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後期高齢者という言葉が世間では問題になっています。
我々医療側も大いに憤慨するところではあります。
しかし、ここはどこかの総理大臣の言葉を借りれば「冷静に」
高齢者の治療について考えなければいけません。
患者さんには「先生、血圧の薬は死ぬまで飲まなければいけませんか?」とよく聞かれます。
そのあたりの勉強をしてみました。
利尿剤インダパミド徐放剤 脳卒中、心不全を抑制
80歳以上の高齢者を対象とした最大のランダム化プラセボ対照比較試験HYVET(The Hypertension in the Very Elderly Trial)試験では、高齢患者における利尿薬のメリットが明確になった。同試験は、インペリアル大(英国)のナイジェル・S・ベケット氏が報告した。
HYVET試験の対象は、80歳以上の高齢者で収縮期血圧が160~199mmHgおよび拡張期血圧が110mgHg未満の高血圧症患者3845人。平均年齢は84±3歳で、プラセボとの二重盲検法で実施された。
同試験の積極的治療を行うグループでは、利尿薬のインダパミド(徐放剤)1.5mgに加えてACE阻害薬のペリンドプリル2~4mgを血圧が150/80mmHgに達するまで、1日1回投与された。
主要評価項目は、致死的脳卒中および非致死的脳卒中。プラセボ群1912人とインダパミド群1933人が試験に参加した。参加者の内訳は、欧州86人、東欧2144人、中国1526人、オーストラリア19人、チュニジア70人だった。
試験結果によると、総死亡率はインダパミド群で21%減少(p=0.02)し、全脳卒中発症率は30%減少(p=0.06)した。致死的な脳卒中は39%、心不全は64%それぞれ減少した。
ベケット氏は、高血圧症の治療に関して年齢の制限はなく、十分な利益を得ることができることを強調した。
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200804/tokusyuu1.html
HYVET
http://blog.m3.com/reed/20080407
高齢者高血圧症治療によるQOL改善効果のエビデンスは確立したか
http://physician.pfizer.co.jp/member/cardiology/topline/pdf/TLN_094.pdf
HYVET
Hypertension in the Very Elderly Trial
80歳以上の超高齢高血圧患者において,サイアザイド系利尿薬indapamideをベースとした降圧治療により脳卒中発症率,死亡率が有意に低下。
presenter: Nigel S. Beckett, MD, Imperial College London ( UK )
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/acc2008/HYVET.html
<以下桑島先生のコメントです>
80歳以上の後期高齢者でも,積極的な降圧が脳心血管合併症を抑制することを明瞭に示した点で画期的な成績である。
これまで後期高齢者のみを対象とした試験はなく,高齢者全体を対象とした試験における二次エンドポイントからのメタ解析からの予測では,後期高齢者での降圧治療は死亡率に対しては影響しないか,むしろ悪化するとの予測もあった。しかし今回の脳卒中発症(一次エンドポイント)と死亡(二次エンドポイント)というもっとも重要なイベントを評価項目に設定しての試験結果は,これらの予測を大きく覆し,年齢を問わず降圧薬治療の有用性を明らかにした。
それぞれの内訳をみると,脳卒中を30%,脳卒中死亡を39%,総死亡を21%減少させ,2年間のNNT(number needed to treat)でみると,脳卒中は94,死亡は40という驚異的ともいえる数字を示した。
しかもその予防効果,すなわち降圧薬のメリットは試験開始早々の1年以内に明らかになっている点は,いかに高齢者でも速やかな降圧が重要であるかを明瞭に示している。高齢者ではゆっくり降圧という古典的考え方も見直すべきではなかろうか。
本試験での降圧目標値は150/80mmHgであったが,2年で実薬群は平均143.5/77.9mmHg,プラセボ群は158.5/84mmHgまで下降している。
5年目にはプラセボ群でも150mmHg, 実薬群では140mmHgに到達している。降圧治療に年齢は関係がなく,後期高齢者といえども収縮期血圧はほぼ140mmHgを目標とすべきことを示している。
注目すべきは,本試験では第一次選択薬としてインダパミドという古典的,かつ安価なサイアザイド類似降圧利尿薬を用いている点であり,薬剤に起因する低カリウム血症,血糖上昇などの副作用発現は両群に差がなかったことは,我が国でも降圧利尿薬を今後人口増加が予測される高齢者高血圧治療の第一選択薬として積極的に用いるべきことを示している。
試験では後期高齢者を対象としていることから,試験中にプラセボ群448例,実薬群358例という多数の有害事象が発生している。
しかし担当医によって試験薬に関連すると認識された有害事象は各々3例,2例しか発症していないことも注目すべきである。
めまいなど降圧に伴う有害事象を怖れるあまり,後期高齢者の降圧をためらうことは,致命的イベントである脳卒中や死亡を回避する機会を失するということを明瞭に示している。
本試験の対象となった後期高齢者は糖尿病や腎障害などの合併症が比較的少ない,健康な症例である。現実には非常に多い,合併症を有している後期高齢者での降圧のあり方に対しての回答を与えるものではないが,多様性に富む後期高齢者では,個々の合併症に応じた個別的対応も重要である。
本試験は,血圧は“血管への負荷”であり,「老いた血管ほど負担を少なく」という考え方を実証したものであり,長年の高齢者高血圧の降圧目標値論争には終止符をうつべきである 。
<追加> 2008.6.10
第72回日循 不整脈
http://blog.m3.com/reed/20080610/_72___
HYVET
http://blog.m3.com/reed/20080407/HYVET
HYVET試験アゲイン
http://blog.m3.com/reed/20080511/1
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