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DBPの下がり過ぎによるJカーブ現象,老化現象に留意を
山科
130/80mmHg未満への降圧ですが,DBPではコントロールに難渋しそうです。
降圧薬はSBPとDBPいずれも下げる効果があり,特に高齢患者の場合,血管硬化度の影響で冠血流量の低下およびDBPの下げ過ぎが懸念されます。
Oparil
DBPの下がり過ぎは,特に虚血性の病態を有する患者に注意すべき問題で,SHEP試験でもDBP 60mmHg以下の危険性が指摘されています。
盛田
私もJカーブ現象に関心があります。HOT試験で,糖尿病合併高血圧患者においてDBPが80mmHg以下の群で死亡率がほぼ半減していました。
しかし,糖尿病患者では冠動脈が傷害されている可能性が高く,Jカーブ現象とは異なった動きを示したのは興味深いです。
Oparil
SHEP試験,Syst-Eur試験でも糖尿病合併患者におけるSBPの降圧ベネフィットが報告されています。
特にカルシウム(Ca)拮抗薬投与群で良好な成績が得られました。
総じて,糖尿病合併高血圧の症例では厳格な降圧が望まれることを示しています。
長谷部
DBPの低下は脈圧の増大をもたらしますが,これは動脈硬化の進展の結果とも言えます。
つまり,降圧薬投与の結果としての低い血圧レベルがJカーブ現象の原因なのではなく,元来の老化にともなう動脈硬化自体が主因とは考えられないでしょうか。
Oparil
老化の影響は見逃せません。老化現象の特徴は血管硬化,さらにMRFIT試験で危険性が示された脈圧の上昇です(図)。

山科
高齢患者でも,DBPよりSBPの降圧を重視しているのですか。また,AHAステートメントでは年齢を考慮に入れていますか。
Oparil
やはり,SBPを重視しています。
SBPは左室重量,左室後負荷と相関が強いからです。
年齢については考慮していません。
しかし,治療の目的は年齢によって変わります。
高齢および老化は高リスクなので,降圧治療により短期間でベネフィットを得られます。
一方,若年層に対しては予防を念頭に置くべきです。
一次予防の鍵は薬剤選択より降圧の達成
長谷部
では,AHAステートメントにおける薬物療法に話を移します。
Oparil
一次予防におけるCAD発症リスクを低下させるためには,薬剤選択より降圧の達成が鍵となります。
リスクのない患者に対する一次予防では薬剤を限定していません。
JNC-7では利尿薬が第一選択とされていますが,利尿薬は糖尿病を考慮した場合など,適さない症例が存在することもあります。
高CADリスクの患者に対する予防には,Ca拮抗薬,ACE阻害薬もしくはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),利尿薬を推奨しています。
患者の病態によりその他の薬剤と併用するのが望ましいでしょう。
Ca拮抗薬には,VALUE試験やCASE-J試験で優れた降圧に伴う脳・心血管イベント発症抑制作用のエビデンスがあります。
ARBは,高血圧前症を対象に検討したTROPHY試験などの結果から,優れた高血圧予防作用が示されています。
血圧値と降圧目標値の乖離が大きい(20/10mmHg以上)患者には,治療初期から2剤以上の併用療法が望ましいとしています。
二次予防の各項目において特筆すべきは左室機能障害に抗アルドステロン薬を加えている点です(表 2)。
併用療法が単独療法より優れる
山科
AHAステートメントでは,160/100mmHgであれば併用療法での降圧治療開始を推奨していますが,別の箇所ではDBP高値および心筋虚血の既往のあるCAD患者に緩徐な降圧を勧めています。
これは血圧コントロールの困難な患者に対して,違った機序の薬剤を併用することを推奨していると解釈してよいのでしょうか。
Oparil
併用療法と緩徐な降圧という記述は矛盾してしまいますが,これらの内容は「降圧薬の併用は低用量から開始する」という意味合いを含んでいます。
米国人は日本人に比べて薬剤への感受性が鈍く,米国では多量の薬剤を使用する傾向にありますので,このような記述になりました。
ただ,併用療法に関して疑問の余地はありません。
盛田
併用療法が高用量の単独療法よりも優れているというエビデンスはありますか。
Oparil
ARB+利尿薬など,特にARBにおいて併用療法での有用性が認められています。
意外と知られていませんが,ARBとCa拮抗薬の併用は降圧力が強いです。
冠攣縮の発症率が高い日本人に合う降圧薬はCa拮抗薬
長谷部
また,日本人にとってIHDのなかでも冠攣縮は重要な問題です。
AHAステートメントでは特に言及されていませんね。
Oparil
AHAステートメントでは,動脈硬化性疾患を重視しています。米国ですと,女性のほうが男性より冠攣縮を発症する頻度が高いですが,あまり重視していません。
冠攣縮の症例ではCa拮抗薬が第一選択となります。
長谷部
日本人の急性MI患者1,090例でβ遮断薬とCa拮抗薬を検討したJBCMI試験では,入院を必要とする心不全および冠攣縮の発症率がCa拮抗薬で有意に低いという結果でした。
このような報告から,日本では,Ca拮抗薬が安定したCAD合併患者において第一選択に位置づけられています。
山科
Ca拮抗薬だと高血圧,冠攣縮,狭心症を1剤で治療できるので,日本人にとって好ましいと言えます。
長谷部
「一薬三鳥」ですね。
Oparil
アジア人では,白人や黒人とは病因や罹患しやすい心血管疾患が違いますし,人種,疾患に合わせた薬剤選択が望まれます。
長谷部
AHAステートメントの内容から,降圧の意義,薬剤選択まで,活発な議論が展開されました。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41210601&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.22
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編 ホットニュース>
筋肉のエネルギー消費を調節=たんぱく質のスイッチ機能解明-東大
血管の疾患などに関与しているたんぱく質が、筋肉のエネルギー消費を調節する働きを持っていることを、東大循環器内科の永井良三教授らのグループが突き止めた。
別の小さなたんぱく質との結合・分離によってスイッチを切り替えるように調節することも分かり、25日付の米医学誌ネイチャー・メディシン電子版に発表した。
こうしたメカニズムが明らかになったのは初めて。
研究グループは「肥満やメタボリックシンドロームの新たな治療薬開発につながる」としている。
「KLF5」と呼ばれるこのたんぱく質は、さまざまな遺伝子の機能を調節しており、これまでに血管や心臓の疾患、がんなどへの関与が知られている。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008052600010
時事通信社 2008/05/26-01:09
<「KLF5」関連サイト>
『Zinc finger型転写因子ネットワークによる脂肪細胞機能と形質変換制御機構』
http://www.adipomics.net/kenkyuuinn/16_17/1_5.html
21世紀COEプログラム 環境・遺伝素因相互作用に起因する疾患研究
http://www.u-tokyo.ac.jp/coe/coe02_tanbou25_j.html
東京大学大学院医学系研究科 真鍋一郎グループ
http://plaza.umin.ac.jp/manabe/kenkyu.html
転写因子KLF5の心血管リモデリング制御機構の解明と治療への応用
http://ja-tec.com/F/F42/content81804.html
KLF5
http://en.wikipedia.org/wiki/KLF5
平滑筋細胞・脂肪細胞形質変換の転写制御
http://jams.med.or.jp/symposium/full/124092.pdf
読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
~2008.5.21
があります。
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