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新規降圧薬エプレレノン

戯れ言たれる侏儒 / 2008.02.09 00:45 / 推薦数 : 1

特別企画

第11回日本心血管内分泌代謝学会学術総会ランチョンセミナー

高血圧の日常診療と新規降圧薬エプレレノン

緒言
アルドステロンはレニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系(RAAS)の最下流に位置しており,水分保持やナトリウム(Na)の貯留などに関与するホルモンとされてきた。
しかし,最近は各種臓器障害に関与する心血管系リスクホルモンとしても注目され,循環器疾患における研究が再び盛んに行われている。  

そのようななか,第11回日本心血管内分泌代謝学会学術総会ランチョンセミナー「高血圧の日常診療と新規降圧薬エプレレノン」が開催され,国立病院機構京都医療センター 内分泌代謝臨床研究センター内分泌研究部長の成瀬光栄氏が登壇。
選択的アルドステロンブロッカーであり,高血圧治療で新規承認を得たエプレレノンの降圧効果から臓器保護まで,新薬の意義をさまざまな観点から解説した。
なお,座長は福井大学第三内科教授の宮森勇氏が務めた。 

アルドステロンは心・腎を障害する
成瀬氏はまず,アルドステロンが臓器障害をもたらす機序について触れた。
アルドステロンの影響として,まず腎などの上皮組織への作用を介する水・Na貯留,高血圧,低カリウム(K)血症による臓器障害が挙げられる。
それらに加えて,最近では心筋肥大・線維化,血管内皮障害,血管の炎症といった非上皮組織への直接的な障害作用もあるとされる(図 1)。


原発性アルドステロン症(PA)の172例で検討したところ,臓器障害は55%で認められ,そのなかで左室肥大は80%であり,この頻度は本態性高血圧症やクッシング症候群などと比べて明らかに顕著であった。
さらに,PAの患者では予後の悪い求心性心肥大が多いという。  

アルドステロンの臓器障害作用が注目されたのはRALES(Randomized Aldactone Evaluation Study)試験である。
標準治療(ACE阻害薬+ループ利尿薬±ジゴキシン)群と比べて,従来のアルドステロン拮抗薬を上乗せ投与した群では心不全患者の生存率が30%上昇した〔Pitt B, et al: N Engl J Med 341(10): 709-717, 1999〕。
この結果は,アルドステロンがPAのように高値でなくても,循環器疾患での臓器障害に関連していると認識させたのである。
しかし,従来のアルドステロン拮抗薬は長期使用に際して女性化乳房の副作用が問題視されていた。  

このような背景から,より選択的なアルドステロンブロッカーの必要性が高まり,開発されたのがエプレレノンである。同薬の特徴として,ミネラロコルチコイド受容体(MR)への選択性が非常に高く,グルココルチコイド受容体や性ホルモン受容体に影響を与えない点が挙げられる。
成瀬氏は「EPHESUS(Eplerenone Post-AMI Heart Failure Efficacy and Survival Study)試験において,エプレレノン(25?50mg/日)での女性化乳房の発現頻度はプラセボより多くはないと報告されている」と述べた〔Pitt B, et al: N Engl J Med 348(14): 1309-1321, 2003〕。

エプレレノンは用量依存的に降圧効果を示す
次に成瀬氏は,エプレレノンの降圧効果について説明。
エプレレノン50mg/日,100mg/日またはプラセボを 8 週間投与した結果,エプレレノン群では拡張期血圧でそれぞれ5.1,6.9 mmHg,収縮期血圧で6.8,9.7 mmHg低下していることが示された(図 2)。

ここで成瀬氏は,アルドステロンの昇圧機序について
(1)腎のMRを介する水・Na貯留と体液量の増加,
(2)血管壁に対する直接作用による血管収縮,
(3)中枢神経を介する交感神経活性の亢進,
以上 3 つの機序が報告されていると述べた。
エプレレノンはそのいずれをも介して降圧効果を示すことが考えられるが,詳細はまだ判明していないという。  

さらに成瀬氏は,アルドステロンブロックが臓器保護へ与える影響について言及。
EPHESUS試験では,急性心筋梗塞後の左室機能不全および心不全患者6,632例を標準治療〔ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB),利尿薬,β遮断薬など〕に加えてアルドステロンブロックを行うことで,標準治療のみの群に比べ総死亡リスクが15%有意に低下した〔Pitt B, et al: N Engl J Med 348(14): 1309-1321, 2003〕。  

また, 別の報告では,左室肥大を合併した高血圧患者において左室心筋重量に対するアルドステロンブロックの影響を検討している。
それによると,レニン - アンジオテンシン系(RAS)の抑制でもアルドステロンブロックでも,ともに左室心筋重量が減少したが,両者の併用でさらなる重量減少が見られ,腎保護においても同様の結果を示した〔Pitt B, et al: Circulation 108(15):1831-1838, 2003〕。
これらの臓器保護を示す報告が研究者から注目を浴びていると言える。  
特にRALES,EPHESUS試験では,RASの抑制を行った患者であってもアルドステロンブロックが心保護を示したことから,成瀬氏は「RAS阻害薬を投与していても,ブロックすべきアルドステロンが存在していると解釈できる」とまとめた。

RAS阻害薬投与中のアルドステロン・ブレイクスルー現象に留意
アルドステロンはRAASの最下流に位置するホルモンである。
機序から考えると,RAASの上流に作用するRAS阻害薬を投与すればアルドステロンも抑制できるはずであるが,必ずしもそれで充分でないことが示唆されている。
その疑問に対し,成瀬氏はRAS阻害薬投与中に起こる「アルドステロン・ブレイクスルー現象」を解説した。  

1981年,ACE阻害薬投与によるRAASへの影響を検討したところ,アルドステロンは投与後半年以上で増加傾向を示すことが報告された。
そこで成瀬氏らは,高血圧自然発症ラットを用いて,ARBで同様の現象を検討した。
その結果,ARB投与により,開始時と比べ 8 週齢までは血中アルドステロン濃度は有意に低下したが,12週齢以降は有意差が得られなかった。
また,血中アンジオテンシンII(AII)値が有意に上昇していたことから,ARBにより内因性のAIIが賦活されることが明らかとなった(図3)。


成瀬氏はこの現象を「アルドステロン・ブレイクスルー現象」と命名した。  

では,アルドステロン・ブレイクスルー現象の機序としてどのようなことが考えられるのか。
A II受容体にはタイプ 1(AT1)とタイプ 2(AT2)が知られており,AT1はアルドステロン分泌促進や血圧上昇作用,AT2は血圧低下作用があるとされる。
しかし,Tanabeらはヒトの副腎ではAT1とAT2の両者が発現しており,双方ともアルドステロン分泌を促す作用があることを突き止めた。
つまり,副腎においては,ARBによりAT1がブロックされても,ARBにより増加した血中A IIがAT2に結合してアルドステロンが分泌されてしまい,AT2を介したアルドステロン・ブレイクスルー現象が起こっていると考えられる。
実際に,ARB投与で同現象を認めた群,認めなかった群を比較すると,認めた群では投与開始時と比べ左室重量指数の有意な減少は見られなかった。

臨床では高K血症に注意RAS阻害薬との併用も慎重に  
続いて成瀬氏は,実地臨床でエプレレノンを使用するうえでの留意点を詳述した。
エプレレノン(25?400mg/日)の副作用として高K血症が注意喚起されており,禁忌項目として血清K値5.0 mEq/L以上,高K血症を誘発するおそれのある病態である微量アルブミン尿または蛋白尿を伴う糖尿病患者,中等度以上の腎機能障害〔クレアチニンクリアランス(Ccr)50mL/分未満〕,重度の肝機能障害,K製剤,K保持性利尿薬投与中  が挙げられている。
つまり,エプレレノンは腎保護作用を示唆する報告があるものの,臨床で血清K値が上昇する可能性があるため禁忌となっている。
その意味で,アルブミン尿を生じる前段階での同薬投与による有用性が注目される。
また,低K血症の患者には,一度K製剤などを中止してから投与するといった対処が必要である。  

ただ,エプレレノン単剤(25~100mg/日)投与後に血清K値5.5 mEq/L以上となった症例はプラセボとほぼ同等であり,別の報告では,エプレレノン(50?100mg/日)における血清K値の変動幅は0.2mEq/L未満であった。  

加えて,併用注意としてACE阻害薬,ARBが挙げられている。
ARBとエプレレノンの併用は臓器保護の観点から有効性が期待できるが,同時に高K血症を惹起してしまう可能性があるので注意を要する。

アルドステロンが低値でもエプレレノンの投与は有効    選択的アルドステロンブロッカーであるエプレレノンだが,レニン値やアルドステロン値の高低が効果と関係あるのだろうか。
成瀬氏は,レニン活性別にエプレレノンとARBの降圧効果を検討したデータを示した。
それによると,エプレレノンはレニンの値に関係なく優れた降圧を示したが,中~低レニン型の症例で特に有効であった。
低レニンでは循環血漿量が多いため,アルドステロンが高いと推測される。
しかし,レニン,アルドステロン双方が抑制されているDahl食塩感受性ラット心不全モデルにおいても,エプレレノンは心筋肥大,線維化を抑制するとのデータがある。
成瀬氏は「エプレレノンを投与する際には,アルドステロンが高値である必要はない。                    MRが活性化されていれば,エプレノンの有効性が期待される」と述べた。

MRに拮抗することで,コルチゾールの影響も阻害    成瀬氏は,MRに関連してコルチゾールに言及した。
慢性心不全患者の生存率とコルチゾール/アルドステロンの関連を検討した研究では,コルチゾール/アルドステロン=低/低が最も生存率が高く,次いで低/高,高/低,最も生存率が低かったのが高/高であった。
また,コルチゾールと関連が深いクッシング症候群でも,心不全の比率が高いとの報告がある。
ハイドロコルチゾンをラットに投与して遺伝子発現を検討した研究では,アルドステロンブロックによりコルチゾールで発現したBNP,III型コラーゲン,誘導蛋白であるgadd45を抑制したが,グルココルチコイド受容体ブロッカーではBNPのみ抑制した。
このことから,成瀬氏は「コルチゾールがMRを介して心臓に影響を与えている。
ひいては,線維化を引き起こす原因になりうる」と解説した。  

最後に成瀬氏はRAASとエプレレノンの適応について,高アルドステロン(低レニン,高レニンともに),低レニン・低アルドステロンの状況下において有効性が期待できるとしたうえで,「未治療の軽症・中等症高血圧,治療抵抗性高血圧,心保護を期待する場合,MRが活性化された高血圧の症例に特によい適応がある()。
ただし,血清K値の上昇には留意してほしい」と総括した。

Medical Tribune 2008年2月7日
版権メディカル・トリビューン
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4106441&year=2008

  米田整弘『情景トスカーナ』
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v42944352
 

<コメント>
最近は少ないと思いますが、降圧利尿剤(サイアザイド、非サイアザイド)にスピロノラクトンを併用する手法が流行(?)しました。多くはカリウム保持を狙った処方でした。
多くの先生方が知りたいのは従来のアルダクトンとセララの降圧効果の比較です。
不思議とこの比較をみかけないような気がするのですが気のせいでしょうか。
同等ならなーんだということになってしまいそうです。

もっともセララは副作用が少なく、かつ容量依存性に降圧効果が出るようなので比較する意味もないかも知れませんが。

 

セララ新発売
http://blog.m3.com/reed/20071113/1
アルドステロン受容体 その1
http://blog.m3.com/reed/20070828/1
アルドステロン受容体 その2
http://blog.m3.com/reed/20071020/1
選択的アルドステロンブロッカー その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20080112/1
選択的アルドステロンブロッカー その2(2/2)
http://blog.m3.com/reed/20080113/1
11/1セララTV講演会
http://blog.m3.com/magic/20071101/1
1/30セララ講演会
http://blog.m3.com/magic/20080131/1
(講演会をまとめたブログです。どうしてこんなにもれなくまとめられたのか不思議です。私にとってもいい刺激になりました。)

 

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。 

 

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