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最近のLancetに
「降圧薬は薬剤クラスと無関係に左室拡張機能を改善」
という主旨の論文が発表されました。
Effect of angiotensin receptor blockade and antihypertensive drugs on diastolic function in patients with hypertension and diastolic dysfunction: a randomised trial
(アンジオテンシン受容体拮抗薬が高血圧患者の左室拡張機能障害に及ぼす効果:無作為試験)
Lancet Solomon Sd, et al.2007;369:2079-2087. Brigham and Womens' Hospital, USA
内容をかいつまんで紹介しますと、RAS抑制剤が他の降圧剤に比較して、より効果的に拡張機能を改善するという仮説に基づいての研究です。
そしてその結果は、拡張機能改善はクラス効果には関係なく、降圧剤の種類によらない降圧効果によるものであるということです。
デザインは、RAS抑制剤以外の降圧剤で135/80mmHg以下に降圧させた後にバルサルタンまたはプラセボを38週服用させ組織ドップラー画像で拡張期弛緩速度で観察したものです。
(バルサルタンの話が続いて恐縮です。他意はありません。)
以下、この報告についての解説を転用させていただきます。
高血圧治療で優先すべきは血圧コントロール
石光俊彦 濁協医科大学循環器内科教授
人口の高齢化と高血圧症や糖尿病など生活習慣病の蔓延により、末期循環器系臓器障害として心不全や腎不全に至る症例の増加が今後予想される。
高血圧症患者において左室肥大が存在する場合には、心不全とともに心血管疾患のリスクが著明に上昇する。
したがって、罹患症例数が多い高血圧症患者において左室肥大および心不全への進展を抑制することは、患者の予後
改善とともに医療経済の面からも重要性の高い課題である。
その目的を達成するには、早期の段階に積極的な介入を行う予防医学的アプローチが効果的であると考えられる。
パルスドップラー心エコー図による左室拡張機能の評価は、可視的に左室壁の肥厚が明らかになる前の段階において、個々の心筋細胞の肥大やエネルギー代謝の異常および細胞外基質の増加や線維化など、高血圧性標的臓器障害としての心機能異常を早期に反映する指標になりうると期待されている。
しかし、従前から多用されてきた拡張期僧帽弁血流速度波形ピーク比(E/A)は、前負荷すなわち循環血液量の増減に左右されるため、慢性腎臓病(CKD)患者などに適用する際には問題があると指摘されている。
この点、本研究でも用いられた僧帽弁輪の運動をパルスドップラーにて解析する組織ドップラーは前負荷の影響が少ないと考えられている。
本研究で対象とされた高血圧症患者は比較的軽症で左室
肥大を呈する症例は少なかったが、体格指数(BMI)の平均が30を超え、15%がCKDであったことを考慮すると、組織ドップラーを用いた検討には新規性が認められる。
高血圧性臓器障害としての左室リモデリングには圧負荷、容量負荷のほかに神経内分泌性の因子が関係し、その中でレニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系の影響が注目されている。
とくに、アンジオテンシンⅡやアルドステロンは血管収縮およびNa再吸収などの生理活性のほかに、心血管細胞の増殖・肥大や組織線維化の促進作用を有することが基礎的な研究で示されており、降圧薬のうちアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は左室肥大の退縮効果に優れていることが示されている。
また、高リスク高血圧症患者を対象としたALLHATやVALUEなどの大規模臨床試験においても、ACE阻害薬やARBが心不全の抑制に有利である傾向が観察されており、RAA系の抑制薬が降圧効果に加え心機能を保持する効果に優れている可能性がある。
本研究でも、ARBのバルサルタンが降圧効果以外に組織リモデリングの抑制により左室拡張機能の改善効果を示すのではないかと期待されたが、そのようなクラス効果は認められず、組織ドップラーによる左室拡張機能の指標の改善は降圧の程度に依存していた。
大規模臨床試験やメタアナリシスで示されるRAA系抑制薬の降圧によらないクラス効果は、多数の症例のデータを集積した場合に有意となるものであり、個々の症例に対する高血圧治療においては十分な血圧コントロールを優先すべきであると考えられる。
December2007Vol3 No.12 MMJ
版権 MMJ
佐藤昭三 上高地 日本画
http://page3.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/c153182110?u=;a_tofuji2005
<コメント>
世はまさにARBブームです。
日本はRAS阻害剤に占めるARBの使用が諸外国に比較して多いのが特徴のようです。
最近ACE-Iを再評価する意見もでてきていますが、一般的にCCBに比べてARBやACE-Iは降圧効果が弱いというのが先生方の共通の認識だと思います。
この論文にあるように十分な降圧を得るには、ARBやACE-I各々単独の使用では不十分でCCBなどの多剤との併用というケースが実際には多いのではないでしょうか。
理論が先行するあまり十分な降圧が得られないままRAS抑制剤に固執することがないようにという警告として、この論文を読ませていただきました。
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