戯れ言たれる侏儒
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昨日の

選択的アルドステロンブロッカー その1(1/2)

http://blog.m3.com/reed/20080112 

の続きです。

性ホルモンへの影響が少ない選択的アルドステロンブロッカー
松崎
ところで、従来のアルドステロンブロッカーと選択的アルドステロンブロッカーの降圧作用に違いはありますか

Deedwania
データは存在しませんが、仮に必要十分量を投与できれば、おそらく両剤の降圧効果は同等だろうと思われます。
しかし、実臨床では女性化乳房や乳房痛などの性ホルモン関連の副作用があるために従来のアルドステロンブロッカーでは投与量を制限せねばならず、はたして降圧作用を期待できる用量まで投与できるか、疑問が残ります。

堀 
おっしゃる通りです。
臨床的には、降圧効果よりもカリウム保持に期待して従来のアルドステロンブロッカーを用いているのが現状です。

Deedwania
それは、従来のアルドステロンブロッカーがミネラロコルチコイド受容体(MR)だけでなく、性ホルモン受容体にも作用してしまうからです。
そこで、MRに対する選択性を高めることで、性ホルモン関連副作用を気にすることなく降圧や臓器保護に十分量の投与を可能にしたのが新しいタイプのアルドステロンブロッカーです。
選択的アルドステロンブロッカー(SAB)”とは、こうした開発経緯から付けられた名称なのです。

アルドステロンブロック

血圧および諸臓器に対するアルドステロンの有害作用に関して、新たな知見が次々と蓄積されたことで、従来の認識を大きく塗り替える結果となっています。
心血管系疾患には、アルドステロンの有害作用が少なからず影響していると言っても過言ではありません。
そうした中、われわれ循環器専門医の興味は、「アルドステロンの作用をブロックすることで、いかなる臨床効果が得られるのか」に移っています。
アルドステロンブロックによって、予後の改善などに期待でき
るのでしょうか。

Deedwania
結論から言えば、アルドステロンの作用をブロックすることで、予後の改善に期待できます。
それが、4E(the 4E - left ventricular hypertrophy study)やEPHESUS(Eplerenone Post‐Acute Myocardial Infarctlon Heart Failure Efficacy and Surviva lStudy)、およRALES(The Randomized Aldactone Evaluation Study)などの大規模臨床試験から得られたエデンスです。

4E試験は、左室肥大(LVH)を有する高血圧患者を対象に、アルドステロンのブロックとRA系の抑制、およびそれらの併用が左室重量に及ぼす影響が検討されました。

その結果、RA系の抑制に加えアルドステロンをブロックすることで、さらなる心保護作用が認められました。
このことから、高血圧とLVHにはアルドステロンが重要な役割を果たしており、治療に際してはRA系の抑制のみならずRAAS全体を抑制することが大切だと考えられます。
なお、本試験にてLVH退縮例の予後を追跡したところ、非退縮例に比べてイベント発症までの期間が有意に延長していました。

松崎
LVH退縮は、単純に降圧の成果だとお考えですか。

Deedwania
いいえ。降圧効果を持たない低用量のアルドステロンブロッカーを投与することで、LVH退縮を認めた動物実験が散見されます。
従って、降圧に依存しない作用があったものと考えるのが妥当でしょう。


大変に興味深い試験結果だと思います。
RALES試験とEPHESUS試験については相互に関連していますので、まとめて説明していただけますか。

Deedwania  
RALES試験では、重症慢性心不全患者を対象とし、血圧に影響を与えない少量のアルドステロンブロッカーの生命予後改善が認められました。

また、EPHESUS試験で、急性心筋梗塞に伴う心不全例において、RA系抑制薬やβ遮断薬などの標準治療に加えアルドステロンをブロックすることで、全死亡の低下が認められました。
このように、既にエビデンスが確立している標準治療においてアルドステロンをブロックすることでさらなる上乗せ作用が認められたことは特筆すべきことです。

心疾患合併高血圧治療の今後の方向性

RALES試験とEPHESUS試験では、対象疾患と試験薬剤とが違っていましたね。
それ以外の相違はなかったのですか。

Deedwania
RALESは古い試験、EPHESUSは最近の試験ですから、標準治療の内容に大きな違いがあります。
EPHESUS試験では、患者の87%にACE阻害薬もしくARBが、75%にはβ遮断薬力投与されていました。
そのうえでアルドステロンの作用をブロックすることで、予後改善が認められたわけです。


なるほど、アルドステロンの直接的な有害性を明確に実証しているわけですね。
他に注目すべき点はございませんか。

Deedwania
EPHESUS試験では、対象の約6割が高血圧症を基礎疾患として有していましたので、今後これらの患者を対象としたサブ解析結果の公表が待たれます。

高血圧ならびにアルドステロンの有害性が、左室肥大や心筋リモデリングを助長して、心機能の低下および心不全の増悪に寄与することは明らかです。
アルドステロンの作用をブロックすることは降圧作用を発揮すると共に、Cardiovascular disease Continuumの遮断にも働き、患者の予後を改善するものと期待されます(図5)。


 

また、突然死の予防については、カリウム保持作用も有利に働いていたと思われます。

松崎
選択的アルドステロンブロッカーを用いた大規模臨床試験で、拡張不全を対象としたものはありますか。

Deedwania
はい、NIH主導によるTOPCAT試験(Trial of Aldosterone Antagonist Therapy in Adults With Preserved Ejection Fraction Congestive Heart Failure)が進行中であり、RALES試験を上回る成果が期待されているところです。

松崎
アルドステロンブロッカーの適応を考える際に、血中アルドステロン高値がメルクマールとなるでしょうか。

Deedwania
必ずしも、それに限定されないと思います。
なぜなら、各種の心血管疾患の病態において、MRのUp‐
regurate
が基礎的かつ臨床的に報告されており、アルドステロンの有害性は相対的に強化されているものと考えられるからです。
また、最近では局所RAASの研究も進んでおり、血管組織における役割などが解明されつつあります。
従って、血中アルドステロン値が正常範囲内であっても、アルドステロンブロックの意義は損なわれないと考えられますし、事実、大規模臨床試験では血中アルドステロン値正常の患者に対しても、アルドステロンプロッカーの臨床効果が認められていました。


非常に重要なご指摘だと思います。

Deedwania
以上ご説明したように、心不全では心拍出量低下に対する代償機序としてRAASが賦活化しており、それが増悪因子ともなっています。
そこでAⅡの阻害を主眼とし、ACE阻害薬やARBを用いた大規模臨床試験が世界的に行われてきました。
しかし、諸家の基礎研究やアルドステロンブロッカーを用いた大規模臨床試験から、RAASにおけるアルドステロンブロックの重要性が再認識され、パラダイムシフトと呼ばれる意識の大転換が巻き起こりました。
今後は、アルドステロンブロック療法を積極的に取り入れていくべき段階にあると思います。


おっしゃる通りですね。

本日は大変有意義なお話を伺うことができました。

Nikkei Medical 2007.12
版権 日経BP社

<コメント1> 昨年暮れに行われた東京での「セララ発売記念講演会」に出席しました。その席で、今回座長の堀先生が心不全の治療の観点から、「低カリウム血症は催不整脈の点で問題になることが多い。一方カリウム高値傾向はあまり心配要らない。むしろ不整脈が起きにくいという点では好ましい 」とコメントすぁらたのが印象深かったです。

<コメント2> 文中の「MRのUp‐regurate」のところが少し理解できませんでした。受容体がUp‐regurateされるとネガティブフィードバックで血中アルドステロン濃度(PAC)が減少するということなのでしょうか。

 

他に  「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ があります。

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