戯れ言たれる侏儒
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< PCIとCABGの治療選択 | メイン | EUTOPIA Study その2(2/... >

RAS抑制剤を降圧剤として処方する場合、循環器専門医はどのようなことを配慮して薬剤を選択するのでしょうか。
薬価、エビデンスの多寡やその重み、降圧効果、副作用。
なかにはMRさんの顔を思い出して処方する先生もいるかも知れません。
これらの中でも莫大な金額を投資したエビデンスについては、製薬企業は投資に見合う販売(投資の回収)をもくろんでいるはずです。
あるRAS抑制剤にエビデンスが得られたからといって、他剤ではたまたま大規模試験がやられていないだけで、同様ないしそれ以上の結果が得られる可能性もあります。
つまりdrug effectなのかclass effectなのかさえはっきりしない場合も多いのです。
「講演会」や、私がしばしば取り上げる「特別企画」なるものも警戒してかからなければなりません。

たまたま、「週刊朝日2008.6.6」に以下のような記事が載っていました。
ご覧になられた先生方も多いかと思います。
タイトルだけ紹介させていただいて、内容はそこから想像していただきたいと思います。

「製薬会社」漬け大学病院 第2弾
東大病院の研究は寄付企業に”べったり”!?
高血圧ガイドラインにかかわった教授に「降圧薬」製造企業から多額の寄付が・・・

弁明を少しすると、大学が各講座に配分する正式な予算ではろくな研究が出来ないのが現状のようです。
国も「産学協同」を推進しており、大学病院も企業から資金提供を受けることは推奨されています。

国としては見て見ぬふりなのか、推奨なのか。低い給料で働く国立病院(今や独立法人ですが)の勤務医のネーベン黙認と同じです。時々マスコミネタとなるところもそっくりです。

はっきりした態度をとらないと(そんなことは期待できませんが)、大学教授がスケープゴート(彼らは弱者ではないので的確な表現ではありませんが)になってしまいます。

古い話ですが、私の出身大学に有能な教授がみえました。米軍から研究資金を貰っていたということで学内で渦中の人となり、愛想をつかして転出されたということがありました。

後日、有名になられた彼の回顧談を読む機会がありました。そこには「あの時に研究費を手に入れていたら素晴らしい研究が出来ていたのに。思い返すにつけ残念だった。」と書かれていました。

私にとっても苦い思い出です。

さて随分脱線してしまいました。

きょうはEUTOPIA Studyについて勉強しました。 

RA系と血管機能障害の最新知見と高血圧治療における意義
高血圧は血管内皮に対する機械的ストレスの増大に加え,酸化ストレスや血管炎症を惹起させるなどの機序を介して心血管系リスクを高めることが知られている。
さらに最近の研究からは,この2つの機序がアテローム性動脈硬化病変の形成・進展にも影響を及ぼすことがわかってきており,一連の過程において局所アンジオテンシンII(A II)が重要な役割を演じていると考えられている。
 
本座談会では,A IIが血管障害を引き起こすメカニズムとともに,優れた降圧効果を示すAT1受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタン メドキソミル[以下オルメサルタン](商品名オルメテック)を用いた高血圧治療の意義と新たな可能性について,国内外の循環器領域における専門医の先生方にお話を伺った。

出席者(発言順)
下川 宏明 氏(司会)東北大学大学院循環器病態学分野教授
Ernesto L. Schiffrin 氏 カナダ・マギル大学内科教授
野出 孝一 氏 佐賀大学循環器・腎臓内科教授
池田 宇一 氏 信州大学大学院循環器病態学分野教授

A IIによる酸化ストレス増大と炎症亢進の機序
下川
近年,アテローム性動脈硬化病変の形成と進展における,血管局所での酸化ストレスや炎症の関与に注目が集まっています。
強力な血管収縮因子であるA IIは,全身の血圧を上昇させるだけでなく,血管や心・腎などの臓器における酸化ストレスや炎症の増大に深く関与することが明らかになってきました。
まずSchiffrin先生,これらのメカニズムについてどのようなことが明らかになっているのでしょうか。

Schiffrin 
高血圧や高脂血症,糖尿病などでは,組織A IIが増加し,アテローム性動脈硬化および血管障害が促進されます。
Weissらは,動脈硬化モデルであるApoE欠損マウスに高コレステロール食を給餌し,さらにA IIを投与すると,高コレステロール食のみを与えた場合に比べて,アテローム性動脈硬化病変の形成が顕著であることを報告しています。
A IIは,大血管におけるアテローム性動脈硬化の促進のみならず,細小血管の障害とリモデリングにおいても重要な役割を果たすと考えられています。
A IIにより惹起される血管障害の代表的な機序として,酸化ストレスの増大が挙げられます。
細胞内の機序に目を向けると,A IIによるAT1受容体の刺激がNAD(P)Hオキシダーゼを活性化し,それに伴って活性酸素種(ROS)が大量に産生されます。
ROSは,NF-κB,AP-1,HIF-1などの細胞質内転写因子の活性化を介して,IL-6,MCP-1などの炎症性サイトカインや細胞接着分子の発現や産生を亢進させると考えられます図 1)。

 

下川 
A IIによる酸化ストレスの増大においては,細胞内におけるNAD(P)Hオキシダーゼの活性化が鍵となるのですね。
ところで,Schiffrin先生は抵抗血管のリモデリングに炎症性メディエータが関連することを報告されていますが,炎症が発生する過程においてもA IIが関わるようですね。

Schiffrin 
私たちは血管炎症の重要なメディエータとして知られるマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)が欠損した大理石骨病(op/op)マウスを用いて検討を行いました。
野生型マウスでは,A II投与によって,アセチルコリン誘発性の動脈拡張が低下し,抵抗血管にも中膜肥厚が認められます。
これに対し,M-CSF欠損op/opマウスでは,A IIの作用が減弱し,アセチルコリン誘発性の動脈拡張や抵抗血管の中膜肥厚が認められません。
また,op/opマウスでは,A IIによる血管中膜におけるNAD(P)Hオキシダーゼの活性化やVCAM-1の発現がほとんど見られません。
すなわち,
A IIによる血管リモデリングの促進過程において,M-CSFなどの炎症性メディエータが重要な役割を持つと考えられています。

下川 
血管リモデリングでは,平滑筋細胞の増大や線維化なども重要ですね。

Schiffrin 
そうです。
これらの反応は血管炎症とともに惹起されますが,そこにはやはり,A IIや酸化ストレスが関与しています。
ROSは,p38MAPKやJNKなどのMAPキナーゼファミリーを活性化し,細胞の増殖やコラーゲン産生などを促進します。
さらに,アテローム性動脈硬化病変の不安定化や破綻には,線維性被膜の脆弱化が関係していますが,細胞外マトリックスの分解酵素であるMMP(matrix metalloproteinase)やその阻害因子であるTIMP(tissue inhibitor of metallo-proteinase)などの活性化に対しても,A IIが影響を及ぼすことがわかってきています。

下川 
A IIは,血管病変の形成や進展のさまざまな段階に影響を及ぼす重要な因子と言えますね。

 

動脈硬化の進展過程における各種サイトカインの関連と臨床応用の可能性
下川 
次に,動脈硬化の進展過程における各種の炎症性因子の関与について,野出先生と池田先生にご解説いただきたいと思います。

野出 
高血圧や高脂血症を合併した動脈硬化性疾患の病態では,血中におけるTNF-α,IL-1やIL-6などの炎症性サイトカインの増加が認められ,肝由来CRPやフィブリノゲンも増加します。
これらの因子は,組織局所においては直接的にマクロファージや血管内皮細胞に作用し,炎症反応を惹起する因子であることが示唆されており,実際に炎症マーカーとして臨床利用されています。
これらの炎症性サイトカインは,血管炎症の初期段階からアテローム性動脈硬化病変の形成・進展,そして不安定化という全ての過程にわたって重要な役割を果たしていると考えられます。

下川 
高感度(hs)CRPは良好な血管炎症マーカーとして確立していますが,実は
CRP自体が直接的にアテローム性病変に作用することが報告されていますね。

野出 
Wangらは,CRPが平滑筋細胞の増殖や遊走を介して,ROS産生を亢進させることを報告しています。
また,ここでも,A IIによるAT1受容体刺激がCRPの作用を促進することが明らかになっています。

下川 
野出先生は,炎症性サイトカインと心血管系イベント発生との関係を検討なさっていますね。

野出 
安定狭心症・陳旧性心筋梗塞などの冠動脈疾患評価のために血管造影を実施した患者を対象に炎症性サイトカインの血中濃度を測定し,その後の心血管系イベント発生との関係について検討しました。
158例の連続症例において,血管造影当日にIL-1β,IL-2,TNF-α,GM-CSFなどの10種類のサイトカインの血中濃度を測定し,さらに高血圧,糖尿病などの合併症の有無などの因子を含め,約7年間の追跡期間中における心血管系イベント発生との相関を解析しました。
その結果,単変量解析では,10種類のサイトカイン全てが心血管系イベント発生と有意な相関を示しましたが,多変量解析では,IL-8が有意な相関を示したほか,糖尿病合併が有意に相関しました。

下川 
こうした症例では,IL-8が最も良好なマーカーということでしょうか。

野出 
IL-8が現在臨床使用されているマーカーに比べ,より直接的に血管炎症を反映するマーカーであることが示唆されました。
IL-8は好中球を強力に誘導する因子ですので,冠動脈疾患の発症・増悪において,好中球やマクロファージなどのリンパ球の活性化が重要な役割を持つものと考えています。

下川 
池田先生の施設では,IL-10が動脈硬化の抑制に寄与することを示唆するデータを報告なさっていますね。

池田 
私たちは,ApoE欠損マウスに対してIL-10遺伝子を導入する検討を実施しました。
抗炎症性のサイトカインであるIL-10は,高血圧や高脂血症によるアテローム性動脈硬化の抑制に寄与する可能性が考えられます。
私たちの検討では,IL-10遺伝子を導入したApoE欠損マウスにおいて,血中MCP-1濃度が非導入のマウスに比べ有意に低下し,動脈硬化病変の形成も抑制されることが明らかになっています。
また,脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)にIL-10遺伝子を導入した検討では,収縮期血圧の低下と頸動脈における動脈硬化の抑制が認められ,死亡率も低下することが明らかになりました。

下川 
いずれの研究においても,各種サイトカインによる炎症の惹起あるいは抑制が,動脈硬化の進展とイベント発生において重要な役割を持つことが改めてうかがえたと思います。

野出 
サイトカインを介した酸化ストレスの増強は,高血圧をはじめ,糖尿病,喫煙,LDLコレステロール,ホモシステイン,エストロゲン欠乏などのさまざまな要因によって促進され,血管内皮細胞の障害をもたらします。
さらに,血管内皮機能の低下は,平滑筋細胞の増殖や血管の硬化を促進し,心血管系イベントの発生へとつながります。
したがって,心血管系疾患の予防・治療においては,サイトカインの活性化を介した酸化ストレスや炎症の増大を抑制することが,今後重要なターゲットの1つになると思われます。

出典 Medical Tribune 2008.5.22
版権 メディカル・トリビューン社

 

<参考サイト> 

■ Effect of Olmesartan Medoxomil on Atherosclerosis: Clinical Implications of the Emerging Evidence.
American Journal of Cardiovascular Drugs. 6(6):363-366, 2006.
Takai, Shinji; Miyazaki, Mizuo
Abstract:
Angiotensin II is a potent vasoconstrictor and may also contribute to the progression of atherosclerosis. In atheromatous lesions located in human coronary and carotid arteries, angiotensin-converting enzyme and angiotensin II levels are significantly increased. Angiotensin II is known to have proinflammatory actions in vascular tissues, inducing inflammatory cytokines and oxidative stress. In particular, angiotensin II activates the potent cytoplasmic transcription factor nuclear factor-[kappa]B, which regulates leukocyte adhesion molecules, tumor necrosis factor (TNF)-[alpha], monocyte chemotactic protein (MCP)-1, and interleukin (IL)-6, and contributes to the recruitment of circulating mononuclear leukocytes to the arterial intima. Olmesartan medoxomil has one of the highest degrees of antihypertensive efficacy among the angiotensin II type 1 receptor antagonists. In the EUTOPIA (EUropean Trial on Olmesartan and Pravastatin in Inflammation and Atherosclerosis) trial, olmesartan medoxomil significantly reduced serum levels of high-sensitivity C-reactive protein, high-sensitivity TNF[alpha], IL-6, and MCP-1, all of which are involved in promoting atherosclerosis. In a monkey atherosclerotic model, a 3-D intravascular ultrasound analysis of aortas showed that serum levels of MCP-1 and the degree of intimal hyperplasia were significantly lower after treatment with olmesartan medoxomil than before treatment. In VIOS (Vascular Improvement with Olmesartan Medoxomil Study), treatment with olmesartan medoxomil for 1 year, significantly reduced the wall-to-lumen ratio in arteries, whereas atenolol did not. Thus, olmesartan medoxomil, which rapidly reduces inflammatory markers, may have a beneficial antiatherosclerotic effect.
http://pt.wkhealth.com/pt/re/cvd/abstract.00129784-200606060-00002.htm;jsessionid=LFYZm2M3BGNLZBcTGPn2nJdZQ1zx6GvCrq9bhHTVlvjJmLDQ3NW2!634347399!181195628!8091!-1

 

■ In another study (EUTOPIA study) conducted
in patients with essential hypertension and
microinflammation (assessed by measuring
high-sensitivity C-reactive protein), olmesartan
significantly reduced vascular microinflammation
by as early as week 6 of therapy.
This anti-inflammatory action of olmesartan
may contribute to its beneficial cardiovascular
effects .
Olmesartan also significantly reduced other
markers and mediators of inflammation (e.g.
tumour necrosis factor-α, interleukin-6).
In summary, arterial hypertension is
http://www.menarini.ch/de/pdf/Inside%20Congress%20Milano%202005.pdf
(文はP12、図はP13です)
 

<コメント>
EUTOPIA Studyについては明日紹介の文中に出てきます。

EUTOPIA Studyについては、以前に
脳卒中におけるRA系抑制の重要性(その2)2/2
http://blog.m3.com/reed/20071116/1
ARBがアテロー硬化性プラークを抑制
http://blog.m3.com/reed/20071228/1
DES 費用効果
http://blog.m3.com/reed/20080315/DES__
心腎連関 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080321/1
でも触れています。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~

「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21

があります。

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