| 日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
| 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
| 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 |
| 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 |
| 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
< JAPAN-ACS | メイン | 循環器健診への課題 >
展望
ステントグラフト治療の普及に向け実施基準および調査体制の確立を
最近,わが国でも外科的人工血管置換術が不要なステントグラフトを用いた血管内治療が保険適用となり,低侵襲治療として注目されている。
新技術の導入に当たり,有効かつ安全性が確立された治療水準の維持・普及が求められるため,その使用承認とともに関連11医学会(表1)合同のステントグラフト実施基準管理委員会(委員長=東京医科大学血管外科・重松宏教授)が設置され,実施施設,実施医および指導医に関する基準審査が開始された。

企業製造のステントグラフトを用いた治療は,この基準に合格した医師および施設に限って行われている。
さらに,全例調査を行って治療成績を追跡し,必要に応じて情報公開も行う。
同委員会の副委員長兼事務局長を務める戸田中央総合病院(埼玉県)の石丸新副院長(同院血管内治療センター長)は「日々進歩する新技術のダイナミズムを的確に捉えた実施基準および調査体制の確立が必要である」と強調する。
同副院長にステントグラフト治療の在り方,同管理委員会の取り組みなどについて聞いた。
わが国への本格導入は2007年以降
加齢および動脈硬化性変性を原因とした大動脈瘤の患者数は,人口10万人当たり年間10~15人と言われ,わが国では今後さらに増加するものと推測されている。
これまで,治療の第一選択は大動脈瘤の破裂を防ぐことを目的とした外科的人工血管置換術であり,ほぼ50年の歴史がある。
腹部では動脈瘤の直径が60mm(通常の直径20mmの約3倍)で,年間当たりの破裂率が20%,50mmでは2~5%,40mm以下だと1%程度となり,胸部でも動脈瘤の直径60mm以上で破裂リスクが格段に高まることから,破裂予防を目的として外科手術が行われてきた。
適応の見極めは,腹部では動脈瘤直径50mm以上,胸部では手術に伴う合併症のリスクを考慮して60mm以上とされる。
ただし,外科手術は血流遮断を伴うことで心臓や末梢循環への影響が大きく,術後合併症のリスクが高いこと(胸部では5~10%程度)などが問題であった。
最近,ステントグラフトを用いた血管内治療が低侵襲手技として注目されている。
ステントグラフトは人工血管にばね状の金属ステントを取り付けたもので,これを圧縮してカテーテルに挿入して動脈瘤部位まで運搬した後,ステントグラフトのみを押し出す。
人工血管は,ばねと患者の血圧により動脈の内側に張り付けられるので縫合は不要で,動脈瘤内には血圧がかからず破裂を防ぐ(図1)。

血流遮断がないので心臓への負担が少なく,末梢循環障害のリスクも低い。
開胸や開腹が必要な外科手術に比べ,入院期間は半分以下で,退院後の日常生活への支障が少ない。
これまでに数多くのステントグラフト治療を経験してきた石丸副院長は「なんらかの理由で外科手術を望まなかった患者にとって,ステントグラフトによる治療が普及し選択肢が増えることは福音であり,治療症例数は今後増えていくであろう」と言う。
施設,実施医,指導医の基準を設定
海外でステントグラフト治療が導入され始めたのは1995年ころで,2000年ころには腹部大動脈瘤に対する治療として普及し,2005年には安定した治療成績が得られるようになった。
また,同治療は2005年ころから胸部に対して本格的に導入された。
しかし,わが国では腹部大動脈瘤に対するステントグラフトの輸入承認が得られたのは2006年7月であり,胸部に関しては今年2月に承認された。
石丸副院長は「海外に比べると6年ほど遅れたが,わが国で広く普及させるには,治療の安全性と有効性を担保して導入直後から世界に通用する治療水準に到達させることが課題である」と強調する。
そこで,わが国において企業製造ステントグラフトの輸入承認を控えた2006年5月31日,血管内治療に関連する10医学会により腹部大動脈瘤治療用ステントグラフトに関する実施施設,実施医および指導医を特定するための「腹部大動脈瘤ステントグラフト実施基準」が作成された。
同年12月21日には導入が考えられる胸部大動脈瘤ステントグラフトにも対応するため,日本胸部外科学会を加えた関連11医学会で構成する「ステントグラフト実施基準管理委員会」が設立された。
腹部大動脈瘤ステントグラフトの実施施設の条件として,
(1)Digital Subtraction Angiography装置が常設された手術室または血管撮影室で大血管手術が可能な体制
(2)腹部大動脈瘤10例を含む血管外科手術や血管内治療を年間30例以上施行している実績
(3)腹部大動脈瘤破裂の手術を3例以上経験している常勤外科医の迅速な協力が得られる
--- が基準とされている。
指導医の基準としては,
(1)術者あるいは第1助手として30例以上のステントグラフト(自作を含む)内挿術の経験
(2)使用するステントグラフトに関する研修プログラムの受講(3)術者として指導対象となるステントグラフト治療の10例以上の経験(ただし,既に他機種の指導医証明書を取得している者は5例以上)
(4)学会資格として日本心血管インターベンション学会認定医,日本心血管カテーテル治療学会認定医,日本インターベンショナルラジオロジー学会専門医,心臓血管外科専門医,心臓血管外科専門医が在籍する施設の外科専門医
--- のいずれかとなっている。
実施医の基準としては,
(1)腸骨動脈領域における血管内治療の20例以上の経験(2)腹部大動脈・腸骨動脈瘤の手術あるいはステントグラフト内挿術の術者または助手として10例以上の経験
(3)指導医のもとに術者として内挿術2例に成功していること
--- が条件となっている。
また,付帯事項として,最初の10例は指導医により画像診断に基づいた適応判定やデバイス選択などの助言を受けることとしている。
2007年12月に決定された胸部大動脈瘤ステントグラフト実施基準については,腹部を対象とした場合との違いとして,施設基準では外科医の協力体制として,胸部大動脈瘤破裂あるいは急性大動脈瘤解離に対する術者経験が5例以上ある常勤外科専門医としている(表2)。

また,指導医の基準としては,胸部ステントグラフト内挿術20例以上の経験としている。
実施医の基準としては,
(1)胸部大動脈瘤治療の術者または助手として10例以上の経験
(2)ステントグラフト内挿術の術者として腹部大動脈瘤10例以上あるいは胸部大動脈瘤5例以上の経験
(3)腹部大動脈・腸骨大動脈領域の外科手術者として5例以上の経験
(4)弓部分枝動脈の外科手術または血管内治療の術者として5例以上の経験((3),(4)は術者として経験がない場合は経験を有する医師の直接参加が得られること)
--- となっている。
2007年12月現在,実施基準の審査に合格した施設は150施設,実施医は55人となっている。
全例調査で治療成績の現状や変化を捉える
同ステントグラフト実施基準では,実施施設に追跡調査データの登録を義務付けており,同委員会では調査データを解析し,必要に応じてデータを公開,さらに解析結果をもとに3年ごとの基準見直しを予定している。
石丸副院長は「追跡調査により,医療現場で大動脈瘤に対するステントグラフト治療が安全に行われているかどうかを検証し,これを公開して知識の共有を図るとともに,今後の治療技術および成績の向上に役立ててもらいたい」としている。
追跡調査は術前の診断や,術直後から6か月,1~5年の治療成績をインターネットによる登録方式で収集する(図2)。
2007年は500例を超える集計成績が見込まれている。
ステントグラフト治療は,わが国に導入されてから歴史が浅いだけに,安全確実に普及させることが喫緊の課題である。そのためには実施基準を整備する一方,治療成績の全例調査を実施し,リアルタイムに治療の現状や変化を捉えて治療の安全性を確立することが必要という。
同副院長は「ステントグラフト治療が広がりを見せるなか,わが国から世界に向けてデータを発信できる日も近い」としている。
Medical Tribune 2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41120511&year=2008

杉 英治「ストックホルム メーラレン湖の午後」 油彩画 http://page3.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c170032541?u=;artfolio11
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) があります。
固定リンク | コメント (0) | トラックバック (3)
コメント
コメントはまだありません。コメントを書く