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糖尿病専門医からみた「ONTARGET」の結果に対する解説です。
面白く勉強させていただきました。
ONTARGET;糖尿病医から見た史上最大規模のARB試験
北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟
2万5,620例に及ぶ大規模臨床試験であるONTARGET(N Engl J Med 358, 1547-1559,2008)が報告された。
この試験についてはACC2008学会レポートとしてMTproの取材記事でも取り上げているが,本試験のポイントは以下の3点にあると考えられる。
テルミサルタン(ARB)とラミプリル(ACE阻害薬)および併用群のエンドポイントに差異はなかった。
ごくわずかではあるが,テルミサルタンのほうがラミプリルよりも忍容性が有意に高く,併用群の忍容性が最も低かった。
これらの結果がARB史上最大規模の無作為化前向き盲検化比較試験において認められた。
糖尿病医としての視点でこの試験をとらえてみたい。
ARBは咳のないACE阻害薬なのか?(ARB vs. ACE阻害薬)
本試験は,ARBであるテルミサルタンの心血管疾患高リスク者に対する有効性と安全性を,ACE阻害薬であるラミプリルと比較したものである。
後ろ向き研究においてではあるが,ラミプリルは他のACE阻害薬と比較して急性心筋梗塞後の死亡率が最も低いことがPiloteらにより報告されている(Ann Intern Med 141, 102-112, 2004)。
よって,ラミプリルと有効性において非劣性であり,咳や血管浮腫などの忍容性で優位であったことからは,テルミサルタンは「咳のない(最強の)ACE阻害薬」と言ってよいであろう。
また,冠動脈疾患の発症において非劣性であったことは特筆に値する。
昨年,ACE阻害薬とARBの比較についてのメタ解析BPLTTCが報告され(J Hypertens 25, 951-958, 2007),論争が続いていた冠動脈疾患に対するARBの影響については,ARBに悪化作用はなくても少なくともACE阻害薬のほうがARBより優れるとの印象をお持ちの先生方が多いと思われる。
このメタ解析で取り上げられたACE阻害薬とARBの直接比較試験は,ELITE II(Lancet 355, 1582-1587, 2000),OPTIMAAL(Lancet 360, 752-760, 2002),VALIANT(N Engl J Med 349, 1893-1906, 2003)の3試験であるが,これら3試験のARBとACE阻害薬の単独投与に割り付けられた被験者をあわせると約1万8,000例である。
ONTARGETにおける併用群を除いた被験者数はやはり約1万7,000例であり,このONTARGETひとつで印象が大きく変わるのではないだろうか。
テルミサルタンは他のARBと異なるのか?
では,この最強のACE阻害薬ラミプリルと同等であったテルミサルタンの作用は,ARB全部のクラスエフェクトなのであろうか。
ELITE II とOPTIMAALはロサルタンとカプトプリルの比較であり,VALIANTはバルサルタンとカプトプリルの比較である。
前述のPiloteらの報告では,カプトプリル(使用量の中央値50mg)はラミプリル(使用量の中央値5mg)に比べ急性心筋梗塞発症後1年での死亡率が有意に高い。
冠動脈疾患の発症について直接検討しているわけではないが,急性心筋梗塞発症後1年での死亡に冠動脈疾患の再発が関与している可能性は高く,ONTARGETにおいて用いられたラミプリル10mgに対してロサルタンやバルサルタンといったARBが冠動脈疾患予防に対して同等との想像は容易ではない。
よって,テルミサルタンと他のARBが冠動脈疾患に対する影響において異なっている可能性は否定できない。
テルミサルタンと他のARBの差異といえば,やはりPPARγ活性化作用(Hypertension 43, 993-1002, 2004)であろう。
一部に例外はあるが (N Engl J Med 356, 2457-2471, 2007),PPARγ活性化作用は大血管障害への予防効果を期待させるものである(Lancet 366, 1279-1289, 2005,JAMA 298, 1180-1188, 2007)。
「ONTARGETでテルミサルタンがラミプリルと同等の有効性を示した背景にPPARγ活性化作用が関与しているとすれば,糖尿病新規発症の予防効果も出るはず。それなのに,糖尿病新規発症はテルミサルタンとラミプリルとで同等であり,おかしいのではないか」とお考えの先生方もおられるかもしれない。
しかし,われわれの経験でも,テルミサルタンにはPPARγ活性化の結果と考えられる末梢血中のアディポネクチンの増加作用が認められる一方で,血糖コントロールの改善作用は認められなかった(Hypertens Res 31, 601-606, 2008)。
アディポネクチンには直接的に動脈硬化症に予防的に働く力があると考えられており,糖尿病新規発症率に差異がなくても,PPARγ活性化作用のためにテルミサルタンには動脈硬化予防作用があり,(他のARBと違って)ラミプリルと同等の心筋梗塞発症率ですんだ可能性は考えうるものである。
ARBとACE阻害薬の併用は意味がないのか?
さて,私にとって本当に残念だったのは,ARBとACE阻害薬
の併用群が,忍容性が低下するのみで,有効性についてはいずれの単剤群とも有意差を認めなかったことである。
これまでいくつかの試験でARBとACE阻害薬の併用の効果が報告されてきた。例えば,CALM(BMJ 321, 1440-1444, 2000)では糖尿病と高血圧を合併するアルブミン尿陽性患者にカンデサルタンとリシノプリルを併用することによって尿中アルブミン排泄率を有意に低下させ,COOPERATE(Lancet 361, 117-124, 2003)では非糖尿病性腎疾患患者にロサルタンとトランドラプリルを併用することによってその進行を有意に予防させうることが示されてきた。
さらに,CHARM-added(Lancet 362, 767-771, 2003)ではACE阻害薬使用者へのカンデサルタンの追加によりプラセボを追加するより心不全の治療成績を改善させていた。
しかし,ONTARGETという大規模試験で,心不全での入院や腎移植・透析導入について差異が認められなかったことは,ARBとACE阻害薬の併用が有効性を発揮できる症例が,心不全をすでに発症しているなどかなり限定されたものであることを示すのかもしれない。
今後のサブ解析が楽しみ
こうしたARBとACE阻害薬の併用が有効性を示す集団を改めて明らかにするにはサブ解析が必要となろう。
また,アジア人,糖尿病患者などに限定したサブ解析も,これだけの大規模試験であれば可能であろう。
今後のサブ解析の発表により,また新たな知見が見出されることを期待したい。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr080410.html
・・・・ちょっと論理の飛躍が。
循環器専門医とちょっと違った見方からのコメントで興味深く勉強させていただきました。
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