戯れ言たれる侏儒
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PCI時の血栓吸引

戯れ言たれる侏儒 / 2008.03.07 00:30 / 推薦数 : 0

初回PCIで血栓吸引(Thrombus Aspiration)を併用することが、従来のPCI処置より優れているという論文で少し勉強しました。
結論は、血栓吸引はST上昇型の心筋梗塞患者の大多数に適用でき、ベースラインの臨床的、血管造影的な特徴にかかわりなく、従来型PCIより良好な再灌流と臨床転帰が得られたというものです。

私自身一開業医のためPCIの最近の現場がよく分かりません。
きっと血栓吸引はルーチンに行われているものと思うのですが実際はどうなんでしょうか。
 

PCI時の血栓吸引は予後の向上をもたらす
冠微小循環傷害を抑制
PCI時の血栓吸入は予後の向上をもたらす
ST上昇心筋梗塞患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)時の血栓吸入は、術後の再還流レベルと臨床転帰の向上をもたらすことが示された。オランダGroningen大学のTone Svilaas氏らの報告で、詳細はNEJM誌2008年2月7日号に掲載された。

血栓溶解薬を投与せずにPCIを行うプライマリPCIは、ST上昇心筋梗塞患者に対する血行再建において有効だ。
しかし、アテロームプラークまたは血栓の破片が梗塞責任動脈の下流で狭窄や閉塞を起こすと、微小血管閉塞が発生して心筋の再還流レベルが低下する。

著者らは、血栓を手作業で吸引した場合の利益を評価する前向き無作為化試験を行った。
同大学病院を2005年1月から2006年12月までの間に受診したST上昇心筋梗塞可能性例の中から、急性心筋梗塞を示唆する症状が30分以上継続しており、発症から12時間未満で、0.1mV超のST上昇を示す患者を登録した。
 
診断のための血管造影に先駆けて、1071人の患者を、PCI中に血栓吸引を実施(535人)または通常のPCI(536人)に無作為に割り付けた。
その後の血管造影の結果に基づいて、両群共に33人ずつがPCIを受けなかった。

血栓吸引群では、最初にガイドワイヤーを入れ、次に閉塞部に向けて血栓吸引カテーテルを吸引しながら挿入した。
吸引に起因すると考えられる術中合併症や、術中の死亡、脳卒中は見られなかった。

血栓吸引群では、吸引と直接ステント留置が行われた患者が295人(55.1%)、吸引とバルーンを用いたステント留置を受けた患者が153人(28.6%)、標的動脈が細すぎる、曲がりくねっているなどの理由から術者が吸引を断念、通常のPCIに変更された患者が54人(10.1%)いた。一方、通常群でも6人(1.2%)が血栓吸引を受けていた。

追跡は、割り付けから30日まで継続し、分析はintention-to-treatで行った。

主要エンドポイントは、血管造影により明らかになる冠微小循環傷害(myocardial blush grade:MBGが0または1)に設定(MBGは3が正常)した。
2次エンドポイントは、ST上昇の完全な(70%超)消失、ST波の異常の継続なし(ST波の上昇と下降の和が2mm未満)、標的血管の血行再建、再梗塞、死亡、主要な心イベントなどとした。

血栓吸引は、病理組織学的にアテローム血栓の成分が検出された場合に成功と判断した。実際に成功と判定された患者は全体の72.9%だった。

術後にMBGが評価できたのは97.5%の患者。MBGが0または1だったのは、血栓吸引群の17.1%、通常群の26.3%で、リスク比は0.65(95%信頼区間0.51-0.83、P<0.001)。

術後の心電図検査は97.7%に行われた。ST上昇の完全な消失は血栓吸引群56.6%、通常群44.2%に見られた。リスク比は1.28(1.13-1.45、P<0.001)。同様に、ST波の異常の継続なしはそれぞれ53.1%と40.5%で、リスク比1.31(1.14-1.50、P<0.001)。ベースラインの特性で患者を層別化しても、これらの結果に有意な影響は見られなかった。

30日以内の大出血は血栓吸引群3.8%、通常群3.4%(P=0.11)。
死亡は2.1%と4.0%(P=0.07)、再梗塞は0.8%と1.9%(P=0.11)。
標的血管の血行再建術、主要な心イベントにも有意差はなかった。

30日以内の死亡と主要な心イベントの頻度は、MBG、ST上昇の消失、ST波異常の継続なしと有意に関係していた(死亡とMBGの関係のみP=0.003、それ以外はすべてP<0.001)。
従って、これらの指標は、ST上昇心筋梗塞患者に対する代替エンドポイントとして使用できることが示唆された。

原題「Thrombus Aspiration during Primary Percutaneous Coronary Intervention」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18256391?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum

Nikkei Medical ONLINE  2008. 2. 28
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/hotnews/nejm/200802/505593.html
版権 日経BP社

<コメント>
原文はの一部は「血栓吸入」となっていますが「血栓吸引」に変更しました。
「傷害」も「障害」の方が日本語訳としてはよいのかも知れません。 

 ジョアン・ミロ リトグラフ版画「赤と青の手形」
http://page15.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/t65841666

<血栓吸引関連>
急性心筋梗塞症に対する新しい治療法としての血栓吸引療法
http://www.med.hirosaki-u.ac.jp/~inter2/%8C%8C%90%F0%8Bz%88%F8.htm
末梢保護デバイスとは、血栓や粥腫が血管の末梢へ流れないようにあらかじめ病変部よりも先の方で別の風船を広げ、血液の流れをせき止めておいてから病変部を風船でふくらませたり、ステントを留置するものです。
その結果生じた微細な血栓や粥腫は別の風船でせき止められたところに集まります。
それらを吸引カテーテルで吸って体外に除去します。十分に吸入ところでせき止め用の風船をしぼませます。
これに対して血栓吸引療法とは、せき止める風船を使用せず、吸引カテーテルを病変まで深く挿入して血管を閉塞している血栓を直接吸引し、体外に除去しようというものです。
末梢保護デバイスに比べて、簡便で迅速に使用できるというメリットに加え、最近は以前のものよりも通過性や吸引力が増強されたものが市販されています。現在はこの血栓吸引療法を積極的に行い、ほぼすべての症例で良好な結果が得られています。

血栓吸引カテーテル
http://tomochans.exblog.jp/3655307
ジョンソン・エンド・ジョンソン社
血栓吸引カテーテル ASPREYが写真入りで紹介されています。

急性心筋梗塞に対する新しい治療戦略:Pescue(TM)PTカテーテルによる血栓吸引療法の有用性
http://www2.eisai.co.jp/intl/so_circulation_6/currenttopics/kawano.html

 

<MBG関連>
急性心筋梗塞患者における血行再建術およびステント植込み後のGP IIb/IIIa受容体拮抗薬の投与あり,または投与なしによる心筋灌流の頻度,相関性,および臨床上の意義
http://minds.jcqhc.or.jp/G0000053_S0023363_0004.html
疾患レビュアーコメント
心筋Blushグレード (MBG) と患者背景因子の関係で,女性,発症からバルーン治療までの時間が短い (symptom onset to balloon),そして責任冠動脈が左前下行枝でなく右冠動脈であればあるほど,有意に良好なMBGを得ている。
この中で,介入できるのは発症から治療までの時間であり,いかに早く治療するかが鍵である。
今回の試験で,バルーン治療と比較しステント植込み術やGP IIb/IIIa受容体拮抗薬の追加投与は有意な効果は得られなかったという点も,急性心筋梗塞の治療のポイントがいかに早く再灌流療法を行うかであることを示している。
PCI後に全症例の96.1%でTIMI 3が得られているにもかかわらず,MBG-1,2群はそれぞれ48.7%,33.9%と高く,1年後の死亡率がMBG-3群に比較し有意に高値である。
血流の再開以外に,心筋細胞の保護のためのスタチンやARBなどの薬剤早期投与による死亡率改善が期待される。

PCI前モンテプラーゼ静注は微小血管障害のない患者の長期予後を改善する
Myocardial blush grade と長期予後との関係を解析
http://www2.eisai.co.jp/intl/so_circulation_21/currenttopics_no68/11_komatsu.html
当院では,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前のmutant t-PA(モンテプラーゼ)投与の臨床的意義に関して検討するCOmbining Monteplase with Angioplasty(COMA)試験を行ってきた。
1998年1月~2003年12月の一連の急性心筋梗塞(AMI)患者372例のうち,発症後12時間以内で75歳未満のモンテプラーゼ2.75万IU/kg投与後PCI(M)群65例と非投与direct PCI(P)群75例,計140例に関する成績では,PCI前モンテプラーゼ投与によってdirectPCIよりも高いTIMI 3達成率が得られ,標的病変部血行再建術(TLR)が減少して主要心血管イベント(MACE)発生率が低下することが示されている。
このCOMA試験のサブスタディとして,微小血管再灌流指標としてのmyocardial blush grade(MBG)を評価し,長期予後との関係を解析した。
対象は1998年9月から現在までの連続140例で,モンテプラーゼ投与後PCI(M)群65例,非投与direct PCI(P)群75例である。患者背景に差はなかった。
再灌流療法施行後に,MBG(blush 0~3)を評価した。一次エンドポイントは死亡率とMACEとした。

Angiographic Methods to Assess Human Coronary Angiogenesis
(from American Heart Journal)
http://www.medscape.com/viewarticle/417667_8
Blush grade 0: No myocardial blush apparent.

Blush grade 1: Myocardial blush is apparent during contrast injection but washes out immediately after dye washout from the epicardial artery.

Blush grade 2: Myocardial blush persists mildly for <3 cardiac cycles after dye washout from the epicardial artery.

Blush grade 3: Myocardial blush persists for >3 cardiac cycles after dye washout from the epicardial artery but has resolved before the next contrast media injection.

Blush grade 4: Myocardial blush persists long after dye washout from the epicardial artery and is present before the next injection of contrast media.

 


Myocardial Blush Grade: To Evaluate Myocardial Viability in Patients With Acute Myocardial Infarction
http://ang.sagepub.com/cgi/content/abstract/58/5/556
We concluded that the diagnostic value of MBG is limited to detect myocardial viability in the infarcted region.


Myocardial Blush Grade: An Angiographic
Method to Assess Myocardial Reperfusion
http://www.fac.org.ar/scvc/llave/interven/zijlstra/zijlstri.htm

 

http://www.theblush.org/Files/blush%20slides/example_of_tmpg0.htm
(実例が供覧されています)

Angiographic Assessment of Reperfusion in Acute Myocardial Infarction by Myocardial Blush Grade
http://www.circ.ahajournals.org/cgi/content/full/107/16/2115
Conclusions;MBG is a strong angiographic predictor of mortality in patients with TIMI 3 flow after primary angioplasty. Enzymatic infarct size is larger and residual left ventricular ejection fraction is lower in patients with MBG 0 or 1 compared with MBG 2 or 3. Angiographic definition of successful reperfusion should include both TIMI 3 flow as well as MBG 2 or 3.

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。

 

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