戯れ言たれる侏儒
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今更 「JIKEI HEART Study」と思われる先生方もおられるかと思いますが、PROBE法の開発者のDahlof先生の考えに触れることができること、そしてKYOTO HEART Studyについて知ることができるということでとりあげさせていただきました。

実は私自身JIKEI HEART Studyについてはエンドポイントの設定や追跡率について十分わからず疑問に思うことがあります。

そのことについては別の機会に触れさせていただきたいと思います。

 中川一政  リトグラフ
http://page4.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/d82554835

日本人におけるバルサルタンのエビデンス その1(1/2)
日本人高血圧患者においてバルサルタンのエビデンスを立証したJIKEI HEART Study―。
そしてやはり日本人高血圧患者を対象にさらなるバルサルタンのエビデンス構築を目指す進行中のKYOTO HEART Study―。
いずれも試験デザインはPROBE法である。

本座談会ではPROBE法の生みの親でJIKEI HEART Studyのco-chairmanも務めたスウェーデン・シャルグレンスカ大学病院教授のBjorn Dahlof氏,KYOTO HEART Studyの試験統括責任者である京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学教授の松原弘明氏をお招きし,熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能薬理学教授の光山勝慶氏の司会のもとで,PROBE法に関する考察も含めたかたちで日本人におけるバルサルタンのエビデンスをめぐって話し合っていただいた。

光山 勝慶 氏(司会) 
熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能薬理学 教授

Bjorn Dahlof 氏 
スウェーデン・シャルグレンスカ大学病院 教授
松原 弘明 氏 

京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科学 教授

概要
光山
 
本日は,まずDahlof先生からJIKEI HEART Studyの成績と同Studyの試験デザインであるPROBE法についてご紹介いただき,続いて松原先生からKYOTO HEART Studyの概要と進行状況をご紹介いただきたいと思います。
では,Dahlof先生からよろしくお願い致します。

Dahlof 
JIKEI HEART Studyの仮説は,「高血圧と心血管系疾患を有する日本人患者において,従来治療にARBバルサルタンを投与した場合,心血管イベント発症率を改善する」というものでした。
それまで,欧米人を対象とした大規模臨床試験においてバルサルタンのエビデンスが得られていましたが,アジア人でのエビデンスはありませんでした。
そこでわれわれは,日本人を対象にバルサルタンのエビデンスを打ち立てようと考えたのです。
しかもわれわれは,高血圧から虚血性心疾患そして心不全に至るまでの心血管系疾患の全体,すなわちCardiovascular Continuumをカバーしたいと思いました。
その結果,JIKEI HEART Studyでは試験時における既往歴が高血圧88%,冠動脈疾患33%,心不全11%という患者構成となりました。
なお,冠動脈疾患や心不全の患者も背景には高血圧がありました。
対象はバルサルタン群(1,541例)と非ARB群(従来降圧治療強化群:1,540例)に無作為に割り付けられました。
JIKEI HEART Studyの試験デザインにはPROBE法が用いられました。

試験開始時の血圧は両群ともに139/81mmHgで,試験開始時の使用薬剤はCa拮抗薬67%,ACE阻害薬35%,β遮断薬32%,利尿薬10%,スタチン31%などでした。
バルサルタン群における最終的なバルサルタン平均投与量は75mg/日でした。
試験終了時におけるCa拮抗薬,ACE阻害薬,β遮断薬の投与量はバルサルタン群で減少し,従来降圧治療強化群では増加していました。
両群ともに使用した平均降圧剤数は2.4剤でした。バルサルタン群では16例の脱落,従来降圧治療強化群では13例の脱落があっただけです。
欧米での臨床試験を遥かにしのぐ良好な追跡率は,日本の医療制度や良好な医師・患者関係を考えると納得がいきます。

JIKEI HEART Studyの対象は,平均年齢65歳,男性66%,女性34%,BMI24kg/m2などと,日本人の集団として非常に代表的な特徴を有していると思います。

JIKEI HEART Studyの1次エンドポイントは複合エンドポイントとし,2次エンドポイントは1次エンドポイントを構成する各エンドポイントから成立しています。JIKEI HEART Studyは,追跡3年を越えた時点でバルサルタンの利益が明白であることから,データ安全モニタリング委員会(DSMB)の勧告により早期終了となりました。

バルサルタン追加投与(131/77mmHgの降圧を達成)による予後改善を日本人で立証したJIKEI HEART Study
JIKEI HEART Studyの結果ですが,もうよく知られているように,同等の降圧下(到達降圧値バルサルタン群131/77mmHg,従来降圧治療強化群132/78mmHg)のもとで,バルサルタン群では従来降圧治療強化群よりも1次エンドポイントが39%有意に減少しました。また,脳卒中,入院を要する心不全,入院を要する狭心症,解離性大動脈瘤もバルサルタン群で有意にリスク減少しました。
いずれもリスク発症数は少数ですが,減少率には大きな差が認められました。
JIKEI HEART Studyにおける降圧値は,これまでの高血圧関連の大規模臨床試験で最も低い値でした。139/81mmHgからスタートしても,ここまで降圧が可能であることがJIKEI HEART Studyで示されました。「全エンドポイントの治療効果」をみると,エンドポイントが同じ方向に変化し,全体的な心血管系疾患の負荷軽減がはっきりと見て取れます。
日本人という均一な集団を対象としているため,その結果は強力でインパクトがあります。
未発表データですが,ハイリスク高血圧を対象とした大規模臨床試験VALUEの東洋人を対象としたサブ解析では,欧米人よりも優れたデータが得られていました。
JIKEI HEART Studyで示された大きな減少率は,VALUEの東洋人におけるデータを踏まえると,さほどの驚きとは思えません。
いずれにせよ,JIKEI HEART Studyでは,バルサルタン75mg/日という欧米人の投与量に比べると低用量の追加投与という戦略の有用性(Cardiovascular Continuumに対する予後改善効果)を,日本人で立証したものであると言えます。
これはARBのなかでもバルサルタンに特異的な効果であると考えられます。

光山 
ありがとうございました。
松原先生,何かご質問はありませんか?

松原 
TIAや狭心症の診断基準はどうなっていたのでしょうか?

Dahlof 
TIAは何らかの神経症状が24時間以内に回復するという定義に基づき,神経内科医が診断しました。
狭心症はAHA/ACC(米国心臓協会/米国心臓学会)の診断基準に基づき,心電図変化,胸部不快感・胸痛,冠動脈疾患既往などから診断しました。
スパズムの関与が明らかな1例を除き,入院した狭心症患者の全例で冠動脈造影が実施されたとのことです。

松原 
入院した狭心症患者は,安定狭心症ではなく不安定狭心症ということですね。

Dahlof 
そうです。不安定狭心症による入院です。

 

試験デザインをめぐって(PROBE法vs二重盲検法)                                           

光山                                                         続いてDahlof先生,JIKEI HEART Studyの試験デザインであるPROBE法についてお話しいただけますか?

Dahlof 
臨床試験は,患者にとって真に有用な結果をもたらすものでなくてはなりません。
そのために最も重要な条件は,無作為化臨床試験であるということです。
たくさんの後向き研究や症例対照研究がありますが,さまざまな既知のあるいは未知の交絡因子が存在するため,信頼性には問題があります。
われわれは,1992年にPROBE法を発表しました(Lennart Hansson, et al:Blood Pressure 1:113-119, 1992)。
PROBEとは前向き(Prospective),無作為化(Randomized),オープン(Open),盲検エンドポイント(Blinded-Endpoint)を意味します。
すなわち使用薬剤に関してはオープンですが,実地診療ではそのような方法が一般的です。
盲検エンドポイントとは,実施する治療について何ら情報を持たない委員会がエンドポイントを評価することを意味します。
この点は非常に重要です。
PROBE法でいつも議論となるのは,治験参加医師が使用薬剤を知っていることから生じる可能性がある研究者バイアスです。
しかし,既に申し上げたように,この点は実地診療との類似ということではPROBE法の長所であり,二重盲検法の短所であると捉えることもできます。
エンドポイントに対する信頼性は,PROBE法も二重盲検法も同じです。
患者のコンプライアンスも,通常は同じです。費用面では,薬物の包装に配慮する必要がないため,PROBE法が有利です。

光山 
PROBE法はこれまでどの位使われているのですか?

Dahlof 
PROBE法は現在,世界で行われている15~20件の大規模臨床試験で採用されています。

松原 
後ほどご紹介するKYOTO HEART StudyでもPROBE法を採用しました。

Dahlof 
それはJIKEI HEART StudyとKYOTO HEART Studyの基本的な同一点ですね。

PROBE法で行う場合,できるだけハードなエンドポイントを設定することが大事です。
一番ハードなエンドポイントは総死亡です。
心血管死などの原因別の死亡を用いることもできます。
脳卒中や心筋梗塞など特定の疾患による入院といった非致死性イベントを設定することもできます。
症状などのよりソフトなエンドポイントを使うことも可能ですが,ソフトであるほどバイアスに関する議論が生じる可能性が高くなります。
ですから1次エンドポイントには,できる限りハードなエンドポイントを使うべきです。

次に試験の早期終了に関してですが,通常は,有益な効果が予期した以上に大きい場合に生じます。
それ以上継続することは,患者にとって非倫理的なことだからです。
実際,JIKEI HEART Study以外にもいくつもの試験でこのようなことが起こりました。
DSMBは,結果を監視し定期的にデータを精査していますから,必要に応じてこうした勧告を出すことができます。
使用薬剤による重度の有害作用が生じた場合にも試験が早期中止になりますが,臨床的に十分に確立された治療を行う限り,こうしたことは起きません。追跡の結果,試験が無益であることが判明したため試験が早期終了となるという選択肢もありますが,あまり一般的なことではありません。

光山 
ありがとうございました。お話を伺ってPROBE法が信頼性の高い有用な方法であることが十分に理解できました。

松原 
私は実際にPROBE法を使ってみて,そのよさを実感しています。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4106081&year=2008
Medical Tribune 2008.2.7
版権 メディカル・トリビューン社

医学論文斜め読み(1)
■抗不整脈薬が奏功せず心室オーバードライブペーシングを要した急性冠症候群に伴うElectrical Stormの1例
J Cardiol 2007 Oct;50(4):263−269
<結語>
急性心筋梗塞に伴う致死性不整脈にはⅢ群の抗不整脈薬が奏功する場合があるが、ときにQT延長からtorsades de pointesを生じ、その使用には十分な注意が必要である。
また、抗不整脈薬が奏功しない急性冠症候群に伴う心室頻拍に対しては、一時的ペーシングを用いた心室オーバードライブペーシングは比較的簡便で低浸襲であり、有効な治療法であると考えられた。
<考案より抜粋>
□ACC/AHAのガイドラインではリドカインなどのⅠ群の抗不整脈薬が奏功しない場合には、、硫酸マグネシウムやⅢ群の抗不整脈薬であるアミオダロンの静注投与が推奨されている。我が国での使用は経口投与以外では認可されていない。
□カテーテルブレーションも薬剤抵抗性不整脈の治療法の選択肢の一つとして考慮される(文献1)が、緊急時に施行することは容易ではなく、さらに、急性冠症候群などの基礎心疾患を伴う心室頻拍では、病状の変化に伴う不整脈基盤の変化などによりカテーテルアブレーション後に再発することがあり、また、急性冠症候群に伴う心室頻拍は急性期を脱すると消失することも多く、さらに、アミオダロンの血中濃度が上昇し抗不整脈効果が得られれば心室頻拍の再発を抑制できる可能性もあり、本症例ではカテーテルアブレーションは選択せず、心室オーバードライブペーシングを施行した。
(随分長い文章です)
文献1
Bonsh D et al.Successful catherter ablation of electrical storm after myocardial infarction. Circulation2003;108:3011-3016

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。

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