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第30回日本高血圧学会総会ランチョンセミナー「脳梗塞の再発予防戦略:血圧管理の重要性と抗血小板療法」(座長:滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学部門教授・上島弘嗣氏)では,"熊本方式"といわれる地域の脳卒中診療ネットワークを構築したことで知られる熊本市立熊本市民病院神経内科部長の橋本洋一郎氏が,脳梗塞の再発を予防するための実践について解説。
抗血小板療法や抗凝固療法のほか,高血圧症や脂質異常症,糖尿病や喫煙などの危険因子に対する多角管理が重要であることを強調した。
すべての地域に多科多職種の脳卒中診療ネットワークを!
脳卒中は高度な急性期治療を要する疾患だが,のみならず回復期に身体機能回復のリハビリテーション(リハ),維持期には日常生活への復帰と維持のためのリハ,急性期から維持期まで長期にわたる再発予防が必須である。
したがって,多科多職種による病期に応じた多面的ケアが求められる。
これを単独の医療施設で行うことは難しく,時に現実的でない。
例えば熊本市とその周辺の人口約100万の医療圏では,急性期病院である済生会熊本病院,熊本赤十字病院,熊本市民病院,熊本医療センターの神経内科に年間約1,500例の脳梗塞患者が入院する。
この 4 施設の神経内科医は,レジデントを含めて15名にすぎない。
この限られた人数で日々運ばれる患者に対応するには,急性期病院の在院期間をできるだけ短縮,リハ専門病院に回復期医療を担ってもらう必要がある。
この点から橋本氏は,個々の病期を担当する病院と病院,診療所がネットワークを作る必要があると考えた。
こうして,かかりつけ医,急性期病院,リハ専門病院,療養型病院・施設がそれぞれの役割を受け持って連携する地域完結型診療ネットワークが,10年ほど前に構築された。地域連携クリティカルパスを開発し,施設間での診療情報の共有や診療指針の共通化を図ることにより,継続的医療の実現(シームレスケア)やその質の向上に努めてきた(図1)。

このシステムは熊本方式として知られ,厚生労働省の推進する地域医療連携のモデルにもなっている。
成功の背景には,熊本地域では回復期リハ病院が充実していたという事情があった。
これに対して,首都圏ではリハ病棟の病床数が少なく,多くの患者が地元でリハを受けられない状況だという。
同氏は地域の医療施設がネットワークを作ることの意義を強調し,リハ専門医とリハ病床の不足をいかに克服するかが,今後の大きな課題だと指摘した。
入院当日から再発予防のアスピリン投与を始める
脳梗塞の急性期治療は,近年のCTやMRIの進歩,rt-PA療法の導入で大きく前進した。
しかしMRIが24時間稼働する施設は限られ,rt-PA療法の適応となる患者は一部であるなど課題も多い。
橋本氏は臨床病型別に急性期治療を概説。
入院当日から再発予防を始める意義を強調した。
再発予防について抗血小板療法のエビデンスは確立している。
30万例に及ぶ国際共同研究ATTのメタ解析では,アスピリンを主体とする抗血小板療法は急性期脳卒中で11%,脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往例では22%,血管イベントを減少させた。
このため日本,米国,欧州の脳梗塞急性期ガイドラインは一致して発症早期のアスピリン投与を推奨する(表1)。

欧米ではエビデンスに基づきアスピリンだけが推奨されているが,日本ではオザグレルがあるため,アスピリン開始が遅れる傾向がある。
同氏は入院当日から数日間両薬を併用し,以降はアスピリン単独に切り替えるという。
非心原性脳梗塞慢性期の再発予防に関しては,各国のガイドラインでやはり共通してアスピリンを第一選択薬に挙げる(表2)。

日本ではチクロピジン,シロスタゾール,クロピドグレルも選択できる。
その使い分けについては,「原則的にエビデンスが豊富で安価なアスピリンを用い,合併症などの病態に応じて高価な薬を選ぶ場合もある」という。
再発予防のための薬物治療は,加齢とともにリスクが高まることを考えれば,生涯継続してもらうことが肝心である。
急性期病院入院中は高価な抗血小板薬を使用できても,リハ病院ではそれを継続できないケースがあることには注意すべきである。
用量について,急性期病院の処方をリハ病院で変更しにくいことがある。
アスピリンは急性期の推奨用量160~300mg/日から慢性期の75~150mg/日に減量することになるが,これは急性期病院で行うほうが適切であろう。
同氏は,「入院当日からアスピリン腸溶錠を 2 錠,2 週間後に 1 錠」を基本とする。連携先である回復期リハ病院での処方継続率も85%と,非常に高く維持されているという。
抗血小板薬の併用をめぐっては,最近ではアスピリン+クロピドグレルに期待が寄せられた。
しかし,脳梗塞患者では出血性合併症のリスクを上回るベネフィットは確認されていない。
「再発予防における抗血小板薬併用は慎重に」と同氏は語る。
Medical Tribune 2008.2.14
版権 メディカル・トリビューン社
他に
「井蛙内科/開業医診療録」
http://wellfrog.exblog.jp/
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。
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