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最近
救急蘇生2題
http://blog.m3.com/reed/20080125/1
というタイトルで救急蘇生をとりあげました。
きょうは「一般市民によるCPR」を勉強しました。
バイスタンダーCPRは胸骨圧迫のみでも有効
一般市民による成人院外心停止患者に対する心肺蘇生(バイスタンダーCPR)は,虚脱から15分以内の心停止の場合,胸骨圧迫のみのCPRでも従来法(胸骨圧迫に加えて口対口人工呼吸を施行)のCPRと同等の結果が得られることが,大阪府民を対象とした前向きコホート研究で確認され,Circulation(2007; 116: 2900-2907)に報告された。
一般市民が救命の鎖をつなぐCPRで果たす役割は大きく,胸骨圧迫のみで十分なことが示唆された今回の結果は,今後の救急システム構築にも影響をもたらすと考えられる。
神経学的後遺症のない1年生存が同等
バイスタンダーCPRとは,救急システムの構成員以外の一般市民によって,心停止患者の救命手当が試みられることであり,今回の知見は,救急の専門的技能を有する救急隊員や医師などが行うCPRとは区別して考える必要がある。
今回の研究では,1998年から5年間に大阪府内で発生した心原性成人院外心停止患者を対象に,胸骨圧迫のみが施行された場合と従来法のCPRが施行された場合,それぞれの予後との関連が前向きに検討された。
目撃された心原性心停止は4,902例で,783例(16%)に従来のCPRが,544例(11%)に胸骨圧迫のみのCPRが試みられていた。
多変量ロジスティック回帰分析の結果,15分超の心停止を除いて,神経学的後遺症のない1年生存は,CPRなし群に比べて,胸骨圧迫のみのCPR群は1.72倍に,従来のCPR群は1.57倍にそれぞれ上昇した。
バイスタンダーCPRは胸骨圧迫のみでも従来法と同等の効果があることが示された(図)。

バイスタンダーCPR向上に期待
米国および日本版救急蘇生ガイドラインでは従来法のCPRが行えない場合や人工呼吸の実施に抵抗がある場合,ちゅうちょせず胸骨圧迫のみのCPRを試みることを推奨しているが,このことは国内の講習会などではあまり伝えられていなかった。
調査を実施した京都大学保健管理センターの石見拓氏は「従来のCPRは手技が複雑なため訓練を受けても適切な処置ができる人はそう多くなかった。
特に日本人は人工呼吸への抵抗感が強いとされる」と指摘しているが,この言葉を裏づけるように,今回のコホート研究でもCPRを試みた一般市民のうち,胸骨圧迫のみを試みた人が40%を占めていた。
さらに,同氏は「胸骨圧迫のみのCPRは従来法より簡便で習得しやすいうえに,心理的負担も少ない
。一般市民へ浸透すれば,救命処置への参加を促すとともに,胸骨圧迫の質が向上し,院外心停止患者の転帰改善につながるだろう」と述べ,胸骨圧迫のみのCPRの普及によるバイスタンダーCPR実施率の向上と心停止例の転帰改善に期待を示した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp//article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4109991&year=2008
Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社
大規模コホートで胸骨圧迫のみのバイスタンダーCPRの有効性を確認
地域の救急システム構築へ布石
京都大学保健管理センター(予防医療学)の石見拓氏らは,一般市民による成人院外心停止患者に対する心肺蘇生(バイスタンダーCPR)は,虚脱から心停止後15分までは胸骨圧迫のみで,従来法(胸骨圧迫に加えて口対口の人工呼吸を施行)のCPRと同等の効果が得られることを確認した。
900万人近い大都市を網羅する規模で継続されている前向きコホート研究は世界的にも例がないほか,心停止後の経過時間を分けて,効果的なバイスタンダーCPRの種別について検証した意義は大きい。
この研究は,SOS-KANTO※の知見と合わせて,2010年改訂予定の心肺蘇生国際ガイドラインに採用される可能性が高く,救急システムを前進させるうえで大きな意味を持つだろう。
※Survey of Survivors of Out-of-Hospital Cardiac Arrest in the Kanto Region of Japan
施行率は27%と低い
動物実験では,胸骨圧迫のみのCPRは,心室細動(VF)に対して従来のCPR(胸骨圧迫+口対口人工呼吸)と比べて,少なくとも同程度に有効な可能性が示唆されている。
小規模な臨床研究でも同様の結果が散見されたが,最近,関東地区で院外心停止患者の30日後の転帰を前向きに調査したSOS-KANTOで,VFや 4分以内にCPRが開始された心停止では,胸骨圧迫のみのバイスタンダーCPRが従来のCPRよりも効果的であることが示された(Lancet 2007; 369: 920-926)。
大阪府では,消防と医師会,救急医療機関との強固なネットワークを基盤として,1998年に院外心停止事例の記録様式の国際基準であるウツタイン様式を導入し,地域の救急システムの検証を進めてきた。
石見氏らの研究は,大阪府における院外心停止に関する大規模前向きコホート研究である「ウツタイン大阪プロジェクト」の一環として行われた。
SOS-KANTOが病院ベースで調査をしているのに対し,地域で発生する院外心停止を網羅し,バイスタンダーCPRの頻度や処置別の転帰を調査した点が大きな特徴だ。
大阪府は面積が約1,897km2と全国で 2 番目に小さいが,人口は約880万人と全国の 7 %を占め,東京都,神奈川県に次いで多く,府内35か所の消防署に救急搬送拠点を配備している。
1998年 5 月?2003年 4 月の 5 年間に消防が通報を受けた成人院外心停止の総数は2万3,437例で,このうち蘇生が試みられた2 万3,436例中1万3,444例が心原性と推定された。成人院外心停止の発生頻度( 5 年間の平均値)は,人口10万人に対し年間63例(うち心原性心停止は36例),目撃された心原性心停止は13例,初回VF例は2.2例であった(図 1 )。

目撃された心原性心停止は4,902例あり,バイスタンダーによって783例に従来のCPRが,544例に胸骨圧迫のみのCPRが試みられたが,残り約 4 分の 3 の患者には行われなかった(図 2 )。

発作から救急隊員によるCPR開始までに要した時間は10.5~11.0分であった。
心停止後15分超では予後不良
この研究のもう 1 つの特徴は,心停止後の経過時間により対象を 3 群に分けた点だ。
心停止後5分以内は電気的除細動が, 5~15分以内は循環維持が最も有効だが,15分を超えると転帰が著しく不良となる。
そこで「心停止後15分以内は胸骨圧迫のみで十分に有効,15分超では人工呼吸を組み合わせるCPRが有効」とする仮説に基づいて検討した。
実際に,心停止後15分以内については胸骨圧迫のみで十分に有効という結果が示された。
一方,15分を超える心停止は864例あり,従来のCPR群で神経学的後遺症のない 1 年生存率が良好であったが,CPRの有無や種別にかかわらず,生存者はごく少数であった。
15分を超える心停止では,バイスタンダーCPRの種別にかかわらず,著しく転帰が不良であるため人工呼吸の恩恵を受ける患者はほとんどいないと見てよいだろう。
なお, 5 分以内の場合は,胸骨圧迫のみの群で特に転帰が良好な傾向が見られた。
専門家にも胸骨圧迫の質に課題が
米国心臓協会(AHA)をはじめとした各国の心肺蘇生ガイドラインでは,CPRにおける胸骨圧迫の比重を段階的に増やしてきており,2005年の改訂では「30胸骨圧迫対 2 人工呼吸」が推奨され,特に胸骨圧迫の質の重要性が強調された。救急隊員や病院の医療スタッフが行うCPRの質を評価した研究では,胸骨圧迫にかける時間が不足し,十分な深さまで胸を押していないケースが多いことが判明しており,救急の専門家にとっても胸骨圧迫の質の確保は重要な課題だという。
院外心停止患者に対するバイスタンダーCPRの効果に関する国内外の報告では,胸骨圧迫のみのCPRでより高い有効性が示されたSOS-KANTOをはじめ,CPRなしに比べて胸骨圧迫のみと従来のCPRではほぼ同等の良好な成績が示されている(表)。

これらの研究成果を受け,2010年に予定される心肺蘇生国際ガイドラインの改訂では,院外心停止例に対するバイスタンダーCPRとして胸骨圧迫のみが推奨される可能性が高い。
CPR講習の経済的・質的向上に寄与
一般に,バイスタンダーCPRは院外心停止患者の25%前後に提供されているにすぎない。しかし,この状況は,今回紹介した知見が原動力となっておおいに改善される余地がある。
大阪府では,日本赤十字社や消防署が実施する救命講習会に年間11万5,000人が参加している。
石見氏らが参画するNPO法人大阪ライフサポート協会※も年間5,000人規模の救命講習会を実施しているが,従来のCPRの標準的な教育プログラムは約 3 時間,インストラクター 1 人に対し受講生が 4 人の体制で実技を教えるため,かなりのコストがかかる。
教育プログラムについては,日米で多くの研究が始まっており,同協会では,胸骨圧迫のみに単純化したCPRの普及を通じて,バイスタンダーCPRの実施率を上昇させるため,簡易型の人形やビデオ教材などを活用し,数人のインストラクターで100~200人を一斉に指導できるプログラムや,60?90分程度で習得可能な講習プログラムの開発を進める予定であるという。
同氏は「CPRの手技が簡素化されると,教育訓練のコスト効率が大幅に改善されるだろう」と期待している。
※http://osakalifesupport.jp/osakalsa/
http://mtpro.medical-tribune.co.jp//article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41091051&year=2008
Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社
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