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今日と明日はループ利尿薬という比較的地味(?)な内容で勉強してみます。
教材は新着のMedical Tribune誌です。
慢性心不全治療におけるループ利尿薬の活用法を探る慢性心不全治療においてループ利尿薬は,浮腫や呼吸困難の軽減,患者のQOL改善に役立つ。
その有用性は,欧米および日本の治療ガイドラインで高く評価されている。
しかし,ループ利尿薬の予後改善効果を示すエビデンスは得られておらず,臨床現場で漫然と使用されている状況も見受けられる。
兵庫医科大学内科学循環器内科教授の増山理氏と慶應義塾大学内科学循環器内科准教授の吉川勉氏に,慢性心不全に対するループ利尿薬の処方の現状と課題を尋ね,その活用法を探った。
ループ利尿薬は体液貯留に伴う心不全症状の改善に欠かせない
ループ利尿薬は,利尿薬の中で最も強力な利尿作用を有し,うっ血に基づく労作時呼吸困難,浮腫などの症状を速やかに軽減する。
慢性心不全治療において1960年代から使われており,今も必須の薬剤である。
日本の『慢性心不全治療ガイドライン(2005年改訂版)』は,心機能障害の種類とニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類に応じて,ループ利尿薬の位置付けを提示。
左室収縮機能不全でNYHA II度(軽症)以上と診断され,体液貯留による症状が明らかな場合はClass I(通常適応され,常に容認される)としている。
一方,拡張機能不全でNYHA I度(無症候性)~II度の場合はClass II(容認されるが有用性はまだ不確実で異論もありえる),III度(中等症~重症)~IV度(難治性)の場合はClass Iと評価している。
欧州心臓学会(ESC)による『慢性心不全診療ガイドライン(2005年版)』も,体液貯留に伴う症状が見られる左室収縮不全例へのループ利尿薬の使用は,Class I(根拠または一般合意に基づいて有用性が認められる)としている。
米国心臓学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)の『成人慢性心不全診断・管理ガイドライン(2005年版)』には,収縮不全・拡張不全に対してClass I(同上)であると記されている。
ループ利尿薬の選択や使い方を見直す時期に差し掛かっている
しかし,慢性心不全治療におけるループ利尿薬の地位は,相対的に低下している。
かつて強心薬とともに首座にあったが,Guyattが「エビデンスに基づく医療(EBM)」の概念を提唱した1991年以降,次第に舞台袖に退いた。
大規模臨床試験の成績が相次いで報告され,長期予後改善効果が示されたアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),β遮断薬が台頭してきたからである。
兵庫医科大学内科学循環器内科教授の増山理氏は「ループ利尿薬の有用性は臨床上明白であるが,長期的な予後への影響は無作為化比較臨床試験で確認されていない」と語る。
慶應義塾大学内科学循環器内科准教授の吉川勉氏も「ループ利尿薬は,慢性心不全治療において経験的に使用されてきた。エビデンスは皆無に等しく,実際にどれだけ有意義なのかはわからない」と指摘する。
一方でループ利尿薬に限らず,臨床現場では利尿薬が正しく使われていない状況も散見される。
増山氏は「大学病院の外来診療の場で,利尿薬しか処方されていない慢性心不全患者に遭遇することも珍しくない。臨床家に利尿薬の特性が十分に理解されているのか,疑問や不安を抱くことが多々ある」と憂慮する。
吉川氏は,日本で約40年間頻用されてきた短時間作用型ループ利尿薬について「心不全の急性増悪期の使用に異論はないが,慢性期に漫然と使うべきではない。近年の基礎研究では,神経体液性因子の賦活化を増強することが示唆されているからである。われわれは今,ループ利尿薬の選択や使い方を見直す『反省期』を迎えている」との認識を示した。
ループ利尿薬の使用量と予後の悪化に有意な相関が認められる
慢性心不全治療で用いられるループ利尿薬は現在,短時間作用型のフロセミドが70~80%を占める。
急性増悪を来した入院患者に静注し,症状安定後は経口薬に切り替えて投与することが多い。
退院後も「脱水症状や血中尿素窒素値の上昇などが認められない限り,ほとんどの患者はフロセミドの経口薬を使い続けている」(吉川氏)という。
こうしたなかEshaghianらによる臨床研究で,短時間型ループ利尿薬の使用量が多い患者ほど長期予後が悪いことが示された(図1)。

同研究の対象は,左室収縮能が高度に低下した慢性心不全患者1,354例(NYHA III度39%・IV度47%,平均駆出率24%)で,このうち93%がフロセミドを服用していた。
ループ利尿薬の使用量と死亡率の有意な相関関係は,患者の年齢や性,種々の臨床データを変数として多変量解析を行っても同様に認められた。
洞調律の慢性心不全患者6,797例を対象に強心薬ジゴキシンが予後に及ぼす影響を見たDIG試験のサブ解析では,非カリウム(K)保持性のサイアザイド系利尿薬やループ利尿薬が予後不良を招く因子であることがうかがえた(J Card Fail 12: 327, 2006)。
非K保持性利尿薬使用群の総死亡と心血管死,心不全悪化による死亡,心臓突然死,心不全による入院が,利尿薬非使用群と比べてそれぞれ有意に多かったからである。
こうした研究結果について,増山氏は「重症な患者ほどうっ血症状の改善に多量のループ利尿薬が必要とされるが,多変量解析の結果や他の複数の臨床成績から,利尿薬の使用量も予後の規定因子であると推察される」として注目している。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41160063&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.4.17
版権 メディカル・トリビューン社
<参考サイト>
慢性心不全治療ガイドライン
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2005_matsuzaki_h.pdf
慢性心不全治療のガイドライン
http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/manseisin.html
(クラス1~3について解説)
ACCとAHA、慢性心不全の改訂ガイドラインを発表
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/394035.html
American College of Cardiology / American Heart Association guidelines: New heart failure guidelines stress early diagnosis and treatment
http://www.acc.org/media/releases/highlights/2005/aug05/hf_guideline_update.htm
慢性心不全
http://minds.jcqhc.or.jp.p.fn.to/0049_ContentsTop.html
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「ジゴキシン血中濃度は0.8ng/ml以下が望ましい」、DIG試験サブ解析が示唆
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/232263.html
ジゴキシンの有効血中濃度は一般に0.8~2.0ng/mlとされてきたが、この“有効下限”を下回る濃度でのみ生命予後改善効果がみられたとの結果で、慢性心不全患者に対するジゴキシン療法のあり方に一石を投じそうだ。
心不全管理における神経体液性因子遮断療法は頭打ちか
http://www.lifescience.jp/ebm/cardiologyfrontier/no4/theme4.html
アルドステロン拮抗薬
重症心不全患者を対象にしたRALES試験では,spironolactoneが全死亡をプラセボより30%低下させたために試験が早期に中止となり,spironolactoneの有効性が証明された 。
また,標準治療を受けているMI患者にeplerenoneを投与したEPHESUS試験でも死亡率が低下した 。
さらに,spironolactoneは左室リモデリングを抑制するという報告が日米から発表されている 。
(ここでは”利尿剤”は項目としてとりあげられていません。”アルドステロン拮抗薬”のみが有効というアメリカ流のクリアーカットなとらえ方になっています。ある意味小気味いいのですが。)
<コメント>
■「ループ利尿薬の予後改善効果を示すエビデンスは得られておらず」
「Guyattが「エビデンスに基づく医療(EBM)」の概念を提唱した1991年以降,次第に舞台袖に退いた。」
「ループ利尿薬の有用性は臨床上明白であるが,長期的な予後への影響は無作為化比較臨床試験で確認されていない」
「エビデンスは皆無に等しく,実際にどれだけ有意義なのかはわからない」
日頃処方するワーファリン、ラニラピッド、ルプラックなど。
投与量に神経を使いながら処方していても16点ルールにははるかにひっかからない低薬価です。
何だかとてもさびしい思いもします。
患者さんには「安いくすりほどよく効くんですよ」と言っている自分が何だかとても惨めです。
さて利尿剤には慢性心不全に対するエビデンスがないという上に羅列した内容についてですが、発売から年月のたった安い薬剤に大規模臨床試験が新たに行われるとはとうてい思えません。
エビデンスがない=有効性がない、とはちょっと違うんではないでしょうか。
■ 「短時間型ループ利尿薬の使用量が多い患者ほど長期予後が悪いことが・・・」
大昔に勤務していた時、ある同僚の先生が入院中の慢性呼吸不全患者(今様にいえばCOPD)を対象とした研究の学会発表で「酸素療法をしている患者ほど生命予後が悪い」という内容の予演会に立ち会ったことを思い出しました。
それって重症だから酸素吸入をしているのでは・・・。
■ 「非カリウム(K)保持性のサイアザイド系利尿薬」
カリウム(K)非保持性?
この特集では徹底的にカリウム(K)保持性利尿剤、すなわちspironolactoneやeplerenoneの話題が排除されているようです。
■ 「急性」心不全には利尿剤が有効なことは論を待たないことです。ここでは「慢性」心不全に限っての討論ということになります。
急性期から慢性期にかけて継続的に利尿剤を使用することに対する警鐘と受け止めることも出来るかもしれません。
狭心症や慢性心不全に対する経口や貼付の亜硝酸製剤の漫然投与も同様かも知れません。
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) があります。
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