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きょうは脳卒中の再発予防とARBについて勉強しました。同様のテーマで別のブログでもとりあがました。
脳梗塞2次予防にみる最新の動向
http://wellfrog.exblog.jp/d2008-04-14
脳卒中の再発を減少させるために
―ARBを中心とした多面的アプローチ―
わが国の脳卒中発症率は降圧療法の進歩と共に,劇的に減少してきた。
しかし,メタボリックシンドロームの増加をはじめとする病態の変化に伴い,ここ数年は下げ止りの傾向を見せている。
そこで,いまだ日常臨床で遭遇する機会が多い脳卒中患者の予後をよりよくするための的確な治療についてご討論いただいた。
峰松 一夫 氏(司会)
国立循環器病センター内科脳血管部門 部長
豊田 一則 氏
国立循環器病センター内科脳血管部門 医長
苅尾 七臣 氏
自治医科大学循環器内科 教授
木村 玄次郎 氏
名古屋市立大学大学院医学研究科臨床病態内科
学 教授
脳卒中急性期の再発危険因子は高血圧,心房細動,糖尿病
峰松(司会)
脳卒中は現在,悪性腫瘍,心臓病に続いて死亡原因の第3位,要介護の原因疾患の第1位であり,高齢化社会を迎えたわが国の抱える大きな問題の一つです。
本日は「脳卒中の再発を減少させるために」をテーマに,脳卒中の再発を防ぐにはどのような治療を行うべきか,話し合っていきたいと思います。最初に,脳卒中を再発する患者さんの特徴について伺いたいと思います。
豊田
脳卒中再発の危険因子は,脳卒中初発の危険因子とほぼ共通しています。
欧米の脳卒中一次予防ガイドラインに記されている,高血圧,喫煙,糖尿病,脂質代謝異常,心血管疾患の既往,そして,メタボリックシンドロームは,わが国でも同様に危険因子と考えてよいでしょう。
また,わが国の脳卒中患者さんを登録している脳卒中データバンクでは,急性期に再発を起こす危険因子は,高血圧と心房細動であり,アテローム血栓性脳梗塞では糖尿病が示されています。
苅尾
私たちの施設でも,入院を要する重症高血圧症の脳梗塞発症について,最も大きなリスクとなったのは糖尿病でした。
ですから,血圧の管理だけでなく,日頃から血糖値にも注目しておく必要があると思います。
峰松
最近,慢性腎臓病(CKD)が,脳・心血管系イベントの重大なリスクとして注目されていますが,その点はいかがでしょうか。
木村
従来,微量アルブミン尿は腎不全発症のリスクとして捉えられていましたが,最近の研究から,脳卒中や冠動脈疾患のリスクでもあることがわかってきました。
例えば,茨城県の住民健診を基にしたコホート研究では,腎糸球体濾過量(GFR)が60未満または蛋白尿陽性と,CKDに該当しうる群は,脳・心血管系イベントが発症しやすいことが報告されています(図1)。

また,久山町研究でも,女性においてCKDが脳卒中リスクを1.9倍高めることを明らかにしています。
峰松
微量アルブミン尿を含む「蛋白尿」と「糖尿病」が,脳梗塞患者さんの重大な再発リスクであることを認めています。
一方,久山町研究では,男性では,CKDが心イベントリスクを有意に高めますが,脳卒中リスクは有意ではありません。
木村
男性の場合,脳卒中を発症する前に心イベントを発症してしまうからだと思います。
これは,私の臨床的経験からの意見ですが,動脈硬化の進行は,冠動脈に顕著に現れやすいのだと思います。
そこから,上下に進行する,つまり,冠動脈に始まり,脳血管と腎動脈,そして末梢血管へと動脈硬化が波及していくのだと感じています。
豊田
同感です。
心疾患患者さんが動脈硬化性疾患による入院患者さんの中で最も平均年齢が低く,また,脳血管障害や末梢血管疾患を有する患者さんの多くがすでに心疾患を有しています。
一方で,冠動脈疾患既往例の脳卒中初発リスクは男性で1.73倍,女性で1.55倍です。
冠動脈疾患と脳卒中は非常に密接であり,同じ動脈硬化性疾患としてトータルにケアしていくことが重要だと考えています。
木村
透析患者さんでも,高血圧や喫煙は脳卒中の強いリスクとなります。
透析患者さんは全身血管で動脈硬化が大きく進んだ状態にあると考えてよく,さまざまな治療により短期的な予後は改善できるのですが,長期的な予後まで改善するのは非常に難しいと感じています。
ですから透析に至らぬようにするのは当然ですが,まずはCKDを進行させない,さらにはCKDを発症させない治療を心掛けるべきです。
脳卒中急性期におけるARB投与の有用性
~ACCESS試験から~
峰松
今までお話しいただいた再発リスクをふまえて,脳卒中患者さんの治療について考えてみたいと思います。
ここからは,急性期と慢性期に分けて話を進めます。
まず,脳卒中急性期の治療について,いかがでしょうか。
豊田
急性期の降圧の是非については明確な結論はありません。
脳循環を保持するという観点からすれば,血圧をあまり下げすぎない方がよいのかもしれません。その一方で,脳梗塞が発症した病態は,すでに全身の血管病,つまり心疾患や腎疾患も発症しやすい状態にあるため,降圧することが重要となるかもしれません。
また最近は,急性期治療にt-PAなど,強力な抗血栓薬を出血に留意しながら用いているので,血圧のコントロールに注意を払うべきかもしれません。
急性期の脳卒中を対象にした降圧薬の臨床試験で,唯一エビデンスを有するのがカンデサルタンです。
ACCESSでは,脳卒中発症直後の7日間にカンデサルタンを投与した方が,投与しないよりも1年後のCVDの発症リスクをほぼ半減させることを認めました。
ここで注意しなければいけないことは,カンデサルタン投与7日後の血圧,さらには試験期間中の血圧,これは,コントロール群とまったく差がなかったことです。
つまりACCESSは,急性期に積極的な降圧をした方がよいというのではなく,RA系を抑制することが長期予後を改善できるというのが正しいメッセージなのです。
苅尾
脳卒中の発症や予後の悪化に関してRA系は深く関与しています。
そして,一時的にせよ,カンデサルタンを投与することでRA系の活性化に基づく臓器障害の進行を止めることが可能であることは,TROPHYの結果からも明らかです。
臓器保護を視野に入れ,高血圧症患者には,より早期からRA系抑制薬を投与することが重要だということですね。
豊田
脳梗塞急性期は炎症が強く,全身が言わば"火事場"の状態とも言え,循環器系には大きなストレスが加わっています(図2)。

ACCESSあるいはTROPHYの結果からも,脳卒中発症直後からRA系を抑制し,炎症を抑えることで,全身血管が保護され,長期予後を改善できるものと考えています。
出典 Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社
<番外編>
「ONTARGET試験」に関する愛媛大学教授檜垣實男先生のコメントの紹介です。
ACE阻害薬とARBの併用療法は心血管疾患発症抑制においてもはや有用でない-ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか
檜垣實男氏(愛媛大学大学院 病態情報内科学 教授)はその意義についてプレスセミナーにおいて講演した。
(1) ACE阻害薬とARBの併用療法はもはや有用でない
ONTARGET試験の中で、最も注目した結果は、ACE阻害薬とARBの併用療法が、ACE阻害薬単独投与に比べて優越性を示せなかったことである。
ONTARGET試験では、1次評価項目として「心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院のいずれかの発現」と複合心血管イベントが設定されたが、その発現率は、ACE阻害薬単独投与群で16.5%、併用群で16.3%であった。
1次評価項目における併用療法のACE阻害薬に対するハザード比は0.99(95%信頼区間:0.92-1.07)であり、ACE阻害薬にARBを併用しても有意な心血管系イベントの改善には至らなかったのだ。
そもそも、なぜ、この試験が行われたか。
ACE阻害薬はアンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへの変換を促進させる酵素ACEを阻害することによってアンジオテンシンⅡの産生を抑制する。
しかし、アンジオテンシンⅡはキマーゼなどACE以外の酵素によっても産生され、完全にはレニン・アンジオテシン系(RAS)をブロックできない。
ARBはアンジオテンシンⅡ受容体を直接遮断する。
したがってACE阻害薬とARBによるRASのデュアルブロックによって、ACE阻害薬で証明されている数々の心血管疾患発症抑制効果がさらに増強されると期待されていた。
これまでにACE阻害薬とARBの併用療法の有用性を検証した臨床試験はONTARGET試験が初めてではない。
大規模な試験としては、心筋梗塞後の左室収縮不全または心不全例に対してバルサルタン(販売名:ディオバン)とカプトプリル(カプトリル)の併用療法の有用性を検証したVALIANT試験と、慢性心不全例に対してカンデサルタン(販売名:ブロプレス)とACE阻害薬(どのACE阻害薬を選択するかは医師の判断:エナラプリル27%、リシノプリル19%、カプトプリル17%)の併用療法の有用性を検証したCHARM-Added試験がある。
これらの結果は対照的なものとなった。
すなわち、VALIANT試験では併用療法がACE阻害薬単独投与に対して優越性を示せず、CHARM-Added試験では併用療法が単独療法に対して優越性を示したのである。
Yusuf氏らはONTARGET試験やVALIANT試験の対象は、他の薬剤によって治療が成功している集団であったため、ACE阻害薬とARBの最大投与量を用いたRASのデュアルブロックによる臨床ベネフィットはほとんど得られなかったのではないかと考察している。
また、安全性面に目を向けてみると、ONTARGET試験では、併用療法によって低血圧、失神、腎機能障害、高カリウム血症が有意に増加し、透析を必要とする腎不全も増加傾向にあった。
これらを受け、檜垣氏は「ハイリスク例では副作用が増加するだけで、併用療法の有用性は心不全例を除いては期待できない」と述べた。
血圧値は141.8/82.1mmHgからACE阻害薬投与によって6.4/4.3mmHg降下し、併用療法によって9.8/6.3mmHg降下した。
すなわち、その差は2.4/1.4mmHg。
この血圧差からは4-5%のイベント抑制が期待できるとしているが、今回はそこまでの結果に至らなかった。
テルミサルタンを併用しても血圧差が2.4/1.4mmHgであったこと、血圧差があったにも関わらず、一次評価項目で全く差がなかったのはなぜか、まだ疑問は残る。
一方、わが国で保存期腎不全例を対象にACE阻害薬(トランドラプリル)とARB(ロサルタン)の併用療法は、それぞれの単独療法に比べ腎不全への進行を抑制することができたことがCOOPERATE試験より証明されている。
心血管疾患発症抑制ではなく、腎疾患の進展抑制における併用療法の効果について期待できるかもしれない。
しかし今回のONTARGETの結果は、ハイリスク患者における心血管疾患発症抑制を目的としたACE阻害薬とARBの併用療法の臨床意義は期待できないことを証明したといえる。
臨床意義は期待できないことを証明したといえる。
ACE阻害薬とARBの併用療法は心血管疾患発症抑制においてもはや有用でない-ARB史上最大規模の試験「ONTARGET試験」は何をもたらしたか
http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=3346
<コメント>
以前にも書かせていただきましたが、脳梗塞と脳出血を包括した表現である脳卒中としてとりあげると、病因の異なる2つの疾患を同時に論ずることになります。
特に海外の論文にその傾向が多いのですが何とかならないものでしょうか。
今日の話で心・脳・腎の連関がクローズアップされていることが理解できました。
また「動脈硬化の進行は,冠動脈に顕著に現れやすいのだと思います。そこから,上下に進行する,つまり,冠動脈に始まり,脳血管と腎動脈,そして末梢血管へと動脈硬化が波及していくのだと感じています」といった本音トークを興味深く読ませていただきました。
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) があります。
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