戯れ言たれる侏儒
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昨日の後半です。各分野の先生がこのADVANCE試験についてのコメントを寄せてみえます。

Experts'opinion  ADVANCEの結果から
   
出席者(発言順)
和泉 徹 氏(司会) 北里大学循環器内科学教授
勝谷 友宏 氏    大阪大学大学院老年・腎臓内科学講師
植田 真一郎 氏 琉球大学大学院薬物作用制御学教授
吉村 道博 氏    東京慈恵会医科大学循環器内科学教授

 

和泉 
今回発表されたADVANCEは,ACE阻害薬ペリンドプリルと利尿薬インダパミドの併用による降圧治療の新たなエビデンスとなりました。
 
本日は同試験の結果をもとに,さまざまな角度からご意見を伺っていければと思います。まず,勝谷先生からADVANCEについてご解説いただけますか。

ペリンドプリルとインダパミドの追加治療は 2 型糖尿病患者に多くのベネフィットをもたらす
勝谷 
2 型糖尿病患者では厳格な降圧が心血管疾患の予防に不可欠であることは以前から知られており,UKPDSなどの結果を受けて日本の高血圧治療ガイドラインでも140/90mmHg以上で薬物治療を開始することが勧告されています。
ガイドラインでの目標血圧値は130/80mmHgですが,ADVANCEでは従来の試験で達成されなかったこの数値により近づけるべく,降圧薬の追加治療を行った場合に予後にどのような影響があるかが検討されました。
さらに 2型糖尿病患者が現在受けている血圧・血糖・血清脂質に対する一般的治療にペリンドプリルとインダパミドの常用量が追加されたということで,われわれが日常で実施している治療環境と乖離しないデザインであること,また,糖尿病で最も問題となる大血管/細小血管障害および心血管死が一次エンドポイントに設定されていることが特徴と言えます。
 
試験に参加した 1 万1,140人中,フォローアップを完遂できたのは追加治療,プラセボ群とも全体の90%近くであったほか,対象の 4 分の3は当初割り付けされた状態で試験を終了できていたということで非常に忍容性に優れていました。また,最終的な到達血圧平均値も135.6/73.6mmHgと従来の同種の試験に比べ最も厳格なレベルに達しています。
 
おもな結果については前出の報告記事の通りですが,今回の発表で最も強調されていた点の 1 つに両薬剤を用いた 5 年間の治療によるNNTがあります。
主要血管障害では66,死亡に関しては79,冠動脈疾患は75,腎イベントでは20ということで,そのベネフィットはかなり大きいと評価できます。
 
今回,利尿薬が投与されるということで糖・脂質代謝への影響も注目されたのですが,試験開始から終了時まで特に悪影響は認められませんでした()。

和泉 
対象患者は一般的な治療を受けている方ということでしたが,背景因子についてはどのような印象をお持ちですか。

勝谷 
糖尿病専門外来を受診する患者というより,われわれ循環器内科医あるいは一般内科医が日常診療しているタイプの症例と考えられます。

和泉 
今,ご紹介いただいた通り,ADVANCEでは厳格な降圧が糖尿病における血管合併症および死亡の抑制に直接的な好影響をもたらすことが証明されたわけですが,同試験で用いられた 2 つの治療薬剤が今回の結果にどのように寄与しているのかを話し合っていきます。
既にいくつかの大規模臨床試験により,高血圧性臓器障害に対するペリンドプリルとインダパミドの併用治療の有用性が示されていますが,
ACE阻害薬と利尿薬の組み合わせがよいとされる理由はどういうところにあるのでしょうか。

植田 
MRCやINSIGHT,ALLHATといった臨床試験から,利尿薬の単独・高用量投与は効果・副作用等の面から限界があることが明らかになりました。
特に,ALLHATでは,ハイリスク高血圧患者を対象としていたにもかかわらず,ACE阻害薬と利尿薬を併用できないプロトコールが結果に悪影響を及ぼしたと私は考えています。
その後,PROGRESS,さらにはEUROPAの糖尿病患者によるサブ解析PERSUADEなどでペリンドプリル単独,あるいはペリンドプリルとインダパミドの併用がリスクの大小にかかわらず患者の予後を改善させることが証明されました。
また,ADVANCEに少し似たデザインの試験にCAPPPがあります。
この試験そのものは,封筒法が不完全だったために正当な評価が難しいとされていますが,糖尿病合併高血圧患者を対象としたサブ解析では,ACE阻害薬に利尿薬を追加されている割合が高く,心筋梗塞の発症抑制に優れるとの結果が出されており,今回のADVANCEの結果も全く矛盾しないと言えます。

ACE阻害薬と少量の利尿薬は病態・薬理の両面から合理的な組み合わせ
和泉 
続いて薬理学的な面から 2 つの薬剤の組み合わせがなぜ合理的かを探っていきます。
吉村先生は心・血管の病態生理におけるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)のご研究をされていますが,その観点からご意見をお聞かせいただけますか。

吉村 
ADVANCEにおいても両薬剤の併用によりアルドステロンの作用がかなりきっちりブロックされていることがよい結果につながったのではないかと推測しています。
アルドステロンがRAASの最終産物であること,また,アルドステロンがNaと水分貯留を介して心不全や高血圧性臓器障害に深く関与していることはよく知られています。
私どもは組織局所のアルドステロンが循環アルドステロンと同様にこれらの病態に関係することを見出したほか,ペリンドプリル等のRA系阻害薬が局所のACEとともに局所アルドステロン合成を抑制することを報告しています(図 5)。


ほかにもACE阻害薬はNOの産生増加などを介して心保護に働くことが知られています。
また,インダパミドはNaの尿中排泄を介してアルドステロンと食塩の相互作用を結果的に減弱させると思われますので,ペリンドプリルとの併用は大変理に適っていると言えるでしょう。
もう 1 つ,糖尿病,特に腎障害併発例ではRA系阻害薬単独投与によるカリウム上昇が懸念されますが,これも少量のインダパミド投与によりカリウム排泄が期待できます。
以上のことから両薬剤の併用は相乗的な降圧効果と好ましくない作用を減弱させることにより,臓器保護の観点からも好ましいと考えられます。

植田 
利尿薬を追加することによって減塩と類似したメカニズムでアルドステロンの毒性を弱めるというのは大変興味深い考えですね。

吉村 
ポイントはアルドステロン単独ではなく,Na貯留と一緒になることで悪影響をもたらすというところで,既にいくつかの報告を出しておりますが,今後も検討を重ねていきたいと思っています。

和泉 
植田先生は薬理学の観点から両薬剤についてどう評価されますか。

植田 
吉村先生も指摘されたように私も以前からACE阻害薬と少量の利尿薬の併用が効果・副作用の面からもよい組み合わせであることを提唱してきました(図 6)。


また,糖尿病ではインスリン抵抗性を介して遊離脂肪酸(FFA)の上昇が起こり,血管内皮機能の低下など生体に種々の悪影響をもたらします。
私どもはペリンドプリルなどがFFA上昇による血管内皮機能低下を改善することを報告しています(図 7)。


利尿薬が血管内皮機能にどういう影響をもたらすかは明らかにされていませんが,私どもの検討ではACE阻害薬単独で十分な降圧が得られない高血圧患者に利尿薬を追加すると,血管内皮機能が改善することがわかっています。
したがって,両薬剤の組み合わせは降圧,臓器保護の観点からも理に適っていると言えます。

和泉 
ありがとうございました。
お二方のお話から,今回の試験結果は従来の臨床試験で得られたエビデンスだけでなく病態・薬理学的な根拠からも裏付け可能であることがわかりました。
同試験で神経ホルモンや酸化ストレスなどによる検討を行えばさらに面白い知見が得られるかもしれませんね。

今後の各種サブ解析にも期待
和泉 
最後にADVANCEの結果をわれわれはどう活かすべきか,また今後どのようなデータを期待されるか等お話いただけますか。

勝谷 
先生方も指摘されていたようにRAAS,Naを意識した治療というのがポイントと考えています。
日本でも高血圧学会が減塩キャンペーンを推進していますが,日本人はもともと食塩感受性がかなり高い民族ですので,普段の減塩等もあわせて心がければ,ADVANCEで実施された治療により,さらなる予後改善が期待できるのではないでしょうか。
また,同試験ではゲノム別のサブ解析も進められており,人種による予後の違い等,今後さらに明らかにされるようですので,注目していきたいと思います。

植田 
試験での投与量が両薬剤とも日本での常用量ですので,われわれにとっても結果解釈がしやすいのがよいですね。
また,糖尿病を合併した高血圧患者の場合,これまで利尿薬が敬遠される傾向にありましたが,同試験では基礎治療がきちんとされていれば,ACE阻害薬に少量の利尿薬を併用した治療で十分な効果と高い安全性が得られたと言えます。
来年以降,血糖管理のアームによる検討結果も発表されるようですが,利尿薬も適切に使えば糖・脂質代謝を損なう可能性は低い,というのは同試験から得られた知見だと思います。

吉村 
同試験では年齢や性別,血圧,これまでの治療歴などに分けて詳細な層別解析が行われましたが,心・腎に関してはあらゆるサブグループで明らかな有用性が確認されており,両薬剤の追加治療がどのようなタイプの患者でも広く効果をもたらすことが期待されます。

和泉 
私自身はQOLに関する検討結果に注目しています。
ペリンドプリルは脳卒中発症後の認知症または認知障害を抑制することがPROGRESSで明らかにされていますし,今回,ADVANCEで対象となった糖尿病患者のなかでも高血圧合併例では認知障害への対策は特に考慮すべき点ですので,ペリンドプリルとインダパミドによる降圧治療が同試験でのQOLにどのような影響をもたらしているかをぜひ知りたいと思っています。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41130481&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.3.27
版権 メディカル・トリビューン社

 

<コメント>
楽しみにして読んだわりには少しもの足りない内容でした。
糖尿病患者にあえて(少量とはいえ)降圧利尿剤なのか、インダパミドは非サイアザイドといえるのか、糖尿病に対する影響は担保されるのか、高血圧患者のみでなく正常血圧の糖尿病患者での軽度降圧の意義について触れられていなかったからかも知れません。
何だか自験例に敷衍して、その紹介になっているような印象を受けてしまいました。
 

 

今日届いた「日本心臓病学会誌」1(3):2008 
2008.5.15発行
の広告です。

ペリンドプリル(商品名コバシル)のエビデンスとして
PROGRESS、ASCOT-BPLA、EUROPAそして今回の
ADVANCEをとりあげています。

 

他に
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 
「井蛙内科/開業医診療録(2)」
http://wellfrog2.exblog.jp/
2008.5.21~

「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21

があります。

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