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第55回日本心臓病学会学術集会ランチョンセミナー
「日本人の狭心症/診断・治療の最前線」の記事で勉強しました。
特別企画
第55回日本心臓病学会学術集会ランチョンセミナー
日本人の狭心症/診断・治療の最前線
座長:奥村 謙 氏 (弘前大学医学部 循環器・呼吸器・腎臓内科 教授)
座長の言葉
日本人の狭心症を考える上で,「冠攣縮」は極めて重要な病態である。
冠攣縮の成因として,内皮機能障害などが指摘されているが,依然として不明な点が多い。
診断は病歴と発作時の心電図所見によりなされるが,自然発作が捉えられない場合は冠動脈造影検査,冠攣縮誘発試験によって確定される。
ただし個々の例で病態(冠攣縮)の診断が適切に行われているかどうかについては検証も必要であろう。 治療法としてはCa拮抗薬の有用性が確立されているが,一部には難治性の症例も認められ,突然死の報告もあり,今後も検討が必要であろう。
そこで本日は,末田先生からわが国の冠攣縮の診断・治療の実態について明らかにしていただくとともに,土肥先生には内皮機能改善という観点から長時間作用型Ca拮抗薬の役割について解説いただく。
講演1
冠攣縮性狭心症の診断・治療の実際について ― 冠攣縮の灯を消さないように!
(済生会西条病院 副院長) 末田 章三 氏
日本人の冠攣縮の発現頻度は欧米人の3倍
日本人は欧米人に比べ冠攣縮発現頻度が高いと言われている。
われわれが冠動脈造影施行例に対し,アセチルコリン(ACh)よる冠攣縮誘発負荷試験を実施した結果でも,日本人における発現率は36.5%(186/509例)であった。
これは,欧米人で報告されている12.3%(134/1,089例)と比べ3倍高値である。
さらに狭心症患者では,日本人の安静狭心症例の66.9%(83/124例)に冠攣縮が誘発され,労作性狭心症,安静兼労作性狭心症のいずれにおいても,日本人では高頻度に認められた(図1)。

つまり,日本人の虚血性心疾患,特に狭心症においては,欧米人と病態そのものが異なっていると同時に,日本人の虚血性心疾患の成因において冠攣縮はきわめて重要な意味をもつと言える。
問題は冠攣縮性狭心症が見逃されていること
問題は,日本人では冠攣縮が重要,かつ高頻度で認められる病態であるにもかかわらず,その診断法となる冠攣縮誘発負荷試験が必ずしも十分に行われていないという現状である。
われわれは実態把握のために,日本循環器学会教育施設および教育関連施設の計1,177施設を対象にアンケート調査を実施。 回答が得られた208施設の結果,2005年度における冠攣縮誘発負荷試験施行総数は,未施行施設が24%(50施設),10例未満の施設が30%(62施設)と,年間総数が10例に満たない施設が約半数を占めた。
これらの施設の2005年の検査総数は,CAGが10万回以上,PCIが約3万5千回施行されていたのに対し,ACh負荷試験は2,509回にとどまっていた。
回答のなかった969施設も考慮すると,冠攣縮誘発負荷試験の施行率はきわめて低いものと思われる。
ここで私が冠攣縮誘発負荷試験施行率の低さを問題にする理由は,冠攣縮は実際には多く存在するにもかかわらず,見逃されている恐れがあるためである。
本調査から得られた施設毎の冠攣縮誘発負荷試験施行総数と冠攣縮陽性例数の関係を解析すると,両者の間にはっきりとした正の相関が認められた。
積極的に施行すれば冠攣縮が発見され,施行しなければ発見されないと解釈できる。 事実,冠攣縮誘発負荷試験「未施行」の50施設と「施行」の158施設を比較したところ,冠攣縮性狭心症の有病率は「施行」施設では15.6%であったのに対し,「未施行」施設では4.2%と有意に少なかった。
つまり,冠攣縮誘発負荷試験が施行されない結果として,冠攣縮が見逃されている可能性が高いと考えられる。
このほかにもアンケート調査から,いくつかの問題点が浮かび上がった。
冠攣縮誘発に用いる薬剤がACh,エルゴノビンと異なることに加え,その投与量・投与時間,ならびに診断基準にもばらつきのあることが明らかになったのである。
Ca拮抗薬の冠攣縮抑制作用に差がある可能性も
さらに治療方針もさまざまで,十分な認識の下に行われていない現状が明らかになった。
一般に,冠攣縮性狭心症に対してはCa拮抗薬の投与が原則となるが,例えば「胸痛などの訴えはないが,典型的な冠攣縮が誘発された場合,Ca拮抗薬を処方しますか」という問いに対し,71%が「処方する」と回答。しかし21%が「時と場合による」,1%が「処方しない」という回答であった(無回答7%)。
また,「冠攣縮性狭心症例で,投薬にて症状が消失すればCa拮抗薬を中止しますか」との問いに対して,「一生服薬を指導」と回答したのは44%で,「患者からの希望があれば減量」あるいは「中止」するという回答も多くを占めた(図2)。

Ca拮抗薬の服用を中止すると,不幸な転帰をとる恐れもある。
前述のように日本人は冠攣縮が多いため,虚血性心疾患に対する第一選択薬も欧米とは異なってくる。
欧米ではRA系抑制薬やβ遮断薬がガイドラインでも推奨されている。
しかしながら,冠攣縮の関与が多いわが国において,欧米の治療法をそのまま当てはめることはできないのではないかと考える。
そのことを如実に示したのが,わが国で実施されたJBCMI試験およびJMIC-B試験であろう。
JBCMI試験では,急性心筋梗塞後の患者における冠攣縮性狭心症の発症や心不全の発症を,Ca拮抗薬はβ遮断薬に比し有意に抑制した。
またJMIC-B試験では,冠動脈疾患合併高血圧患者の心事故の発症を,長時間作用型ニフェジピン製剤はACE阻害薬と同等に抑制し,心筋梗塞既往例に至っては,狭心症の発症および増悪を有意に抑制した。
欧米のエビデンスに追従するあまり,日本人の病態特性を軽視してはならないことを戒めた,重要なエビデンスだと考える。
さらに,冠攣縮性狭心症に対するCa拮抗薬の治療効果にも薬剤間で異なることも忘れてはならない。
例えばジヒドロピリジン(DHP)系Ca拮抗薬で,「狭心症」を適応症としているのは6成分,さらに「異型狭心症」まで適応を有しているのはニフェジピンとニソルジピンの2成分のみである(表1)。

冠攣縮抑制作用には,Ca拮抗薬間に差異があることも示唆されており,どのCa拮抗薬がわが国の冠攣縮性狭心症の治療薬として適切なのかも明確にする必要がある。
このように冠攣縮性狭心症に対して標準的な診断・治療法が確立していない現状を,私は永年にわたり疑問視してきた。
そしてようやく,日本循環器学会で「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」の作成が進められることになったことは非常に喜ばしく思っている。
冠攣縮はさまざまな循環器疾患の成因になる,決して軽視してはならない病態
最後に,私が冠攣縮に対して問題視するもう1つの理由を述べたい。
それは,冠攣縮は異型狭心症のみならず,突然死,重篤な不整脈,心筋梗塞の成因にも深く関与する,多彩な臨床像をもつ病態だということである。
その1例が「冠攣縮性心不全」である。
慢性心不全患者で冠攣縮誘発負荷試験を施行した31例を検討したところ,10例(32.3%)が誘発陽性で,そのうち9例は多枝で冠攣縮が誘発されていた。 冠攣縮による断続的な虚血が心筋障害をもたらし,心不全に至ったと考えられる。
冠攣縮は決して過去の疾患ではない。
心不全や突然死など,さまざまな循環器疾患の基盤になり得ることを決して忘れてはならない。
インターベンションに重きをおかれる時代ではあるが,冠攣縮の灯を消さないためにも,次世代を担う循環器科医に冠攣縮の重要性を改めて伝えていく必要性を強く感じている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41120281&year=2008
Medical Tribune 2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社

日本美術倶楽部〓 阪本 勇 「異彩」 写真
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v46552307?u=edelcoltd
<参考サイト>
誘発冠攣縮
http://blog.m3.com/reed/20080223/1
冠攣縮(冠スパスム)
http://blog.m3.com/reed/20071002/1
異型狭心症(冠血管攣縮性狭心症)でカルシウム拮抗剤の中止は可能か
http://www.hazamaiin.com/ebm_variant_angina_and_calcium_antagonist_full.htm
比較的罹病歴の長い異型狭心症の患者を対象としたCa拮抗剤のwithdrawal studyは(薬剤を中断した場合,疾患の予後などがどのようになるか検討した研究),見つからなかった.異型狭心症の長期予後をみたコホート研究では,Ca拮抗剤内服者で長期予後が良いと言う結果であった.異型狭心症急性期にジルチアゼムと偽薬を比較した研究では,ジルチアゼムにおいて狭心症エピソードの減少を認めた(しかも偽薬群では心筋梗塞が発症している).
(興味深く読ませていただきました。PECOの概念をとりいれて検討しています。)
以下はPE(I)CO関連サイトです。
PECOを知らずしてEBMは語れない
http://rockymuku.sakura.ne.jp/EBM/PECO.pdf
EBMにおけるエビデンスの吟味
http://www.lifescience.jp/ebm/opinion/200308/index.html
EBMとは
http://www.ebmedu.umin.jp/ebm1/ebm_1.html
EBMと実地医療
http://www.hazamaiin.com/publications_EBM_pracical_medicine.html
EBMと診療ガイドライン
http://muto.homeip.net/backup/class/2006/20061205.pdf
「臨床現場におけるEBMの実践」
http://www.hhk.jp/info/kenkyu/12nitijyo.htm
EBMの実践
http://www.ircme.u-tokyo.ac.jp/afghanistan/pdf12/6-4-1-8.pdf
<コメント>
文中に
『「異型狭心症」まで適応を有しているのはニフェジピンとニソルジピンの2成分のみである』
とあったので、とりあえずジルチゼムとベニジピンの添付文書を見てみました。
ジルチゼム 狭心症・異型狭心症
ベニジピン 狭心症
少なくともジルチアゼムは適応をとっています。
ご存知のように薬剤の適応は学問的なものでもなく製薬メーカーの戦略や思惑があるのが常識です。
異型狭心症の治療の日本での黎明期にニフェジピン派のE先生とジルチアゼム派のY先生が丁々発止をやったのを懐かしく思い出します。
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) があります。
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