)の受容体がプロト・オンコジーンのMas受容体であることを明らかにした〔Proc Natl Acad Sci U S A 100(14): 8258-8263, 2003〕という新展開があり,この領域の研究が注目を集めるようになりました。

堀内 
ACE2やAng-(1-7)は,RA系カスケードにどのように作用しているのですか。

伊賀瀬 
ACE2は,A IIからアミノ酸を1つとってAng-(1-7)を産生します(図2)。

 

先ほど堀内先生がご指摘になられたとおり,通常はARBを投与しているとA IIが上昇するのですが,ACE2はこのようなA IIを低下させる方向に作用します。
なお,ACE2はAIにも作用するのですが,基質としてはA IIのほうが重要です。

堀内 
ACE2は,どのような部位に存在しているのですか。

伊賀瀬 
初期の検討では,心臓,腎臓,肺で,ACE2の発現が報告されていました。
また,2002年にSARSが大流行したのですが,このときにACE2がSARSコロナウイルスの受容体であることが判明し,消化管からのSARSコロナウイルスの侵入を調べる研究が盛んに行われました。そして,小腸の絨毛や血管内皮,さらには血管平滑筋細胞にACE2が発現していることが明らかにされました。
 
このころ私は,Ferrario教授のもとで循環器系におけるACE2の発現を調べていたのですが,サルやラットの心臓,冠動脈,頸動脈で,ACE2,Ang-(1-7),さらにはMas受容体が発現していることを確認しております。

オルメサルタンによる大動脈リモデリングの抑制には,
ACE2やAng-(1-7)の増加が関与している
堀内 
先生はACE2やAng-(1-7)に対するオルメサルタンの影響をご研究になられたそうですが,その結果をご紹介いただけますか。

伊賀瀬 
われわれは13週齢のSHRに,同程度に血圧を下げる用量のオルメサルタン(10mg/kg),アテノロール(30mg/kg),ヒドララジン(10mg/kg)を2週間飲水投与したところ,オルメサルタン群ではコントロール群に比べて大動脈の中膜面積,中膜内腔比,ならびに中膜肥厚度がいずれも有意に減少しました()。


 
また,オルメサルタンは免疫染色による評価で,大動脈におけるACE2ならびにAng-(1-7)の発現を有意に増加させました(図3)。

 

オルメサルタンによる新生内膜形成の抑制には,ACE2の増加が関与している
堀内 
先生は高血圧自然発症ラットであるSHRでご検討されていらっしゃいますが,血圧が正常な動物でもACE2が発現しているのですか。

伊賀瀬 
WKYではACE2の発現は高くなく,むしろ低下していました。

堀内 
そうしますとACE2は,血管が傷害を受けたり,心肥大が起こったりしているようなときに増加するのですね。

伊賀瀬 
そう思います。
血管の傷害に関しては,われわれは頸動脈にバルーン傷害を加えたSHRで,ACE2の発現に対するオルメサルタンの影響を検討しております。
本検討では,12週齢のSHRに対してバルーン傷害を加える前日よりオルメサルタン(10mg/kg)を2週間飲水投与したところ,オルメサルタン群ではコントロール群に比べて新生内膜の形成が抑制され,新生内膜や中膜におけるACE2の発現が有意に増加しました(図4)。

堀内 
先生のご検討では,ヒドララジンやアテノロールはACE2やAng-(1-7)を増加させなかったのですが,オルメサルタン以外のARBではどうなのでしょうか。

伊賀瀬 
心筋梗塞モデルを使用した検討では,オルメサルタンとロサルタンがACE2やAng-(1-7)を増加させたことが報告されています〔Ishiyama Y,et al:Hypertension 43(5):970-976,2004〕。
しかし本検討では,オルメサルタンの投与量は0.1mg/kgであったのに対して,ロサルタンの投与量は10mg/kgであり,100倍の差がありました。

臨床試験でもオルメサルタンの血管保護作用が報告されている
~EUTOPIA,MORE Study~
堀内 
本日お話しいただきましたACE2やAng-(1-7)の増加は,オルメサルタンの血管保護作用を説明する新たな機序の1つとして注目されますが,オルメサルタンは臨床試験でも血管保護のエビデンスを示しています。
 
例えばEUTOPIAでは,微小炎症を有する高血圧患者にオルメサルタン(20mg)ないしプラセボを12週間投与したところ,オルメサルタンではCRP,TNF-α,IL-6,MCP-1という炎症の指標が有意に低下しました〔Fliser D,et al:Circulation 110(9): 1103-1107, 2004〕。本試験で特に注目されるのは,近年CRPは炎症の指標であるだけでなく,活性酸素の増加や平滑筋細胞の増殖・遊走を促進して動脈硬化を進展させることが明らかにされてきているのですが,オルメサルタンはこのようなCRPを21%低下させたということです。
 
それからMORE Studyでは,心血管系リスクを有する高血圧患者にオルメサルタン(20~40mg)ないしアテノロール(50?100mg)を104週投与したところ,オルメサルタン群では頸動脈プラーク容積が中央値以上であった患者において,プラーク容積が有意に減少しました〔Klaus O,et al:Ther Adv Cardiovasc Dis 1(2):97-106, 2007〕。
 
それでは最後に,RA系を抑制する降圧薬としては現在,ARB,ACE阻害薬,アルドステロンブロッカーが利用可能であり,今後はこれにレニン阻害薬が加わる予定なのですが,その選択のポイントについてご意見をお聞かせ願います。

伊賀瀬 
やはりARBは,間違いなくいいであろうというエビデンスが豊富です。
そのなかでもオルメサルタンは,優れた降圧効果を有していることに加えて,われわれが実施した検討では血管保護作用が期待されるAng-(1-7)の増加が観察されました。

堀内 
本日はRA系の最新の話題について,とても興味深いお話をお伺いすることができました。
先生のご研究のさらなる進展を楽しみにしつつ,本日はこのへんで終了させていただきます。

出典 Medical Tribune 2008.6.5
版権 メディカル・トリビュ-ン社

<参考サイト>
血圧を低く保つMasの役割?
http://www.cosmobio.co.jp/stke/archive/ec_20030722.asp
CARDIOVASCULAR DISEASE:
A Role for Mas in Keeping Blood Pressure Down?
アンジオテンシンII(Ang II)は、アンジオテンシノーゲンがレニンおよびアンジオテンシン変換酵素によって経時的に分解された際に生じる産物であり、レニン-アンジオテンシン系(RAS)のエフェクターとして、血圧の調節および循環器疾患の発病に重要な役割を持つと長い間考えられてきた。
しかし最近の研究により、ペプチドアンジオテンシン-(1-7)[Ang-(1-7)]は別の分解経路を介して産生され、Ang IIの作用に拮抗する心血管作用を持つだけでなく、生理学的に意義のあるRASのエフェクターでもあることが示唆されている。Santosらは、オーファンへテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役型受容体(GPCR)MasがAng-(1-7)の機能的受容体であり、Ang-(1-7)活性の分子的基盤となることを突き止めた。
著者らは、オートラジオグラフィー解析を用いて、野生型マウスおよびMasを欠損させた変異マウスの腎臓切片とAng IIおよびANG-(1-7)との結合を比較した。
Mas欠損マウスでは、特異的なANG-(1-7)結合が失われたのに対し、特異的なANG II結合は影響を受けなかった。Ang-(1-7)はMasをトランスフェクトしたCos細胞株およびチャイニーズハムスター卵巣細胞株からのアラキドン酸放出を誘発し、Masトランスフェクト細胞に対する特異的結合を示した。
Masをノックアウトしたマウスは、水分負荷後のAng-(1-7)に対する野生型抗利尿反応が失われ、変異マウスの大動脈輪にはAng-(1-7)依存性の弛緩は認められなかった。
これらのデータは、Masが生理学的に活性のあるAng-(1-7)受容体であることを示しており、心血管疾患の新たな治療法に向けた道を開いている。 


losartanは高血圧患者のブラジキニン濃度を高める http://minds.jcqhc.or.jp/G0000085_S0023221_0004.html
アンジオテンシン変換酵素 (angiotensin converting enzyme: ACE) 阻害薬は,ブラジキニン (bradikynin: BK) の代謝を阻害してBKの増量をきたすが,アンジオテンシンII受容体拮抗薬 (angiotensin II receptor blockers: ARB) がヒトにおいてBKを増量させるか否かはいまだ議論のあるところである。
本研究では,本態性高血圧患者を対象とし,二重盲検法で2種のARB (losartan,eprosartan) のアンジオテンシン,BK,カリジン,ACE等への影響をプラセボと比較した。
人手これらのペプチドを同時に正確に測定した点で貴重な研究である。
通常量のlosartanおよびeprosartanとも血中BKを約2倍に増加させ,その作用はlosartanの方が強かった。
両薬剤ともACEに影響せずにBKを増量させたことから,肺において中性エンドペプチダーゼ等によるBKの代謝が障害された可能性があるとしているが,詳細は明らかでない。
ARBの使用で増量したアンジオテンシンIIの2型受容体への作用が関係していると思われるが,この点も更なる研究が待たれる。
ARBによるBK増加作用は臨床面できわめて重要な問題であり,本研究成果の意義は大きい。

アンジオテンシン-(1-7)の心保護作用、動物実験で示唆
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/179010.html
アンジオテンシン-(1-7)の心保護作用、動物実験で示唆
心筋梗塞モデルラットを用いた検討で、アンジオテンシン-(1-7)(Ang-<1-7>)を静注すると、心筋梗塞後の心不全発症を抑制するという研究結果が発表された。
心不全は心筋梗塞の主要な合併症の一つで、決め手となる予防策がなかっただけに、Ang-(1-7)の心筋保護薬としての潜在力に注目が集まりそうだ。
研究論文は、Circulation誌4月2日号に掲載された。
Ang-(1-7)はアンジオテンシン1と2のいずれからも切り出される活性型ペプチド。
内因性のアンジオテンシン2抑制因子として注目されており、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によって分解されることが知られている。
オランダGroningen大学のAnnemarieke E. Loot氏らは、雄性Sprague-Dawleyラットを心筋梗塞作製群と偽手術群に分け、心筋梗塞作製群には冠動脈を結索して人為的に心筋梗塞を誘発。手術2週間後に、心筋梗塞作製群をさらに2群に分け、Ang-(1-7)群(10匹)には24μg/kg/時のAng-(1-7)を持続静注、生食群(10匹)には生理食塩水(生食)を持続静注した。
偽手術群(10匹)には生食を持続静注した。
この3群間で持続静注の開始8週後に梗塞サイズを調べると、Ang-(1-7)群では生食群に比べ、血中Ang-(1-7)濃度は有意に高かったものの、梗塞巣のサイズは両群とも30%前後で有意差はなかった。
しかし、生食群では偽手術群より心筋細胞が有意に肥大していたが、Ang-(1-7)群では有意な心筋肥大がみられなかった。
また、血行動態も、Ang-(1-7)群では偽手術群に比べ正常に保たれていた。
生食群では偽手術群に比べ、左室収縮期圧、左室拡張末期圧、左室収縮脳・拡張能、平均血圧、冠血流量のいずれも有意に悪化していたが、Ang-(1-7)群では、偽手術群と比べ有意な悪化を示したのは左室収縮能だけだった。
とりわけ左室拡張末期圧は、Ang-(1-7)群で生食群より40%も減少していた。
さらに、Ang-(1-7)群では、大動脈の血管内皮機能が偽手術群と同程度に維持されていることがわかった。
生食群ではこれら両群に比べ、血管内皮機能は有意に低下している。
Loot氏らは、心筋梗塞後亜急性期における、Ang-(1-7)とACE阻害薬投与に共通の作用として、1.左室拡張末期活の減少、2.大動脈血管内皮機能維持、3.冠血流量増加、4.心筋肥大の抑制--があるとした。
一方、Ang-(1-7)とACE阻害薬との違いとして、1.血圧を低下させず維持する傾向がある、2.毛細血管密度を改善しない--の2点を挙げた。
研究に対する論説(editorial)では、Ang-(1-7)研究の第一人者、米国Wake Forest大学のCarlos M. Ferrario氏が、「Loot氏らによる知見により、Ang-(1-7)が心機能や心機能に影響を及ぼす情報伝達に果たす役割を、より積極的に研究する道が開けた」と評している。

オルメサルタンの最新知見
http://blog.m3.com/reed/20080514

 

<番外編>

堀内先生については、こんなスナップ写真を見つけました。
かの有名なDr.Dzau教授ご夫妻とご一緒に写っています。

福岡で開催された第21回国際高血圧学会の際に、米国ハーバード大学Dzau教授ご夫妻および同研究室OBの愛媛大学堀内教授ご夫妻、京都大学中尾教授、慶応大学伊藤教授、大阪大学森下教授らとの写真
http://www.yokohama-cu.ac.jp/res/researcher/info/080528tamura-jushou.html
 

 

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~ 「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
があります。

 

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コメント

コメント一覧

FDAに警告・説明できなかったプロモーション資料を堂々と講演に使っているところに、第一三共の企業姿勢に疑問です。
http://www.fda.gov/cder/warn/2006/Benicar-wl.pdf
written by XR4Y / 2008.06.27 19:16
XR4Y 様。

コメント有難うございました。
早速http://www.fda.gov/cder/warn/2006/Benicar-wl.pdfを読んで見ました。
written by 戯れ言たれる侏儒 / 2008.06.30 00:02

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