戯れ言たれる侏儒
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< 肥満高血圧とARB その1(1/2) | メイン | スタチンは心房細動二次予防に有効 ? >

昨日の続きです。

 

松原
ARBは局所でAⅡあるいはATⅠ受容体の働きを抑制することで結果的に動脈硬化の進展や心血管系イベントを抑えているということですね。
また、肥満者で高まっている交感神経系の活性化をARB
が抑制するとの報告もあり、RA系と肥満が、非常に密接な関係にあることは確かだと思います。
ただ、このような報告は、残念ながらCASE-Jにしかなく、カン
デサルタン特有のことなのかという点も踏まえて、肥満者に対するARBの基礎と臨床データを集積することが今後の課題だと思います。

光山 
肥満になると脂肪細胞でアンジオテンシノーゲンの遺伝子発現が顕著に増えることが動物実験で明らかになっています、CASE -Jの成績をみて、その意味が理解できました。

松原
肥満者では、脂肪細胞に顕著に発現しているアンジオテ
ンシノーゲンの量と、血中のAⅡ濃度がリンクしていないようです。
ですから肥満者では組織レベルのRA系は亢進していると
考えてよいのでしょうか?

光山
組織系が亢進していることを明確に示した報告はありません。
一方、遺伝性の2型糖尿病ラットの組織を観察すると、どの組織でも必ず酸化ストレスが亢進しています。
ですから、
肥満による酸化ストレスがAT1受容体を活性化している可能性も考えられます。

小室 
最近、リガンドに依存しない受容体の活性化が注目されています。
実際、細胞膜の状態によっても受容体は十分に活性化します。
したがって、酸化ストレスなどによって細胞膜の状態が変われば、AT1受容体が活性化する可能性がありますし、細胞内
シグナルレベルで作用することも考えられます。

光山
例えば、eNOSをノックアオトしたマウスは組織での酸化ストレスが亢進していますが、ARBが非常によく効きます。
CASE-Jは、酸化ストレスなどによってAT1受容体が機能的に亢進しているような状態にARBがよく効くことを示しているのかもしれませんね。

松原 
確かに、酸化ストレスによって活性化したAT受容体をARBが抑制した、というシナリオは理解しやすいですね。

 

肥満を伴う高血圧患者さんへの降圧療法
光山
それでは今までのお話を踏まえて、肥満を伴う高血圧症患者さんの降圧療法について、ご意見をうかがいたいと思います。

小室 
肥満を伴う高血圧症患者さんは、心血管系イベントを発現しやすい病態にあり、そのイベント発現にはAⅡあるいはAT1受容体が非常に深く関係しています。
これらを抑制するカンデサルタンのようなARBをベースとした降圧療法は、より有効だと思います。

一方、肥満の無い高血圧症患者さんでも、心血管系イベントの発現にAⅡやAT1受容体の活性化が関与しています。
したがって、肥満を伴わない高血圧症患者さんも、単に血管を広げるだけの降圧薬より、動脈硬化を進展させる原因となるAⅡやAT1受容体の働きを抑えるARBを用いて高血圧治療を進めていくことは非常に意義があるでしょう。
 
ACC/AHAの慢性心不全診断治療ガイドライン2005では、肥満、高血圧、喫煙といったリスク因子をもっている患者さんには積極的にARBを投与することを推奨しています。
また、ESH/ESCガイドライン2007では、糖尿病がある方ではより早期からの薬物治療が重要であるとしています(図4)。


わが国の中高年の多くは、このようなリスク因子を多数保
有しています。
ひとつでもリスク因子がある高血圧症患者さんにはARBを投与する、このことが将来の心血管系イントを防ぐことにつながります。

松原
JSH2004では、心血管系イベントの発現リスクとして「肥満(特に内臓肥満)」をあげ、それに対し、ARBやACE阻害薬等のRA系抑制薬による降圧療法を推奨しています。
CASE-では、カンデサルタンが肥満を伴う高血圧症患者さんに第一選択薬になることを明らかにし、このガイドラインの正当性を示しました。
AT1受容体の存在が明らかになってから約18年が経過しましたが、AⅡやAT1受容体の作用は、研究が進むほど、循環器系はもちろんのこと、血管系、内分泌系など広範囲に関与していることが明らかになってきています。
AⅡは血圧を維持するために誕生したホルモンと言われていますが、肥満や臓器障害といったリスク因子をもつ患者さんには、非常に危険なホルモンであることが次々と明らかになっています。
CASE-Jの成績もそうですが、AⅡやAT1受容体の基礎研究は、ARBの必要性と重要性をさらに深めることになると思います。

光山
そうですね。
RA系抑制薬は臨床のエビデンスから新しいことがわかり、それが基礎研究を活性化し、さらに研究が進んでいくという経過をたどっています。
心不全に対するRA系阻害薬の有効性など、まさに臨床研究で見出され、その後、RA系の研究が非常に活発になっています。
 
CASE-Jは、肥満を伴う高血圧症患者さんに対するカンデサルタンの有効性を、日本人を対象とした臨床研究で初めて明確にした試験です。
CASE-Jが、今後臨床でARBを使う上での指針となると共に、脂肪細胞におけるRA系の関与を研究する上でも重要なデータだと考えています。
Nikkei Medical 2007.10
版権 日経BP社

 

サルボ シルク『午後のテラス』
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v45885734?u=;artfolio11

<参考> 

CASE-J 
Candesartan Antihypertensive Survival Evaluation in Japan
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002499.html
まず驚きは,candesartan群とamlodipine群の降圧薬併用薬剤の違いである。
candesartan群の方が明らかに多くの降圧薬を併用していることが明らかになったことの意味は大きい。
すなわちcandesartanは他の薬剤をたくさん併用しなければamlodipine群と同等の降圧が得られないことを証明しているのである。
またエンドポイントの内訳をあらためて見直してみると,candesartan群が優位なのは狭心症,TIAといった客観性に乏しいエンドポイントばかりであり,脳卒中などの客観性のあるエンドポイントはむしろamlodipine優位に傾いているのである。
狭心症やTIAが試験薬群に優位という傾向は JIKEI- HEART試験でも同じように認められ,ここに企業支援によるPROBE法の問題点が明瞭に浮かんでくるのである。
またトライアル初期から中期にかけてcandesartan群の方の脱落例が明らかに増えており,candesartan群はハイリスク症例で早期にイベントを起こしていることを示している。
このような試験ではtime to eventまでの期間を比較するべきであり,その意味ではamlodipine群の方がcandesartan群よりもハイリスク症例のイベント発症をより先送りさせることができたことを示している。
amlodipine群の方が治療中の血圧が低かったことが早期のイベント発症抑制に効果があったと考えられる。
本試験のプロトコールの最大の欠点は,2000年の日本のガイドライン(JSH2000)にあわせて年齢別に試験開始基準や降圧目標値を分けている点であり,いまでは世界的には全く通用しない考え方である。
(以上桑島先生のコメントの抜粋です。相変わらず一刀両断です。)
 

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。

 

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