戯れ言たれる侏儒
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< 心腎連関 その2(2/2) | メイン | 予防的PCIの多用に厳しい批判 >

JSAPとCOURAGE

戯れ言たれる侏儒 / 2008.03.22 00:11 / 推薦数 : 1

国内では低リスク安定CADに対するPCIはいわば日常茶飯事に行われているのが現状です(と思われます)。     
PCIを施行する前に十分な内科的管理を行うのはもちろんです。 

しかし、この「低リスク安定CADに対するPCI」の意義については意外ときちんとしたエビデンスやガイドラインは今まであまりなかったようです。                     

きょうはそのあたりについて勉強しました。         

内容は、国内のJSAPと国外のCOURAGEの紹介と解説です。                        
 

展望
低リスク安定冠動脈疾患患者の治療はどうあるべきか
JSAPとCOURAGEの結果を踏まえて
安定冠動脈疾患(CAD)患者に対して,果たしてステント時代の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と薬物療法のどちらが初期治療として適切か―。

この課題を日本と北米でそれぞれ検討した2件の臨床試験,Japanese Stable Angina Pectoris(JSAP)とClinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation(COURAGE)の結果が,昨年相次いで報告された。

それによると,両試験とも両群の総死亡に有意差はなかったものの,心血管イベント抑制効果は,低リスク症例を対象としたJSAPではPCI療法(初期治療としてPCIと薬物療法を同時にスタートする治療法)で有意に優れたのに対し,高リスク症例を含めたCOURAGEでは両群に有意差は認められず,相反する結果となった。

そこで,背景因子の相違なども踏まえたうえで,両試験の結果をどのように解釈し,わが国の安定CAD患者の大多数を占める低リスク症例の治療にどう生かすべきか,JSAPの主任研究者を務めた兵庫県立尼崎病院の藤原久義院長に聞いた。

 

JSAP
低リスク安定CADへのPCI療法の優位性が明らかに
安定CADでは,高リスクの左冠動脈主幹部,左前下行枝分岐部( 5 mm以内),3 枝病変などは20%ほどにすぎず,低リスク患者が約80%を占める。
安定CAD患者の治療方針について,欧米のガイドラインでは
高リスク症例には冠動脈バイパス術(CABG)を推奨し,低リスク症例にはバルーン血管形成術(POBA)時代のエビデンスをもとに,初期治療として薬物療法を実施し,コントロール不良の場合にのみPCIまたはCABGを施行する薬物先行療法を推奨している。

これに対して,わが国のガイドラインでは安定CAD患者に対する明確な指針は示されていない。

しかし,大多数の施設で低リスクの安定CAD患者に対して,PCIを薬物療法と同時に併用するPCI療法を選択しているのが現状だ。

そこで,「日本人低リスク安定CAD患者において,PCI療法と薬物先行療法のどちらが予後改善に優れるか,前向きランダム化試験によりエビデンスを構築したいと考えた」と,藤原院長は同試験実施の経緯を説明する。

昨年の日本循環器学会ならびにアジア太平洋心臓病学会で発表されたJSAPには,全国から78施設が参加〔Fujiwara H, et al. Inter J Cardiol 2007; 122(suppl): 7〕。

低リスク安定CAD患者384例を,
(1)PCI療法(PCI)群
(2)薬物先行療法群

―の 2 群にランダムに割り付け,平均3.3年間追跡した。
PCI群の大半には,ベアメタルステントが留置された。

追跡の結果,症状コントロール不良のためPCI/CABGの追加を要したのは,PCI群25.0%,薬物先行療法群36.6%とPCI群で有意に低かった(これらの症例には待機的PCI/CABGがなされ,以下の評価では除外されている)。
   
1 次評価項目は,
(1)総死亡
(2)総死亡+急性冠症候群(ACS;急性心筋梗塞および入院を要する不安定狭心症)
(3)総死亡+ACS+脳血管障害
(4)総死亡+ACS+脳血管障害+再入院―の 4 項目。

総死亡についてはPCI群2.93%対薬物先行療法群3.88%,ハザード比(HR)0.865で,両群に有意差は認められなかった。

しかし,「総死亡+ACS」はPCI群7.92%対薬物先行療法群14.88%と, 52.6%の有意(P=0.021)なリスク減少を示し(図 1),「総死亡+ACS+脳血管障害」,「総死亡+ACS+脳血管障害+再入院」も,それぞれ45.9%(P=0.045),33.6%(P=0.040)の有意なリスク減少を示した()。


 
PCI群のイベント抑制には, ACSの減少(5.02%対11.71%,P=0.012)が寄与していた。

また,狭心症症状の改善も,治療開始 1 か月後から 3 年後まで,一貫してPCI群で有意に勝った。

 

COURAGE
PCI群と薬物先行療法群の心血管イベント抑制に有意差なし
一方,北米50施設が参加したCOURAGEでは,安定CAD患者2,287例をPCI群と薬物先行療法群にランダムに割り付け,中央値で4.6年間追跡した。
 
その結果,追跡中に血行再建術の追加を要したのは,PCI群21.1%対薬物先行療法群32.6%(P<0.001)。

1次評価項目の「総死亡+非致死性心筋梗塞」はPCI群19.0%対薬物先行療法群18.5%,HR1.05で有意差は認められなかった(図 2)。

 

2次評価項目の「総死亡+非致死性心筋梗塞/脳卒中」(PCI群20.0%対薬物先行療法群19.5%),入院を要するACS(PCI群12.4%対薬物先行療法群11.8%)についても,両群に有意差はなかった。

また,総死亡もPCI群7.6%対薬物先行療法群8.3%と,やはり両群に有意差はなかった。

PCI群と薬物先行療法群のイベント抑制効果に有意差がないとのCOURAGEの結果は,Katritsisらの5,000例以上を対象とするメタ解析の結果とも一致するものである。
 
ただし,COURAGEでの狭心症の発症改善率は一貫してPCI群で高かった(1,3 年後には有意であったが, 5 年後は有意には至らなかった)。

このことは,昨秋の米国心臓協会(AHA)でのSPECTによるCOURAGEのサブスタディで,PCI群は薬物先行療法群に比べて,虚血の軽減と狭心症の改善に効果的であるという報告と一致する。

JSAPでは登録時の責任冠動脈病変に起因する不安定狭心症が減少
では,両試験の結果に乖離が生じた理由はどう解釈できるのか。

まず,両試験の対象を比較すると,JSAPが低リスクの安定狭心症のみを対象としたのに対して,COURAGEでは高リスク症例も含むという相違がある。

しかし,通常の解釈からは,高リスク症例を含むほうが,むしろPCIの有効性が出やすく,COURAGEで両群に有意差がない点を説明できないという。
 
「COURAGEのデータを見ると,ACSには心筋梗塞は含まれず,不安定狭心症のみを指していると思われる。
JSAPの薬物先行療法群における総死亡とACS(心筋梗塞をも含む)発生率は約15%と,COURAGEにおける「総死亡+心筋梗塞+ACS」27.0%の 2分の1 強であり,日本人の治療成績として妥当なデータだ。

一方,PCI療法ではCOURAGEの27.6%に対し,JSAPでは約 8 %と 3分の1 ~ 4 分の1 にすぎず,明らかに低い。したがって,なぜJSAPでPCI群のACS発生率が低かったかが焦点となる」と藤原院長()。
 
ACSは,責任冠動脈病変の進展により生じる。
JSAPで新規に発生したACSの責任冠動脈は,

(1) JSAP登録時にPCIの対象となる有意狭窄病変を持つ冠動脈部位
(2) JSAP登録時には有意狭窄がなく,PCIの対象とならなかった冠動脈部位
―に分かれる。
 
JSAPでは,ACS発生時に全例で冠動脈造影(CAG)を行っており,新規ACSの責任冠動脈病変を特定している。
その解析では薬物先行療法群と比べて,PCI群では
(1)由来のACSは有意に減少したが,(2)由来のACSは同様であった。
したがって,PCI群によるACSの減少は,(1)に起因する不安定狭心症の減少を反映したものであることが明らかになった。
つまり,初期病変の狭窄をPCIできちんとケアできたために,その後不安定狭心症が生じなかったわけだ。
 
これに対してCOURAGEでは,責任冠動脈病変のデータがないにもかかわらず,ACSの責任冠動脈は(1)ではなく,(2)であると推論している。

PCIの手技的な差を反映か
藤原院長は「JSAPは,ホストコンピュータを用いて対象のランダム化を実施し,ACSの診断も評価委員会が判定を行っており,主治医の主観が入ることはなく信頼性は高い。

したがって,両試験で乖離が生じた理由としては,日本のPCIテクニックが優れている可能性が考えられる。

この根拠としては,PCI 4 か月後のACS発生率がJSAPでは 1 %であるのに対し,COURAGEでは約 7 %(入院を要するACS+心筋梗塞,Kaplan-Meier曲線より)と大きな開きがあることが挙げられる。

この大きな差は,JSAPが低リスクCADのみであるのに対し,COURAGEが高リスクCADも含むという対象患者の違いだけでは説明不能だ。

むしろわが国では,通常PCIは血管内超音波法(IVUS)ガイド下でより安全に行われているのに対し,欧米ではそうではないなどのPCI施行方法の違いが主因と思われる」と指摘する。
 

両試験ともベアメタルステント時代の追跡であるが,薬剤溶出ステント(DES)を用いたとしても, COURAGEの著者らが示唆するように,(2)由来のACS発生が主流とすれば,結果が変わるとは考えにくい。
 
しかし,図 1 のJSAPのKaplan-Meier曲線が 1相性で初期からPCI群が優れ,経過とともに差が大きくなるのと異なり,図 2 のCOURAGEのPCI群の曲線は 2 相性を示す。

すなわち,薬物先行療法群と比べて,PCI群ではPCI直後からACSの発生が多発して,曲線は急激に下降する。

一方,その後は逆にACS発生は減少し,数年後には薬物先行療法群と有意差はなくなっている。

このことは,PCI群での問題は初期のACS発生であり,DESを用いてこれを減少させることができれば,JSAPと同様にPCI群の予後が良好である可能性を意味する。
 
同院長は「JSAPの結果からは,
わが国で主流となっている低リスク安定CAD患者に対するPCI先行療法の妥当性が証明されたと言える。

今回のJSAPの結果も踏まえ,現在,私が班長として『冠動脈疾患インターベンション治療の適応ガイドライン』の改訂作業を進めており,来年 3 月に発表する予定だ」と話している。
JSAPの詳細は,今月開かれる第72回日本循環器学会の「冠循環談話会」でも紹介されることになっている。

J-SAP Study
http://poppy.ac/jsap/contents/protocol.html
"短期予後とコスト"(JS-SAP Study)と
"長期予後"(JL-SAP Study)が紹介されています。
http://www.ebm-library.jp/circ/doc_japan/J0006.html

COURAGE
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002562.html
PCI は安定狭心症患者の症状の緩和(quality of life)と,ST上昇あるいは非ST上昇ACS の予後(quantity of life)改善効果が証明されている。

しかし,無症候性を含めた安定狭心症症例の予後改善効果には否定的な報告が多く,これは薬剤溶出性ステント(DES) が主流となった現在においても何ら変わってはいない。
COURAGE trial はこれまでの同様の試験に比べて圧倒的な症例数で行われたマルチセンター試験で,その信憑性は高い。

症例の内訳を見ても,低左心機能症例が除外されていることと男性の比率が高い以外は,ほぼリアルワールドを反映していると考えられる。

PCI 群では94%にステント(ほとんどBMS)が植え込まれ,薬物療法ではLDL-C に対するアグレッシブな治療が特徴である。

血圧・糖尿病のコントロールも良好で,厳重な薬物療法下においてはPCI はsecondary preventionの具にはならずpreventive intervention は意味がない,というのがメッセージである。

PCI のような局所治療では冠動脈全体に起こりえるプラークの不安定化やそこから生じるACSを予防することはできず,従って心臓死や心筋梗塞の発症を抑制できない,ということであろう。

最近はマルチスライスCT(MSCT)やMRI 等での非侵襲的な冠動脈病変の評価に注目が集まっているが,狭窄性病変だけではなくプラークの性状評価の重要性を改めて認識させられる。(中野・中村・永井)COURAGE研究サブ解析
http://blog.m3.com/reed/20071218/COURAGE_

Medical  Tribune 2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)

 

 

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