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現行のJSH2004はいよいよ来年2009年に改訂されます。
私自身、それほどGLにそった治療をしているわけではないのですが、何となく気になるところです。
当然のことながら、欧米の動きを睨みながらの改訂となるわけですから、どんな相違点がJSH2004とみられるのかという興味は大いにあります。
きょうはそんな勉強をしてみました。
第30回日本高血圧学会特集
ガイドライン改訂ポイント
高血圧治療ガイドラインの次回改訂ポイントを議論―国内エビデンスが蓄積
現行の高血圧治療ガイドライン(JSH2004)は,新しい内外のエビデンスや欧米のガイドライン改訂の動向を踏まえ,2009年に改訂が予定されている。
シンポジウム「高血圧治療ガイドライン改訂のポイントを探る」(座長=獨協医科大学循環器内科・松岡博昭教授,琉球大学循環系総合内科学・瀧下修一教授)では,次回の改訂ポイントについて各論の解説とディベートが展開された。
血圧評価
家庭血圧の評価基準を修正
東北大学大学院臨床薬学の今井潤教授は,24時間自由行動下血圧(ABP)や家庭血圧(HBP)の基準値について「JSH2009では若干の修正が加えられるだろう」との見通しを述べた。
JSH2004におけるABPの高血圧基準は135/80mmHgとなっていたが,欧州高血圧学会(ESH)/欧州心臓病学会(ESC)ガイドライン2007(ESH/ESC2007)では,125~130/90mmHgとしている。同教授は「基準値に幅があるのは臨床上望ましくないため,130/80mmHgが妥当ではないか」と述べた。
一方,HBPについては,JSH2004で高血圧基準が135/85mmHg,正常血圧基準が125/80mmHgとなっているが,この 2 つの基準値の間に該当する場合の対応については検討課題と指摘。
日本を含む 6 か国の共同研究(IDACO)などのエビデンスをもとに検討を重ねる必要があるとした。
HBP測定法については,JSH2004で「座位 1 ~2 分安静後」という項が設けられたのに対し,安静時間が不十分とする意見もあったが,その後の国際ガイドラインの動向を見ると,測定前の安静を数分単位に短縮する傾向が見られ,JSH2004は臨床現場の現状に即した設定と評価した。
測定回数については,ESH/ESC 2007で頻回な測定は避けることが明記されており,同教授は「JSH2009でも少なくとも朝晩 1 回は測定するのが適当だろう」と述べた。
駿河台日本大学病院循環器内科の久代登志男准教授は,近年,中心血圧と予後の関係が臨床試験で示されていることから,「今後,中心血圧測定の意義について検証すべきだろう」と述べた。
非観血的血圧計の精度規格については,ISOの基準が数年後に公表される見通しという。
高齢者の降圧
140/90mmHgより下げるべきか
高齢者の降圧を若年者と同様積極的に行うべきかについて,JSH2004では高齢者の場合も140/90mmHg未満を目標としながらも,後期高齢者の中等症・重症高血圧では150/90 mmHg未満を暫定的目標とする慎重な降圧を推奨している。
昨年発表されたJATOSは,わが国で初めて高齢者の降圧目標を140/90mmHg未満に設定した臨床試験であり,SBP 140 mmHg未満を目指した厳格な降圧群とSBP 140~160mmHgの中等度降圧群では,一次エンドポイントの脳・心・腎イベント発生率には差が認められなかったが,年齢別サブ解析では,75歳以上の場合は厳格な降圧を行ったほうが心血管疾患の発症率が上昇する傾向が認められた。
この試験の解釈を中心として,高齢者に対する積極的な降圧とマイルドな降圧を推奨するディベートが展開された。
まず,自治医科大学循環器内科の島田和幸教授は,高齢者の脳卒中死亡率とSBPの年代別解析(Lancet 2002; 360: 1903-1913)を示し,どの年代でも血圧の低下に伴い脳卒中死亡リスクが低下した点を指摘。
JATOSにおける75歳以上の降圧に関するサブ解析の正しい解釈は「達成された血圧差に対してイベント発生率の差を検出する統計パワーが十分でなかったこと」であるとして,ガイドラインの根拠にするのは妥当でないとした。
そのうえで,JATOSのステートメントに明記されている「140/90mmHg未満の血圧管理は安全」とする見解を支持した。
一方,大阪大学老年・腎臓内科の楽木宏美教授は,80歳以上を含めた高齢者においてSBP 150mmHg程度に降圧することの有用性は確立されているとしながらも,高齢者に対する積極的な降圧には慎重であるべきとするデータを提示した。
まず,65~74歳の血圧と死亡率を見たフラミンガム研究では,SBP 160mmHg以下では死亡率に変化がなかったほか,年代別に心血管疾患と降圧後の到達血圧値を見た同教授らの検討では,SBP 150mmHgが降圧有用性の閾値と推測された。
降圧安全性の閾値については,SHEPでDBPが5 mmHg低下することによって心血管疾患リスクが増加することが示されている。
しかし,この傾向は虚血性心疾患既往の有無によって変わることを示す報告もある。
以上の点から,同教授は「現段階では140/90 mmHg未満の血圧管理を強く支持する試験はない」と述べた。
メタボリックシンドローム・腎疾患
リスク該当者への早期介入に課題
JSH2009はメタボリックシンドローム診断基準発表後で初めての改訂となる。
札幌医科大学第二内科の島本和明教授は,現在の保険診療下では同シンドロームに該当する正常高値血圧でも,空腹時血糖値(FPG)によって薬物治療の対象外となる場合がある点を指摘。
具体的には,ウエスト周囲径が診断基準に該当し,血圧130/85mmHg以上,FPGが110mg/dL以上の同シンドローム該当者の場合,FPGが126mg/dL未満では薬物治療の対象外となるもので,FPG 126 mg/dL以上の場合には血圧値が130/80mmHg以上で治療の対象となりうる。
ESH/ESC 2007では,同シンドロームや糖尿病を合併する正常高値血圧が高リスクと評価されていることから,わが国でも検討すべき課題とした。
近年,慢性腎臓病(CKD)の診断・治療の意義が急速に浸透しつつある状況を踏まえ,東北大学大学院内科病態学講座の伊藤貞嘉教授は,次回の改訂ではCKDのエビデンスや意義を追加していく意向を示した。
腎損傷の存在が明らかな場合,または糸球体濾過量(GFR)が60mL/分/1.73m2未満の状態のいずれか,または両方が 3 か月以上持続する場合にCKDと診断される。
早期介入が重要で,血圧や血糖管理を早期から行うことで微量アルブミン尿から正常アルブミン尿へのremissionの可能性が高くなると報告されている。
また,この改善により脳心血管疾患リスクが75%低下する一方,微量アルブミン尿から顕性アルブミン尿へ移行することで脳心血管疾患リスクが約2.6倍増加することも報告されている。
同教授は「CKDの診断を行うことは腎血流を評価するだけでなく,他の末梢血管の状態を見ることでもあり,全身の血管の管理という点においても重要」と述べた。
ARBの位置付け
ARBの長期成績に期待,降圧の重要性も揺るぎなし
RAS阻害薬の登場以降,臨床試験結果を「降圧を超えた臓器保護作用」と評価するかについて議論が続いている。
降圧を重要視する立場と,ARBの降圧を超えた作用を認める立場からディベートが展開された。
東京都老人医療センターの桑島巌副院長は「厳格な降圧こそが重要」という立場で解説。
まず同副院長は,同程度の降圧でありながらRAS阻害薬の降圧を超えた臓器保護作用が認められた初めての試験と言われるHOPEについて,24時間血圧を詳細に見ると,ACE阻害薬投与群のほうが低く推移していた点を指摘。
また,SBP低下と末期腎不全への進展を見た解析では,降圧度が高いほど腎不全の進展予防につながっていることが示されており,RAS阻害薬に期待される腎保護作用も降圧で説明できることを指摘した。
さらに,ARBの大規模臨床試験の大半は併用薬としてCa拮抗薬や利尿薬が含まれており,これらの薬剤の降圧効果を評価すべきとし,同副院長は「降圧なくして臓器保護はなく,血圧を下げることが重要」と述べた。
愛媛大学大学院病態情報内科学の檜垣實男教授は,降圧が重要であることを前提としながらも,RAS阻害による臓器保護作用を考慮するのは自然な考え方であり,これを支持するデータが蓄積されているとした。
腎保護作用については,RENAALやMARVALで,ARBの投与により末期腎不全への進展阻止や微量アルブミン尿の抑制効果が確認されている。
ARBによる糖尿病の新規発症抑制については,メタ解析の報告もある(Lancet 2007; 369: 201-207)。
心保護作用については,ACE阻害薬とCa拮抗薬を比較したメタ解析で,両薬とも心血管リスクを降圧に伴い低下させるが,ACE阻害薬ではSBPに換算して 5 mmHg相当のCa拮抗薬を上回るリスクリダクションが認められた。
また,ARB群の脳・心疾患リスクがβ遮断薬群よりも13%低下したLIFEで,各因子がリスク低下にどの程度寄与していたかを見たところ,SBP低下は 4 %程度にとどまり,左室肥大や尿中アルブミン/クレアチニン比,血清尿酸値の抑制が大きく寄与していた。
さらに,Ca拮抗薬とARBを比較したCASE-Jでは,試験開始早期の段階ではCa拮抗薬の心血管イベント抑制効果が上回っていたが,試験期間が長期になればなるほど,ARBのイベント抑制効果が上回っており,同教授は,ARB投与による代謝や臓器に対する良好な影響が反映された結果と考えられるとした。
併用療法
併用療法の利点を生かした治療戦略を ― 配合剤も登場
シンポジウムの最後には,併用療法や配合剤に関する動向の説明があった。
済生会呉病院(広島県)の松浦秀夫院長は,併用療法について,ESH/ESC2007では利尿薬とβ遮断薬の組み合わせが除外されており,JSH2009がこれに倣うと 6 種類の組み合わせになるとした。
JSH2004では,降圧療法開始時点での併用療法の是非は触れられていなかったが,ESH/ESC2007では,顕著な血圧上昇や心血管の高リスクが認められる場合,さらに降圧目標をより低値とする場合には,降圧治療開始時点から2 剤を低用量で併用することが明記された。
これまでのガイドラインでは,第一選択薬に重点が置かれる傾向にあったが,メタ解析では降圧目標に到達するためには平均2.5剤が必要とする報告もあり,同院長は「今後は服薬時刻を考慮した 2 剤,あるいは 3 剤の併用が重要となるだろう」と述べた。
併用療法の一手段となる配合剤の利用について,琉球大学循環系総合内科学の大屋祐輔准教授は,日本でもARBと利尿薬の配合剤が昨年上市されるなど,降圧治療における合剤の使用が身近になってきているが,海外と比較すると選択肢が少ないと指摘。
配合剤の使用で服薬コンプライアンスの向上が期待できる半面,副作用の原因特定や細かな薬剤変更が難しい問題もあるとした。
今後,配合剤の開発や上市が推測されるため,議論が必要とまとめた。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M40491041&year=2007
出典 Medical Tribune 2007.12.6
版権 メディカル・トリビューン社
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