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β遮断薬は生き残れるか 揺らぐ降圧薬第1選択の座
降圧薬としてのβ遮断薬の位置付けが揺らいでいる。
最近の大規模介入試験の結果を根拠に、英国のガイドラインでは第1選択から外された。
一方で反論もなされ、その扱いをめぐって論議が高まっている。
2006年6月に発表された英国の高血圧診療ガイドライン改訂版(NICE/BHS2006)は、世界的な議論のきっかけとなる衝撃的なものだった。
従来の英ガイドラインでは、β遮断薬を55歳未満の第1選択薬の1つに位置付けていた。
だがこの改訂により、β遮断薬の位置付けはステップ4、つまり第4選択まで後退してしまったのだ(図1)。

国際医療福祉大熱海病院内科教授の築山久一郎氏は「β遮断薬に退場を迫ったようなもの」と憤慨する。
(注;築山教授はβ遮断薬一筋で研究を続けられた先生です。我が国のβ遮断薬の歴史そのものといっても過言ではありません。「憤慨する」という表現だったので思わず追加させていただきました)
翌年の07年9月には、欧州高血圧学会と欧州心臓病学会が合同して作っているガイドラインも改訂された(ESH/ESC2007)。
こちらではサイアザイド系利尿薬、Ca拮抗薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)と並んで、β遮断
薬も第1選択に生き残った。
ただし、降圧薬を併用する際、利尿薬とβ遮断薬の併用は代謝に悪影響を与える可能性があるとして、選択肢にはなるが推奨しないとした。
さらにエビデンスがないα遮断薬との併用も外され、結局β遮断薬の推奨併用薬はCa拮抗薬だけになった(図2)。

このようにガイドラインが変わってきた理由は、降圧薬の種類によって効果に差があるかを検討した大規模介入試験で、対照薬に比べβ遮断薬が劣っていたとする結果が相次い
で発表されたためだ。
RCTやメタ解析で負けた
その代表例が、左室肥大を合併した高血圧患者(9193人、平均66.9歳)を対象にARB(ロサルタン)とβ遮断薬(アテノロール)の効果を比較したLIFE試験(2002年)。
降圧の程度は両群間で有意差はなかったが、複合1次エンドポイント(心血管疾患死、脳卒中、心筋梗塞)発生のリスクはARB群の方が13%、脳卒中に限ると25%も低かった。
また糖尿病の新規発淀のリスクもARB群が25%低くなっていた(いずれも有意差あり)。
さらに、複数の大規模介入試験をまとめたメタ解析でも、β遮断薬に不利な結果が出ている。
LIFE試験も含めた13の試験を対象に、β遮断薬と他の降圧薬で心血管イベント抑制効果に違いがあるか比較したリンドホルムらの解析によれば、脳卒中の発生リスクはβ遮断薬が16%高かったという(ただし心筋梗塞や全死亡では差はなかった)。
埼玉医大腎臓内科教授の鈴木洋通氏は「患者によって至適用量に幅があるなど、β遮断薬は他の降圧薬に比べて使いにくさがあり、現状も降圧薬としての使用は限られている。ガイドラインは非専門医が多く参照するものだけに、特に問題となる合併症がない患者の第1選択薬からβ遮断薬が外れるのは、やむを得ないだろう」と話す。
正当な評価を受けていない
だが、これには反論も多い(表)。

例えばLIFE試験では、有意差はないがβ遮断薬群の収縮期血圧が約1mmHg高く、得られたイベント発生率の差はその血圧差で説明が付くという。
同じ血圧値まで下げられれば、イベント発生率に差は出なかった可能性があるというわけだ。
また糖尿病の新規発症も、明らかに問題になるのは複数のリスクが集積した患者に限られるとの解析もある。
築山氏は「これまでの大規模介入試験やメタ解析は、β遮断薬を適切に評価できていない。それだけに、現時点で第1選択から外すのは時期尚早」という意見だ。
東京都老人医療センター副院長の桑島巌氏も「高齢者では動脈硬化が進行しβ遮断薬が効きにくいので、特に合併症のない高齢者なら第1選択から外してもいい。だが、青壮
年までと心血管合併症のある高齢者では、第1選択に残る」と指摘する。
ガイドライン絶対視は避ける
β遮断薬は、心不全や心筋梗塞の既往などがあれば積極的に選択すべき降圧薬になる。
特に冠動脈疾患のリスクが高い人ほど、β遮断薬の有用性も高まる。
「ガイドラインの第1選択から外れることで医師の認識が低くなり、必要な患者に使われなくなることを危愼する」と築山氏。
β遮断薬を選ぶべき症例があることは鈴木氏も同意見で、「降圧薬の第1選択から外れても、β遮断薬が全否定されたわけではない」とする。
高血圧を診る医師はガイドラインの読み方も学ぶ必要があるようだ。
循環器の臨床薬理と臨床試験に詳しい、琉球大臨床薬理学教授の植田真一郎氏は「ガイドラインは薬剤に優劣の順番を付けるものではなく、どのような治療が患者にとって利益・不利益になるか、臨床のヒントとなる情報を提供するもの。
過度に絶対視せず、降圧自体が重要という原則を念頭に、自分の臨床経験にガイドラインの内容を加えていくという
姿勢で受け入れればいい」と話す。
日本のガイドラインでも、各降圧薬の得意な分野(積極的適応)と不得意な分野(禁忌)がまとめられている。
「この表を参考に、積極的適応となる薬剤があれば試みてはどうか」と植田氏はアドバイスする。
ちなみに、現状ではβ遮断薬を第1選択薬の1つにしている日本高血圧学会のガイドラインも、今秋に改訂案が発表される。
その内容にも注目したい。

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