戯れ言たれる侏儒
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Actos Round table Discussion
循環器領域で期待されるピオグリタゾンの役割
―糖尿病患者の動脈硬化抑制にはたらくメカニズムに迫る

心房細動に対するピオグリタゾンの影響
南野 
心房細動は,高齢者の脳卒中の多くを占める心原性脳塞栓症の原因です。
近年,心房細動は,酸化ストレスや炎症によって,心房の構造的および電気的リモデリングが誘発されて起こる「炎症性」の疾患としてとらえられています。

われわれは,L-NAME(NO合成酵素阻害剤)で高血圧を誘発したラットを用いて,心房細動や心房リモデリングについて検討したところ,ピオグリタゾン投与によって拡張期機能障害や,心房の線維化(構造的リモデリング)が抑制されました。

また,経食道高頻度ペーシングで心房細動を誘発したラットにピオグリタゾンを投与したところ,心房細動の持続時間が短縮し,電気的リモデリングも抑制しました(図4)。


 
ピオグリタゾンには,炎症マーカーを改善するデータがあることから,炎症や酸化ストレスを改善することで,脳卒中の上流にある心房細動を減少させたと考えられます。

Chilton 
こうしたメカニズムが,PROactive試験において,脳卒中の再発を47%減少させたという結果につながった可能性がありますね。

ピオグリタゾンの脂肪組織への影響
Chilton 
脂肪細胞の周囲のマクロファージからは,サイトカインが分泌されます。
ピオグリタゾンは,内臓脂肪を皮下へ移動させることがわかっており,脂肪毒性からの保護作用が示唆されます。
 
さらにTZDには,肝臓や心臓などのTG除去作用も報告されています。肝臓のTG除去は,線維化を抑制し肝機能を改善します。
また,ラットを用いた心臓での検討では,TZD投与によって,心筋のTG除去とともに,心機能改善が認められました。

ピオグリタゾンの心不全への影響
小室 
以上のように,ピオグリタゾンは心血管系に好影響を及ぼすことが示唆されていますが,浮腫と心不全を懸念する医師は少なくありません。
PPAR-γの活性化は,腎臓でのナトリウム再吸収を促進するため,浮腫が起こることがあります。
実際に,複数の臨床試験で,ピオグリタゾン投与群ではコントロール群と比較し,浮腫が多く発現しています。
したがって,ピオグリタゾンは,心不全またはその既往のある患者で投与禁忌,心疾患の合併・既往に対しては慎重投与となっています。
ピオグリタゾンの浮腫・心不全への影響については,どのようにお考えですか?

Chilton 
PROactive試験では,プラセボ群に比してピオグリタゾン投与群で心不全が多くみられましたが,入院に至るケースや,心不全による死亡率はプラセボ群と変わりませんでした。
ピオグリタゾンは,心臓に構造的ダメージを引き起こすのではなく,あくまで体液量に影響を及ぼすと考えています。

小室 
国内のピオグリタゾンの市販後調査PRACTICALによると,心不全発現率は,心不全既往患者で5.2%,心血管イベント既往では1.3%で,心血管イベント既往のない患者では0.04%でした。
ピオグリタゾンは,心不全患者への投与を避けることが大切です。

Chilton 
糖尿病で心機能障害がある場合,体液貯留は心不全のリスクを高めます。
糖尿病患者には拡張期機能障害が見られることが多いことからも,薬剤投与前に心不全の有無を調べることは,非常に重要です。

小室 
臨床症状や身体所見から心不全かどうかの診断は難しいことがあるために,糖尿病医とわれわれ循環器医が策定した,ピオグリタゾンを適正に用いるための
Recommendationでは,BNP測定を勧めています。

Chilton 
たしかに,肥満がある患者などでは,聴診が難しい場合がありますね。
BNPを用いて,心不全をスクリーニングするのはとてもよいことだと思います。
 
そして,ピオグリタゾンの浮腫発現は投与開始直後に多いので,その時期は特に注意深い観察が必要です。
わたしは,ピオグリタゾン投与前にまず患者に食事・運動療法を徹底し,減量を奨めています。
そして,投与後に体重増加が見られた場合には,水分の貯留であることが多いため,利尿剤を併用投与しています。

小室 
糖尿病患者では,心血管だけでなく,心機能にも配慮しながら,適切な薬物投与を行っていくのが大切ということですね。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41180601&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.5.1
版権 メディカル・トリビューン誌

 

<参考サイト>
■ チアゾリジン系誘導体(TZD薬)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E5%8F%A3%E8%A1%80%E7%B3%96%E9%99%8D%E4%B8%8B%E8%96%AC
TZD薬:PPAR-γ作働薬やインスリン抵抗性改善薬とも呼ばれ、核内受容体PPAR-γに結合しインスリンの抵抗性を悪化させる様々な因子の転写調節をする。
主として末梢組織のインスリン抵抗性改善にあたる。有効性及び安全性に性差を認め、女性で浮腫を来し易い一方で、小用量で血糖降下作用を見る事が多い。
脂肪細胞に作用しブドウ糖の取り込みを増やす事で血糖が低下する。
その代わり肥満を助長しやすくなる。
塩酸ピオグリタゾン(商品名:アクトスR)だけが現在、国内で上市されている。
最初に商品化されたトログリタゾン(商品名:ノスカールR)は肝障害の死亡例が相次ぎ、その原因の一つとして肝臓での薬の代謝に関わるグルタチオン抱合酵素GSTT1とGSTM1の変異が重なると特に副作用の発症率が高い事が示された。類薬ではトログリタゾン程の肝障害は報告されていないが留意して使用するのが望まれる。
副作用として浮腫や貧血を合併することがあるが、腎でのインスリン感受性亢進のため、Naの再吸収を促進するためだといわれている。
脂肪細胞を分化誘導する一方で骨芽細胞の減少により骨折のリスクが増加するのではないかと云われている。

■ PROactive PROspective PioglitAzone Clinical Trial In MacroVascular Events
http://www.ebm-library.jp/circ/trial_2005.html#aha2005PROactive 2型糖尿病患者(5238例)においてインスリン抵抗性改善薬pioglitazone*の大血管イベントに対する効果を検討しているPROactive studyのサブ解析。
心筋梗塞既往のある2型糖尿病において,pioglitazoneは心筋梗塞の再発リスクを28%低下。
無作為割り付け,プラセボ対照,多施設(欧州の19国321施設)
◆追跡期間は2.5年以上。平均追跡期間は2.85年
◆2445例。ランダム化の6ヵ月以上前に
心筋梗塞(MI)を発症。
95%以上が既往のため至適な心臓薬物治療を受けていた。
◆それぞれが受けている糖尿病治療薬に試験薬を追加投与。pioglitazone群1230例,プラセボ群1215例
◆pioglitazone群はHbA1c,トリグリセリド,HDL-Cを改善。pioglitazone群はプラセボ群に比べ致死的および非致死的MIを28%有意に抑制(P=0.045; 3年間のNNTは22)。
さらに同群は急性冠症候群(ACS)を37%有意に抑制し(P=0.035),心臓複合エンドポイント(非致死的および無症候性MI,血行再建術,ACS,心臓死)のリスクを17%低下(P=0.065)。
重篤な有害事象はpioglitazone群47%,プラセボ群51%。pioglitazone群で心不全が増加したが死亡の絶対数に差はなかった(1.8% vs 1.7%)。

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) 

があります。

    

 

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