戯れ言たれる侏儒
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きょうはバルサルタンについてさらってみました。
もとよりバルサルタンを宣伝するつもりはありません。
バルサルタンを通してARBを俯瞰してみたいという意図です。
ONTARGETの結果でわかるとおりARBはACEIを認容性以外では超えることができませんでした。

ONTARGETの結果を考察する
 http://blog.m3.com/reed/20080412/ONTARGET_

そんな中で最後のARBと目される6番目のイルべサルタンが4月16日付で製造販売承認を取得したということです。
10年以上前から海外では発売されており「長時間作用型ARB」という肩書きを持っています。
エブデンスがすべてというようなARBの世界でオオトリとして登場したこの薬剤。
評価ははたしてどうでしょうか。
イルベタン(シオノギ)、アバプロ(大日本住友製薬)として6月頃発売される予定です。
パンフをみると両社とも腎臓をイメージした絵を使っています。
「腎保護作用」を「売り」にするようです。

 

塩野義製薬、高血圧症治療剤「イルベタン錠」の製造販売承認を取得
http://health.nikkei.co.jp/release/drug/index.cfm?i=2008041704304j5
イルベサルタンは、サノフィ・アベンティス社(本社:フランス)が創製し,海外ではサノフィ・アベンティス社とブリストル・マイヤーズ スクイブ社(本社:アメリカ)が共同で開発した長時間作用型アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)です。
本剤は、軽症から重症の高血圧に対して24時間持続する安定した降圧効果に加え、海外では、主要なガイドラインにも記載されているIRMA2、IDNTといった早期から末期の腎症まで対象とした腎保護作用のエビデンスを有する唯一のARBであり、1997年に発売されて以来高い評価を受けています。
本剤はすでに海外においては86ヶ国で発売されており、2007年の全世界での売上げは約3,000億円で、ARBのトップブランドの1つとして使用されています。

高血圧治療におけるバルサルタンの位置付けと展望
高血圧を伴うメタボリック・シンドロームや高齢者高血圧などにおいてARBを選択することの意義をどう考えるとよいのか―。

堀内 正嗣 氏(司会) 
愛媛大学大学院医学系研究科分子心血管生物・薬理学 教授
樂木 宏実 氏 
大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学 教授
伊藤 裕 氏 
慶應義塾大学内科学 教授

バルサルタンが示した強い降圧効果
JIKEI HEART Studyの到達血圧値131/77mmHg
堀内 
始めにバルサルタンの持つ強い降圧効果を取り上げたいと思います。
日本人高血圧患者を対象としたJIKEI HEART Studyでは,従来治療にバルサルタンをadd-onすることにより131/77mmHgまで降圧することに成功しました。
この到達血圧値は,これまでに実施された高血圧大規模臨床試験のなかでも一番低い値となりました。

樂木 
わが国の高血圧治療ガイドライン(JSH)2004の改訂が進んでおり,来年早々には改訂版であるJSH2009が報告になりますが,JIKEI HEART Studyで達成された降圧値は,改訂版における降圧目標値に大きな影響を与えることになると思います。

伊藤 
われわれが実際に使った感覚でも,バルサルタン40,80,160mg/日と用量依存的に降圧効果が確実になるとの印象があります。

堀内 
われわれの基礎的検討では,バルサルタンはAT1受容体に対する選択的な強い阻害作用,そして同時にAT2受容体に対する刺激作用という2つの特徴を持つことが示されました。

樂木 
バルサルタンの強い降圧作用を示す海外の臨床データも多数あるようですね。

堀内 
そうですね。
各種ARBと比較すると,バルサルタン80mg/日の降圧効果が強いことがFogari Rらの報告(二重盲検比較―クロスオーバー試験―)で明らかになっています(Curr Ther Res 63:1-14, 2002)(図1)。


 

一方,降圧度だけでなくレスポンダーレート が高いかどうか も重要です。
軽症~中等症高血圧患者を対象にバルサルタン80mg/日(84例)とCa拮抗薬(84例)を検討したところ,レスポンダーレートに有意差はないものの,バルサルタン群で優れる傾向がありました(Corea L, et al:Clin Pharmacol Ther 60:341-346, 1996)。
また,バルサルタン160mg/日(528例)と他ARBとの検討においてもバルサルタン群でレスポンダーレートが高かったとの報告もあります(Hender T, et al:Am J Hypertens 12:414-417, 1999)。
また,低レニンが多いアフリカ系米国人の高血圧患者に対してバルサルタンが有効であったことが報告されており(Pool J, Oparil S et al:ISH 2000 report),PDR(Physicians' Desk Reference)では,数種類のARBのなかでバルサルタンだけが人種差・性差・年齢に関係なく降圧効果を示すとの記載があります図2)。


 

いずれにせよ,バルサルタンは利尿作用を持つことが報告されていますから(Marc de Gasparo, et al:Am J Physiol 273:R1676-1682, 1997),こうした利尿作用のために低レニンにも有効であった可能性があります。
わが国でも埼玉医科大学腎臓内科教授の鈴木洋通先生らは,腹膜透析療法(CAPD)を受けている患者を対象とした検討で,バルサルタン投与により尿量が増加したと報告しています。

メタボリック・シンドロームとARB
堀内 
続いてメタボリック・シンドロームに焦点を当てたいと思います。
伊藤先生は,生活習慣病の重積によりドミノの駒が倒れるように,心血管イベントが連鎖して生じてくるというメタボリックドミノの概念を提唱しておられます。
メタボリック・シンドロームに対してARBを使うことの意義についてはどうお考えですか?

伊藤 
メタボリック・シンドロームにはインスリン抵抗性が大きく関与していると考えられますが,血管拡張作用を持つ薬剤はinsulin deliveryをよくするので,インスリン抵抗性の改善に有用であると思います。
一方,レニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬は,脂肪細胞などのインスリン標的臓器に対するアンジオテンシンII(AII)の作用を遮断するわけですから,根本的な所に直接作用して,いわば原因治療というかたちでインスリン抵抗性を改善すると考えられます
いずれにしても,高血圧を伴うメタボリック・シンドローム患者では,まず降圧治療が基本となりますから,RA系阻害薬のなかでも確実な降圧効果を持ったバルサルタンのような薬剤をfirst choiceとして使い,最大投与量まで使ってもまだ降圧が不十分な場合には他剤を併用するというポリシーがよいのではないかと思います。

堀内 
メタボリック・シンドロームでは合併症が生じる以前の,いわば上流から積極的に治療を行ったほうがよいのでしょうか?

伊藤 
メタボリックドミノの出発点には,高血圧・糖尿病・肥満などの生活習慣病があるわけですが,この出発点だけでなく連鎖のどの時点においても作用部位は違うものの,AIIが関与している点は共通しています(図3)。


 

ですから,どの過程においてもRA系阻害薬は有効ですが,上流の段階でブロックすることでその後の病態も変わることがわかってきましたので,やはり肥満+高血圧といった早い時期から積極的にRA系阻害薬を投与するのがよいと思います。

樂木 
そうですね。早期からRA系阻害というかたちで治療介入することで,予後の改善をはかることが望ましいですね。

堀内 
2型糖尿病合併高血圧患者(160例)を対象に,バルサルタン群(80~160mg/日)とCa拮抗薬(5~10mg/日)の腎保護効果を検討したわが国の臨床試験SMARTでは,尿中アルブミン排泄の変化,正常アルブミン尿への移行,尿中アルブミン排泄の50%減少,これらすべてでバルサルタン群が優れていることが報告されました(Diabetes Care 30:1581-1583, 2007)。
今のお話にあったように,RA系阻害の有用性を示すものだと思います。

高齢者高血圧とARB
堀内 
次に高齢者高血圧に対するARB投与の意義について考えてみたいと思います。樂木先生,お願いします。

樂木 
高齢者高血圧に対する降圧療法の有用性は既に確立されています。
高齢者高血圧(421例)を対象にイタリアで実施された臨床試験Val-Systでは,バルサルタン群(80mg/日から投与開始,8週後に降圧不十分なときは160mg/日に増量,16週後に降圧不十分なときは降圧利尿薬HCTZ12.5mg/日を追加)とCa拮抗薬(5mg/日から投与開始,8週後に降圧不十分なときは10mg/日に増量,16週後に降圧不十分なときは降圧利尿薬HCTZ12.5mg/日を追加)の間で降圧効果(24週後)に有意差は認められませんでした。
また,バルサルタンの良好な忍容性が示されました
(Malacco E, et al:Am J Hypertens 16:126A,およびClin Ther 25:2765-2780, 2003)。
高齢者では降圧効果に加えて,副作用が少なく忍容性が高い薬剤であることが特に重要です。
この点,Val-Systで示されたバルサルタンの降圧効果に加えた忍容性のよさは,高齢者高血圧治療の大きなメリットであると考えられます。

堀内 
高齢者高血圧の降圧目標という点は,いかがでしょうか?

樂木 
JSH2004における高齢者の降圧目標は140/90mmHg未満となっていますが,「65歳以上の前期高齢では140/90mmHg未満とする。75歳以上の後期高齢においても,特に軽症高血圧においては140/90mmHg未満とするが,収縮期高血圧160mmHgの中等症・重症高血圧では140/90mmHg未満を最終降圧目標とするものの,150/90mmHg未満を暫定的降圧目標とする慎重な降圧が必要である」とも述べられています。
65―85歳の高齢者高血圧患者4,418例を対象とした大規模臨床試験JATOS(収縮期血圧160mmHg以上)では,Ca拮抗薬を基礎薬として140mmHg未満に下げる厳格降圧群と140mmHg以上160mmHg未満に下げる緩和治療群に分けて比較したところ,両群で予後改善効果に有意差がありませんでした。
75歳以上の後期高齢者では厳格な降圧の達成に,緩徐で注意深い降圧をこころがけるべきと考えます。

堀内 
わが国で高齢者高血圧を対象に大規模臨床試験VALISH studyも進行していますね。

樂木 
はい。
VALISH studyでは70歳以上の収縮期高血圧患者3,260例を対象に,140mmHg未満に下げるL群と140mmHg以上150mmHg未満に下げるM群とのどちらが予後を改善するか,バルサルタンを第一次選択薬として検討しています()。


JATOSの結果とあわせ,高齢者の降圧目標に関するエビデンスの蓄積は,ガイドラインに重要な影響を与えると考えます。

堀内 
高齢者では認知機能の問題もありますね。

樂木 
そうですね。
バルサルタンはACE阻害薬よりも認知機能を有意に改善したとの報告があります(Fogari R, et al:Eur J Clin Pharmacol 59:863-868, 2004)。
Ca拮抗薬が認知症の発症を有意に抑制したとの高血圧大規模臨床試験Syst-Eurサブ解析での報告もあります。
しかし最近,アルツハイマー病のマウスモデルを使った検討の結果,種々の降圧薬のなかでもバルサルタンだけが脳のβアミロイド蛋白値を低下させ,空間学習能力を改善させたとのデータが報告になりました(Wang J, et al:J Clin Invest 117:3393-3402, 2007)。

伊藤 
高齢者の認知機能の改善というのは,ますます重要な課題になりますね。

高血圧治療におけるバルサルタンの位置付けと展望
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41160081&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.4.17
版権 メディカル・トリビューン社

<追加>

慢性心不全とループ利尿剤 その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080419/1
慢性心不全とループ利尿剤 その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080420/1

オイテンシンという薬剤があります。
フロセミドということでラシックスと同一成分です。
持効性ということで浮腫のみならず高血圧にも適応があります。
以前からちょっと不思議な薬剤という印象でした。
多分最近ではほとんど処方されない類(たぐい)のものと思われます。
一般的には、降圧効果はループ利尿剤には期待できないというという考えが支配的です。
したがって通常、降圧利尿剤としてはサイアザイド系薬剤が用いられます。
ご承知のごとくプレミネントもこのサイアザイド系薬剤が配合されています。
個人的には催糖尿病性がどうしても気になります。
もしオイテンシンが催糖尿病性が少ないということならこの薬剤とARBとの合剤が登場するということはないのでしょうか。
また暴論を吐いてしまいました。
 

<参考>
フロセミド
ヘンレ上行脚の管腔側においてNa+/K+/Cl-の共輸送を抑制することによって、Na+とCl-の再吸収を抑制して強力な利尿作用をもたらす。
(日本医事新報 4382 2008.4.19 p91)

エタクリン酸,ブメタニド,ピレタニドは,フロセミドとは構造的にはかなりかけはなれていますが,作用の現れ方が同じため,同様にループ利尿薬と呼ばれます。
http://health.goo.ne.jp/medicine/search/1500_1/o/0/indexdetail.html
他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)                 があります。

 

 

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