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昨日の続きです。
短時間作用型のループ利尿薬は神経体液性因子の活性化を増強
では,ループ利尿薬のどのような特性が慢性心不全患者の予後に悪影響をもたらすと考えられるのか。
特に問題となるのは,血中K値の低下と神経体液性因子の活性化である。
低K血症に陥ると,致死的不整脈が起こりやすくなる。
いったん致死的不整脈が生じると「たとえ突然死を免れても,重大な心筋障害に見舞われる。それを機に心不全治療に抵抗を示すようになり,死の転帰をたどるケースもある」(吉川氏)という。
このためループ利尿薬は,血中K値を上昇させるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系抑制薬との併用に向いている。
両薬を併用すると,血中K値の異常を来すリスクが相殺されるというわけである。
また神経体液性因子の活性化は,利尿作用の発現に伴う循環血流量の減少に端を発する。
循環血流量が減ると血圧が下がり,時に脱水症状を来
す。
すると心拍出量が低下し,それを是正するためにRAA
系や交感神経系が亢進する。
このような代償機序の働きは,健康人に不可欠である半面,慢性心不全患者の心臓には大きな負荷となる。
吉川氏が先述したように短時間作用型のフロセミドは,神経体液性因子の活性化を過度に増強する可能性がある。
McCurleyらは,フロセミドが神経体液性因子の活性化を伴いながら,左室収縮不全の進展を助長しうると報告している。
彼らは,頻拍誘発性心不全ブタモデル32例を無作為にフロセミド投与群とプラセボ投与群に分けて検討した。
その結果,重症収縮不全を示す左室内径短縮率(FS)<0.16までの累積生存率はフロセミド群で有意に低く,同群では血漿アルドステロン値の有意な上昇も認められた(図2)。

長時間作用型のループ利尿薬は交感神経活性への影響が小さい
フロセミドが惹起する神経体液性因子の活性化は,長時間作用型ループ利尿薬,例えばアゾセミド(商品名:ダイアートR錠)を使用した場合も同様に見られるのか。
アゾセミドは,1日1回の投与で持続的かつ緩徐な利尿作用を発揮する。
1日当たりの尿量はフロセミド投与時と同等で,利尿効果に大差は見られない(井上清: 新薬と臨牀 42: 2103, 1993ほか)。
増山氏らは3年前,アゾセミドとフロセミドがDahl食塩感受性ラットモデルの予後や神経体液性因子に及ぼす影響を比較し,その検討結果を報告している。
同ラットモデルを8週齢から8%NaCl食にて飼育し,21週齢時(代償性心肥大の発現期)に無投薬群,アゾセミド80mg/kg/日投与群,フロセミド40mg/kg/日投与群に割り付けた。
その結果,アゾセミド群の生存率は他の2群と比べて有意に高く,良好な予後をたどっていた(図3)。

アゾセミド群では,血漿ノルエピネフリン値がフロセミド群より有意に低く,交感神経活性への影響が小さいことも示された。
同氏は「高血圧治療で頻用されているCa拮抗薬に関しては,10年ほど前から短時間作用型がほとんど使われなくなり,現在は長時間作用型が主流になっている。
短時間型Ca拮抗薬の急激な降圧作用が,交感神経系やRAA系の活性亢進,心拍数・左室駆出率の増加を来し,虚血性心疾患を悪化させることが明らかになってきたからである(表)。

同様に慢性心不全治療でも,短時間型を長時間型のループ利尿薬に変更すると,長期予後が改善するかもしれない」と考察する。
ループ利尿薬の予後改善効果を検討するJ-MELODIC試験に注目
実際に慢性心不全患者の予後は,長時間作用型のループ利尿薬を使うことによって改善するのか。
その答えを求めて増山氏らは2006年6月,厚生労働科学研究事業として採択されたJ-MELODIC(Japanese Multicenter Evaluation of LOng- versus short-acting Diuretics In Congestive heart failure)試験に着手。
前向きの無作為オープン比較試験として,慢性心不全患者をアゾセミド投与群とフロセミド投与群に分け,2年間にわたり各群の予後やQOL,左心機能,神経体液性因子,生理学的検査指標の推移を評価することにしている(図4)。

目標登録患者数は300例であるが,2008年3月末時点で275例となっている。
J-MELODIC試験について,吉川氏は「慢性心不全患者に対するループ利尿薬の長期予後効果を探る前向きの臨床試験は,現時点で世界でも類例がなく,斬新かつ有意義である。
動物実験や小規模の臨床研究で神経体液性因子への影響が小さいことが示されている,長時間作用型ループ利尿薬の優位性が裏付けられるかが注目される。
それが証明されれば,心腎連関を考慮して腎保護を図るうえでも,薬剤選択の在り方を見直す契機になる」と評価する。
増山氏は「慢性心不全治療は,RAA系抑制薬やβ遮断薬が標準薬として活用されるようになり,大きな前進を遂げた。
しかし,今も慢性心不全患者の10年生存率は30%程度にとどまっており,予後は決して芳しくない。
J-MELODIC試験でループ利尿薬の適正使用につながるエビデンスが得られれば,神経体液性因子を標的とした薬物療法の重要性が再認識され,治療成績はさらに向上するだろう」と展望している。
なお,J-MELODIC試験は2010年5月まで続けられる予定である。中間解析の実施は,同試験の中央委員が必要に応じて検討するという。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41160821&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.4.17
版権 メディカル・トリビューン社
<追加 2008.4.21>
オイテンシンという薬剤があります。
フロセミドということでラシックスと同一成分です。
持効性ということで浮腫のみならず高血圧にも適応があります。
通常、降圧利尿剤としてはサイアザイド系薬剤が用いられます。
ご承知のごとくプレミネントもこのサイアザイド系薬剤が配合されています。
個人的には催糖尿病性がどうしても気になります。
もしオイテンシンが催糖尿病性が少ないということならこの薬剤とARBとの合剤が登場するということはないのでしょうか。
また暴論を吐いてしまいました。
<参考>
フロセミド
ヘンレ上行脚の管腔側においてNa+/K+/Cl-の共輸送を抑制することによって、Na+とCl-の再吸収を抑制して強力な利尿作用をもたらす。
(日本医事新報 4382 2008.4.19 p91)
エタクリン酸,ブメタニド,ピレタニドは,フロセミドとは構造的にはかなりかけはなれていますが,作用の現れ方が同じため,同様にループ利尿薬と呼ばれます。
http://health.goo.ne.jp/medicine/search/1500_1/o/0/indexdetail.html
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) があります。
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