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「中膜の肥厚」は降圧で改善するが,「内膜の動脈硬化」の改善にはAIIの抑制が必要
光山
MOREの成績で最も印象的なのは,両群ともIMTはほぼ同等の退縮を示したのに対して,プラーク容積はオルメサルタン群でプラークの退縮を示したということです。
この理由をどのように考えておられますか。
Stumpe
IMTを構成する「内膜の動脈硬化」と「中膜の肥厚」のうち,「内膜の動脈硬化」は高血圧のごく初期から発症しますが,これに最も大きく関与している血管作動物質はアンジオテンシンII(AII)です。
つまり,AIIによるAT1受容体の活性化により血管壁における酸化ストレスが高まり,これにより,血管内皮機能が障害されてプラークが形成される一方,酸化ストレスにより血管平滑筋細胞増殖能や血液凝固能が亢進して,動脈硬化が発症,進展します。
そして,動脈硬化の進展は,逆に高血圧の進展につながると考えられます。
一方,「中膜の肥厚」は高血圧とともに現われ,徐々に進展していきます。
したがって,「中膜の肥厚」は降圧により減少しますが,「内膜の動脈硬化」は降圧だけでは改善しません。
そこで,降圧に加えてオルメサルタンのようなAT1受容体の拮抗作用をも有する降圧薬が必要であると考えられます。
もちろん,こうした考え方は,現在のところは推測に過ぎないのですが,MOREの成績は,この推測が正しいことを明らかにしていると思っています。
光山
赤阪先生,いかがですか。
赤阪
Stumpe先生のおっしゃるように,IMTとプラークでは,進展の過程が異なり,IMTの進展には血圧の関与が大きく,プラークの進展には,むしろ酸化ストレスによる血管内皮機能障害などが大きく関わっているということなのでしょうね。
したがって,IMTの退縮ばかりでなく,プラークの退縮にはオルメサルタンの降圧効果とともにpleiotropic effectも関与している可能性があると思います。
光山
ARBのpleiotropic effectでは,赤阪先生は動物で一酸化窒素(NO)の合成に及ぼす作用を検討しておられますね。
赤阪
NZW家兎に低用量および高用量のAIIを注入することで実験的な高血圧モデルを作製し,NO合成能の変化について,大動脈にNOセンサーの付いたカテーテルを挿入し検討しました。
その結果,AIIの注入により用量依存性にNO合成能は低下しますが,ARBおよび活性酸素抑制薬テンポールを加えるとNO合成は改善します。
この結果は,高血圧による血管内皮機能障害に,AIIによるAT1受容体の活性化によりもたらされる活性酸素の産生,および,それによる酸化ストレスがいかに関与しているか,とARBがその酸化ストレスを減弱する効果があることを示す 1 つの証拠であると考えられます。
光山
ARBにはさまざまなpleiotropic effectが認められていますが,動脈硬化に及ぼす影響ということでは,やはり,酸化ストレスとそれによる血管内皮機能障害の抑制が最も強く貢献しているのでしょうか。
Stumpe
ARBのpleiotropic effectとしてはほかにも種々の炎症性サイトカインの発現抑制や,ノルアドレナリンやノルエピネフリン,エンドセリン,アルドステロンなどの活性化の抑制が知られています。
これらの作用はすべて動脈硬化の抑制に関わっていると思いますが,現在,明らかになっているところでは,やはり酸化ストレスによる血管内皮機能障害の抑制は大きいと思われます。
期待される,より大規模な臨床試験の実施によるMOREの成績の確認
光山
MOREの成績では,オルメサルタン群で時間依存性にプラークの退縮が認められた点も注目されます。
これは,オルメサルタン投与が長期間にわたるほど心血管系イベントの抑制が期待できると考えていいのでしょうか。
Stumpe
MOREでは時間依存性にプラーク容積が減少しています。 しかし,ベースライン時のプラーク容積が大きい症例ほどプラークの退縮は大きくなっていることから,オルメサルタンが時間依存性にプラークをゼロにまで退縮させるかどうかというのは,さらに検討が必要でしょう。
また,例えプラークがゼロになったとしても,それで心血管系イベントの発生がどの程度抑制できるかという点については,別の検討事項に属すると考えられます。
いずれにしても,MOREはオルメサルタンによる動脈硬化の退縮を,プラーク容積の変化を指標として検討した最初の臨床試験です。
ですから,MOREで示唆された成績は,今後のより大規模な臨床試験によって確認される必要があると考えています。
そうした試験の積み重ねによって,オルメサルタンによる動脈硬化の退縮が,心血管系イベントの抑制に影響するかも明らかになってくるのではないでしょうか。
光山
近い将来,MOREの成績を裏付けるためにも,大規模な臨床試験が実施されることを望んでいます。
Medical Tribune 2008.4.3
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
pleiotropic effectという言葉はスタチン系薬剤の専売特許のように思っていましたが、いつの間にやらARBに対しても使われるようになったようです。 私自身、記憶間違いでなければARBでpleiotropic effectが用いられるのを見るのは初めてだと思うのですが。
ところが・・・・・「ARB pleiotropic effect」でググッてみると、そんなことなかったです。 私の勉強不足でした。
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) があります。
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