今日明日「心腎連関」の復習(?)をしてみます。特別企画
鼎談 心腎連関
臓器障害の連続性を考慮した降圧治療
糸球体濾過量(GFR)の低下や蛋白尿,微量アルブミン尿の存在などによって診断される慢性腎臓病(CKD)が,心血管系疾患(CVD)の独立した危険因子であることが明らかになり,CVDの発症抑制および早期治療の必要性が提唱されている。
CVD発症を包括的に抑制するには,高血圧治療においてもCKDを視野に入れた治療が必要であり,AT1受容体拮抗薬(ARB)オルメサルタン メドキソミル[以下オルメサルタン](オルメテックR)にはその役割が期待される。
そこで,CKDを念頭に置いた降圧治療におけるオルメサルタンの効果ならびに可能性について,腎臓・高血圧および心臓を専門とする3名の先生方にお話しいただいた。伊藤 貞嘉 氏(司会) 東北大学大学院医学系研究科腎・高血圧・内分泌学分野教授
Luis M. Ruilope 氏 Head of the Hypertension Unit, 12 de Octubre Hospital(マドリード,スペイン)
筒井 裕之 氏 北海道大学大学院医学系研究科循環病態内科学教授
"Cardio-renal Continuum(心腎連関)"の3段階
伊藤
心臓と腎臓が機能的に密接に関連していることは従来より
知られていましたが,CKDがCVDの独立した危険因子であることが近年明らかにされてきました。
本日はこの心腎連関について,お話を伺いたいと思います。Ruilope先生は心腎連関をどのように位置づけていらっしゃいますか。Ruilope
ハーバード大学のVictor Dzau先生が1991年に提唱した"Cardiovascular(CV)Continuum"(心血管系疾患の連続性)という概念は,循環器領域の先生方には,広く知られています。
これは,CVDには,危険因子を有するのみの段階から始まって,動脈硬化の進展,心筋梗塞(MI),さらには心不全から死に至る連続性があることを示しています。
その連続性の研究において新たに明らかにされたのがCKDの関与です。"CV Continuum"は今や"Cardio-renal Continuum(心腎連関)"と言い換えることができます(図1)。
"Cardio-renal Continuum"は大きく3つの段階に分けられます。
最初の段階は危険因子が認められるだけの時期であり,この段階で治療を開始すればその後の標的臓器障害を「予防」(PREVENT)することが可能です。
第2段階は無症候性に標的臓器障害が進展する時期であり,これをいかに「退縮」(REGRESS)させるかが重要な課題です。
この段階では,微量アルブミン尿,左室肥大,頸動脈肥厚などの標的臓器障害は治療により改善可能であり,それによってその後の心血管系イベントの発生を抑制できることが示されています。第3段階は動脈硬化が進展し, MI,脳卒中,一過性脳虚血発作,狭心症などイベントとして顕在化してくる時期で,心血管系イベントの発生を「予防」するというよりも,いかに「遅延」(RETARD)させるかがより現実的な課題です。 中等度のGFR低下で心血管系リスクは上昇
伊藤
筒井先生は心臓専門医のお立場から心腎連関をどのようにお考えですか。筒井
エビデンスとして特に興味深かったのが,MI後で左室機能が低下した患者を対象に実施されたVALIANT試験のサブ解析結果です。
従来,MI後の心血管系リスクは,冠動脈病変の重症度や左室機能などによって規定されることが知られてきましたが,それら以外にGFRが予後に大きな影響を与えることがわかり,中等度のGFR低下が心血管系リスクを上昇させることが明示されました。また,心不全患者でも同様の結果が得られています。
私たちが行っている慢性心不全の増悪による入院患者を対象とした登録観察研究(J-CARE-CARD)で,eGFR60mL/分/ 1.73m2未満の症例が約70%を占めていました。
GFRの低下している患者はより高齢で,心不全の原因として虚血性心疾患や高血圧が多く,合併症は高血圧,糖尿病,高尿酸血症のほか,脳卒中や貧血が多いことがわかりました。
そして,GFRの低下している群ほど院内死亡率が高く,GFRはその独立した危険因子であることが認められました。
また,GFRが低下している慢性心不全患者では長期予後が不良であることも報告されています。"CV Continuum"では,いずれの段階にもレニン・アンジオテンシン(RA)系が関与しているとされ,RA系を抑制するACE阻害薬やARBは腎保護作用を有すると言われています。
しかし,私たちのこの登録観察研究では,GFRが低下している患者ほどACE阻害薬やARBの使用率が低く,逆にCa拮抗薬の使用率が高くなっていました。伊藤
ACE阻害薬やARBが敬遠されたのは,GFRがさらに低下したり,血圧が下がり過ぎることが警戒されたのかもしれません。しかし,腎保護にとっては厳格な降圧とともにRA系の抑制がきわめて重要です。
ACE阻害薬やARBによるGFRの低下は腎臓にとって必ずしも悪いことではなく,腎機能の低下した症例においてRA系の抑制が有用であることが報告されています。
RA系抑制薬の投与によりGFRが一時的に低下しても腎機能の改善によりやがてGFRが回復することが考えられます。
したがって,腎臓内科専門医への相談が条件となりますが,むしろ腎機能低下例にこそRA系抑制薬を投与すべきであると考えています。 腎臓と心血管系の障害には"Strain Vessel"の傷害が共通―腎保護には厳格な降圧とRA系抑制の双方が不可欠伊藤腎臓には心拍出量の20%,毎分1Lの血液が流入し,糸球体内を50mmHgもの高い圧で灌流します。通常の毛細血管では10~15mmHgですから,それがいかに高い圧かがわかります。そのため,全身の血管に異常がある場合,最初に障害を受けるのは腎臓であり,微量アルブミン尿がCVDの予測因子と考えられています。しかし,アルブミンは正常の糸球体内皮細胞でも透過しますから,糸球体内皮細胞の異常によって微量アルブミン尿が生じているとは限りません。
微量アルブミン尿とCVDには糸球体内皮細胞の異常とは別の共通する病態があると考えています。腎臓では皮質と髄質の境界を走る弓状動脈から皮質表層に向かって多数の小葉間動脈が分岐しています。
これらの小葉間動脈から輸入細動脈が分枝して糸球体に至り,糸球体から輸出細動脈が出ていきます。
弓状動脈では全身血圧と同等のおよそ90mmHgの圧がかかっていますが,糸球体内圧は自動調節能によって50mmHgに維持されています。
このため,弓状動脈から近い傍髄質糸球体の輸入細動脈は大きな負荷を受け,かつ強く収縮しています。
高血圧になると傍髄質糸球体輸入細動脈がまず傷害され,自動調節能は破綻し,糸球体高血圧から過剰濾過となり尿中にアルブミンが漏出します。
一方,表在糸球体は小葉間動脈を介して徐々に圧力が低下するために傷害が遅くなるため,全体の尿中に出てくるアルブミンは少量となります。
私たちは傍髄質糸球体輸入細動脈のように高い圧を受け,緊張度の高い細血管を"Strain Vessel"と呼んでおり,腎臓と心血管系の障害に共通の病態だと考えています(図 2)。

こうした"Strain Vessel"は心臓や脳,眼などにも存在するため,同一条件下にあるこうした血管も同時に傷害を受けていくことが考えられます。 出典 Medical Tribune 2009.2.21版権 メディカル・トリビューン社
<参考 "Strain Vessel" >大脳辺縁系の出血
中大脳動脈の穿通枝からの出血で、頻度としては最も多い。全体の70%を占め、うち被核からが40%、視床からが30%である。この2ヶ所からの出血が多いのは、中大脳動脈という
太い動脈から急激に細い動脈に変化するからである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E5%86%85%E5%87%BA%E8%A1%80
<自遊時間>
あるブログを覗いてみました。
Back To The Street ふろむ診療所
(教授の定年退官記念祝賀会に思う)
http://blog.m3.com/BackToTheStreet/20080319/1
第二の医療崩壊と言われる医学界崩壊が直ぐそこまで来ているそうだ。僕が留学した時期に比べ、例えば生化学領域での研究者の数は33%にまで減少しているそうだ。恐らくほとんどの基礎医学領域の研究者は新臨床研修制度の開始後に半減していると思われ、産科や外科の減少率より悲惨だと思う。
もはや日本は学問で世界と戦うことを完全に諦めてしまったかのようだ。文系が支配するということは悲しいことだと思う。日本は二流国家へゴロゴロと転がっていっているようだ。
引用させていただいた先生にはおこわりのコメントを入れさせていただきました。
<コメント>
奇しく同じ日に同じようなことを私の別ブログで紹介させていただきました。
基礎研究者の壊滅が将来の医学界の崩壊に
http://wellfrog.exblog.jp/d2008-03-19
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。
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