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展望
ステントグラフト治療の普及に向け実施基準および調査体制の確立を
最近,わが国でも外科的人工血管置換術が不要なステントグラフトを用いた血管内治療が保険適用となり,低侵襲治療として注目されている。
新技術の導入に当たり,有効かつ安全性が確立された治療水準の維持・普及が求められるため,その使用承認とともに関連11医学会(表1)合同のステントグラフト実施基準管理委員会(委員長=東京医科大学血管外科・重松宏教授)が設置され,実施施設,実施医および指導医に関する基準審査が開始された。

企業製造のステントグラフトを用いた治療は,この基準に合格した医師および施設に限って行われている。
さらに,全例調査を行って治療成績を追跡し,必要に応じて情報公開も行う。
同委員会の副委員長兼事務局長を務める戸田中央総合病院(埼玉県)の石丸新副院長(同院血管内治療センター長)は「日々進歩する新技術のダイナミズムを的確に捉えた実施基準および調査体制の確立が必要である」と強調する。
同副院長にステントグラフト治療の在り方,同管理委員会の取り組みなどについて聞いた。
わが国への本格導入は2007年以降
加齢および動脈硬化性変性を原因とした大動脈瘤の患者数は,人口10万人当たり年間10~15人と言われ,わが国では今後さらに増加するものと推測されている。
これまで,治療の第一選択は大動脈瘤の破裂を防ぐことを目的とした外科的人工血管置換術であり,ほぼ50年の歴史がある。
腹部では動脈瘤の直径が60mm(通常の直径20mmの約3倍)で,年間当たりの破裂率が20%,50mmでは2~5%,40mm以下だと1%程度となり,胸部でも動脈瘤の直径60mm以上で破裂リスクが格段に高まることから,破裂予防を目的として外科手術が行われてきた。
適応の見極めは,腹部では動脈瘤直径50mm以上,胸部では手術に伴う合併症のリスクを考慮して60mm以上とされる。
ただし,外科手術は血流遮断を伴うことで心臓や末梢循環への影響が大きく,術後合併症のリスクが高いこと(胸部では5~10%程度)などが問題であった。
最近,ステントグラフトを用いた血管内治療が低侵襲手技として注目されている。
ステントグラフトは人工血管にばね状の金属ステントを取り付けたもので,これを圧縮してカテーテルに挿入して動脈瘤部位まで運搬した後,ステントグラフトのみを押し出す。
人工血管は,ばねと患者の血圧により動脈の内側に張り付けられるので縫合は不要で,動脈瘤内には血圧がかからず破裂を防ぐ(図1)。

血流遮断がないので心臓への負担が少なく,末梢循環障害のリスクも低い。
開胸や開腹が必要な外科手術に比べ,入院期間は半分以下で,退院後の日常生活への支障が少ない。
これまでに数多くのステントグラフト治療を経験してきた石丸副院長は「なんらかの理由で外科手術を望まなかった患者にとって,ステントグラフトによる治療が普及し選択肢が増えることは福音であり,治療症例数は今後増えていくであろう」と言う。
施設,実施医,指導医の基準を設定
海外でステントグラフト治療が導入され始めたのは1995年ころで,2000年ころには腹部大動脈瘤に対する治療として普及し,2005年には安定した治療成績が得られるようになった。
また,同治療は2005年ころから胸部に対して本格的に導入された。
しかし,わが国では腹部大動脈瘤に対するステントグラフトの輸入承認が得られたのは2006年7月であり,胸部に関しては今年2月に承認された。
石丸副院長は「海外に比べると6年ほど遅れたが,わが国で広く普及させるには,治療の安全性と有効性を担保して導入直後から世界に通用する治療水準に到達させることが課題である」と強調する。
そこで,わが国において企業製造ステントグラフトの輸入承認を控えた2006年5月31日,血管内治療に関連する10医学会により腹部大動脈瘤治療用ステントグラフトに関する実施施設,実施医および指導医を特定するための「腹部大動脈瘤ステントグラフト実施基準」が作成された。
同年12月21日には導入が考えられる胸部大動脈瘤ステントグラフトにも対応するため,日本胸部外科学会を加えた関連11医学会で構成する「ステントグラフト実施基準管理委員会」が設立された。
腹部大動脈瘤ステントグラフトの実施施設の条件として,
(1)Digital Subtraction Angiography装置が常設された手術室または血管撮影室で大血管手術が可能な体制
(2)腹部大動脈瘤10例を含む血管外科手術や血管内治療を年間30例以上施行している実績
(3)腹部大動脈瘤破裂の手術を3例以上経験している常勤外科医の迅速な協力が得られる
--- が基準とされている。
指導医の基準としては,
(1)術者あるいは第1助手として30例以上のステントグラフト(自作を含む)内挿術の経験
(2)使用するステントグラフトに関する研修プログラムの受講(3)術者として指導対象となるステントグラフト治療の10例以上の経験(ただし,既に他機種の指導医証明書を取得している者は5例以上)
(4)学会資格として日本心血管インターベンション学会認定医,日本心血管カテーテル治療学会認定医,日本インターベンショナルラジオロジー学会専門医,心臓血管外科専門医,心臓血管外科専門医が在籍する施設の外科専門医
--- のいずれかとなっている。
実施医の基準としては,
(1)腸骨動脈領域における血管内治療の20例以上の経験(2)腹部大動脈・腸骨動脈瘤の手術あるいはステントグラフト内挿術の術者または助手として10例以上の経験
(3)指導医のもとに術者として内挿術2例に成功していること
--- が条件となっている。
また,付帯事項として,最初の10例は指導医により画像診断に基づいた適応判定やデバイス選択などの助言を受けることとしている。
2007年12月に決定された胸部大動脈瘤ステントグラフト実施基準については,腹部を対象とした場合との違いとして,施設基準では外科医の協力体制として,胸部大動脈瘤破裂あるいは急性大動脈瘤解離に対する術者経験が5例以上ある常勤外科専門医としている(表2)。

また,指導医の基準としては,胸部ステントグラフト内挿術20例以上の経験としている。
実施医の基準としては,
(1)胸部大動脈瘤治療の術者または助手として10例以上の経験
(2)ステントグラフト内挿術の術者として腹部大動脈瘤10例以上あるいは胸部大動脈瘤5例以上の経験
(3)腹部大動脈・腸骨大動脈領域の外科手術者として5例以上の経験
(4)弓部分枝動脈の外科手術または血管内治療の術者として5例以上の経験((3),(4)は術者として経験がない場合は経験を有する医師の直接参加が得られること)
--- となっている。
2007年12月現在,実施基準の審査に合格した施設は150施設,実施医は55人となっている。
全例調査で治療成績の現状や変化を捉える
同ステントグラフト実施基準では,実施施設に追跡調査データの登録を義務付けており,同委員会では調査データを解析し,必要に応じてデータを公開,さらに解析結果をもとに3年ごとの基準見直しを予定している。
石丸副院長は「追跡調査により,医療現場で大動脈瘤に対するステントグラフト治療が安全に行われているかどうかを検証し,これを公開して知識の共有を図るとともに,今後の治療技術および成績の向上に役立ててもらいたい」としている。
追跡調査は術前の診断や,術直後から6か月,1~5年の治療成績をインターネットによる登録方式で収集する(図2)。
2007年は500例を超える集計成績が見込まれている。
ステントグラフト治療は,わが国に導入されてから歴史が浅いだけに,安全確実に普及させることが喫緊の課題である。そのためには実施基準を整備する一方,治療成績の全例調査を実施し,リアルタイムに治療の現状や変化を捉えて治療の安全性を確立することが必要という。
同副院長は「ステントグラフト治療が広がりを見せるなか,わが国から世界に向けてデータを発信できる日も近い」としている。
Medical Tribune 2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41120511&year=2008

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日本人の新たなエビデンス・JAPAN-ACSへの期待
ピタバスタチンとアトルバスタチンという2つのストロングスタチンの冠動脈プラーク退縮効果を比較したJAPAN-ACSの結果がまもなく発表される。
本試験は,日本人の急性冠症候群(ACS)患者を対象としたストロングスタチンでの初めての多施設共同無作為化比較試験となる。
(代田 浩之 氏 順天堂大学 循環器内科 教授 )
IVUSによるプラーク評価の意義
JAPAN-ACSは,高コレステロール血症を有し,ACSのために経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた日本人患者307例を対象とした多施設共同無作為化比較試験で,ピタバスタチン群(4mg/日)またはアトルバスタチン群(20mg/日)による,治療前後の冠動脈プラーク容積の変化を血管内超音波(IVUS)を用いて比較することを主要評価項目としている(図1)。

本試験において主要評価項目としたIVUSによる冠動脈プラークの評価は,あくまでもサロゲートエンドポイントであり,心血管イベントの抑制というハードエンドポイントとは別物である。
しかし,ACS患者の多くは責任病変以外にも複数の不安定プラークを有しており,その破綻が二次イベントの原因となることはよく知られている。
したがって,ACS患者におけるプラークの退縮はイベントリスクの低下と直結しており,IVUS所見はきわめて有用なサロゲートマーカーと位置づけられている。
日本人においても積極的脂質低下療法の意義は証明されるか?
IVUSにて評価した冠動脈プラーク容積の変化をエンドポイントとした海外の試験としては,REVERSALやASTEROIDなどが有名である。
前者では,標準的なコレステロール低下療法によってLDL-コレステロール(LDL-C)値を150mg/dLから110mg/dLに低下させてもプラークの増大は抑えられなかったが,79mg/dLまで低下させた場合は増大が完全に抑制された。
さらに後者では,治療前に130mg/dLであったLDL-C値を50%以上低下させて61mg/dLとしたことにより,わずかながらプラークの退縮が認められた。
一方,国内に目を向けると,ACS患者を対象としたESTABLISH試験において,41.7%のLDL-C低下に伴い13.1%のプラーク退縮を認め,解析の結果,プラークの進展阻止にはLDL-C<70mg/dL,あるいは約50%の低下が必要であることが示されている。
はたして日本人においても積極的脂質低下療法は利益をもたらすのか? わが国の多施設共同研究であるJAPAN-ACSの結果がその1つの答えになることを期待している。
LDL-C以外の因子もプラーク退縮に関与するか?
LDL-C以外の因子として,まず注目したいのはHDL-コレステロール(HDL-C)である。
プラークの進展・退縮におけるHDL-Cの意義は大きく,4つの無作為化試験のメタアナリシスにより,LDL-C値が同レベルであっても,HDL-C上昇率が小さければプラークの退縮が得られないことが報告されている(図2)。

ピタバスタチンは優れたLDL-C低下作用に加えてHDL-C上昇作用についても期待できる薬剤であるが(図3),この作用がJAPAN-ACSの結果にどのように寄与するかについても注目したい。

また,スタチンには,血清脂質改善作用以外にも,動脈硬化の進展にかかわるさまざまな因子に対する多面的な作用(pleiotropic effects)が備わっていることが明らかになりつつあるが,これらは必ずしもスタチンのクラスエフェクトではなく,各薬剤間で差異がみられる可能性がある。
JAPAN-ACSでは,高感度CRP(hs-CRP)やペントラキシン3(PTX3)といった,炎症マーカーとの関係についても検証することとなっている。
JAPAN-ACSによって日本人におけるACS治療の新しいエビデンスが生まれ,スタチンに求められる作用が明確になることが期待される。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41120581&year=2008
<参考サイト>
血管壁培養細胞でみたスタチンの作用
http://www.livalo.com/b/bk/02/03.htm
血管内皮細胞(HUVEC)におけるスタチンの効果;HUVECで一番抑制された遺伝子は、ペントラキシン3(PTX3)です。これは平滑筋細胞でも抑制されます。PTX3は、いわば内皮細胞が作るCRPのような遺伝子で、acute phase reactantとして知られ、CRPなどとペントラキシンファミリーを形成します。動脈硬化病巣でも高度に発現し、組織因子を誘導することが分かっています。心筋梗塞の重症度と血中のPTX3濃度とがリンクするという論文が、最近“Circulation”で発表されています。
PTX3 ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院との共同研究の開始
http://www.ppmx.com/corporate/news/20070918_PR.html
ペントラキシン3(Pentraxin 3, PTX3)は、体内の炎症により現れる炎症性タンパク質です。
動脈硬化/血管中のプラーク形成/進行/破綻の過程には、損傷された組織、および炎症部位に浸潤した白血球や肥満細胞、マクロファージなどから放出される多くの炎症メディエーターの関与が知られていますが、PTX3もその一つです。
よく知られている炎症性タンパク質としてC反応性タンパク質(CRP)がありますが、PTX3もCRPと同じペントラキシンファミリーに分類されます。CRPが肝臓で産生されるのに対し、 PTX3は、動脈硬化と密接な関係を持つ血管内皮細胞、血管平滑筋、マクロファージ、好中球から、短時間に、直接産生されるという特徴をもっています。
また、PTX3は、心疾患リスクファクター(コレステロール、喫煙、ヘモグロビンA1c等)に影響を受けない有用なマーカーである可能性が、最近の研究で示唆されています。
さらに、こうした研究に加え、ヒト内皮細胞にスタチンを作用させることで、最も発現抑制される遺伝子がPTX3であること、また、心筋梗塞のみならず、心筋壊死が既に起こっている不安定狭心症で、PTX3値が上昇することなども報告されています。
<2008.6.8追加>
この内容については
JAPAN-ACS アゲイン
http://blog.m3.com/reed/20080608/JAPAN-ACS_でもとりあげています。

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<2009.5.18追加>

(興和創薬2009.4作製パンフより)
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昨日の続きです。
特別企画
第55回日本心臓病学会学術集会ランチョンセミナー
日本人の狭心症/診断・治療の最前線
座長:奥村 謙 氏 (弘前大学医学部 循環器・呼吸器・腎臓内科 教授)
講演2
狭心症患者の冠動脈内皮機能に対するCa拮抗薬の作用とそのメカニズム―ニフェジピンを中心として
(名古屋市立大学大学院医学研究科 心臓・腎高血圧内科学 准教授) 土肥 靖明 氏
動脈硬化は酸化ストレスにより惹起される血管の炎症
動脈硬化を治療するためにはそのメカニズムを理解し,アプローチすることが重要である。
近年の血管生物学の進歩により,動脈硬化は「酸化ストレスにより惹起される血管の炎症反応」であり,その初期の過程で血管内皮機能障害が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
そこで本日は動脈硬化進展過程における,Ca拮抗薬ニフェジピンの血管に対する直接的な作用とそのメカニズムを中心に解説したい。
まず高血圧,糖尿病,高脂血症,喫煙等の危険因子により,動脈硬化の最初のステップである「血管内皮機能の障害」が起こる。
内皮機能の障害により,強力な抗動脈硬化作用をもつ一酸化窒素(NO)が減少するとともに,単球の内皮細胞への接着ならびに内皮下への侵入が起こる。
内皮細胞下へ侵入した単球はマクロファージに分化し,自ら酸化LDLを取り込んで泡沫細胞に変化する。
さらに,ICAM-1,VCAM-1,MCP-1などの炎症性因子やサイトカインを放出して,血管壁を慢性炎症へと導くことで,動脈硬化が進行しプラークが形成される。
この過程において最も重要な役割を果たすのが「酸化ストレス」である。
そのため現在では,動脈硬化は酸化ストレスによって引き起こされる血管の炎症とも捉えられるようになったのである。
ニフェジピンは内皮機能を改善することで動脈硬化の進展を抑制する
これまでの検討から,ニフェジピンは強力な降圧作用とは別に,多面的な作用も有することが報告されている。
その1つが血管内皮機能の改善作用である。
通常,血管内皮機能はアセチルコリン(ACh)刺激による内皮依存性の弛緩反応で評価することができる。
正常な血管であれば,ACh刺激により血管内皮細胞由来のNOが遊離され,弛緩反応が起こる。
しかし,高血圧や糖尿病などにより内皮が障害を受けると,この弛緩反応が減弱する。
ニフェジピンはこの減弱した弛緩反応を,正常者と同程度まで回復させることが確認されている。
このニフェジピンによる内皮機能改善作用は,NO合成阻害薬(L-NAME)の存在下やビタミンCの存在下で消失することから,ニフェジピンによる「NOの不活性化抑制」を介していると考えられる。
つまり,ニフェジピンは強力な抗酸化作用をもち,「酸化ストレスの抑制」により内皮機能を改善すると考えられる。
実際,ニフェジピン投与により高血圧患者の酸化ストレスマーカーが減少することが確認されている。
さらに北風らの報告によると,ニフェジピンはNO自体を増加させる作用も有する。
このようなニフェジピンの血管に対する作用を大規模かつ長期に,また形態的な観点からも確認したのが,ヨーロッパで行われたENCOREⅡ試験である。
冠動脈疾患患者におけるAChによる内皮依存性の血管弛緩反応が,長時間作用型ニフェジピン製剤の投与により有意に改善し(p<0.0001),さらにIVUSで確認したプラークサイズも,ニフェジピンにより進展抑制傾向が認められた。
このようなニフェジピンの冠血管に対する直接的な作用が,ACTION試験で認められた狭心症患者のインターベンション施行や狭心症の悪化の抑制に寄与したものと考える。
ニフェジピンCR錠は炎症の抑制を介して血管内皮機能を改善
冠攣縮が多いとされる日本人を対象とした臨床研究では,さらに興味深い知見が得られている。
JMIC-B試験のサイドアーム試験では,長時間作用型ニフェジピン製剤がACE阻害薬に比し,動脈硬化の進展を有意に抑制したのである。
本試験では,長時間作用型ニフェジピン製剤とACE阻害薬の冠動脈内径に及ぼす影響を,定量的冠動脈造影(QCA)で検討しており,ACE阻害薬群では病変部位の最小血管内径(MLD)が縮小したが,ニフェジピン群では有意に拡大し,ニフェジピンにより動脈硬化の進展が抑制された(図3)。

このような既存の冠動脈の病変部位に対するニフェジピンの進展抑制の機序の1つに,われわれはニフェジピンによる直接的な炎症抑制が関与していることを確認している。
PCIを施行した安定労作性狭心症17例を長時間作用型ニフェジピン製剤(ニフェジピンCR)群8例,プラセボ群9例に無作為に割り付け,4カ月間追跡したところ,ニフェジピンCR群で,冠循環中の炎症マーカーC反応性蛋白(CRP)濃度が投与前に比べ有意に低下した(図4右)。
またこれに伴い,血管内皮依存性の弛緩反応もニフェジピンCR群で有意な改善が認められた(図4左)。

ニフェジピンによる炎症抑制のメカニズムに抗酸化作用が関与
このニフェジピンによる炎症抑制の機序にも,ニフェジピンの「抗酸化作用」が関与しているとわれわれは考えている。
なぜなら,ニフェジピンは活性酸素産生に関与するNAD(P)Hオキシダーゼ活性を抑制し,TNF-αなどのサイトカインの受容体発現を抑制することが明らかになっているためである。
さらに,ニフェジピンはTNF-αなどにより増加する転写因子NF-κB活性も抑制することが報告されている。
興味深いのは,この作用はニフェジピンにのみに認められ,他のCa拮抗薬では認められないことである。これは,ニフェジピンが他のCa拮抗薬では酸化抑制が認められないような低濃度で,α-トコフェロールと同等の酸化抑制を示すという報告とも一致する(図5)。

以上のようにニフェジピンは,降圧作用とは別に,抗酸化作用・抗炎症作用を有しており,動脈硬化に対しても好ましい影響が期待される。
わが国で多いインターベンション後の冠攣縮なども考慮すると,高血圧・狭心症治療のみならず,日本人の循環器疾患治療において,長時間作用型ニフェジピン製剤による恩恵は大きいと考える。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41120281&year=2008
Medical Tribune 2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社

ヒロ・ヤマガタ 「日本のエッセンス夏の富士」
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p106606796
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
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ふくろう医者の診察室
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第55回日本心臓病学会学術集会ランチョンセミナー
「日本人の狭心症/診断・治療の最前線」の記事で勉強しました。
特別企画
第55回日本心臓病学会学術集会ランチョンセミナー
日本人の狭心症/診断・治療の最前線
座長:奥村 謙 氏 (弘前大学医学部 循環器・呼吸器・腎臓内科 教授)
座長の言葉
日本人の狭心症を考える上で,「冠攣縮」は極めて重要な病態である。
冠攣縮の成因として,内皮機能障害などが指摘されているが,依然として不明な点が多い。
診断は病歴と発作時の心電図所見によりなされるが,自然発作が捉えられない場合は冠動脈造影検査,冠攣縮誘発試験によって確定される。
ただし個々の例で病態(冠攣縮)の診断が適切に行われているかどうかについては検証も必要であろう。 治療法としてはCa拮抗薬の有用性が確立されているが,一部には難治性の症例も認められ,突然死の報告もあり,今後も検討が必要であろう。
そこで本日は,末田先生からわが国の冠攣縮の診断・治療の実態について明らかにしていただくとともに,土肥先生には内皮機能改善という観点から長時間作用型Ca拮抗薬の役割について解説いただく。
講演1
冠攣縮性狭心症の診断・治療の実際について ― 冠攣縮の灯を消さないように!
(済生会西条病院 副院長) 末田 章三 氏
日本人の冠攣縮の発現頻度は欧米人の3倍
日本人は欧米人に比べ冠攣縮発現頻度が高いと言われている。
われわれが冠動脈造影施行例に対し,アセチルコリン(ACh)よる冠攣縮誘発負荷試験を実施した結果でも,日本人における発現率は36.5%(186/509例)であった。
これは,欧米人で報告されている12.3%(134/1,089例)と比べ3倍高値である。
さらに狭心症患者では,日本人の安静狭心症例の66.9%(83/124例)に冠攣縮が誘発され,労作性狭心症,安静兼労作性狭心症のいずれにおいても,日本人では高頻度に認められた(図1)。

つまり,日本人の虚血性心疾患,特に狭心症においては,欧米人と病態そのものが異なっていると同時に,日本人の虚血性心疾患の成因において冠攣縮はきわめて重要な意味をもつと言える。
問題は冠攣縮性狭心症が見逃されていること
問題は,日本人では冠攣縮が重要,かつ高頻度で認められる病態であるにもかかわらず,その診断法となる冠攣縮誘発負荷試験が必ずしも十分に行われていないという現状である。
われわれは実態把握のために,日本循環器学会教育施設および教育関連施設の計1,177施設を対象にアンケート調査を実施。 回答が得られた208施設の結果,2005年度における冠攣縮誘発負荷試験施行総数は,未施行施設が24%(50施設),10例未満の施設が30%(62施設)と,年間総数が10例に満たない施設が約半数を占めた。
これらの施設の2005年の検査総数は,CAGが10万回以上,PCIが約3万5千回施行されていたのに対し,ACh負荷試験は2,509回にとどまっていた。
回答のなかった969施設も考慮すると,冠攣縮誘発負荷試験の施行率はきわめて低いものと思われる。
ここで私が冠攣縮誘発負荷試験施行率の低さを問題にする理由は,冠攣縮は実際には多く存在するにもかかわらず,見逃されている恐れがあるためである。
本調査から得られた施設毎の冠攣縮誘発負荷試験施行総数と冠攣縮陽性例数の関係を解析すると,両者の間にはっきりとした正の相関が認められた。
積極的に施行すれば冠攣縮が発見され,施行しなければ発見されないと解釈できる。 事実,冠攣縮誘発負荷試験「未施行」の50施設と「施行」の158施設を比較したところ,冠攣縮性狭心症の有病率は「施行」施設では15.6%であったのに対し,「未施行」施設では4.2%と有意に少なかった。
つまり,冠攣縮誘発負荷試験が施行されない結果として,冠攣縮が見逃されている可能性が高いと考えられる。
このほかにもアンケート調査から,いくつかの問題点が浮かび上がった。
冠攣縮誘発に用いる薬剤がACh,エルゴノビンと異なることに加え,その投与量・投与時間,ならびに診断基準にもばらつきのあることが明らかになったのである。
Ca拮抗薬の冠攣縮抑制作用に差がある可能性も
さらに治療方針もさまざまで,十分な認識の下に行われていない現状が明らかになった。
一般に,冠攣縮性狭心症に対してはCa拮抗薬の投与が原則となるが,例えば「胸痛などの訴えはないが,典型的な冠攣縮が誘発された場合,Ca拮抗薬を処方しますか」という問いに対し,71%が「処方する」と回答。しかし21%が「時と場合による」,1%が「処方しない」という回答であった(無回答7%)。
また,「冠攣縮性狭心症例で,投薬にて症状が消失すればCa拮抗薬を中止しますか」との問いに対して,「一生服薬を指導」と回答したのは44%で,「患者からの希望があれば減量」あるいは「中止」するという回答も多くを占めた(図2)。

Ca拮抗薬の服用を中止すると,不幸な転帰をとる恐れもある。
前述のように日本人は冠攣縮が多いため,虚血性心疾患に対する第一選択薬も欧米とは異なってくる。
欧米ではRA系抑制薬やβ遮断薬がガイドラインでも推奨されている。
しかしながら,冠攣縮の関与が多いわが国において,欧米の治療法をそのまま当てはめることはできないのではないかと考える。
そのことを如実に示したのが,わが国で実施されたJBCMI試験およびJMIC-B試験であろう。
JBCMI試験では,急性心筋梗塞後の患者における冠攣縮性狭心症の発症や心不全の発症を,Ca拮抗薬はβ遮断薬に比し有意に抑制した。
またJMIC-B試験では,冠動脈疾患合併高血圧患者の心事故の発症を,長時間作用型ニフェジピン製剤はACE阻害薬と同等に抑制し,心筋梗塞既往例に至っては,狭心症の発症および増悪を有意に抑制した。
欧米のエビデンスに追従するあまり,日本人の病態特性を軽視してはならないことを戒めた,重要なエビデンスだと考える。
さらに,冠攣縮性狭心症に対するCa拮抗薬の治療効果にも薬剤間で異なることも忘れてはならない。
例えばジヒドロピリジン(DHP)系Ca拮抗薬で,「狭心症」を適応症としているのは6成分,さらに「異型狭心症」まで適応を有しているのはニフェジピンとニソルジピンの2成分のみである(表1)。

冠攣縮抑制作用には,Ca拮抗薬間に差異があることも示唆されており,どのCa拮抗薬がわが国の冠攣縮性狭心症の治療薬として適切なのかも明確にする必要がある。
このように冠攣縮性狭心症に対して標準的な診断・治療法が確立していない現状を,私は永年にわたり疑問視してきた。
そしてようやく,日本循環器学会で「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」の作成が進められることになったことは非常に喜ばしく思っている。
冠攣縮はさまざまな循環器疾患の成因になる,決して軽視してはならない病態
最後に,私が冠攣縮に対して問題視するもう1つの理由を述べたい。
それは,冠攣縮は異型狭心症のみならず,突然死,重篤な不整脈,心筋梗塞の成因にも深く関与する,多彩な臨床像をもつ病態だということである。
その1例が「冠攣縮性心不全」である。
慢性心不全患者で冠攣縮誘発負荷試験を施行した31例を検討したところ,10例(32.3%)が誘発陽性で,そのうち9例は多枝で冠攣縮が誘発されていた。 冠攣縮による断続的な虚血が心筋障害をもたらし,心不全に至ったと考えられる。
冠攣縮は決して過去の疾患ではない。
心不全や突然死など,さまざまな循環器疾患の基盤になり得ることを決して忘れてはならない。
インターベンションに重きをおかれる時代ではあるが,冠攣縮の灯を消さないためにも,次世代を担う循環器科医に冠攣縮の重要性を改めて伝えていく必要性を強く感じている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41120281&year=2008
Medical Tribune 2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社

日本美術倶楽部〓 阪本 勇 「異彩」 写真
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v46552307?u=edelcoltd
<参考サイト>
誘発冠攣縮
http://blog.m3.com/reed/20080223/1
冠攣縮(冠スパスム)
http://blog.m3.com/reed/20071002/1
異型狭心症(冠血管攣縮性狭心症)でカルシウム拮抗剤の中止は可能か
http://www.hazamaiin.com/ebm_variant_angina_and_calcium_antagonist_full.htm
比較的罹病歴の長い異型狭心症の患者を対象としたCa拮抗剤のwithdrawal studyは(薬剤を中断した場合,疾患の予後などがどのようになるか検討した研究),見つからなかった.異型狭心症の長期予後をみたコホート研究では,Ca拮抗剤内服者で長期予後が良いと言う結果であった.異型狭心症急性期にジルチアゼムと偽薬を比較した研究では,ジルチアゼムにおいて狭心症エピソードの減少を認めた(しかも偽薬群では心筋梗塞が発症している).
(興味深く読ませていただきました。PECOの概念をとりいれて検討しています。)
以下はPE(I)CO関連サイトです。
PECOを知らずしてEBMは語れない
http://rockymuku.sakura.ne.jp/EBM/PECO.pdf
EBMにおけるエビデンスの吟味
http://www.lifescience.jp/ebm/opinion/200308/index.html
EBMとは
http://www.ebmedu.umin.jp/ebm1/ebm_1.html
EBMと実地医療
http://www.hazamaiin.com/publications_EBM_pracical_medicine.html
EBMと診療ガイドライン
http://muto.homeip.net/backup/class/2006/20061205.pdf
「臨床現場におけるEBMの実践」
http://www.hhk.jp/info/kenkyu/12nitijyo.htm
EBMの実践
http://www.ircme.u-tokyo.ac.jp/afghanistan/pdf12/6-4-1-8.pdf
<コメント>
文中に
『「異型狭心症」まで適応を有しているのはニフェジピンとニソルジピンの2成分のみである』
とあったので、とりあえずジルチゼムとベニジピンの添付文書を見てみました。
ジルチゼム 狭心症・異型狭心症
ベニジピン 狭心症
少なくともジルチアゼムは適応をとっています。
ご存知のように薬剤の適応は学問的なものでもなく製薬メーカーの戦略や思惑があるのが常識です。
異型狭心症の治療の日本での黎明期にニフェジピン派のE先生とジルチアゼム派のY先生が丁々発止をやったのを懐かしく思い出します。
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
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ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き) があります。
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Brugada症候群の最終回です。
6. 薬理学的負荷試験
略
7. 本症候群の診断基準と特発性Brugada型心電図パターン
心電図が本症候群特有の所見を示すにもかかわらず、臨床的に何ら症状を示さない例が多くあり、これらを症候性Brugada症候群と区別する必要がある。
欧州心臓病学会の不整脈分子機序研究グループは、2002年に以下のような本症候群の診断基準を提唱した(コンセンサス・リポート、2002)。
この基準では次の1、2のうち、いずれか一つに該当する場合に本症候群と診断する。
1. TypeⅠ 心電図+下記6項目のうち、いずれか一項目を満たす場合。
(1)記録された心室細動
(2)自己終息的な多形性心室頻拍(自然停止する傾向がある多形性心室頻拍)
(3)心臓突然死の家族歴(45歳以下の年齢層での)
(4)家族にTypeⅠ心電図を示す例がある場合
(5)心室プログラム刺激で心室細導心電図を記録し、多型性心型性心室性頻拍が誘発可能な場合動、多形性心室頻拍が誘発可能な場合
(6)失神発作ないし夜間のあえぎ呼吸
2. 基礎状態がTypeⅡないしTypeⅢ心電図を示し、薬剤負荷でTypeⅠに変化した場合は前記1.に準じる。
〔註〕
①薬物負荷でST上昇が2㎜未満の場合は診断できない。
②TypeⅢ心電図がTypeⅡに変化した場合も診断できない。
③臨床所見を伴わず、心電図所見のみを示す場合はBrugada症候群とは呼ばず、「特発性Brugada症候群 ECG pattern」と呼ぶ。
④基礎心電図が正常で、薬物負荷によってのみBrugada型心電図を示す例の予後は良好である。
まとめ
saddle-back型の心電図は日常診療で比較的しばしば遭遇する心電図異常であり、これを不完全右脚ブロックやnormal variantと誤ってはならない。
saddle-back型心電図を認めた場合は、必ず高位右側胸部誘導心電図を記録し、coved型心電図出現の有無を検討する必要がある。
coved型を認めた場合は、失神病歴、急死の家族歴の有無に注意し、これらがあれば然るべき施設に紹介して心臓電気生理学的検査(心室プログラム刺激)による多形性心室頻拍/心室細動誘発の可能性について検討し、もし陽性な
らばICDの適応について検討する必要がある。
coved 型を認めるが失神病歴や急死の家族歴がない例にどのように対処するべきかについては、未だ一定の見解はない。
このような例では、心室遅延電位、ホルター心電図記録V1のS terminal delayの程度などについて検討し、危険度が低いと考えられる例ではⅠc群抗不整脈薬の投与を避け、
注意深く経過を観察し、失神ないしその前駆所見がある場合はただちに循環器専門医を受診するように指導しておく必要がある。
危険度が高いと判断される場合は心室プログラム刺激を行い、多形性心室頻拍/心室細動が誘発されるかどうかの検討が必要となるる。
無症状性のsaddle-back型を示す例で、高位右側胸部誘導、薬物負荷試験などでもcoved 型を認めない例では、Ⅰc群抗不整脈薬の投与を避け、注意深く経過を観察し、失神ないしその前駆所見がある場合にはただちに循環器専門医を受診するように指導する。
体温上昇は、内向きNa電流を減少させることによりBrugada型心電図を悪化させる方向に働いて心室細動を起こす危険があるため、発熱時には特に注意深い観察が必要である。

トーマス・マックナイト 「サンディエゴ」シルクスクリーン
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昨日の続きです。先生方のお手元にはすでに届いているとは思いますが、まずは日循総会のプログラムからBrugada先生の抄録の紹介です。

Brugada症候群の心電図診断 その2(2/3)
徳島大学名誉教授 森 博愛先生
3. Brugada型心電図波形の経時変動
本症候群の心電図の特徴の一つは、その波形が経時的に変動する例が多いことである。
図4に59歳、男性で1カ月半の間に記録した5枚の胸部誘導心電図を示す。

V4誘導では心室群の波形変動はあまりみられないが、V1、V2の心室群波形は短期間に著しく変動している。
すなわち、8月30日~9月17日のV2波形はsaddle-back型であるが、9月27日には典型的なcoved 型のST上昇を示し、またその2週後には再びsaddle-back 型に変化している。
9月27日の心電図では、V3はsaddle-back型を示し、同一人の同一時点の記録でも、誘導部位により異なった波形を示している。
4. Brugada型心電図波形の診断基準
本症候群の中には、典型的な心電図所見を示し、遺伝傾向が濃厚で突然死する例から、非典型的な心電図所見を示すのみで遺伝傾向や失神の病歴がまったくない例まであり、幅広いスペクトラムを持つ。
そのため、本症候群ないしBrugada型心電図の診断に関し著しい混乱が認められる。
この問題を改善するために、欧州心臓病学会不整脈分子機
序研究グループは欧州心臓病学会の要請を受けてBrugada型心電図の診断基準を作成した(コンセンサス・リポート、2002)。
この報告書では、Brugada 型心電図を図5・表1に示すように3型(Type Ⅰ~Ⅲ)に分けている。


この提案は世界的に広く受け入れられており、Brugada自身もこの基準に準拠して症例を分類した研究を発表しているし、わが国の最近の研究もほとんどがこの基準を採用してい
る。
5. 本症候群における高位右側胸部誘導心電図記録の意義
本症候群と診断するためにはsaddle-back 型心電図を認めるのみでは不十分で、coved 型の心電図を認めることが必要である。
通常のようにV1、V2の電極を第4肋間において記録した胸部誘導心電図がsaddle-back 型のST上昇を示す場合、1~2肋間上方で右側胸部誘導心電図(V1'~V3'、V1"~V3")をとると、典型的なcoved 型波形が記録される場合が少なくない。
図6Aは通常部位で記録したV1、V2誘導がsaddle-back型ST上昇を示す例において、1肋間上(第3肋間)で記録したV1、V2対応誘導(V1'、V2')では著明なのST上昇を伴う典型的なcoved 型心電図を記録できた例の心電図である。

したがって、通常の心電図がsaddle-back 型ないし非典型的な所見を示す例では、必ず全例で高位右側胸部誘導心電図を記録する必要がある。
出典 日本医事新報 No.4223 2005.4.21
版権 日本医事新報社
<番外編>
最近、当院へ来院された男性(62歳)の心電図です。
自覚症状は何もありません。
もちろん失神発作の既往もありません。
心電図をみたときドキッとしました。
normal variantでしょうか、早期再分極パターンでしょうか、
それとも・・・・。


medicina 42.6 2005.6P1048-1051に「ST上昇は心筋梗塞とは限らないという」浅井精一先生(聖隷三方原病院)の論文があります。
その中で「健常人でみられるST上昇」が述べられています。
以下引用
ST上昇の正常パターンには、以下の3つがある。
(1)男性パターン:胸部誘導でのみみられ、V2で顕著な1~3mmの上に凹型のST上昇。若年男性の約90%にみられ、年齢とともに頻度は減少する。
(2)早期再分極パターン:V4で顕著な1~4mmの上に凹型のST上昇。T波の増高を伴う。肢誘導でみられる場合は、Ⅱ誘導でST上昇は顕著。aVRで鏡像としてのST低下がみられる。
(3)その他のパターン:V3-5で顕著な上に凹型のST上昇、T波の陰性化を伴う。QT短縮、QRS波の増高を認める。
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以前にも書かせていただきましたが、数十年前に循環器科の医師を目指した時に森 博愛先生の書かれた心電図のテキストを繰り返し読みました。 教授を退官されて随分月日が経つものと思われますが、数年前に以下に紹介する総説を書いておみえになります。 学問に対する情熱にはただただ感服します。
ご存知の方も多いでしょうが、奇しくも今月末の第72回日循総会(福岡市)でJosep Brugada先生がUpdate in Brugada syndromeというテーマで特別講演されます(3月29日11:10-11:55)。
Brugada症候群の心電図診断 その1(1/3)
徳島大学名誉教授 森 博愛先生
はじめに
従来、心臓病を指摘されたことがない健康な青壮年男性が、夜中に大きいうなり声を発して急死する例があり、わが国では「ポックリ病」としてかなり以前から知られていた。
その頻度は東京都で年間100例に達する。
この「ポックリ病」と同様の病気がフィリピン、タイなどの東南アジア諸国にもあることが知られており、タイでは「lai tai(睡眠中の急死)」、フィリピンでは「bangungut(うなり声に続く睡眠中の急死)」と呼ばれ、その頻度は10万人の住民中26~38人くらいといわれている。
この「ポックリ病」の本態については、冠動脈攣縮、胸腺リンパ体質、内分泌・自律神経系異常、心臓刺激伝導系異常などの諸説が提唱されたが、いずれの説も決定的な支持を得るに至らなかった。
1992年、Brugadaらは右側胸部誘導心電図が右脚ブロッ
ク様所見(R’波)と著明なのST上昇を示す例があり、このような例はしばしば夜間に心室細動発作を起こして急死することを発表した。
彼らはこれが一つの独立した疾患単位であり、特発性心室細動の重要な基質(基礎病態)であるとし、これがいわゆる「ポックリ病」と同一疾患であることを指摘して広く世界的に注目を集め、現在、一般にBrugada症候群(以下、本症
候群と略)と呼ばれている。
本症候群の中に遺伝傾向が強い例があることは、Brugadaらの最初の報告にも指摘されているが、1998年、Chenらにより心筋細胞膜のNaチャネルをコードする遺伝子SCN5Aに異常がある例があることが発見され、本症候群は先天性QT延長症候群とともにイオンチャネルを構成する分子の異常が致死的不整脈(遺伝性不整脈)を惹起するとし、いわゆるイオンチャネル病の代表的疾患の一つとして臨床的にもきわめて重要なことが明らかとなった。
1. Brugada症候群の特徴的心電図所見
Brugadaらはその最初の論文において、本症候群の心電図所見の特徴は次の3所見であることを指摘した。
①右脚ブロック、
②右側胸部誘導のST上昇、
③正常QTc間隔。
本症候群の中には、実際右脚ブロック、左脚前枝ブロックなどの心室内伝導障害を伴う例もあるが、ほとんどの例で右脚ブロックのR’様にみえる所見は、実はJ波の顕著化によるものであるから、右脚ブロックという表現は適切でなく、「右脚ブロック様所見」または「J波の顕著化」と記載するのが妥当であると考えられる。
しかし、本症候群と進行性心室内伝導障(Lenegre病)とは類縁関係にあり、ともに遺伝子のSCN5Aの変異により生じるため、本症候群は完全右脚ブロック、左脚前枝ブロック、第一度房室ブロックなどの伝導障害をしばしば合併する。
しかし、このような場合も右脚ブロックや左脚前枝ブロック
所見が重要なのではなく、J波の顕著化とST上昇が重要な所見である。
J波はOsborn波、イプシロン波などとも呼ばれ、低体温時
などにQRS波とST起市始部との間に出現する陽性波で、従来、臨床心電学ではあまり関心が払われてこなかった。
その成因は、心内膜・心外膜下筋層細胞の活動電位波形の相違によることが近年明らかにされてきた。
一般に、心外膜下筋層細胞活動電流のうち、外向き電流(Tto,IKATP)の増加、あるいは内向き電流(ICA-L,INa)の減少は、J波の顕著化の方向に働く。
Brugadaらは正常QTc間隔を本症候群の心電図所見の特徴の一つとして挙げているが、最初の報告にもH-V時間延長例が含まれている。
QT間隔延長を特徴とする先天性QT延長症候群は本症候
群と類縁関係にあり、その一型であるLQT3(先天性QT延長症候群Ⅲ型)は本症候群と同様に遺伝子SCN5A変異により生じる。
そのため、本症候群でQTc間隔延長を示す例は多くあり、正常QTc間隔を本症候群の特徴的所見とすることは適当でない。
したがって、本症候群の特徴的心電図所見は以下のごとく表現される。
①右側胸部誘導における著明なST上昇、および
②J波の顕著化による右脚ブロック様所見(右側胸部誘導のR波様所見)。
(図1)

2. coved typeとsaddle-back type
本症候群のST上昇には、coved typeとsaddle-back type
の2型がある。
(図2)

(1)coved type
covedという言葉は、「峡谷のような」という意味で、著しく上
昇したいST前半部があたかも谷底に切れ込むように急峻に下降して陰性T波に移行する所見をいう。
この所見は本症候群の代表的な所見で、心室細動などの重篤な心室性不整脈を誘発する危険が高い所見である。
(2)saddle-back type
上昇した右側胸部誘導ののST部の波形が、あたかも馬の鞍のように中央が少し陥凹した形を示す。
coved typeは特異的な心電図波形を示すために心電図診断を誤るおそれは少ないが、saddle-back typeは、しばしば不完全右脚ブロックやnormal variantと誤られる。
(図3)

中略
健診、人間ドックなどで発見されるBrugada型心電図の多くはsaddle-back型で、この波形はcoved型に比べて心室細動などの悪性不整脈に進展する危険は低い。
しかし、後述するように、Brugada型心電図波形は経時的に著しく変動し、ある時点でcoved型であった例が、他の時点ではsaddle-back型に変化したり、また逆の場合もあるた
め、経過を追って心電図を観察することが必要である。
同一例の同一時点における心電図でもV1、V2がcoved型で、V3がsaddle-back型を示すような場合もある。
出典 日本医事新報 No.4223 2005.4.21
版権 日本医事新報社
引用文献を調べられる際には原著を参照ください。
Channelopathy
http://blog.m3.com/reed/20070916/Channelopathy
Brugada症候群の治療
http://blog.m3.com/reed/20071102/Brugada_
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
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ふくろう医者の診察室
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重症心不全のICU管理について勉強しました。 勤務医の間には興味のあることでも、開業医した途端に日常診療に関係がなくなる疾患があります。 今日のテーマはまさしく開業医にとっては彼岸の出来事といえます。 私も開業当初(随分昔のことです)、救急薬品としてイノバンを購入(ドブトレックスも?)したのですが一度も使わないまま期限が切れて廃棄した苦い経験があります。 結構高薬価だったように記憶しています。 急性心不全の治療薬を救急薬品として常備する必要はなさそうですが、アナフィラキシーショックなどに備えて一般救急薬品の常備は開業医にも必要です。 必要にならないほうがいいのですが、一度も使用しないまま期限切れで廃棄するのもつらいものです。 話が脱線してしまいました。
第35回日本集中治療医学会学術集会
重症急性心不全のICU管理
薬物治療の最新動向報告される 新たなマーカーも紹介
第35回日本集中治療医学会学術集会(会長=今井孝祐・東京医科歯科大大学院救命救急医学講座教授)が2月14~16日の日程で、「エビデンスを創る集中治療」をメーンテーマに東京都内で開かれた。
14日のシンポジウム「重症急性心不全のICU(集中治療室)管理」では、腎臓に負担をかけない治療を行う必要性が強調され、腎障害の程度が分かる新たなマーカーに関する研究成果が報告された。
そのほか、臨床現場で血管拡張薬や強心薬が選択される理由を、より詳細に分析すべきという提案もなされた。
日本医科大付属病院・佐藤氏 急性期の腎保護の重要性示す
「薬物療法:利尿薬・血管拡張薬」として報告した日本医科大付属病院集中治療室の佐藤直樹氏は、慢性心不全の治療については臨床現場に、腎臓を保護する必要があるとの判断が定着した半面、「急性心不全では、どこまで腎保護をすればよいか十分な検討が行われていない」と問題提起した。
急性期治療のポイントとしては酸素化の重要性を強調。
救急搬送されてきた患者は酸素マスクをしているものの、十分な酸素量が確保されているとは限らないという日本循環器学会のデータを紹介し、「酸素化をしっかりしたうえで、治療を始めることが腎保護には重要となる」と述べた。
薬物治療をめぐっては利尿薬と血管拡張薬のどちらをメーンで使うのかという論点を提示した。
佐藤氏は、同院で行った後ろ向きのデータから、「患者のバックグラウンドは差がないにもかかわらず、利尿薬を多く使うとクレアチニンが上昇する傾向がある。安易に使うことは避けた方が良い」との見方を提示。
一方で、血管拡張薬だけでは、「満足な利尿が得られるのは半数程度」とし、利尿薬と血管拡張薬を適切に組み合わせることが必要とした。
具体的には、フロセミド(利尿薬)とカルぺリチド(血管拡張薬)を例示した。
また、佐藤氏は、治療が腎臓に与える影響を測定するマーカーとしてL-FABP(肝型脂肪酸結合蛋白)が着目されていると報告した。
L-FABPは、近位尿細管で作られ、虚血や低酸素状態になると尿中に排泄される特徴があるという。
佐藤氏は、「尿中のL-FABPを測定することで尿細管の障害をある程度評価できる」とし、カルペリチド治療群(n=8)と硝酸薬で治療した群(n=8)を比較したデータを説明した。
評価項目は尿中のL-FABP値で、ICU入室時、4、8、12時間後、1日、3日後に測定した。
それによるとカルペリチド群では4時間後の時点でL-FABP値が下がり、佐藤氏は、「時間単位で、ある程度腎保護に役立つことを示すデータ」との見方を示した。
さらに、佐藤氏は、個々の患者のL-FABPをリアルタイムで把握できるようになれば「急性心不全の治療における腎保護は大きな転機を迎える」と見通した。
国立循環器病センター・横山氏 血管作動薬の日米比較
一方、「急性心不全の集中治療管理における血管作動薬の日米比較」と題して発表した国立循環器病センター心臓血管内科の横山広行氏は、急性心不全の治療で用いられる血管拡張薬や強心薬の使用について、「今後は急性心不全全体ではなく、疾患ごとに何を使うべきか検討しなければならないのではないか」との考えを表明。
多施設登録調査研究を実施し、病因、心機能、血行動態などの観点から血管拡張薬や強心薬が選択されている理由を分析すべきとの考えを示した。
横山氏は、米国ではドブタミン、塩酸ドパミン、その他の強心薬を使用する割合が9%程度と低い一方で、欧州の29.8%と日本(国立循環器病センター)の20.3%は似通った傾向を示していると説明した。

米国で強心薬が使われなくなった背景としては、06年に血管拡張薬(硝酸薬、nesiritide)の方が、強心薬(ドブタミン、milrinone)よりも院内死亡率が有意に低かったとする臨床試験データが報告されたことを挙げた。
さらに横山氏は、欧州の診療ガイドラインは、疾患ごとに使用する医薬品を明示している点に言及し、欧州と同様、日本で強心薬の使用頻度が高い要因を、疾患ごとに分析する必要性を指摘した。
出典 Japan Medicine 2008.2.29
版権 (株)じほう
<参考サイト>
血管拡張薬はどこまで有効か
--より効果的な薬剤選択のために
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昨日は
「低リスク安定冠動脈疾患患者の治療はどうあるべきか」
というテーマで、JSAPとCOURAGEの大規模臨床試験を通じて勉強しました。
最近の国内の学会でも予防的PCIの多用に対する反省の声があがっています。
きょうは第66回心臓血管放射線研究会(2008.1.19、津市)での発表で勉強しました。
スタチン製剤の活用でプラーク退縮効果 2種のMRI検査の効果
津市で1月19日に開かれた第66回心臓血管放射線研究会では、日本心血管画像動態学会との合同企画で「心血管画像診断法の予後評価における役割」をテーマにシンポジウムが行われた。
日本で活発に行われているとされる非急性期の経皮的冠動脈形成術(PCI)のエビデンスに対する疑問が率直に示されるなど、心血管治療では生活習慣病予防のアプローチを重視する姿勢を求める意見が相次いだ。
待期的PCIは適応基準明確化を
合同企画シンポジウムで、医療法人坂崎診療所・画像診断センターの多田村栄二氏は、「心臓核医学の予後評価におけるエビデンス」と題して講演した。
同氏は、「現代の医療に求められる最大の目標は、患者の予後の改善と医療費の抑制だ」として、「国内で盛んに行われているPCIは極めて高額な医療費をかけている割に、予後の改善に結びつかない非本質的な治療法」として厳しく批判した。
同氏は、この問題提起は国内外でのスタディー結果を待つまでもなく、現状では常識的な考え方であることを強調。
いくつかのスタディー結果を示しつつ、米国でのデータでは心血管SPECT検査で正常だった患者が重大症例に至る確率は0.6~0.9%にすぎないとして、核医学検査重視を求めた。
PCIについては、直感的診断による非急性期の患者に施行されている例が多く、医療側の不安がPCIを増加させているのではないかと疑問を示した。
特に、現在の保険制度の問題点の1つとの認識も示し、「PCI至上主義への偏向は、年間数千億円の無駄につながり、本質的で合理的な医療を軽視している」と述べた。
さらにPCI1回の入院費用は総額で200万円になるケースもあり、うち自己負担が10万円程度としても、残りが保険財政から支出されているとの現状を明らかにした。
その上で、現在の循環器医療に求められることとして、
①待期的なPCIの適応基準明示
②根拠となるエビデンスの公開
③厳格な監視体制
を挙げ、「非侵襲的検査により患者の持つ心事故の危険性を評価し、PCIに伴うコストやリスクと天秤にかけ、適応を判断する」姿勢の重要性を強調した。
「非侵襲的検査」について同氏は、心臓MRI検査を示し、その診断能力をアピール。
放射線被曝がなく患者への負担も少ないこと、長期的予後評価が行えるエビデンスが集積されつつあることにも注目するよう求めた。
MRIによる予後評価については、三重大の栗田泰郎氏が報告。
「パーフュージョンMRIと遅延造影MRI」をテーマに、7年間にわたるMRI検査の集積結果を示しながら、正確な予後評価について持論を展開した。
栗田氏らの調査研究は、三重大の倫理委員会の承認を得て、2000年2月から07年2月まで、虚血性心疾患既往の患者、もしくは虚血性心疾患が疑われる患者で負荷パーフュージョンMRIと遅延造影MRI検査を三重大病院で施行した1132人を対象に行われた。
負荷パーフュージョンMRIの予後予測の有用性について栗田氏は、海外での報告はいくつかあるが、いずれも少数の患者による評価で、梗塞の評価が総合的に行える心臓MRI検査の特徴を十分に反映していないとして、研究を開始したことを明らかにした。
結果をみると、1年間のイベント発生率は、梗塞・虚血のいずれも認めない群では1.6%、梗塞のみを認める群7.6%、虚血・梗塞両方を認める群では14.9%となることが明らかになり、2つの検査を組み合わせた心臓MRI検査は、虚血と梗塞の総合的な診断が可能であり、遅延MRI単独よりも正確に予後評価できることが示唆されている。
栗田氏は、SPECT検査や造影CTに比して、両MRI検査の組み合わせは特に虚血性心疾患を非常に明瞭に発見し、将来の心事故や心臓死発生などの予後予測に役立つことを強調した。
不安定プラークは非観血的検査で監視
一方、最近急速に浸透し始めているマルチスライスCT(MDCT)の冠動脈疾患の診断については、近藤武氏(高瀬クリニック)が報告した。
近藤氏は、「64列MDCTにより、高画質の冠動脈画像が比較的容易に撮影できるようになった」として、これによって冠動脈狭窄(きょうさく)ばかりでなくプラークの質的、量的検討がなされるようになったことを強調。
急性冠症候群(ACS)の75%以上は冠動脈プラークの破裂によるとされるが、近藤氏は「この不安定プラークを同定し、それがいつ破裂するか予測することは極めて難しい」とした上で、不安定プラークは必ずしも有意狭窄を伴うものではなく、むしろ狭窄度は軽く、したがって狭心症症状がなくても不安定プラークが存在し得ることに理解を求めた。
ただ、不安定プラークの臨床的発見には、IVUSやOCTなどの観血的検査を行う必要があるが、症状のない患者に観血的検査を実施するのは困難なことから、低侵襲の検査が必要とされてきた経緯がある。
近藤氏は、現時点で不安定プラークの描出に関して最も期待されているのはMDCTだとして、不安定プラークのMDCT画像について病理所見を示しながら解説を加えた。
この中で、近藤氏は、MDCT上での不安定プラークのプロスペクティブスタディーでは、不安定プラークは
①ポジティブ
②リモデリング
③ソフト・プラーク
④スポッティ・カルシフィケーション
の4つのタイプに分かれることを示しながらも、プロスペクティブではMDCT上の不安定プラークの特徴は未だ明確ではないことに留意を求めた。
近藤氏はこのプロスペクティブスタディーを通じて、スタチン製剤でのプラーク退縮を認めたことを明らかにし、「不安定プラークがどの血管部位にできるか、その大きさはどうなるか、いつ破裂するかを予測するのは困難だが、スタチン系製剤の使用でプラークが退縮する効果は大きいとの示唆は与えられた」として、スタチン製剤の薬剤効果判定検査としてもきわめて有用なことを示した。
<コメント>
米国の医学雑誌では、数十年前から医療経済学の考えが持ち込まれた発表が数多く見られます。
国内でも、今回の発表のような内容が今後も増えるものと思われます。
一定の医療費というパイの中での取り合いということでしょうが、インターベンションなどの診療の萎縮につながらなければよいのですが。
これらのことは本来は厚労省や支払い基金側が検証することかも知れません。
財務省からの厚労省への圧力で今の医療の荒廃を招いたこともあり、厚労省だけが悪役ではないのでしょうが、経済至上主義も困ったものです。
今日の某新聞の朝刊にこんな記事が載っていました。
医療を知らない医療経済学者(東京○科○科大大学院教授)川○孝○氏が書いた「勤務医不足 解消遠く」。
中略
「根本的な問題は、医師の絶対数が足りないこと。国は、まずその事実を認め①供給過剰にある歯科医師を医師に転向させる②海外の医学部を卒業した日本人に医師国家試験受験の機会を与える③外国人医師に対する臨床修練制度を拡大する」など、即効性のある方策を模索してはどうか。
以下略。
一定の影響力のある人だけに実現する可能性もありそうです。
医師をはずした「○○諮問会議」ですんなり国会を通る可能性だってあります。
昔、アメリカ国内の医学部へ入れない医師志望者がメキシコの医学部へ行ってアメリカに戻るという話を聞いたことがあります。
今でさえ医師の質は不均一です。
質の確保の問題をこの医療経済学者はどのように考えているのでしょうか。
待遇や身分保障があってはじめて医師、パラメディカルを含めた医療の質が確保されます。
それは官僚、法曹界、教育界なども一緒のはずです。
国会議員や市町村議員の場合は、待遇や身分保障が保たれているのに質が確保されてないではないかというツッコミには答えを持ち合わせていません。
<参考>
日本循環器学会の待機的インターベンションに関するガイドラインはどうかと調べてみました。
これに関するガイドラインは2000年のみで最近はないようです。
ちなみに「急性冠症候群の診療に関するガイドライン」は2007年に改訂版が出ています。(初回は2002年)
冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン
Japanese Circulation Journal Vol. 64, Suppl. IV, 2000
予 後
薬物療法のみの群,PTCA 群,CABG 群について比較
すると,一般的には,いずれの治療法も選択しうる1枝
疾患では,6ヶ月~3年後の死亡,心筋梗塞の発生率は
3群間に有意な差はない.
しかし,生活の質(QOL),運動能の改善,発作の出現頻度についてはPTCA,CABG の方が薬物療法のみと比べて有意の改善が認められる.
再血行再建施行の頻度は,薬物治療のみおよびPTCA の方がCABG に比較して高い.
いずれの治療法も選択しうる2枝疾患では,2~3年後の死亡,心筋梗塞の発生率は薬物療法のみとPTCA の間に有意な差はないが,QOL,運動能の改善,発作の出現頻度についてはPTCA の方が薬物療法のみと比べて有意の改善が認められる.
しかし,PTCA においては術後早期の合併症により3年後までの死亡,心筋梗塞の発生率が薬物療法よりもむしろ高くな
るという報告もみられる.
一方,近年,積極的に脂質低下療法を施行することにより,安定狭心症患者の
1.5年後の虚血イベントをPTCA 施行例以上に低下させうるとの報告も認められる.
薬物治療とPTCA の比較
P T C A の利点;血行再建により確実に症状軽快
欠点;不適当な病変あり,侵襲性,再狭窄
あり,合併症を伴う
薬物治療の利点;非侵襲的
欠点;症状,QOLの改善が劣る
<コメント>随分簡潔な記載です。
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
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国内では低リスク安定CADに対するPCIはいわば日常茶飯事に行われているのが現状です(と思われます)。
PCIを施行する前に十分な内科的管理を行うのはもちろんです。
しかし、この「低リスク安定CADに対するPCI」の意義については意外ときちんとしたエビデンスやガイドラインは今まであまりなかったようです。
きょうはそのあたりについて勉強しました。
内容は、国内のJSAPと国外のCOURAGEの紹介と解説です。
展望
低リスク安定冠動脈疾患患者の治療はどうあるべきか
JSAPとCOURAGEの結果を踏まえて
安定冠動脈疾患(CAD)患者に対して,果たしてステント時代の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と薬物療法のどちらが初期治療として適切か―。
この課題を日本と北米でそれぞれ検討した2件の臨床試験,Japanese Stable Angina Pectoris(JSAP)とClinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation(COURAGE)の結果が,昨年相次いで報告された。
それによると,両試験とも両群の総死亡に有意差はなかったものの,心血管イベント抑制効果は,低リスク症例を対象としたJSAPではPCI療法(初期治療としてPCIと薬物療法を同時にスタートする治療法)で有意に優れたのに対し,高リスク症例を含めたCOURAGEでは両群に有意差は認められず,相反する結果となった。
そこで,背景因子の相違なども踏まえたうえで,両試験の結果をどのように解釈し,わが国の安定CAD患者の大多数を占める低リスク症例の治療にどう生かすべきか,JSAPの主任研究者を務めた兵庫県立尼崎病院の藤原久義院長に聞いた。
JSAP
低リスク安定CADへのPCI療法の優位性が明らかに
安定CADでは,高リスクの左冠動脈主幹部,左前下行枝分岐部( 5 mm以内),3 枝病変などは20%ほどにすぎず,低リスク患者が約80%を占める。
安定CAD患者の治療方針について,欧米のガイドラインでは高リスク症例には冠動脈バイパス術(CABG)を推奨し,低リスク症例にはバルーン血管形成術(POBA)時代のエビデンスをもとに,初期治療として薬物療法を実施し,コントロール不良の場合にのみPCIまたはCABGを施行する薬物先行療法を推奨している。
これに対して,わが国のガイドラインでは安定CAD患者に対する明確な指針は示されていない。
しかし,大多数の施設で低リスクの安定CAD患者に対して,PCIを薬物療法と同時に併用するPCI療法を選択しているのが現状だ。
そこで,「日本人低リスク安定CAD患者において,PCI療法と薬物先行療法のどちらが予後改善に優れるか,前向きランダム化試験によりエビデンスを構築したいと考えた」と,藤原院長は同試験実施の経緯を説明する。
昨年の日本循環器学会ならびにアジア太平洋心臓病学会で発表されたJSAPには,全国から78施設が参加〔Fujiwara H, et al. Inter J Cardiol 2007; 122(suppl): 7〕。
低リスク安定CAD患者384例を,
(1)PCI療法(PCI)群
(2)薬物先行療法群
―の 2 群にランダムに割り付け,平均3.3年間追跡した。
PCI群の大半には,ベアメタルステントが留置された。
追跡の結果,症状コントロール不良のためPCI/CABGの追加を要したのは,PCI群25.0%,薬物先行療法群36.6%とPCI群で有意に低かった(これらの症例には待機的PCI/CABGがなされ,以下の評価では除外されている)。
1 次評価項目は,
(1)総死亡
(2)総死亡+急性冠症候群(ACS;急性心筋梗塞および入院を要する不安定狭心症)
(3)総死亡+ACS+脳血管障害
(4)総死亡+ACS+脳血管障害+再入院―の 4 項目。
総死亡についてはPCI群2.93%対薬物先行療法群3.88%,ハザード比(HR)0.865で,両群に有意差は認められなかった。
しかし,「総死亡+ACS」はPCI群7.92%対薬物先行療法群14.88%と, 52.6%の有意(P=0.021)なリスク減少を示し(図 1),「総死亡+ACS+脳血管障害」,「総死亡+ACS+脳血管障害+再入院」も,それぞれ45.9%(P=0.045),33.6%(P=0.040)の有意なリスク減少を示した(表)。


PCI群のイベント抑制には, ACSの減少(5.02%対11.71%,P=0.012)が寄与していた。
また,狭心症症状の改善も,治療開始 1 か月後から 3 年後まで,一貫してPCI群で有意に勝った。
COURAGE
PCI群と薬物先行療法群の心血管イベント抑制に有意差なし
一方,北米50施設が参加したCOURAGEでは,安定CAD患者2,287例をPCI群と薬物先行療法群にランダムに割り付け,中央値で4.6年間追跡した。
その結果,追跡中に血行再建術の追加を要したのは,PCI群21.1%対薬物先行療法群32.6%(P<0.001)。
1次評価項目の「総死亡+非致死性心筋梗塞」はPCI群19.0%対薬物先行療法群18.5%,HR1.05で有意差は認められなかった(図 2)。

2次評価項目の「総死亡+非致死性心筋梗塞/脳卒中」(PCI群20.0%対薬物先行療法群19.5%),入院を要するACS(PCI群12.4%対薬物先行療法群11.8%)についても,両群に有意差はなかった。
また,総死亡もPCI群7.6%対薬物先行療法群8.3%と,やはり両群に有意差はなかった。
PCI群と薬物先行療法群のイベント抑制効果に有意差がないとのCOURAGEの結果は,Katritsisらの5,000例以上を対象とするメタ解析の結果とも一致するものである。
ただし,COURAGEでの狭心症の発症改善率は一貫してPCI群で高かった(1,3 年後には有意であったが, 5 年後は有意には至らなかった)。
このことは,昨秋の米国心臓協会(AHA)でのSPECTによるCOURAGEのサブスタディで,PCI群は薬物先行療法群に比べて,虚血の軽減と狭心症の改善に効果的であるという報告と一致する。
JSAPでは登録時の責任冠動脈病変に起因する不安定狭心症が減少
では,両試験の結果に乖離が生じた理由はどう解釈できるのか。
まず,両試験の対象を比較すると,JSAPが低リスクの安定狭心症のみを対象としたのに対して,COURAGEでは高リスク症例も含むという相違がある。
しかし,通常の解釈からは,高リスク症例を含むほうが,むしろPCIの有効性が出やすく,COURAGEで両群に有意差がない点を説明できないという。
「COURAGEのデータを見ると,ACSには心筋梗塞は含まれず,不安定狭心症のみを指していると思われる。JSAPの薬物先行療法群における総死亡とACS(心筋梗塞をも含む)発生率は約15%と,COURAGEにおける「総死亡+心筋梗塞+ACS」27.0%の 2分の1 強であり,日本人の治療成績として妥当なデータだ。
一方,PCI療法ではCOURAGEの27.6%に対し,JSAPでは約 8 %と 3分の1 ~ 4 分の1 にすぎず,明らかに低い。したがって,なぜJSAPでPCI群のACS発生率が低かったかが焦点となる」と藤原院長(表)。
ACSは,責任冠動脈病変の進展により生じる。
JSAPで新規に発生したACSの責任冠動脈は,
(1) JSAP登録時にPCIの対象となる有意狭窄病変を持つ冠動脈部位
(2) JSAP登録時には有意狭窄がなく,PCIの対象とならなかった冠動脈部位
―に分かれる。
JSAPでは,ACS発生時に全例で冠動脈造影(CAG)を行っており,新規ACSの責任冠動脈病変を特定している。
その解析では薬物先行療法群と比べて,PCI群では
(1)由来のACSは有意に減少したが,(2)由来のACSは同様であった。
したがって,PCI群によるACSの減少は,(1)に起因する不安定狭心症の減少を反映したものであることが明らかになった。
つまり,初期病変の狭窄をPCIできちんとケアできたために,その後不安定狭心症が生じなかったわけだ。
これに対してCOURAGEでは,責任冠動脈病変のデータがないにもかかわらず,ACSの責任冠動脈は(1)ではなく,(2)であると推論している。
PCIの手技的な差を反映か
藤原院長は「JSAPは,ホストコンピュータを用いて対象のランダム化を実施し,ACSの診断も評価委員会が判定を行っており,主治医の主観が入ることはなく信頼性は高い。
したがって,両試験で乖離が生じた理由としては,日本のPCIテクニックが優れている可能性が考えられる。
この根拠としては,PCI 4 か月後のACS発生率がJSAPでは 1 %であるのに対し,COURAGEでは約 7 %(入院を要するACS+心筋梗塞,Kaplan-Meier曲線より)と大きな開きがあることが挙げられる。
この大きな差は,JSAPが低リスクCADのみであるのに対し,COURAGEが高リスクCADも含むという対象患者の違いだけでは説明不能だ。
むしろわが国では,通常PCIは血管内超音波法(IVUS)ガイド下でより安全に行われているのに対し,欧米ではそうではないなどのPCI施行方法の違いが主因と思われる」と指摘する。
両試験ともベアメタルステント時代の追跡であるが,薬剤溶出ステント(DES)を用いたとしても, COURAGEの著者らが示唆するように,(2)由来のACS発生が主流とすれば,結果が変わるとは考えにくい。
しかし,図 1 のJSAPのKaplan-Meier曲線が 1相性で初期からPCI群が優れ,経過とともに差が大きくなるのと異なり,図 2 のCOURAGEのPCI群の曲線は 2 相性を示す。
すなわち,薬物先行療法群と比べて,PCI群ではPCI直後からACSの発生が多発して,曲線は急激に下降する。
一方,その後は逆にACS発生は減少し,数年後には薬物先行療法群と有意差はなくなっている。
このことは,PCI群での問題は初期のACS発生であり,DESを用いてこれを減少させることができれば,JSAPと同様にPCI群の予後が良好である可能性を意味する。
同院長は「JSAPの結果からは,わが国で主流となっている低リスク安定CAD患者に対するPCI先行療法の妥当性が証明されたと言える。
今回のJSAPの結果も踏まえ,現在,私が班長として『冠動脈疾患インターベンション治療の適応ガイドライン』の改訂作業を進めており,来年 3 月に発表する予定だ」と話している。
JSAPの詳細は,今月開かれる第72回日本循環器学会の「冠循環談話会」でも紹介されることになっている。
J-SAP Study
http://poppy.ac/jsap/contents/protocol.html
"短期予後とコスト"(JS-SAP Study)と
"長期予後"(JL-SAP Study)が紹介されています。
http://www.ebm-library.jp/circ/doc_japan/J0006.html
COURAGE
http://www.ebm-library.jp/circ/doc/html/c2002562.html
PCI は安定狭心症患者の症状の緩和(quality of life)と,ST上昇あるいは非ST上昇ACS の予後(quantity of life)改善効果が証明されている。
しかし,無症候性を含めた安定狭心症症例の予後改善効果には否定的な報告が多く,これは薬剤溶出性ステント(DES) が主流となった現在においても何ら変わってはいない。
COURAGE trial はこれまでの同様の試験に比べて圧倒的な症例数で行われたマルチセンター試験で,その信憑性は高い。
症例の内訳を見ても,低左心機能症例が除外されていることと男性の比率が高い以外は,ほぼリアルワールドを反映していると考えられる。
PCI 群では94%にステント(ほとんどBMS)が植え込まれ,薬物療法ではLDL-C に対するアグレッシブな治療が特徴である。
血圧・糖尿病のコントロールも良好で,厳重な薬物療法下においてはPCI はsecondary preventionの具にはならずpreventive intervention は意味がない,というのがメッセージである。
PCI のような局所治療では冠動脈全体に起こりえるプラークの不安定化やそこから生じるACSを予防することはできず,従って心臓死や心筋梗塞の発症を抑制できない,ということであろう。
最近はマルチスライスCT(MSCT)やMRI 等での非侵襲的な冠動脈病変の評価に注目が集まっているが,狭窄性病変だけではなくプラークの性状評価の重要性を改めて認識させられる。(中野・中村・永井)COURAGE研究サブ解析
http://blog.m3.com/reed/20071218/COURAGE_
Medical Tribune 2008.3.20
版権 メディカル・トリビューン社
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
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