戯れ言たれる侏儒
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Medical Tribune誌で勉強しました。

薬剤溶出ステントの使用を巡る最新の話題
期待される日本発のエビデンス その1(1/2)

    
薬剤溶出ステント(DES)の登場により,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の「アキレス腱」とされた再狭窄の発生は激減,今やDESは全PCI症例の7割を占めるまでに急激な普及を遂げた。
その一方で,2006年の米国心臓病学会(ACC)および欧州心臓病学会(ESC)での発表に端を発したDESの安全性論争が,各国の厚生施策担当省庁を巻き込む事態に発展したことは記憶に新しい。
事態はその後の追跡や新たな研究により沈静化を見たものの,DES留置後の遅発性ステント血栓症の正確な発生率や長期予後はいまだ明らかではなく,その動向には常に高い関心が寄せられている。
こうしたなか,エビデンスを正しく読み解き,DESの限界を知ったうえで,その強みを生かした冠動脈疾患治療戦略の在り方について,東邦大学医療センター大橋病院循環器内科の中村正人准教授と天理よろづ相談所病院(奈良県)循環器内科の中川義久部長に聞いた。


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~DESの安全性と長期予後~
初期の検討は患者背景にバイアスが

シロリムス溶出ステント(SES)の承認から4年。
さらに昨年5月からは,パクリタキセル溶出ステント(PES)という新たな選択肢も加わり,わが国も本格的なDES時代の到来を迎えた。
海外の大規模臨床試験におけるDES標的部位の血行再建術再施行率は 4年間で7~10%台と,従来のベアメタルステント(BMS)による再施行率(20%以上)を大きく下回る。
積年の懸案であった再狭窄の問題を克服した DESの有用性は,だれの目にも明らかなものに見えた。

2006年,主要学会でDESの死亡リスク増大へ懸念が噴出
しかし,当初からDESにはステント血栓症,特に留置後30日以降に発症する遅発性ステント血栓症のリスクが高まるとの懸念が指摘されていた。
そして 2006年にDESとBMSのランダム化比較試験(RCT)・BASKET試験の中間解析結果が報告され,18か月間の累積イベント(心筋梗塞または死亡)発生率は,BMS群の7.5%に対しDES群では8.4%と,有意差こそなかった(P=0.63)もののDES群で高率であったことが明らかとなり,世界に衝撃が走った。
さらに,スイスのCamenzindらがSES,PES各4件のRCTを集めたメタ解析の結果について報告。
SESではBMSに比べて心筋梗塞または死亡の発生率が有意に増加することが示された(P=0.03)。
また,スウェーデンの登録研究・SCAAR研究でも同様の傾向が認められた(図1)だけでなく,DES群とBMS群との差は時間の経過とともに拡大する可能性が示されるに至り,DESの安全性への懸念が高まった。

 

そこで,米食品医薬品局(FDA)は,同年12月に諮問委員会を緊急招集し,DESの安全性に関する討議を行った。
その結果,現時点ではDESの危険性を支持する明確なエビデンスはないとしながらも,少なくとも術後1年間はチエノピリジン系抗血小板薬とアスピリンの2剤併用を厳守すべきであること,いわゆるoff-label症例へのDES使用はステント血栓症のリスクが高まる可能性が強く,十分な注意が必要であることを公式見解として発表。
これを受け,米国では全PCI症例の90%を占めていたDESの使用が60%程度に低下した。


さらに,SCAAR研究の出所となったスウェーデンでは DESの使用が一時禁止されるなど,欧州ではDESの使用率が以前の60%程度から50%を切るまでに低下する事態となった。

2007年,その後の追跡や新たな研究により事態は沈静化
ところが,2007年の主要学会では状況が一変。
DESとBMSの死亡率は同等,もしくはDES群のほうが良好だとする新たな登録研究の報告が相次いだ。
前年の論争の火付け役の1つとなったSCAAR研究でも,以後の追跡の結果,経年的に拡大するかに見えた死亡率の差は逆に縮小し,最終的には両群で同等となった。

中村准教授は,こうした逆転現象が生じた理由は,登録初期の症例選択バイアスにあったと説明する。
つまり,当初は比較的単純な病変にはBMSが,複雑病変にはDESが選択されるケースが多くなってしまったわけだ。
しかし,ここ数年はDESの普及が進み,大半の症例にDESが用いられるようになったため,後期の解析ではDESの実力が示されたという。

同准教授はまた,登録研究ではなくRCTのメタ解析に基づいてSESの劣勢を示したCamenzindらの報告についても,「エンドポイントの定義が異なる複数のRCTを集計し,比較することには無理があった」と指摘する。
事実,メタ解析の対象となったSESの4件のRCT(RAVEL, SIRIUS, E-SIRIUS, C-SIRIUS)におけるステント血栓症の発症率を共通の定義〔ARC(Academic Research Consor-tium)の定義〕を用いて再集計したMauriらの検討(2007)では,SES群とBMS群との間に有意差は認められなかった。
また,唯一のRCTであるBASKET試験では,DES群におけるリスクの上昇は有意ではなかった。

こうしたことから,昨年世界を揺るがしたDESの安全性問題は現在,「少なくともDESは死亡率を大きく増加させるものではないというコンセンサスが得られ」(中村准教授),「海外の主要学会でも過度の危険性をあおるような議論はほとんど終息している」(中川部長)という。

~日本におけるDESの使用成績~
j-CYPHERに続く臨床試験に期待

一方,わが国の状況に目を向けると,SES導入と同時に開始された登録研究・j-CYPHER Registryが2006年11月に目標登録の 1万5,000例を達成,昨年7月には最新の中間解析結果が報告された。
この報告をまとめた中川部長によると,ARCの定義においてステント血栓の存在が「確実」あるいは「強い可能性あり」と判定された症例の頻度は1年時で0.74%,2年時で0.94%と,欧米における同様の研究(2~3%)より著しく低率であった。

日本人ではさらに遅発性血栓症が低率
この数字は,j-CYPHER登録患者の年齢の高さ(68±10歳)や糖尿病合併率の高さ(42%)などを考慮すると,驚嘆に値する。
しかも,確実なステント血栓の頻度は,少なくとも2年時まではBMSと比べて低率であった(図2)。


すなわち,ステント血栓症は,こと日本人においては欧米人ほど大きな脅威ではないことが示唆されたわけである。

ただし,BMSにおけるステント血栓症の発生は留置から1年以内に限られ,1年を過ぎれば頭打ちになるのに対し,DESでは留置1年以降に見られる超遅発性のステント血栓症もコンスタントに発生していた図2)。
それにより両者の差は徐々に縮小してきているという。仮に遅発性・超遅発性のステント血栓が,欧米からの報告のなかで最も高値である年率0.6%の頻度でコンスタントに生じ,その70~80%が心筋梗塞を発症するとすれば,DES施行者では心筋梗塞の発症リスクが年間0.4~0.5%ほど上昇することになる。
日本人の安定狭心症患者の心筋梗塞発症率は年間0.6~0.8%とされる。

中川部長は「これが0.4~0.5%ほど高くなることは重大な問題であるが,日本では超遅発性ステント血栓の頻度自体が年率0.25%と低値であった」と語る。

日本の医療者間でも実施率に隔たり
実際,j-CYPHERの参加施設の間でも,DESの安全性に対する意識の違いは如実に表れている。
図3は,全参加施設におけるDESの使用頻度を示したものであるが,一部の施設では80%を超える症例にDESが用いられている一方,使用率が20%を割る施設も散見される。

もちろん,施設によっては救急患者がほとんどを占め,インフォームド・コンセントに十分な時間がかけられないため,BMSを用いることが多くなるという事情もあろう。
しかし,それ以上に大きいのは,まれな現象であるステント血栓症のデメリットは強力な再狭窄抑制効果という明確なメリットを凌駕するものではないと考える「肯定派」と,低率とはいえ,いったん起これば重大な事態に至る可能性が高く,さらにどのような人にいつ起こるのか予想しえないステント血栓症のリスクは無視できないと考える「慎重派」のスタンスの違いであろう,と中川部長は分析している。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41041041&year=2008

Medical Tribune 2008年1月24日  
版権  メディカル・トリビューン社

 

DES留置の術後フォローアップ(その1)1/2
http://blog.m3.com/reed/20071112
DES留置の術後フォローアップ(その2)2/2
http://blog.m3.com/reed/20071114
MASSステント研究
http://blog.m3.com/reed/20071219
議論続く薬剤溶出性ステント その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20071226
議論続く薬剤溶出性ステント その1(1/2)
http://blog.m3.com/reed/20071227
 

他に
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
があります。

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