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動脈硬化の退縮をターゲットにした脂質管理の時代が到来
倉林
ASTEROID (A Study To Evaluate the Effect of Rosuvastatin On Intravascular Ultrasound‐Derived Coronary Atheroma Burden)ではIVUS(Intravascular Ultrasound)を用いてスタチン投与による冠動脈内のアテローム領域の変化を検討していますが,このIVUSを用いることの意義について,野原先生のご意見をお伺いできますか。
野原
われわれ,特に循環器専門医は、脂質低下療法により患者さんの動脈内のアテローム領域を評価したいと思うことがあります。
ですから,頚動脈であれば頚動脈エコーを,冠動脈であればIVUSを用いて,実際に動脈内のアテローム領域の進行・退縮を画像所見により評価できることは非常に意義のあることです。
事実,IVUSを用いて冠動脈内のアテローム領域を測定した,REVERSAL(The Reversing Atherosclerosis with Aggressive Lipid Lowering),CAMELOT
(Comparison of Amlodipine versus Enalapril to Limit Occurrences of Thrombosis),ASTEROIDでは,アテローム領域の進展の抑制・退縮を画像所見により評価することができました。
倉林
これらREVERSAL,CAMELOT,ASTEROIDの臨床試験成績をもとにLDL-Cの到達値とアテローム領域の変化率をグラフ上に示すと,相関関係がきれいに示されています
(図1)。

これはLDL-Cの低下によりアテローム領域の進展抑制・退縮が得られると考えてよろしいのでしょうか。
野原
そうです。この図では,LDL-Cを70~80mg/dLまで低下させるとアテローム領域の進展が抑制され,それ以下まで低下させるとアテローム領域が退縮するということが示されています。
これまでは,スタチンによりアテローム領域の進展を抑制できるという報告はありましたが,ASTEROIDの報告ではLDL-Cを60mg/dLまで積極的に低下させることでアテローム領域の退縮が認められました。
倉林
ASTEROIDの追跡期間はおよそ2年で,その間にアテローム領域の退縮が心血管イベントの抑制につながったかどうかについては報告がなかったと思います。
やはり心血管イベントの抑制が重要だと思いますが,アテローム領域の退縮と心血管イベント抑制の関係はどのようになっているのでしょうか。
横井
その件に関しましては,IVUSを用いて左冠動脈主幹部のプラーク面積の変化率と心血管イベントの発生率の関係を検討したほかの試験をご紹介したいと思います(図2)。

この試験では,平均18カ月の追跡期間にプラークが進展した症例では心血管イベントの発生率は高く,一方,退縮した 症例では心血管イベントの発生率は低いということが示されています。
倉林
アテローム領域の進展・退縮とLDL-C/HDL-C比の関係をみると, LDL-C/HDL-C比が2.0未満でアテローム領域の退縮が認められているというデータは興味深いと思います(図3)。

野原
ロスバスタチンの日本での使用成績調査では,LDL-C/HDL-C比が測定されていました。
それによると,ロスバスタチン2.5mgでは平均1.7に,ロスバスタチン5mgでは平均1.5まで低下したとの報告があります(図4)。

アテローム領域の退縮を目標とした脂質管理を行う場合には,LDL-C/HDL-C比≦2.0を達成し得るロスバスタチンの効果に期待したいと思います。
倉林
現在,ガイドラインでは,冠動脈主HDL-Cは40以上を目標にということしか述べられていませんが,動脈硬化の退縮の
ためには,LDL-C/HDL-C比を一次予防では2.0以下に,二次予防では1.5以下に下げることを目標とした脂質管理をお勧めしたいと思います(図5)。

最後に,現在本邦で進行中のCOSMOS(Coronary Ahterosclerosis Study Measuring Effects of Rosuvastatin Using lntravascular Ultrasound in Japanese Subjects)という研究を,横井先生からご紹介いただきたいと思います。
横井
COSMOSの試験デザインは,米国で行われたASTEROIDの試験デザインに類似しています。
CAGあるいはPCI施行予定の冠動脈疾患を合併する高コレステロール血症患者さんを対象とし,LDL-C<80mg/dLを目標にロスバスタチン2.5mgから開始し投与量を最大20mgまで増量して,約1年半の追跡期間後IVUSを用いてアテローム領域の退縮を検討します。
このような冠動脈疾患を合併する高コレステロール血症患者さんを対象に1年半という長期にわたる追跡を行うということで,とても注目されるのではないかと思っています。
倉林
本日は「動脈硬化の進展抑制から退縮の時代へ」というテーマで,動脈硬化予防へ向けた脂質管理の可能性に関して貴重なご意見をお伺いすることができました。
日本人の動脈硬化性疾患の低い発症率を維持していくためにも,今から,20年後,30年後の動脈硬化性疾患の予防に努めることが必要であると考えています。
出典 Nikkei Medical 2008.1
版権 日経BP社
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