戯れ言たれる侏儒
Profile

ブログ内検索

カレンダー

<< 2008/03 >>
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

新着コメント

新着トラックバック

トップページ

Doctors Blog

ブログの購読

<狭心症>
狭心症の成績をめぐって
注目される狭心症発症抑制の機序
藤田 
入院を要する狭心症のリスクがバルサルタン群で65%有意に減少した成績については,吉村先生はどうお考えですか?

吉村 
狭心症の予防には,血管のトーヌス(緊張)の減少が大事であると思います。
われわれは,重症の冠攣縮性狭心症患者において,高用量のCa拮抗薬投与でも発作が抑制できなかったものの,バルサルタン併用で発作を抑制できたという症例を経験しています。
JIKEI HEART Studyの狭心症の成績に関しては
謎が多いのですが,その機序の1つとしてCa拮抗薬とバルサルタンの併用が,血管トーヌスを低下させたためではないかと考えられます。
血管トーヌス改善には,バルサルタンのAT2受容体刺激によるNO増加作用なども関与しているのかもしれません。

森下 
ARBによる血管リモデリングの改善が,狭心症の減少に寄与した可能性も考えられますね。

吉村 
そう思います。しかし,両群のカプランマイヤー曲線をみると,バルサルタン群における狭心症の減少は試験初期から認められています。
血管リモデリングの効果発現にはある程度の時間を要しますから,私はより早期に効果が得られるという意味でもNO増加作用に注目しています。

室原 
ARBには抗炎症作用があることは間違いありません。こうした抗炎症作用がアテローム病変の進行を抑制したために,バルサルタン群で狭心症が減少した可能性があると思います。
また先程,吉村先生がご指摘になったバルサルタンとスタチンの併用が,プラークの安定化に大きく寄与したことも狭心症の減少に繋がったのではないかと思います。

Dahlof 
狭心症で入院した患者の全員に冠動脈造影が実施されています。
その結果,バルサルタン群ではアテローム硬化症の進行が少ない,つまり狭窄の進行抑制が多く認められたとの解析データが得られています。
ですから,アテローム硬化症に対するバルサルタンのベネフィットが存在したことは確かですが,冠攣縮抑制も含めたバルサルタンの多面的な作用が,狭心症の減少という結果を導いたのだと思います。

 

<解離性大動脈瘤>
解離性大動脈瘤の成績をめぐって
動物実験データを臨床的に裏付け
藤田 
バルサルタン群で解離性大動脈瘤のリスクが81%有意に減少したというデータも得られています。
このデータについて,森下先生,コメントをお願いします。

森下 
われわれは,ウィスターラットを使った腹部大動脈瘤モデル(elastase infused model)を作成し,同モデルにおいて高血圧が転写因子NFκBやetsの増加を介して腹部大動脈瘤を進展・増悪させることを報告しました(Shiraya S, et al:Hypertension 48:628-636, 2006)。
一方,われわれは同モデルを使った検討で,血圧に影響を与えない投与量のバルサルタン群が,非投与群よりも有意に腹部大動脈瘤のサイズを減少させるとのデータも得ています。
その作用機序には,バルサルタン投与によるMMP(matrix metalloproteinase)やNFκBなどの発現減少が関与していることが示唆されました。
以上の実験結果は,臨床においてバルサルタンが腹部大動脈瘤の抑制に有効であることを示唆するものですが,残念ながらわれわれは臨床データを持っていませんでした。
そうしたなかでJIKEI HEART Studyの成績が示されました。その臨床成績は,われわれの実験結果を裏付けるものであると言えます。

Dahlof 
バルサルタンの効果にAT2受容体刺激がどの程度関与したのか,是非知りたいと思います。
それは作用機序として,ACE阻害薬と大きく異なる点だからです。

森下 
大動脈瘤に対するACE阻害薬の効果をめぐっては賛否両論があります。私はむしろ,ARBのほうに大きな可能性があると考えています。
ARBがマルファン症候群の大動脈瘤を予防したとのマウスを用いた実験結果も報告されています(Habashi JP, et al:Science 312;117-121, 2006)。
ARBはNFκBの優れた阻害薬なのです。
一方,われわれは最近,NFκBが脳動脈瘤形成に関与していることも報告しました(Aoki T, et al:Circulation 116:2830-2840, 2007)。

藤田 
この領域における今後の研究の展開が期待されますね。<
<解離性大動脈瘤関連サイト>
NF-κB
http://en.wikipedia.org/wiki/NF-kB
 Because NF-κB controls many genes involved in inflammation, it is not surprising that NF-κB is found to be chronically active in many inflammatory diseases, such as inflammatory bowel disease, arthritis, sepsis, asthma, among others.
  
血管新生の制御に関する研究
http://www.med.tohoku.ac.jp/sugamuracoe/pp-sato.html
血管新生の過程で血管内皮細胞に発現する複数の転写因子の機能を解析し、なかでも転写因子ETS-1は血管新生を促進する多機能の重要な転写因子であること、 ETS-1の標的分子を同定するとともに、血管新生を制御するための分子標的となることを示した。
 
転写因子デコイ
http://www.cosmobio.co.jp/product/raku/00300002.asp
(商品として取引されています。高価あののびっくりします。研究にはお金がかかるわけです)
 

<高血圧>
高血圧治療におけるARBの位置付け
エビデンスのあるARBとともに進む
藤田 
それでは最後に,高血圧治療におけるARBの位置付けをめぐって討論したいと思います。
まず,JIKEI HEART Studyで得られたバルサルタンのエビデンスはARBのクラスエフェクトかどうか,この点についてはいかがですか?

吉村 
バルサルタンはAT2受容体の活性を高めることでNOを増加させると思います。
他のARBではこのAT2受容体作用に関する作用は異なりますので,そういう意味ではクラスエフェクトとすることは難しいかと思います。

室原 
バルサルタンの効果の一部はARBのクラスエフェクトですが,一部はバルサルタンの持つ独自のドラッグエフェクトだと言えると思います。
最近,ARBを含めた各種降圧薬のなかでも,唯一バルサルタンがアルツハイマー病のマウスモデルにおいて脳のβアミロイド蛋白値を低下させ,空間学習能力を改善させたことが報告されています(Wang J, et al:J Clin Invest 117:3393-3402, 2007)。

Dahlof 
非常に興味あるデータです。

藤田 
高齢者高血圧患者を対象とした臨床試験において,バルサルタンがACE阻害薬よりも有意に認知機能を改善したことが既に報告されていますね(Fogari R, et al:Eur J Clin Pharmacol 59:863-868, 2004)。

Dahlof 
われわれはクラスエフェクトという考え方に対して非常に慎重になるべきだと思います。
バルサルタンはARBというクラスに属していますが,そのユニークな特性はバルサルタン独自のドラッグエフェクトなのです。

森下 
バルサルタンはAT1受容体選択性が高く,きわめて強いAT1受容体遮断作用を持ことをわれわれは忘れてはならないと思います。
そして最も重要なことは,バルサルタンには臨床的なエビデンスがあるということです。

室原 
JIKEI HEART Studyにおける試験開始時の血圧は139/81mmHgと,既にわが国の高血圧治療ガイドライン(JSH)2004の降圧目標をクリアしていました。
しかし,130/80mmHgを目標にしてさらに降圧をはかることで,よい結果が得られました。
これは実地医家の方々にとっても意義あるメッセージだと思います。

吉村 
ARBが心筋梗塞発症と関連するのではないかとのネガティブな議論がありましたが,JIKEI HEART Studyでは両群間に有意差はありませんでしたから,少なくともその懸念はないように思います。

Dahlof 
心筋梗塞の予防も,まず降圧が重要であると思います。

森下 
ARBはJSH2004でも既に降圧治療のファーストチョイスの薬剤として位置付けられていますが,JIKEI HEART Studyでは日本人患者における併用療法のファーストチョイスであることも示したと思います。
これはわれわれがJIKEI HEART Studyから得た,非常に大きな教訓です。

 

ブラジリエ リトグラフ版画「バイオリン」
http://page14.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s88877324

 

<コメント>
記事の内容はバルサルタンに対する絶賛の嵐です。
データが良過ぎるのがどうも気になります。
最近あるスタチンの治験参加者を対象とした講演会でJ、IKEIHEART Studyに言及した講師(ハーバード大学留学歴あり)のコメント。
PROBE法を用いた臨床研究はNEJM誌にはacceptされない、という手厳しいものでした。
 
ハーバード大学
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%AD%A6
米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市に本部を置くアメリカの私立大学である。1636年に設置された。 アイビー・リーグの一校。2006年の世界大学ランキングでは単独1位であった。

(えっ。そんなに古いの。驚きです)

信じがたいほど豪華絢爛なハーバード大学の食堂
http://labaq.com/archives/50936676.html
(写真が出ています。一度でいいからこんなとこで食事してみたいです)

 

循環器トライアルデータベース
JIKEI HEART Study
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002503.html
以下は桑島先生のコメントです。
高血圧,心不全,虚血性心疾患などの心疾患を有する症例に対して,現行治療にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を上乗せした場合の心血管イベント予防効果をARB以外の降圧薬と比較したところ,一次エンドポイントである心血管疾患および死亡の複合の発症はARB上乗せ群の方が有意に少なかったという成績である。
すでに米国心臓病学会(ACC),国際高血圧学会(ISH),日本循環器病学会という3つの大きな学会で同じ内容が発表されており,ようやく論文化されたものである。
ある意味で,本研究の結果は今日のわが国で公正な大規模臨床試験を行うことが非常に困難であることを示唆する内容である。
まず本研究はdouble blind法ではなく,PROBE法で行われたことと,狭心症,一過性脳虚血性発作(TIA)という客観性に乏しいイベントがエンドポイントに含まれており,この2つのイベント発症の差異が一次エンドポイントの差異に大きく貢献していることである。
本研究は慈恵会医科大学関連病院という単一グループでおこなわれ,しかもPROBE法という担当医が患者がどちらの群に割り当てられたかを知っている方法によって実施されていることから,狭心症やTIAという客観性に乏しいエンドポイントを設定することに問題があろう。
率直に言えば,経済的支援を行っているARBサイドに好意的なイベント発症を中央委員会へ報告するというバイアスが生じる可能性は否定できない。
我が国では,抗血小板薬やスタチン系薬剤などの心血管合併症予防薬がほとんどの症例で処方されていることを考えると,高リスク症例ですら死亡,心筋梗塞や脳卒中などのハードエンドポイントは起こりにくいことから,欧米のトライアルでは一次エンドポイントに含まれない狭心症,TIAまでもが我が国のトライアルではやむをえず一次エンドポイントに含めざるをえない事情がある。
またランダム化後6ヶ月,12ヶ月の時点での血圧レベルがバルサルタン群で2/2mmHg前後低いことも結果に影響している可能性がある。
そしてなによりも問題なのは,ARB群の比較対照となった非ARB群の内容である。
表によるとCa拮抗薬,ACE阻害薬あるいはβ遮断薬,利尿薬である。
これまでの高血圧,心不全,虚血性心疾患の大規模臨床試験では,β遮断薬を対照薬としたLIFE試験をのぞいて,ARBがこれらの薬剤よりも心血管イベント予防に優れていたという仮説はことごとく否定されているのである。
本研究のように従来の大規模臨床試験の結果とはまったく異なる結果が発表された場合には,その成績をそのまま鵜呑みにすることは危険である。(桑島)

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。

 

固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)