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< 日本人冠動脈疾患患者の再発予防 | メイン | 糖尿病医から見たONTARGET >
注目のONTARGETが第57回米国心臓学会で発表されてから10日たちました。
待ち遠しかったコメントが少しずつ公表されつつあります。
各先生がどのようなコメントをされるか。
その先生が真の学者(研究者)かただの御用学者か。
そのあたりを注目したいと思います。
各先生の力量が問われるところです。
まずは、循環器専門医のコメントで勉強してみました。
一部の内容は、結果の紹介記事のため
注目の降圧薬臨床試験 ONTARGET
http://blog.m3.com/reed/20080404/__ONTARGET
と重複しますが、ご了承下さい。

武本春根 パステル画『ベニス』
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s91647355
ARBが“最強のACE阻害薬”と同等の心血管イベント抑制効果を示したことを評価
兵庫県立尼崎病院循環器科 佐藤 幸人
ONTARGET(ONgoing Telmisartan Alone and in combination with Ramipril Global Endpoint Trial)は,心血管イベントの高リスク患者を対象に,心血管イベント発症抑制効果を検討した大規模ランダム化二重盲検群間並行試験で,
(1)アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)テルミサルタン80mg群のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬ラミプリル10mg群に対する非劣性の検討と,
(2)テルミサルタン80mg+ラミプリル10mg併用群とラミプリル10mg単独投与群との比較検討
が行われた。
特筆すべきこととして,3万1,546例というARBの試験として過去最大の症例数が登録された。
背景: ラミプリルはACE阻害薬の中でもエビデンスの豊富な薬剤
本試験の背景としては,過去のARB,ACE阻害薬の検討から以下の3点が重要である。
(1)ACE阻害薬は高血圧に対しては心肥大抑制作用,心血管イベント発症抑制作用が強く,心不全に対しては,心不全入院抑制,生存率の改善が種々の大規模試験により確認されている。
また,その豊富なエビデンスにより高血圧領域ではJNC-7レポートで,心不全領域では「ACC/AHA慢性心不全の診断と治療のガイドライン」で,初期より積極的に投与すべき薬剤として位置付けられている。
なかでも今回,対照薬となったラミプリルはHOPE(Heart Outcomes Prevention Evaluation)試験,AIRE(Acute Infarction Ramipril Efficacy)試験などエビデンスが豊富で,他のACE阻害薬と比較して強力な心血管イベント抑制作用を有するとされており,欧米では,「心筋梗塞,脳卒中および心血管死のリスクの減少」の適応症も有する最も処方の多いACE阻害薬である。
(2)歴史が新しいARBと他剤との比較検討については,心肥大を伴った高血圧患者を対象にしたLIFE(Losartan Intervention For Endpoint reduction)試験において,ロサルタンがβ遮断薬アテノロールと比較して心血管イベントを抑制したが,ACE阻害薬とARBとの比較においては心筋梗塞後の患者を対象としたVALIANT(Valsartan in Acute Myocardial Infarction Trial;バルサルタンvsカプトプリル)やOPTIMAAL(Optimal Trial in Myocardial Infarction with the Angiotensin II Antagonist Losartan;ロサルタンvsカプトプリル)試験,慢性心不全患者を対象としたELITE II(Evaluation of Losartan in the Elderly Study II;ロサルタンvsカプトプリル)において,いずれもARBの優位性を証明することはできなかった。
しかし,対象患者を広く設定した,心血管イベントのハイリスク患者を対象とした大規模な比較試験は今まで報告されていない。
さらに上の3つの試験で対照薬として使用されたカプトプリルと比較して,今回の対照薬であるラミプリルは強力な心血管イベント抑制作用を持つ。
(3)ACE阻害薬とARBとの同時投薬については慢性心不全患者を対象としたVal-HeFT(Valsartan Heart Failure Trial;バルサルタン vs プラセボ,90%の患者に基礎薬としてACE阻害薬),CHARM(Candesartan in Heart Failure-Assessment of Reduction in Mortality and Morbidity)-added(カンデサルタン vs プラセボ)では,いずれも心血管イベントを抑制したが,前述の心筋梗塞後患者を対象としたVALIANTでは,バルサルタン,カプトプリル単独投与群と比較してバルサルタン+カプトプリル併用群に有意な効果の増強は認められなかった。
方法: 対象は55歳以上で,冠動脈疾患,末梢血管疾患,脳血管疾患,臓器障害を伴うハイリスクの糖尿病であった。
単盲検によるrun-in期間後,テルミサルタン80mg/日群(8,542例),ラミプリル10mg/日群(8,576例),併用群(8,502例)の3群にランダム化した。主要評価項目は心血管死,心筋梗塞,脳卒中と,うっ血性心不全による入院からなる複合心血管イベントである。
ACE阻害薬に忍容性のない患者はテルミサルタンの心血管保護効果をプラセボと比較する,TRANSCEND(Telmisartan Randomized Assessment Study in ACE Intolerant Subjects with Cardiovascular Disease)試験に組み入れられた。
結果: 併用による有用性は認められず
追跡期間は中央値56か月であり,追跡可能症例は99.8%と極めて精度の高い試験であった。
(1)テルミサルタン80mg群のラミプリル10mg群に対する非劣性の検討について
run-in期間前における全体群の血圧は平均141.8/82.1mmHg(収縮期血圧/拡張期血圧)であった。試験期間中ラミプリル10mg群と比較して0.9/0.6mmHgの血圧降下がテルミサルタン80mg群で認められた。主要評価項目についてイベント発生率はラミプリル10mg群16.5%,テルミサルタン80mg群16.7%であり,テルミサルタンのラミプリルに対する非劣性が証明された。
また,本試験の先行研究であるHOPE試験の主要評価項目である心血管死,心筋梗塞,脳卒中からなる複合心血管イベントについて解析しても,テルミサルタンのイベント抑制効果はラミプリルと同等であった。
(2)テルミサルタン80mg+ラミプリル10mg併用群とラミプリル10mg単独投与群との比較検討について
試験期間中ラミプリル10mg群と比較して2.4/1.4mmHgの血圧降下が併用群で認められた。
主要評価項目の発生率について併用群はラミプリル単独群と差は見られず,併用による有用性は認められなかった。
(3)副作用について
本試験にはrun-in期間においてACE阻害薬への忍容性が認められた患者が組み入れられたにもかかわらず,服用中止の理由で最も頻度が高かった項目はラミプリル10mg群の咳嗽であった。
一方,テルミサルタン80mg群では低血圧症状による服用中止率がラミプリル10mg群に比べて高いことが示され,併用群では血圧低下,失神,下痢,腎機能低下などの副作用がラミプリル10mg群と比較して有意に高頻度であり,忍容性,安全性に問題のあることが判明した。
本試験から学ぶこと:テルミサルタンの投与量は国内でも使用可能な用量
本試験により「心血管疾患リスクの高い患者」において,テルミサルタンの心血管イベント抑制効果はラミプリルと同等であることが明らかになった。
最も重要な点は,過去エビデンスが最もあり,ACE阻害薬の中でも心血管イベント抑制効果が最も強いとされるラミプリルに対して,テルミサルタンが同等の効果を示したことである。また,従来の大規模臨床試験では,国内の用量よりはるかに高い用量のARB・ACE阻害薬で行われていたので,その結果を日本の臨床にそのまま使用するのはどうかという疑問があったが,その同等の効果がテルミサルタン80mgという国内でも使用可能な用量で示された事は非常に大きな意味を持つと考えられる。
さらに,過去のメタ解析より,ARBはACE阻害薬よりも心筋梗塞発症抑制効果が弱いとの指摘もあったが,本試験においてテルミサルタン80mg群とラミプリル10mg群において心筋梗塞発症予防効果は同等であり,そのような懸念が払拭されたことである。
本試験の症例数がARB臨床試験中,史上最大の規模であったことは,今後のメタ解析結果にも大きく影響を及ぼすと思われる。
注意点として,本試験の対象患者は心血管イベントのハイリスク患者というかなり広い疾患群であったことと,薬剤はARBの中でも選択的PPARγ活性化作用を持つテルミサルタンであったことで,母集団,薬剤が異なれば結果もやや変化する可能性はある。
また,わが国でACE阻害薬よりもARBが好んで処方される理由のひとつに,副作用の咳嗽がACE阻害薬で多いことがあり,一度副作用が生じると,その後の服薬コンプライアンスが著しく悪くなることも経験される。
本試験では,ACE阻害薬に忍容性のある患者がエントリーしているにもかかわらず,咳嗽の副作用はラミプリル10mg群で有意に多く,ラミプリル10mg群では服薬中止の一番の理由であった。
咳嗽の副作用はアジア人に多いという過去の報告もあり,本試験には約14%の4,000例近いアジア人が含まれていることから,サブ解析の発表が望まれる。
テルミサルタン80mgとラミプリル10mgの併用投与では,ラミプリル10mg単独投与を凌ぐ有効性は認められず,併用群で有害事象が増加した。
この結果は上述のVALIANTに近いが,Val-HeFT,CHARM-Addedとは異なる結果となった。
この差が母集団の背景因子の差(年齢,人種,合併症など)であるのか,または,対象疾患自体の差であるのかは疑問を残したままとなっている。
最後に,近年の大規模試験では代理指標としての可能性を検討すべく,Val-HeFT,LIFEなどでバイオマーカーが測定されている。
本試験でも1万症例規模でバイオマーカーが測定されているようであり,今後の発表が待たれる。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/doctoreye/dr080407.html
<コメント>
3万人を超える史上類をみない規模の試験でARBはACEIに対して、非劣性を証明したものの優位性を示すことが出来なかったわけです。
このことが最大の成果(?)ということになります。
果たしてpleiotropic effectを期待した他のARBで、同様な大規模臨床試験が続いて行われるかといったところでしょうか。
<追記>2008.6.6
ONTARGETの評価が動画で配信されました。
専門家に聞くONTARGETの評価
ONTARGETの結果発表を受けて、その評価を専門家にうかがいました。今回収録しました方々は以下です。
愛媛大学大学院医学系研究科分子心血管生物・薬理学教授
堀内正嗣氏
九州大学大学院医学研究院循環器内科学教授
砂川賢二氏
愛媛大学大学院医学系研究科病態情報内科学教授
檜垣實男氏
千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学教授
小室一成氏
京都府立医科大学大学院医学系研究科循環器内科学教授
松原弘明氏
大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
森下竜一氏
カナダLaval大学
Gilles R. Dagenais氏
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/search/j02/0011.jsp
ONTARGET
http://on-target.jp/
日経メディカル オンライン 2008. 4. 11
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コメント
コメント一覧
1)併用群で、副作用が(特に腎不全の)多かった:
この点は、ONTAGETのプロトコールでは当然ともいます。なぜなら、NEJMの論文によると、ACEIとARBのそれぞれfull dose(テルミはフルでしょうか?)を朝一回同時投与にしているように読めました。この方法では、血圧の低下が著しくまた腎機能の急速な低下が高頻度ににおこることを経験しています。ですから、一日量としてはフルドーズでの処方は必要と思いますが、一回投与量は分割して(分4など)少量の併用を行うべきであると思います。
2)根本的に心臓と腎臓では違うのではと思います:
確かに、蛋白尿性腎症の大規模研究はまだ少ないですが、こと蛋白尿を減じることに関してまたその周辺に関与する多種の介在因子に関して、多くの基礎・臨床論文が併用療法の優越性を示しています。蛋白尿の減少はもろに糸球体に作用(いい変えると血管そのもの)ですから、臓器全体としての心臓と異なる、進行機序が異なるのかもしれません。サブ解析の発表が楽しみです。また、最近良く話題になる心腎連関に関しても新しい光を当てるのではと思います。
失礼いたしました。
ご指摘のように、心血管イベントといった循環器領域からの視点と腎障害(CKD)といった腎臓領域からは視点が異なるはずです。
治療法の選択肢が少ないCKDではARBとACEIの併用療法が是か非かということはとても大きな問題と思います。
国内で使用されていないラミプリルというACEIとの併用ということもあり、安易に結論づけることは避けなければならないと思います。
貴重なコメントありがとうございました。
またのコメントよろしくお願いします。
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