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Medical Tribune 2008.4.3に「世界の権威に聞く」という新企画が掲載されていました。
「心不全」の項目で勉強しました。
Marvin A. Konstam
タフツ大学内科教授,タフツ・ニューイングランド医療センター循環器科部長
略歴
1975年コロンビア大学内科・外科学部卒業。
89年タフツ大学内科教授に就任。
研究領域はおもに心室リモデリングの病因論的研究,心不全の薬物療法,治療の質改善など。
米国心臓病学会/米国心臓協会および米国心不全学会の心不全診療ガイドライン執筆委員などを歴任。現在,米国心不全学会副会長。
心不全の病態には交感神経系,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の賦活が密接に関連する。
このためβ遮断薬とRAAS阻害薬をいかに使いこなすかが,予後改善の鍵を握る。
タフツ大学内科のMarvin A. Konstam教授に,最近の心不全薬物療法の動向や今後の展望について聞いた。
重症・心筋梗塞後心不全にはACEIまたはARB+抗アルドステロン薬の併用が必須
―― 現在利用可能なRAAS阻害薬を用いた至適併用療法は,どうあるべきですか。
RAAS阻害薬の登場は,心不全の治療を大きく前進させました。 明らかな左室駆出率(LVEF)低下を伴う場合には,まず全例にアンジオテンシン II(AII)の作用を抑制するACE阻害薬(ACEI), AII受容体拮抗薬(ARB)のいずれかを投与します。
一方,アルドステロンは心筋だけでなく,脈管系に対しても炎症や線維化を惹起し,その分泌にはAII以外の機序も関与しています。
したがって,臨床試験で抗アルドステロン薬追加投与の有用性が証明された重症心不全患者(RALES),急性心筋梗塞後の症候性心不全患者(EPHESUS)には,抗アルドステロン薬の併用が必須です。
このほか抗アルドステロン薬の併用を考慮すべき対象としては,β遮断薬とACEIまたはARBの併用にもかかわらず症状が持続する例が挙げられます。
関連するメカニズムは幅広い患者に適用できると考えられますが,心不全患者全般に対する抗アルドステロン薬の有益性はまだ証明されていません。
CHARM試験から,ACEIとARBの併用も主張できるでしょう。 しかし,臨床ではACEIとARBの併用はあまり広く行われていません。
それよりは,ACEIと抗アルドステロン薬の併用が優勢です。ACEI,ARB,抗アルドステロン薬の 3 薬の併用療法による効果増強については,あまりデータはなく,副作用として高カリウム(K)血症のリスクが増します。
直接的レニン阻害薬は,阻害部位は異なりますが,ACEIやARBと同じく,最終的にAII の作用を抑制します。
米国での適応は高血圧症のみで,私自身使用経験がありません。
心不全治療でACEIやARBの代替薬になりうるか,それ以上の有益性を示すのか,現時点ではまだ予測できません。
―― 抗アルドステロン薬投与時の注意点は?
抗アルドステロン薬投与時には高K血症の発症に注意を要します。
重要なポイントは高用量を用いる必要はないことです。
投与開始数週間は特に注意深く血清K値をモニターすべきですし,腎障害や糖尿病合併例にはとりわけ注意が必要です。
有効性,一般的な安全性について,スピロノラクトンとエプレレノンに相違があるというエビデンスはないと思います。
エプレレノンの長所の 1 つは,女性化乳房の問題がない点です。
RALESでは,スピロノラクトン群の女性化乳房発症率は 9 %でした(プラセボ群 1 %)。
一方,米国ではスピロノラクトンはエプレレノンに比べはるかに安価で,問題が生じたらエプレレノンに切り替えるとの選択肢もあります。
どちらを優先するかは,臨床家や患者の判断によります。
β遮断薬は,より早期から積極的に導入・増量開始の方向へ
―― β遮断薬の導入時期,目標用量まで増量するためのこつについて,お聞かせください。
β遮断薬の導入は,より早期に入院中の開始へと移行してきています。
現在では心不全で入院し,いったん安定化して体液バランスが容認できる患者に,院内でβ遮断薬の投与を注意深く開始することに不安はありません。
増量のペースも速まり,最近では,より積極的に低用量を数日投与した後,増量を開始するようになってきています。
もちろん,全般的には数日~数週間隔と幅があります。
米国では,臨床試験で有益性が証明されたカルベジロール,長時間作用型メトプロロールなどのβ遮断薬を用い,有用性が得られた用量か,患者が耐容できる最大用量を目標用量として増量を試みるのが適切な治療です。
というのも,β遮断薬は薬理学的に多様で,個々の薬剤で非常に異なるからです。
徐脈や許容範囲を超える心拍数低下,症状を伴う低血圧,疲労などの副作用が出現したら,そこで増量を中止するか,もう少しゆっくり増量すべきでしょう。
スタチンで心不全患者の予後は改善せず
―― CORONA試験では,心不全患者へのスタチン製剤ロスバスタチンの追加投与は,心血管死,非致死性心筋梗塞・脳卒中を併せた心血管イベントのリスクを 8 %減少させたものの,有意差に至りませんでした。この成績をどう解釈されますか。
CORONAは虚血性の心不全患者を対象としており,その結果は多くの人々に驚きであったと思います。
というのも,虚血性心疾患患者に対するスタチンの有益性を示すエビデンスは豊富ですし,虚血性心疾患を伴わない心不全患者においても,観察試験ではスタチンの価値を示唆するデータがあったからです。
結局,心不全患者は急性の虚血性イベントよりも他の要因で死亡に至るのだと思います。
同試験の心血管死は不整脈性のイベントか,虚血に関連しない心不全の進展に関連したイベントであったようです。
しかし,傾向としては,スタチン群でエンドポイントがすべて好ましい方向にありました。
この報告から私が受け取ったメッセージは,「現在の診療に何も変化は生じない」ということです。
心不全を合併しているか否かにかかわらず,虚血性心疾患を伴う患者にはスタチンを使用する。
その点は,CORONAによっても変わりません。
バソプレシン受容体拮抗薬が心不全の急性増悪の治療に有望
――今後の心不全治療について,どのような展望をお持ちですか。
幹細胞療法は,非常に有望と考えています。
再生テクニックや移植テクニックによって,新しい心筋細胞を作製できれば非常にエキサイティングですが,臨床応用には長い年月を要するだろうと思います。
今後有望な新薬候補の 1 つに,バソプレシン受容体拮抗薬があります。
私たちは昨年,低LVEFと体液貯留を伴う心不全の急性増悪による入院患者を対象に,tolvaptanの効果を検討した大規模臨床試験EVERESTの結果を発表しました(JAMA 2007; 297: 1319&1332)。
この研究では,残念ながらtolvaptanのルーチン使用は,心不全入院患者の長期の総死亡,心不全による入院などの改善を示せませんでした。
しかし,急性期治療として腎機能の悪化や他の重篤な副作用を生じることなく,体液バランスの改善,呼吸困難や浮腫などの症状改善が得られました。
バソプレシン受容体拮抗薬については,現在進行中の臨床試験によって,このクラスの薬剤の最良の投与対象や最善の投与方法が明らかになるものと期待しています。
<Comment>
慢性心不全の標準治療はRAAS阻害薬+β遮断薬
日本人においてもβ遮断薬は目標用量まで増量すべき 大阪大学大学院循環器内科学教授 堀 正二
慢性心不全に対しては,わが国でも軽症ではACEIまたはARB+β遮断薬が必須で,重症では抗アルドステロン薬を追加した 3 薬併用療法が標準治療です。
ACEIとARBの効果は,ほぼ同等とみなしています。
わが国では古くからスピロノラクトンがK保持性利尿薬として汎用されており,同薬の使用にあまり抵抗がありません。
昨年エプレレノンが高血圧の適応で認可され,今後,高血圧を伴う心不全患者に積極的に使用されることになるでしょう。
β遮断薬の用量に関して,私たちが実施したMUCHA試験では,プラセボ群に比べてカルベジロール 5 mg/日,20mg/日の両群で,心不全の悪化による入院が有意に抑制されました。
この結果から,増悪を懸念して 5 mg/日で増量を中断するケースが多く見られます。
しかし LVEFの改善には用量依存性があり,可能な限り20mg/日まで増量を試みるべきです。
市販後調査によると,同薬の平均使用量は7.5mg/日で,入院・死亡のイベント抑制には用量依存性の傾向があります。私自身は入院中に7.5mg/日まで増量し,その後外来で20mg/日を目標に増量しています。
わが国では脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)ガイド下のβ遮断薬導入が普及し始めており,BNP>200pg/mLが心不全症状発現の 1 つの目安となります。
日本人におけるβ遮断薬の至適用量や増量スピードなどについては,現在進行中のJ-CHF試験で明確になると期待されます。
一方,CORONA試験では,結局スタチンには心不全悪化によるイベント抑制効果は認められませんでした。
新薬に関して,わが国でも心性浮腫治療薬として,バソプレシン受容体拮抗薬tolvaptanの第III相試験が進行中です。
また急性増悪に対しては,心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の使用が普及してきています。
一方,収縮非同期性を呈する重症慢性心不全患者の治療として,両心室ペーシングを用いた心臓再同期療法(CRT)や,CRT機能付き植え込み型除細動器の使用が拡がりを見せています。
レスポンダーと,20~30%を占める非レスポンダーをどう見分けていくかが今後の課題です。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41140981&year=2008
出典 Medical Triibune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社
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