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きょうは思いっきり趣向を変えて実務的な話をとりあげてみました。
循環器を専攻される先生方がまず必ずといっていいほど遭遇するペースメーカーの話題です。
新着の日本医事新報の「質疑応答 」で勉強しました。
患者死亡時のペースメーカー除去の要否についての質問に対する
川崎市・麻生病院内科部長 中沢 潔先生
の回答です。
心臓ペースメーカーは高温にさらされると破裂するので、患者が死亡した場合には火葬の前に取り出しておくほうがよいが、法的な問題や社会的な問題もある。
ここでは、心臓ペースメーカーを用いている患者の火葬の際の対処について概説する。
(1)心臓ペースメーカーの破裂
火葬の際の問題は心臓ペースメーカーの破裂である。
火葬時の釜の温度は約15~20分で400~600℃になり、内部温度は1400℃に達する。
ほとんどの心臓ペースメーカーはリチウム電池を使用しており、通常は密閉されている。
リチウム電池の融点は179℃、沸点は1317℃であるので、
火葬の際は15~20分で電池が破裂することになる。
また、心臓ペースメーカー本体の融点は1700~1800℃で、内部圧の上昇により破裂する。
つまり、リチウム電池と本体の二段階の破裂が起こるというわけである。
(2)火葬の際の対処方法
対処方法については日本ペーシング学会社会問題小委員会の提言(1988年)(文献1)がある。
摘出することを強制するのは、法的問題(刑法190条)、社会的問題(辺地自宅での対応)があり、「死亡時に必ず取り出すとすることは難しい」との見解である。
対処の方法は以下のごとくである。
①主治医から家族に、火葬の時に心臓ペースメーカーが破裂することを説明する。
②摘出は強制せず、摘出できる場合は摘出する。
③摘出されてない場合は、家族から葬儀係員に心臓ペースメーカーが植え込まれていることを申告し、葬儀係員から葬儀場係員に申告する。
④火葬の時は破裂音が起きるまで(30分以内であるが)、窓の開閉を行わない。
⑤摘出できた場合はペースメーカー本体に穴を空け処理する(これは2001年4月から変更されている:後述)。
この対処方法を徹底するために、医療サイドを通じて家族、葬儀店、火葬場に、厚生省(現・厚生労働省)を通じて、保健所や火葬場、葬儀店に通達された。
(3)心臓ペースメーカーの摘出
本体植え込み部分の皮膚切開により、比較的容易に本体に到達する。
摘出は本体のみである。
接続しているリードは鋏などで簡単に切断できる。
心臓ペースメーカーは、患者が死亡して身体から摘出されても、ペーシングの出力を出しているし、感知その他の機能も
作動している。
しかし、たとえ取り出した心臓ペースメーカー本体に直接触れても、切断したリードの陽極と陰極に触れても問題はない。
(4)摘出したペースメーカーの処理
摘出した心臓ペースメーカー本体の処理については、平成13年に変更された。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)に基づく感染性廃棄物処理マニュアルが定められている。
現在、感染性廃棄物の範囲に含まれると解釈されている。
この法律の一部が改正された平成13年4月1日から、使用済み心臓ペースメーカーは感染の有無にかかわらず、感染性廃棄物の取り扱いの許可を受けた処理業者に委託することが義務づけられている(文献2)。
特別管理産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付などで監視されており、このマニフェストを適正に使用しない場合は委託者、受託者双方ともに処分(50万円以下の罰金)の対象になるとされている。
日本医事新報 2008.1.26
版権 (株)日本医事新報社
文 献
1)心臓ペーシング:社会問題小委員会報告:火葬時のリチ ウム電池ペースメーカーの取り扱いについて、1988
2)ペースメーカー協議会:使用済みペースメーカーの廃棄処 理について、2001
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